実際のところ、空き家を相続した場合処分してしまったほうが良いのでしょうか?相続した空き家を持っているリスクと、処分する場合に考えられる方法を解説していきます。
空き家は処分したほうが良い?
結論から言うと、今後誰も住む予定がなく、資産として運用するのも難しいなら処分することをおすすめします。その理由を二点見ていきましょう。
空き家は持っているだけで維持費や固定資産税がかかる
まず、空き家は持っているだけで修繕費や税金などの費用が発生します。遊ばせている家なのに出費だけは発生してしまうため、活用しないなら売却してお金に換えてしまうほうが良い場合が多いです。住宅は経年により劣化してくるため、状態の良いまま保存するには定期的に修繕が発生します。特に、人が住んでいる空き家は住人による手入れがされないため、劣化する速度も速く相応の維持費がかかることが予想されます。
維持費とは別に固定資産税の支払いも忘れてはいけません。通常、固定資産税は固定資産評価額の1.4%なので、2,000万円の家なら年間28万円の出費になります。
維持費と修繕費を合わせると、空き家を所有しているだけで発生する費用は決して小さくありません。この点を考慮すると、使い道のない空き家は早めに手放したほうが経済的ダメージは少なく済むでしょう。
相続した空き家の売却は3,000万円特別控除が利用できる
もう一点、空き家を処分したほうが良い理由として挙げられるのが、早めに売却すれば税金を優遇してもらえることです。相続によって取得した空き家を売却すると、譲渡所得から最高3,000万円の控除を受けられます。家を売却して利益が出た場合、家の所有期間に応じて住民税と所得税(譲渡所得税)が課税されます。しかし、3,000万円の特別控除を利用すれば、譲渡所得から3,000万円までが非課税となります。古い家であれば全額非課税になることも珍しくないため、積極的に活用したいところです。
なお、この3,000万円特別控除の対象となるには、以下の要件全てに当てはまる必要があります。
イ 昭和56年5月31日以前に建築されたこと
ロ 区分所有建物登記がされている建物でないこと
ハ 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと
引用:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁
また、3,000万円特別控除の特例には期限があり相続開始の3年から4年(相続の開始時期による)で利用できなくなるため注意が必要です。
空き家の処分方法
では、実際に処分を決めた場合はどのような選択肢があるのでしょうか。代表的な3つの処分方法を見てみましょう。
処分方法① 更地にする
まず、空き家を取り壊して更地にして土地を売却する方法が挙げられます。わざわざ更地にするのは、古家付きのまま売却するより、買い手がつきやすくなるからです。古家付きのままだと、その家に引き続き住みたい人か、予算に余裕があり取り壊せる人しか購入者候補にはなりません。しかし、持ち主が更地にしてしまえば、住宅用地を探している人から幅広く買い手を募ることができます。
なお、更地にする場合は家の解体に別途費用がかかるため、解体費用と土地の売却見込み価格を比較して、取り壊すかどうかを検討しましょう。
処分方法② 空き家のまま売却する
空き家が建った状態のまま売却することも可能です。空き家の状態が良い場合や、取り壊しが難しい場合は空き家のまま売るのも考えてみましょう。空き家を取り壊さないのであれば、建物の状態によって売却の方法が異なります。状態が悪くそのままでは人が住めない場合は「古家付き土地」として、そのままでも住めるほど状態が良いのであれば「土地付き中古住宅」として売却可能です。
なお、中古住宅が資産価値を持つのは、木造の場合で築25年までが限界といわれています。家の傷み具合など詳細はケースバイケースですが、あまり古い家だと取り壊してしまったほうが良いことも多いです。
処分方法③ 修繕して賃貸物件にする
家に愛着があるなど、売りにくい事情があるなら、無理に手放さず資産として活用する方法もあります。その一つが、賃貸物件として人に貸す方法です。修繕が比較的低コストで済み、かつ戸建ての賃貸物件の需要がある場合限定ですが、一つの選択肢になるでしょう。賃貸物件としてうまく運用できれば、賃料を得る資産になります。ただ、家の維持管理費や税金は所有している限り発生するため、これらの費用を賃料で賄える場合にのみ検討することをおすすめします。
空き家の処分にかかる費用
空き家を売却して処分する場合、持ち主にはさまざまな支出が発生します。多くの場合に発生する代表的な5つの費用を確認してみましょう。
費用① 印紙税
印紙税は、売買契約締結時に契約書に課される税金です。不動産の売買契約における印紙税の金額は以下の通りです。 なお、仲介業者を通しての個人間取引では、契約書を2通作成し、売主・買主それぞれが印紙税を負担するのが一般的です。費用② 登録免許税
登録免許税は、登記を行う際にかかる費用のことです。空き家を処分すると法務局で名義の変更が必要なため、その際に発生する手数料のようなものです。税率は、売買の場合固定資産税評価額の1.5%、相続の場合は0.4%と規定されています。なお、売買の場合の登録免許税は、令和3年4月からは2%に引き上げられますので注意してください。
費用③ 仲介手数料
売却を行う場合、通常は不動産会社と媒介契約を結び、仲介してもらって売却を行います。この場合に報酬として支払うのが仲介手数料です。仲介手数料の上限額は、不動産の売買価格に応じて3%から5%と定められています。仲介手数料は、売買契約の締結時に50%、物件の引き渡し完了時に50%を支払うのが一般的です。
費用④ 空き家の解体費用
空き家を解体して土地だけで売却する場合は解体費用がかかります。業者によって解体費用は異なりますが、一坪4万円から6万円程度が相場です。 また、汚水処理の浄化槽を設置している場合、撤去に50万円以上の費用がかかるケースもあります。費用⑤ 司法書士への報酬
法務局への登記を司法書士に依頼した場合は報酬の支払いが発生します。相続した不動産を登記する場合であれば、固定資産税評価額によって10万円から15万円程度が手数料として請求されることが多いです。空き家の処分は業者に相談するのも手
空き家を処分する場合、自分で買い手を見つけることも可能ですし、空き家バンクに登録することもできます。一方、効率的に買い手を探し、処分にかかる手間を削減したいのであれば、業者に相談するのが選択肢の一つになります。
不動産業者を利用して買い手を探す場合、契約までこぎつけると仲介手数料が発生するという点がデメリットです。ただ、慣れない空き家の売却をするうえで、買い手探しから契約サポートまで行ってくれる不動産業者は強い味方になってくれます。
また、仲介業者を経由した個人間取引ではなく、不動産の買い取り業者に売却するのも一つの方法です。仲介業者を利用した場合と比べて売却価格が安くなることが多いですが、早期の現金化が期待できます。
以上のように、空き家を処分する場合は不動産業者を利用することも検討してみてはいかがでしょうか。
用途のない空き家は早期に処分したほうが得なことも
空き家を相続したけれど使い道がない。このような場合は早めに手放したほうが得なことも数多くあります。空き家は持っているだけで維持費や税金がかかるうえ、住人がいないと傷みも早く資産価値も落ちやすいからです。
空き家のまま売却するのか、土地として売却するかは、建物の状況やエリアの需要を考慮して決定してみてください。まずは、建物と土地にどのくらいの価値があるのか、不動産業者の査定を利用して調査してみるのがおすすめです。
監修者
大沼 春香(おおぬま はるか)
宅地建物取引士
埼玉県・千葉県・東京都一部に拠点を置く
不動産売買仲介会社に15年以上従事。
自身も不動産購入を経験し「初心者にもわかりやすい」
実態に基づいたパンフレット・資料に定評がある。
最近はWEBや自社セミナーなどでの情報発信も行っている。