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認知症になる前に!今すぐできる家族での相続対策

日本では高齢化が進み、認知症患者の数も増加しています。認知症になると、本人の意思確認が難しくなり、相続や財産管理に大きな支障が生じる ため、早めの対策が重要です。
 

例えば、親が認知症になってしまうと、遺言書を作成することができなくなる 可能性があります。遺言書は本人の意思に基づいて作成されるものであり、判断能力が不十分な状態では法的に無効と判断されることがあります。その結果、遺産分割協議が必要となり、相続人同士で揉める原因になりかねません。
 

また、銀行口座の凍結 も大きな問題の一つです。認知症の診断を受けると、銀行は本人が正しく判断できないとみなし、口座の取引を停止することがあります。そのため、親の預金が使えなくなり、医療費や介護費の支払いが滞ることも考えられます。
 

さらに、不動産の管理や売却にも支障が出ます。たとえば、実家を売却しようとしても、所有者である親が認知症で契約行為ができないと、手続きを進めることができません。この場合、裁判所に成年後見人を選任してもらう必要がありますが、手続きが煩雑で自由に財産を処分できなくなるデメリットもあります。
 

このように、認知症になると相続や財産管理が一気に困難になります。「まだ元気だから大丈夫」と思わず、早めに家族で話し合い、事前に対策を講じることが、スムーズな相続につながります。

認知症になると何が変わるかわからない方へ

  • 認知症になると何が問題になるのか?
  • 認知症になる前にやっておくべき相続対策

認知症になると何が問題になるのか?

認知症が進行すると、本人の判断能力が低下し、相続や財産管理に大きな影響を及ぼします。特に、遺言書の作成・銀行口座の管理・不動産の売却 などが難しくなるため、早めの準備が必要です。
 

① 遺言書が作れなくなる

遺言書は、本人の判断能力が正常な状態で作成されていることが前提 です。しかし、認知症が進行すると、法律的に有効な遺言を作成できなくなることがあります。遺言書がない場合、財産は法定相続人で分割することになりますが、相続人同士で意見が合わず、遺産分割のトラブルが発生するケース も少なくありません。
 

② 銀行口座が凍結される

認知症になると、銀行が本人の判断能力を疑い、口座を凍結することがあります。口座が凍結されると、預金を引き出したり、公共料金の支払いをすることができなくなり、家族の生活にも影響が出る 可能性があります。特に、介護費用や医療費の支払いが必要な場合、大きな問題となります。
 

③ 不動産の売却ができなくなる

親の持ち家を売却しようとしても、所有者である親が認知症で判断能力がない場合、契約行為ができず、売却手続きを進めることができません。 この場合、成年後見制度を利用する必要がありますが、家庭裁判所の許可が必要になり、自由な売却が難しくなる ため、手続きが大幅に遅れることがあります。
 

④ 成年後見制度の利用が必要になる

認知症が進行し、財産管理が難しくなった場合、裁判所に申し立てて成年後見人を選任することができます。しかし、成年後見制度には次のようなデメリットがあります。

  • 裁判所の監督が入るため、自由な財産管理ができない
  • 毎年、家庭裁判所への報告義務がある
  • 後見人への報酬が発生する(年間数万円~数十万円)


このように、認知症になると相続や財産管理の自由度が大幅に下がるため、元気なうちに対策を講じておくことが、スムーズな相続を実現するカギとなります。

認知症になる前にやっておくべき相続対策

認知症になってしまうと、財産管理や相続の手続きが大きく制限されてしまいます。そのため、元気なうちに事前に準備をしておくことが、スムーズな相続のカギ となります。ここでは、認知症になる前にやっておくべき4つの対策を紹介します。
 



① 公正証書遺言を作成する

認知症になると、新たに遺言書を作ることが難しくなるため、元気なうちに公正証書遺言を作成する のが最善の対策です。
公正証書遺言のメリット

  • 公証役場で作成するため、法的に無効になりにくい
  • 紛失や改ざんのリスクがない
  • 裁判所の検認手続きが不要で、スムーズに相続手続きができる

遺言書がないと、財産の分け方を巡って家族間でトラブルが発生する可能性が高くなるため、早めの作成が重要 です。
 



② 家族信託を活用する

家族信託とは、親の財産管理を信頼できる家族(受託者)に託す制度 です。認知症になると銀行口座が凍結され、不動産の売却もできなくなりますが、家族信託を利用することで、スムーズな財産管理が可能になります。
家族信託のメリット

  • 認知症になっても、受託者(家族)が財産を管理できる
  • 成年後見制度のような制約がなく、自由度が高い
  • 不動産の売却や預貯金の管理がスムーズにできる

家族信託は、公正証書遺言と併用すると、さらに効果的 です。
 



③ 生前贈与を活用する

財産を生前に少しずつ贈与することで、相続税の負担を減らす ことができます。特に、年間110万円以下の贈与は非課税(暦年贈与) になるため、計画的に実施すると相続税対策にもなります。
生前贈与のポイント

  • 贈与額が年間110万円以下なら非課税
  • 教育資金や住宅資金の贈与特例を活用すると、さらに非課税枠が増える
  • 相続発生の7年前までの贈与は相続財産に加算されるため、早めの対策が重要

生前贈与は、税理士と相談しながら進めるのがおすすめ です。
 



④ 任意後見契約を結ぶ

認知症になった後の財産管理をスムーズにするため、「任意後見契約」 を結んでおくのも有効な手段です。
任意後見契約のメリット

  • 親が元気なうちに、信頼できる家族を後見人に指定できる
  • 判断能力が低下しても、スムーズに財産管理ができる
  • 成年後見制度よりも自由度が高い

後見人を事前に決めておくことで、成年後見制度のような裁判所の監督が不要になり、家族の負担を軽減 できます。

まとめ:認知症になる前に相続対策を始めよう

認知症になってからでは、遺言書の作成や財産管理が非常に困難になる ため、早めの準備が不可欠です。
公正証書遺言を作成し、相続の意思を明確にする
家族信託を活用して、財産管理をスムーズにする
生前贈与を活用して、相続税の負担を減らす
任意後見契約を結び、家族に財産管理を託す準備をする

「まだ早い」と思わず、家族でしっかり話し合い、今からできる相続対策を始めましょう!

監修者

コラム監修者 岩本大介
岩本 大介(いわもと だいすけ)

相続診断士・
不動産終活士・不動産終活アドバイザー・
終活セミナー講師認定資格・
福祉住環境コーディネーター2級
不動産営業及びマーケターとして20年以上従事。
シニアやその子世代に寄り添い、
不動産のエキスパートとして
不動産の相続・空き家問題に取り組む。

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