- 老い支度
親の“老い”に向き合う。50代から考える親の終活サポート

日本の高齢化は加速し、多くの家庭で「親の老い」と向き合う時期が早まっています。特に、50代の子供世代は、親が70代・80代を迎え、体力や認知機能の低下が顕著になる時期にあたります。そのため、早めに終活を意識し、親と話し合うことが重要です。
終活とは、単なる「死の準備」ではなく、「これからの人生をより良く生きるための整理」です。財産や相続の問題だけでなく、住まいや介護、医療の選択、エンディングノートの作成など、親が安心して老後を過ごすための支援が求められます。
また、相続や財産管理の準備を怠ると、親が亡くなった後にトラブルに発展することも少なくありません。50代は、まだ自身の仕事や家庭が忙しい時期ですが、親が元気なうちに話し合いを進めることで、家族全員がスムーズに対応できます。「まだ早い」と思わず、今こそ親の終活をサポートし、安心できる未来を築いていきましょう。
ご両親の終活を考えている50代の方へ
- 何から始めたらいいかわからない
- 話の切り出し方がわからない
- 親がどのように生きたいか知りたい
目次
まずは知ることから!「老い」のサインを見極める
親の終活をサポートするためには、まず「老い」のサインに気づくことが重要です。加齢による体力の低下は避けられませんが、「階段の昇降がつらそう」「つまずくことが増えた」「歩くスピードが遅くなった」などの変化は、転倒リスクの高まりを示しています。転倒は要介護のきっかけにもなるため、早めの対策が必要です。
また、認知機能の低下も見逃せません。「最近、物忘れが増えた」「同じ話を繰り返す」「日付や約束をよく間違える」などの兆候は、認知症の初期段階かもしれません。特に、料理の手順を間違える、財布をなくすといった行動が増えた場合は注意が必要です。
さらに、生活環境のチェックも欠かせません。家の中に段差が多い、手すりがない、夜間の照明が暗いなどは、事故につながるリスクがあります。また、高齢ドライバーによる事故も増えており、「運転に不安がある」と感じたら、免許返納についても話し合うべきです。親の小さな変化に気を配り、早めにサポートを始めることが、安心した老後につながります。
親と終活の話をするための“切り出し方”
終活の話を親に切り出すのは簡単ではありません。「終活しよう」「もしものときに備えよう」といった言葉は、親にとって「死を意識させる」ため、拒否反応を示すこともあります。そのため、「これからの暮らしをどうしたい?」と前向きな話題として持ちかけるのが効果的です。たとえば、「これからも快適に暮らすために、家のバリアフリー化を考えてみない?」といったように、生活をより良くするための提案として話すのがポイントです。
また、「もしものときどうする?」ではなく、「これからどんな生活をしたい?」と、親の希望を尊重する聞き方をすることも大切です。「住み慣れた家に住み続けたいのか」「万が一のときに誰に何を託したいのか」など、親の思いを引き出しながら、自然に終活につなげていきましょう。
さらに、兄弟姉妹がいる場合は、事前に情報共有をしておくことが重要です。終活に関する考え方にズレがあると、後々トラブルになりかねません。親との話し合いを始める前に、一度家族で方針を確認し、協力しながら進めていくことが円満な終活につながります。
終活の第一歩!親の資産・重要書類を把握する
終活を進めるうえで、まず取り組むべきなのが「親の資産と重要書類の把握」です。親が元気なうちに、どこに何があるのかを家族で共有しておくことで、急な事態にもスムーズに対応できます。特に、通帳・キャッシュカード・印鑑・保険証書・不動産の権利書・年金関係の書類などは、所在を確認し、リスト化しておくことが大切です。
資産整理の際には、預貯金の口座が複数ある場合は不要なものを解約する、不動産の名義を確認する、加入している生命保険や医療保険の内容を把握するなど、細かくチェックしましょう。親が高齢になると、不要な保険に加入したままになっていたり、古い契約が残っていることもあるため、整理を手伝うことで無駄を省けます。
さらに、相続トラブルを防ぐためには、「エンディングノート」の活用が有効です。財産の一覧だけでなく、親の希望(葬儀の形、相続の方針など)を書き残してもらうことで、後々の混乱を防ぐことができます。子供世代が親に優しく寄り添いながら、無理なく終活を進めていくことが重要です。
親の「これからの暮らし」を考える
親の終活を進めるうえで、「これからどのように暮らしたいか」を一緒に考えることはとても重要です。高齢になると体力や健康状態が変化し、これまで当たり前だった生活が難しくなることもあります。親が安心して暮らせる環境を整えるために、住まいや介護、医療の選択肢を早めに検討することが大切です。
まず考えるべきは「住まいの選択」です。親が住み慣れた自宅にそのまま住み続けたいのか、それとも高齢者向け施設や子供の近くへの引っ越しを検討するのか、希望を確認しましょう。自宅での生活を続ける場合は、バリアフリー化や手すりの設置、見守りサービスの導入など、安全な環境づくりが必要になります。
次に、将来的に介護が必要になった場合の準備も欠かせません。要介護度によって受けられる公的支援が異なるため、介護保険の仕組みや利用できるサービスを理解しておくと安心です。また、認知症のリスクを考慮し、見守りやサポート体制を整えることも重要です。
さらに、医療面の備えとして、かかりつけ医や緊急時の対応を決めておくことも大切です。親がどのような医療を望んでいるのか、延命治療の希望などについても、事前に話し合っておくことで、家族の負担を減らすことができます。
親のこれからの暮らしを一緒に考え、早めに準備を進めることで、安心して穏やかな老後を送れる環境を整えていきましょう。
「遺言書」と「相続対策」で家族の未来を守る
親の終活を進めるうえで、「遺言書」と「相続対策」は欠かせない重要なポイントです。これらの準備をしておくことで、家族のトラブルを防ぎ、親の希望をしっかりと反映させることができます。
まず、「遺言書」を作成することは、相続を円滑に進める最も効果的な方法です。特に、相続人が複数いる場合や、財産の分け方に意向がある場合は、親が自ら意思を示しておくことが重要です。遺言書には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」がありますが、確実性の高い公正証書遺言を作成するのがおすすめです。これにより、遺産分割をめぐる家族間の争いを防ぐことができます。
また、相続対策として、生前贈与の活用も検討すべきです。基礎控除を活用した贈与や、住宅取得資金の贈与特例などを利用することで、相続税の負担を軽減できます。ただし、無計画な生前贈与は税務上の問題を引き起こす可能性があるため、専門家に相談しながら進めることが大切です。
さらに、相続財産が不動産中心の場合は、売却や共有名義のリスクについても話し合っておくとよいでしょう。不動産を売却するのか、誰が管理するのかを明確にすることで、将来のトラブルを未然に防げます。
親の意向を尊重しつつ、家族全員が納得できる相続準備を進めることで、安心して未来を迎えられる環境を整えていきましょう。
まとめ:親が安心できる終活サポートとは?
親の終活をサポートすることは、単なる「老い支度」ではなく、親がこれからの人生をより安心して過ごせるようにするための大切な取り組みです。50代の子供世代が主体となり、早めに準備を進めることで、親はもちろん家族全員の負担を軽減することができます。
まず、「老い」のサインを見逃さず、親の体力や認知機能の変化をしっかりと把握することが重要です。そして、終活の話を切り出す際には、「もしものとき」ではなく「これからどうしたい?」という前向きな姿勢で進めると、親も抵抗なく話しやすくなります。
また、親の資産や重要書類を整理し、相続トラブルを防ぐために、エンディングノートや遺言書の作成を促すことも大切です。さらに、住まいの選択や介護・医療の準備を事前に行うことで、将来的な不安を軽減できます。
終活は、親の人生を尊重しながら、家族みんなが安心できる未来を築くためのものです。「まだ早い」と考えず、できることから少しずつ取り組むことで、親も子供世代も穏やかな気持ちで日々を過ごせるようになります。家族の笑顔を守るために、今できる終活サポートを始めてみましょう。
監修者

岩本 大介(いわもと だいすけ)
相続診断士・
不動産終活士・不動産終活アドバイザー・
終活セミナー講師認定資格・
福祉住環境コーディネーター2級
不動産営業及びマーケターとして20年以上従事。
シニアやその子世代に寄り添い、
不動産のエキスパートとして
不動産の相続・空き家問題に取り組む。