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実家をどうする?空き家にしないための賢い相続対策

親が亡くなり、実家を相続することになったものの、「誰も住む予定がない…」と悩むケースは少なくありません。核家族化が進み、子供世代がすでに自分の持ち家を持っていることが多いため、実家が空き家になる可能性は高まっています。
しかし、空き家を放置すると、固定資産税の負担が増えたり、老朽化による倒壊リスクや近隣トラブルを招くこともあります。特に、2024年の法改正により、「特定空き家」 に指定されると、固定資産税が最大6倍に増額される可能性があるため注意が必要です。
相続した実家をどうするかは、家族の意向や経済的な事情によって異なります。「住む」「貸す」「売る」という選択肢を検討し、最適な方法を早めに決めることが大切です。実家の相続は、単に不動産を受け継ぐだけでなく、将来的な管理や活用方法まで考える必要があります。家族と話し合いを重ね、空き家問題を未然に防ぐための対策を今から始めましょう。
実家の整理を検討されている方へ
- 実家に住む場合のポイント
- 賃貸に出して活用する方法
- 売却して現金化するメリット
- 空き家を放置するとどうなる?リスクを知っておこう
目次
まずは実家の状況を把握しよう
実家をどうするかを決める前に、まずは現在の状況を正確に把握することが重要です。親が住んでいた家だからといって感情的に判断するのではなく、「実家の価値」「維持コスト」「家族の意向」 の3つの視点から冷静に分析することが大切です。
① 実家の価値を調査する
実家の市場価値を知ることで、売却や賃貸といった選択肢を判断しやすくなります。まず、不動産会社に査定を依頼し、土地や建物の価格を把握しましょう。また、築年数や立地条件によって、買い手がつきやすいかどうかも変わるため、事前にチェックしておくとスムーズです。
② 維持管理にかかるコストを計算する
実家を維持するには、固定資産税・修繕費・光熱費 などのコストが発生します。特に、空き家のまま放置すると、管理費用がかさむだけでなく、老朽化が進み売却や賃貸の際にリフォームが必要になる可能性もあります。
③ 家族の意向を確認する
兄弟姉妹や親族と話し合い、誰が相続するのか、住む予定があるのかを明確にしましょう。共有名義にすると、後々の管理や売却が難しくなるため、早めに方針を決めておくことが重要です。
実家の状況を正しく把握することで、適切な相続対策を立てることができます。まずは現状を整理し、将来の方向性を考えていきましょう。
選択肢①:実家に住む場合のポイント
実家を相続した際、「自分や家族が住む」という選択肢は、空き家リスクを防ぐ有効な方法の一つです。しかし、単に住むだけでなく、リフォームや名義変更、維持管理の負担 などをしっかりと考慮することが大切です。
① 住み続けるために必要なリフォームを検討する
親の世代が住んでいた家は築年数が古く、耐震補強・バリアフリー化・水回りの改修 などが必要になることが多いです。特に1981年以前に建築された住宅は旧耐震基準で設計されており、地震のリスクが高いため注意が必要です。リフォーム費用の見積もりを取り、住み続けることが経済的に合理的かどうか を判断しましょう。
② 共有名義にしない!名義変更の重要性
兄弟姉妹が相続人となる場合、「とりあえず共有名義にしておく」というケースがありますが、これは後々トラブルの元になります。例えば、住む本人がリフォームをしたくても、共有者全員の同意が必要になり、スムーズに進められないこともあります。実家に住む場合は、遺産分割協議をしっかり行い、単独名義に変更する のが理想的です。
③ 維持管理や固定資産税の負担を考える
住むことを決めたら、毎年発生する固定資産税や修繕費の負担を計算し、長期的に維持できるかを検討しましょう。また、庭の手入れや近隣との関係も大切です。
実家に住むことは、相続税の「小規模宅地等の特例」を活用できるなどのメリットもありますが、計画的に進めることが重要です。住む選択をする場合は、事前に費用や手続きについて整理しておきましょう。
選択肢②:賃貸に出して活用する方法
実家を相続したものの、自分は住む予定がない場合、賃貸に出すことで収益を得ながら空き家を活用する方法があります。しかし、賃貸経営には需要の有無・初期費用・管理の手間 などを考慮する必要があります。
① 賃貸のニーズを確認する
まず、実家がある地域で「賃貸ニーズ」があるかどうかを確認しましょう。都市部や駅近であれば需要は高いですが、地方や郊外では借り手が見つかりにくい可能性もあります。不動産会社に相談し、賃料相場やターゲット層(ファミリー・単身者・高齢者向けなど)を分析することが大切です。
② 賃貸向けリフォームの必要性を検討する
築年数が古い家は、そのままでは借り手がつきにくいため、水回りや内装のリフォームが必要 になることが多いです。ただし、リフォーム費用をかけすぎると、投資回収に時間がかかるため、必要最低限の改修で済ませることも考えましょう。
③ 賃貸経営の管理方法を決める
遠方に住んでいる場合や賃貸管理の手間を減らしたい場合は、不動産管理会社に依頼する方法があります。管理会社に任せると、家賃回収や入居者対応を代行してもらえるため、手間を減らすことができます。ただし、管理費として家賃の5~10%程度の費用 がかかるため、コストも考慮しましょう。
④ 賃貸に出す場合のメリット・デメリット
✅ メリット
- 家賃収入が得られる
- 空き家の老朽化や固定資産税の負担を軽減できる
- 売却せずに実家を維持できる
❌ デメリット
- 借り手が見つからないリスクがある
- 管理の手間や修繕費がかかる
- 入居者とのトラブル対応が発生する可能性
賃貸に出す選択肢は、適切なエリア・条件が揃えば収益化につながりますが、慎重な判断が求められます。まずは不動産会社に相談し、賃貸経営の可能性をしっかりと見極めましょう。
選択肢③:売却して現金化するメリット
実家を相続したものの、住む予定もなく、賃貸に出すのも難しい場合、売却して現金化する という選択肢があります。売却することで、管理の手間や固定資産税の負担をなくし、相続人同士でスムーズに財産を分割できるメリットがあります。
① 売却のメリット
✅ 固定資産税や維持費の負担がなくなる
→ 空き家のまま放置すると、税金や管理費がかかり続けるが、売却すれば経済的負担がゼロになる。
✅ 現金化することで相続人全員が公平に分配できる
→ 不動産を共有名義で相続すると、将来的にトラブルになりやすい。売却すれば遺産分割がスムーズに進む。
✅ 市場価値が高いうちに売却できる
→ 築年数が古くなると売却価格が下がるため、早めの売却が有利になることが多い。
✅ 相続税の支払い資金を確保できる
→ 相続税が発生する場合、納税資金を準備するのが難しいことも。売却で現金化すれば納税資金を確保できる。
② 売却の流れと注意点
1️⃣ 不動産会社に査定を依頼する
→ 実家の市場価値を把握し、売却価格の目安を確認する。
2️⃣ 相続登記を済ませておく
→ 2024年から相続登記が義務化され、登記が完了していないと売却できない。
3️⃣ 買い手を探す
→ 不動産会社と媒介契約を結び、販売活動を開始。
4️⃣ 売買契約を締結し、引き渡し
→ 売却代金を受け取り、正式に不動産を手放す。
③ 売却時にかかる税金と節税対策
売却益が発生した場合、譲渡所得税 が課税されるが、親と同居していた場合などは 「相続空き家の3,000万円特別控除」 を活用できる可能性がある。税理士に相談し、節税対策を検討するのも有効。
売却は、実家を空き家にしない最もシンプルな方法の一つ。相続の負担を減らすためにも、早めに売却を検討することが大切です。
空き家を放置するとどうなる?リスクを知っておこう
親から相続した実家をそのまま放置してしまうと、思わぬリスクや負担が発生します。管理されていない空き家は、固定資産税の増額・老朽化による倒壊リスク・近隣トラブル など、様々な問題を引き起こします。早めに適切な対応を考え、空き家のリスクを未然に防ぎましょう。
① 固定資産税が増額されるリスク
通常、住宅が建っている土地は「住宅用地の特例」により固定資産税が軽減されます。しかし、空き家の管理が不十分で「特定空き家」に指定されると、特例が適用されず、固定資産税が最大6倍に増額される 可能性があります。2024年の法改正により、行政の監視が強化され、空き家放置による税負担がますます重くなることが予想されます。
② 老朽化や倒壊の危険性
空き家は、換気や掃除がされないことで急速に老朽化が進みます。特に、木造住宅は湿気や害虫の被害を受けやすく、数年放置するだけで倒壊のリスクが高まります。もし建物が崩壊し、隣家や通行人に被害を与えた場合、相続人が損害賠償責任を負う こともあります。
③ 近隣トラブルや犯罪リスク
空き家が増えると、地域の治安が悪化する原因になります。管理されていない空き家は、不法投棄や不審者の侵入、放火などの犯罪リスクが高まります。また、庭の雑草やゴミの放置が原因で、近隣住民とのトラブルに発展するケースも少なくありません。
④ 行政からの強制措置の可能性
「特定空き家」に指定されると、市区町村から改善勧告や命令 が出されることがあります。これに従わない場合、最終的には行政代執行 により強制的に解体され、解体費用を請求されるケースもあります。
⑤ まとめ:早めの対策が重要!
空き家を放置すると、管理の手間だけでなく、税金負担や法的リスクが発生します。実家をどうするか早めに決め、「住む・貸す・売る」の選択肢を検討し、適切な対応を取ることが大切です。家族で話し合い、空き家問題を未然に防ぎましょう。
まとめ:家族で早めに実家の未来を話し合おう
親の実家を相続した後、そのまま放置すると固定資産税の増額や管理負担の増加、さらには近隣トラブル につながる可能性があります。実家の未来をどうするかは、相続人全員でしっかり話し合い、早めに方向性を決めることが大切です。
実家の活用方法としては、①住む、②賃貸に出す、③売却する という3つの選択肢があります。それぞれにメリット・デメリットがあり、家族の状況や経済的な事情を踏まえて最適な方法を選ぶ必要があります。
「とりあえず空き家のままにしておく」 という選択は、固定資産税の増額や老朽化、さらには行政からの指導・強制撤去といったリスクを伴います。特に、2024年の法改正により**「特定空き家」** に指定されると税負担が大幅に増えるため、早急な対応が求められます。
また、実家を共有名義にしてしまうと、将来的に売却や管理が難しくなるため、相続の際はできるだけ単独名義にする ことを検討しましょう。さらに、不動産の相続登記が義務化されたため、相続が発生したら早めに登記手続きを行うことも重要です。
実家の相続は、家族全員に関わる重要な問題です。「親が元気なうちに話し合う」 ことが、トラブルを防ぎ、スムーズな相続につながります。住むのか、貸すのか、売るのか——今のうちから選択肢を整理し、家族で実家の未来について考えていきましょう。
監修者

岩本 大介(いわもと だいすけ)
相続診断士・
不動産終活士・不動産終活アドバイザー・
終活セミナー講師認定資格・
福祉住環境コーディネーター2級
不動産営業及びマーケターとして20年以上従事。
シニアやその子世代に寄り添い、
不動産のエキスパートとして
不動産の相続・空き家問題に取り組む。