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親の相続、何から始める?50代の子供ができる事前準備のポイント

相続は、親が亡くなったときに発生します。しかし、事前に準備をしていないと、手続きが煩雑になり、家族間のトラブルに発展する可能性 があります。特に50代の子供世代は、仕事や自分の家庭のこともあり、相続が発生した後に冷静に対応するのは難しいことが多いです。そのため、親が元気なうちに準備を進めておくことが、スムーズな相続につながります。
相続手続きには、死亡届の提出、遺産の確認、相続税の申告など、期限が決まっているものが多く、すぐに対応しなければならないことがたくさんあります。例えば、相続税の申告・納付は10か月以内 という期限があり、財産の整理ができていないと、申告期限を守れずに余計な負担が発生することもあります。
また、遺言書がないと、遺産分割協議を行う必要があり、兄弟姉妹間で意見が対立し、相続トラブルが発生するケースも少なくありません。 そのため、親の財産を把握し、事前に話し合いをしておくことが大切です。
「まだ早い」と思わず、相続はいつ発生してもおかしくないもの だと考え、早めに準備を進めることが、家族全員の負担を軽減するポイントとなります。
50代の子供ができる事前準備のポイントを知りたい方へ
- 財産の把握の方法
- 遺言書の作成
まずは親の財産を把握する
相続をスムーズに進めるためには、親がどのような財産を持っているのかを正確に把握することが重要 です。財産の全体像が分からないと、相続手続きが遅れるだけでなく、相続人同士のトラブルの原因にもなります。特に、不動産や預貯金の有無が不明確だと、遺産分割の話し合いが難航することがあります。
まず、親の財産を整理するために、チェックリストを作成する とよいでしょう。主な財産には以下のようなものがあります。
✅ 預貯金:銀行口座、ゆうちょ口座、定期預金など
✅ 不動産:自宅や土地、賃貸物件の登記簿謄本、固定資産税納付書
✅ 株式・投資信託:証券会社の口座情報、株式保有リスト
✅ 生命保険:保険証券、契約内容(受取人の確認も重要)
✅ 借金・負債:住宅ローン、カードローン、未払いの税金
親に財産の話を切り出すのは難しいこともありますが、「もしものときに困らないように、簡単なメモを残しておいてほしい」と伝える など、自然な形で聞き出すことが大切です。
財産のリストができれば、どのように相続するか、事前に家族で話し合うことが可能 になります。特に、相続税の対象になる可能性がある場合は、節税対策も含めて検討することが重要です。早めに財産を把握し、相続に備えましょう。
親に遺言書を作成してもらう
相続トラブルを防ぐために最も有効な手段の一つが、親に遺言書を作成してもらうこと です。遺言書がない場合、財産は法定相続分に基づいて分割されることになりますが、相続人の意見が対立すると、遺産分割協議が難航し、家族の関係が悪化するケースも少なくありません。 そのため、親が元気なうちに、誰にどの財産をどのように分けるのかを明確にしておくことが重要です。
遺言書には、「自筆証書遺言」 と 「公正証書遺言」 の2種類があります。自筆証書遺言は自分で作成できますが、書き方に不備があると無効になる可能性があります。一方、公正証書遺言は、公証役場で作成し、公証人が内容を確認するため、法的に確実な遺言を残せるメリットがあります。 さらに、家庭裁判所での検認手続きが不要となり、スムーズに相続手続きを進めることができます。
遺言書があることで、相続人は親の意向を尊重しやすくなり、財産の分割をめぐる争いを回避することができます。また、特定の相続人に多めに遺産を渡したい場合や、配偶者の生活を守るために財産を集中させたい場合にも有効 です。
「まだ早い」と思わず、親が判断能力を失う前に、遺言書の作成を促し、家族全員が納得できる相続準備を進めましょう。
相続税の基本を知っておく
相続税は、一定額を超える財産を相続した場合にかかる税金です。すべての相続に発生するわけではありませんが、「どのくらいの財産なら課税されるのか?」「節税対策はできるのか?」 など、基本的な知識を持っておくことが重要です。
① 相続税がかかるかどうかの判断基準(基礎控除)
相続税は、財産の総額から 「基礎控除額」 を差し引いた残りに対して課税されます。
✅ 基礎控除額の計算式
3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)
たとえば、相続人が2人(配偶者と子1人)の場合、3,000万円 +(600万円 × 2)= 4,200万円 までは非課税となります。財産がこの額を超える場合、相続税の申告と納税が必要になります。
② 相続税の申告期限と納税方法
相続税の申告と納税は、被相続人(親)が亡くなってから10か月以内 に行わなければなりません。期限を過ぎると、延滞税や加算税が発生するため、早めに準備を進めることが大切です。納税方法としては、現金一括払いが基本 ですが、不動産などの現物で納める「物納」や、分割払いの「延納」も可能です。
③ 相続税の節税対策
相続税の負担を減らすために、以下の方法が有効です。
✅ 生前贈与の活用(年間110万円まで非課税)
✅ 生命保険の非課税枠(法定相続人 × 500万円まで非課税)
✅ 小規模宅地等の特例(一定条件で土地の評価額を最大80%減額)
相続税は事前の対策によって大きく負担を軽減できるため、親が元気なうちから計画的に準備することが重要 です。税理士に相談しながら、最適な相続対策を考えておきましょう。
兄弟姉妹で事前に話し合う
相続は親だけでなく、兄弟姉妹全員が関わる重要な問題 です。親が元気なうちに家族で話し合いをしておかないと、財産の分け方や実家の扱いをめぐってトラブルになることも少なくありません。 「うちは仲がいいから大丈夫」と思っていても、いざ相続が発生すると意見が対立することはよくあります。そのため、相続が発生する前に、兄弟姉妹で方針を決めておくことが大切 です。
① 話し合うべき重要なポイント
✅ 親の財産の全体像を把握する
→ 親の預貯金・不動産・生命保険・株式など、相続対象となる財産を確認する
✅ 実家をどうするか決める
→ 誰かが住み続けるのか?売却するのか?賃貸に出すのか? 早めに決めておく
✅ 相続人の役割分担を決める
→ 誰が相続手続きを進めるのか(代表者を決める)
✅ 相続税の負担をどうするか考える
→ 相続税が発生する場合、誰がどのように負担するのかを事前に共有する
② 遺言書の有無を確認する
親が遺言書を作成していれば、それに従って相続を進めることができます。「どこに保管されているか」「公正証書遺言か、自筆証書遺言か」 も事前に確認しておきましょう。遺言書がない場合は、兄弟姉妹全員で遺産分割協議を行う必要があります。
③ 揉めないためのルールを決める
相続でよくあるのが、「自分は親の介護をしていたのに、相続分が平等なのは納得できない」といった不満です。親の介護費用や医療費の負担がどのように相続に反映されるのかを、事前に話し合っておくとスムーズに進みます。
④ まとめ:兄弟姉妹で冷静に話し合い、トラブルを防ぐ
相続は感情的になりやすい問題です。事前に話し合いの場を持ち、各自の意見を共有しておくことで、いざ相続が発生したときにスムーズに進めることができます。親が元気なうちに、家族全員で冷静に話し合うことが、円満な相続への第一歩です。
まとめ:50代の子供世代ができる事前準備を進めよう
相続は、親が亡くなったときに突然発生します。しかし、事前に準備をしておくことで、手続きの負担を軽減し、家族間のトラブルを防ぐことができます。特に50代の子供世代は、親の相続を中心となって進める立場になることが多いため、早めの対策が重要です。
① 親の財産を把握し、リスト化する
相続手続きをスムーズに進めるためには、親の財産がどこに、どれくらいあるのかを事前に把握することが大切 です。預貯金や不動産、生命保険、株式などを整理し、負債の有無も確認しておきましょう。
② 親に遺言書を作成してもらう
遺言書がないと、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があり、兄弟姉妹の間で意見が対立すると、トラブルの原因になります。 遺言書を作成しておけば、親の意思を明確に伝えることができ、スムーズな相続につながります。
③ 相続税の基本を知り、節税対策を考える
相続税は、基礎控除(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を超える財産がある場合に発生します。生前贈与や生命保険の非課税枠を活用することで、相続税の負担を軽減できるため、事前に検討しておくことが重要 です。
④ 兄弟姉妹で事前に話し合い、役割を決めておく
相続は、財産の分け方だけでなく、実家をどうするのか、相続手続きを誰が主導するのか、税金の負担をどうするのか など、多くの問題を含みます。親が元気なうちに、家族全員で話し合いを行い、方向性を決めておきましょう。
⑤ 早めの準備が家族全員の負担を減らす
「相続はまだ先の話」と思いがちですが、突然発生すると手続きが複雑になり、家族の負担が増えてしまいます。 親が認知症になってしまうと、遺言書の作成ができず、成年後見制度を利用しなければならなくなるため、より慎重な手続きが求められます。
相続は、事前の準備次第でスムーズに進めることができます。「まだ早い」と思わず、今からできることを一つずつ進めていきましょう。
監修者

岩本 大介(いわもと だいすけ)
相続診断士・
不動産終活士・不動産終活アドバイザー・
終活セミナー講師認定資格・
福祉住環境コーディネーター2級
不動産営業及びマーケターとして20年以上従事。
シニアやその子世代に寄り添い、
不動産のエキスパートとして
不動産の相続・空き家問題に取り組む。