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相続した不動産を売却する際に知っておきたい10のポイント

相続は、人生で誰もが経験する可能性のある出来事ですが、喜びと共に様々な手続きや決断を迫られる複雑なプロセスでもあります。特に、相続財産に不動産が含まれている場合は、その取り扱いに頭を悩ませる方も多いのではないでしょうか?

このコラムでは、相続した不動産を売却する際に知っておきたい10のポイントを、具体的な例を交えながらわかりやすく解説していきます。

不動産を相続する予定の方

  • 不動産を相続したが何から始めていいかわからない方
  • 不動産を相続する際の注意点を知り高い方

1. 相続不動産の確認と権利関係の把握

まずは、相続した不動産がどのような物件なのかを正確に把握しましょう。所在地、面積、築年数、構造などの基本情報はもちろんのこと、登記簿謄本を取得して、所有権の状況や抵当権などの有無を確認することが重要です。

例えば、東京都渋谷区にある築30年のマンションを相続した場合、登記簿謄本を確認すると、父親が単独所有者であり、住宅ローンが残っていることが判明しました。この場合、住宅ローンの残債を把握し、相続手続きと合わせて処理していく必要があります。

また、相続人が複数いる場合は、誰がどの程度の持分を相続するのか、遺産分割協議を通じて明確にしておく必要があります。共有状態での売却は、後々トラブルに発展する可能性もあるため、注意が必要です。

例えば、兄弟3人で土地を相続する場合、遺産分割協議で長男が4割、次男と三男がそれぞれ3割ずつの持分を相続することで合意しました。この合意に基づき、共有状態を解消してから売却を進めることになります。

2. 売却の目的と時期を明確にする

なぜ不動産を売却するのか、その目的を明確にしましょう。売却資金を他の相続財産と合わせて分配するためなのか、相続人の生活資金に充てるためなのか、あるいは不動産を維持管理する負担を軽減するためなのかなど、目的によって売却活動の方針も変わってきます。

例えば、売却資金を相続人3人で均等に分配したい場合は、できるだけ高値で売却することが目標となります。一方、相続人の一人がその不動産に住み続ける場合は、他の相続人への代償金を支払うための資金を確保することが目的となります。

また、いつまでに売却したいのか、時期の目標も定めておきましょう。売却を急ぐ場合は、価格交渉で譲歩する必要が生じることもあります。

例えば、3ヶ月以内に売却したい場合は、相場よりも少し低い価格設定にする、買い取りを検討するなどの選択肢が出てきます。

3. 複数の不動産会社に査定を依頼する

不動産を売却する際は、複数の不動産会社に査定を依頼し、それぞれの査定額や売却プランを比較検討することが大切です。査定額は、不動産会社の査定担当者によって異なる場合があり、また、得意とする販売方法や顧客層も異なるため、複数の意見を聞くことで、より適切な判断材料を得ることができます。

例えば、A社は8,000万円、B社は7,500万円、C社は8,200万円と査定額が異なりました。それぞれの査定根拠を詳しく聞き、なぜC社は高値をつけたのかA社とB社はどのような点で評価が異なるのかを理解することが重要です。

査定を依頼する際には、相続不動産であることを伝え、相続に詳しい担当者に対応してもらうようにしましょう。

4. 売却方法を選択する

不動産の売却方法は、大きく分けて「仲介」と「買取」の二つがあります。

  • 仲介: 不動産会社に仲介を依頼し、購入希望者を探してもらう方法です。一般的に、買取よりも高値で売却できる可能性がありますが、売却までに時間がかかる場合もあります。
  • 買取: 不動産会社に直接不動産を買い取ってもらう方法です。仲介に比べて売却価格は低くなる傾向がありますが、すぐに現金化できるというメリットがあります。

例えば、築年数が古く、リフォームが必要な物件は、買取の方がスムーズに売却できる可能性があります。一方、立地条件が良く、人気のある物件は、仲介で時間をかけても高値で売却できる可能性があります。

それぞれのメリットとデメリットを理解し、自身の状況や希望に合った売却方法を選択しましょう。

5. 売買契約と引き渡し

購入希望者が見つかったら、売買契約を締結します。契約書の内容をよく確認し、不明な点は不動産会社に質問しましょう。また、売買契約時には、手付金を受け取ります。

その後、所有権移転登記などの手続きを行い、残代金を受け取って不動産を引き渡します。引き渡しまでに、境界の確認や建物の明け渡し、公共料金の精算などを行う必要があります。

6. 税金に関する知識を身につける

不動産を売却すると、譲渡所得税が発生します。譲渡所得税は、売却価格から取得費や譲渡費用などを差し引いた譲渡所得に対して課税されます。相続した不動産の場合、取得費は相続時の時価となります。

例えば、相続時の時価が5,000万円の不動産を8,000万円で売却し、諸費用が300万円かかった場合、譲渡所得は8,000万円 - 5,000万円 - 300万円 = 2,700万円となります。

また、相続税の申告期限までに不動産を売却した場合、相続税の計算上、売却価格が相続財産の評価額となります。

税金に関する知識は複雑で、専門的な知識が必要となる場合もあるため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

7. 必要書類を準備する

不動産売却には、様々な書類が必要となります。主な必要書類は以下の通りです。

  • 権利証または登記識別情報通知書: 不動産の所有権を証明する書類
  • 固定資産税評価証明書: 固定資産税の評価額が記載された書類
  • 印鑑証明書: 売買契約書などに押印する印鑑を証明する書類
  • 住民票: 売主の住所を確認するための書類
  • 相続関係を証明する書類: 戸籍謄本など、相続人を証明する書類

これらの書類は、事前に準備しておくことで、売却手続きをスムーズに進めることができます。

8. 相続不動産特有の注意点

相続不動産の売却には、一般的な不動産売却とは異なる注意点がいくつかあります。

  • 共有状態での売却: 複数の相続人で不動産を共有している場合は、全員の同意を得なければ売却できません。例えば、兄弟の一人が売却に反対している場合は、他の兄弟がその持分を買い取る共有状態のまま売却するなどの方法を検討する必要があります。
  • 心理的な抵抗感: 長年住み慣れた家や思い出の詰まった土地を売却することに、心理的な抵抗を感じる方もいるかもしれません。
  • 建物や設備の老朽化: 相続した不動産は、築年数が経過している場合が多く、建物や設備の老朽化が進んでいる可能性があります。例えば、雨漏りやシロアリ被害が見つかった場合は、修繕してから売却するか、価格を下げて売却するなどの対応が必要になります。

これらの注意点も踏まえ、慎重に売却を進める必要があります。

9. 専門家の活用

不動産売却は、専門的な知識や経験が必要となる場面が多くあります。不動産会社はもちろんのこと、税理士や司法書士などの専門家に相談することで、よりスムーズかつ有利に売却を進めることができます。

例えば、相続税の申告遺産分割協議で困ったことがあれば、税理士や司法書士に相談することをおすすめします。

10. トラブルを避けるためのポイント

不動産売却では、予期せぬトラブルが発生することもあります。トラブルを避けるためには、以下の点に注意しましょう。

  • 不動産会社とのコミュニケーション: 不動産会社とは、こまめに連絡を取り合い、疑問点や不安な点はすぐに相談しましょう。例えば、売却活動の進捗状況購入希望者の反応などを定期的に確認しましょう。
  • 契約内容の確認: 売買契約書などの重要書類は、内容をよく確認してから署名・捺印しましょう。
  • 売却活動の状況把握: 売却活動の進捗状況を定期的に確認し、必要があれば積極的に意見を伝えましょう。

まとめ

上の10のポイントを参考に、相続した不動産をスムーズに売却し、新たなスタートを切りましょう。

監修者

コラム監修者 岩本大介
岩本 大介(いわもと だいすけ)

相続診断士・
不動産終活士・不動産終活アドバイザー・
終活セミナー講師認定資格・
福祉住環境コーディネーター2級
不動産営業及びマーケターとして20年以上従事。
シニアやその子世代に寄り添い、
不動産のエキスパートとして
不動産の相続・空き家問題に取り組む。

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