- 士業コラム
法律講座:相続放棄はお早めに

現実の相続では、 「遺産は全て長男の兄に譲るつもりで、自分は関わるつもりはない」 とか 「遺された預貯金よりも事業で作った借金の方が多い」 等の理由で、相続をしたくないと考えることも多くあります。 そのため、今回は「相続放棄」 (民法938条)について注意点をご紹介したいと思います。
相続放棄を検討されている方へ
- 「相続放棄」と「相続分の放棄」の違いが分かります
- なぜ早めに行動に移した方がよいのか分かります
相続を受け入れるべきか、放棄すべきか?

相続放棄の期限は、 被相続人が亡くなってから 「3か月」 (詳細は後で解説します。)と非常に短く、四十九日を過ぎればあまり時間がありません。 全ての方に、 相続放棄という制度があることをまず知って頂きたいと思います。
相続放棄とは?

相続放棄とは、 家庭裁判所に相続放棄申述書を提出して行う手続です。 よく勘違いされる方もいらっしゃるのですが、 遺産分割協議の中で 「自分の分は要らない」と言えば相続放棄になるわけではありません。 これは 「相続分の放棄」 と呼ばれるもので、 家庭裁判所で手続を行う相続放棄とは別物になります。 相続放棄と相続分の放棄では、マイナスの遺産、 例えば被相続人の借金に対する効果が全く違います。 家庭裁判所で手続を行う相続放の場合は、そもそも相続人ではなくなりますので、 借金についても相続することはありません。
一方、 相続分の放棄の場合は、 相続人であることには変わりがありません。 そして、 借金などの可分債務については、相続人全員が法定相続分に応じて当然に相続することになっており、たとえ遺産分割協議の中で、 誰がいくら負担するか決めたとしても、債権者には通じないということになっています。 したがって、 自分は相続分の放棄をしてプラスの遺産を1円ももらわなかったとしても、マイナスの遺産である借金については、法定相続分に応じた金額を返済しなければならないということです。
以上から、 借金の相続をしたくない場合には、 家庭裁判所で手続を行う相続放棄をする必要があります。 相続放棄は、 被相続人が亡くなったことと自分が相続人になったことを知ってから 「3か月」 以内に、申立てを行う必要があります。
近年多いパターンとしては、交流の薄い親族(特に疎遠になっている兄弟姉妹やおじ・おば)がいつのまにか亡くなっていて、突然借金の督促が来てそのことを知った、というものがあります。このような場合には、 借金の督促が来て初めて被相続人が亡くなったことと自分が相続人になったことを知ったと考えられますから、 借金の督促から3か月以内に申立てをする必要があると考えられます。 おじ・おばや兄弟姉妹の相続放棄には多くの戸籍謄本等が必要となりますので、 資料集めや法律相談はぜひお早目に着手されてください。
相続放棄は予め行うことができません

相続放棄は予め行うことができません。 したがって、 3か月という短い期間で、 相続放棄に向けて手続を進めなくてはなりません。 まだ悲しみも癒えず、法事も含めてたさんのやらなければならないこともあるなかで、このような手続を行うことは大変な負担と思われます。 弊所では相続専門チームの弁護士が、 皆さまに代わって相続放棄の手続きを行うこともできます。 ぜひ一度ご相談下さい。
弁護士 木村 綾菜(きむら あやな)氏
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
※2024年1月現在の法律に則ります。