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相続した不動産の評価額はいくら?相続税の計算方法をわかりやすく解説

「親から不動産を相続したけれど、一体いくらの価値があるのだろう?」「相続税はどのくらいかかるのか、計算方法が知りたい」 このような悩みを抱えていませんか? 相続財産の中でも特に大きな割合を占める不動産の価値(相続税評価額)を正しく計算することは、適切な相続税額を把握し、効果的な節税対策を立てるための第一歩です。
更新日:2025/8/22
こんなかたにおススメ
- 不動産を相続した方
- 節税方法を知りたい方
- 不動産の評価額計算方法について知りたい方
目次
不動産の評価額とは
不動産の評価額とは、不動産の価値を「いくら」と表現したものです。不動産は現金と違って、何円と表現できません。しかし相続税を計算するためには、不動産の価値を出さなければならないため、評価額として算出します。
不動産の価値を示す価格には「公示価格」や「基準地価」など複数の種類がありますが、相続税を計算する際の不動産評価額は、原則として国税庁が定める「路線価」や「固定資産税評価額」を用いて算出します。 そして、不動産は「土地」と「建物(家屋)」に分けて、それぞれ異なる方法で評価額を計算するのが基本です。まずはこの2つの違いを理解しましょう。
相続した不動産の評価額は土地と建物で異なる
相続した不動産の評価額は、土地と建物部分に分けて計算します。
それぞれの計算方法を解説します。
家屋
家屋部分は、固定資産税評価額が相続時の評価額です。固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書に記載されています。毎年6月に通知が来るため、相続の際は確認しましょう。万が一通知書がない場合は、役所に行って固定資産税評価証明書を発行してもらうことで確認できます。
土地
土地の評価額は、路線価で計算します。路線価とは、国税庁が公表しているその年の1月1日時点における主要な道路に面した1㎡あたりの土地価格です。路線価は相続税や贈与税を計算するときに使われます。
【家屋】不動産の相続税評価額の計算方法
不動産の相続税評価額の計算方法は、その家屋をどのように利用していたのかで変わります。具体的には、故人が利用している場合、第三者に貸している賃貸アパート等なのかで異なります。それぞれの具体的な計算方法は下記のとおりです。
居住用などに利用していた場合
故人が居住用などに利用していた場合は下記のように計算します。固定資産税評価額
計算式の通り、家屋の固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となります。
例えば家屋の固定資産税評価額が3,000万円である場合は、相続税評価額も3,000万円です。
戸建てを第三者に貸していた場合
故人が一軒家を第三者に貸していた場合の計算式は、下記の通りです。固定資産税評価額×(1-借家権割合)
借家権とは、借手側が家屋を借りて使用する権利のことです。借家権の割合は家屋の評価額の30%と定められており、借家権の分を家屋の評価額から差し引けます。
例えば3,000万円の家屋を第三者に貸していた場合で考えましょう。借家権の評価額は3,000万円×0.3で900万円です。家屋の評価額から借家権の分を差し引けるため、評価額は3,000万円-900万円で2,100万円となります。
賃貸アパートを所有していた場合
最後に故人が賃貸アパートを所有していた場合の計算式は、下記の通りです。固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
賃貸割合とは、貸している部分の床面積の割合です。
したがって貸している部分の床面積が広いほど評価額が下がります。
【土地】不動産の相続税評価額の計算方法
土地の評価額の計算は非常に煩雑で難しくなっていました。少しでも土地の相続税評価額の計算を簡単にしようと開発したのが路線価方式です。路線価方式を使えば、土地の時価を簡単に計算できます。
具体的にどのように計算するかを、解説します。
路線価方
路線価方式の計算式は下記のとおりです。土地の評価額 = 1㎡あたりの路線価 × 敷地面積(㎡)
路線価とは、主要な道路に面した土地1㎡あたりの価格のことで、国税庁のホームページで確認できます。
【計算例】
・路線価:300,000円/㎡ ・敷地面積:200㎡
土地の評価額 = 300,000円 × 200㎡ = 6,000万円
倍率方式
つぎに倍率方式の計算式は、下記の通りです。土地の評価額 = 固定資産税評価額 × 評価倍率
路線価を調べても、路線価が定められていなかったケースはあります。このような場合は、倍率方式を使いましょう。
倍率方式に用いる倍率を評価倍率といいますが、評価倍率は地域によって異なります。各地の評価倍率も国税庁ホームページで簡単に確認できるため、ご活用ください。
借地
相続した土地が借地の場合、路線価方式もしくは倍率方式で算出した評価額×借地権割合が評価額となります。借地権割合は地域によって異なるため、国税庁ホームページで確認しましょう。
不動産の相続税評価額を下げるには?
家屋の相続税評価額が高ければ、その分相続税も高くなってしまいます。少しでも工夫して、評価額を下げたいですよね。
工夫次第で相続税を節税する方法があります。
具体的に2つ紹介するため、参考にしてください。
方法① 第三者に貸す
先ほどの計算式からもわかりますが、家屋を第三者に貸すことで、家屋の相続税評価額を30%下げられます。使用していない家屋がある場合は、第三者に貸すと節税できるでしょう。ただし親族間で無償で貸している場合は、30%の減額が認められないため注意してください。また家賃をもらっていても、相場より著しく安い場合は、賃貸借と認められません。
方法② 賃貸アパートの空室を減らす
相続する家屋が賃貸アパートの場合、空室を減らすことで評価額を下げることができます。ただし一時的な空室は賃貸に含まれることも、含まれないこともあるため要件を確認しておきましょう。例えば約1か月の空室であれば、一時的な空室ではないと判断されることもあります。ただし他の要件を満たせば一時的な空室と認められることもあるため、心配な方はプロに相談しましょう。
相続税の計算方法と節税方法
相続税を計算する際は、全ての遺産の評価額を合計して計算します。例えば複数の家屋を個別に計算するわけではありません。
具体的な相続税の計算方法と、節税方法を解説します。工夫次第で節税に繋がるかもしれないため、しっかり理解しましょう。
相続税計算における不動産評価額の役割
これまで解説してきた不動産の相続税評価額は、相続税全体の計算における最初のステップで非常に重要となります。相続税は、大まかに以下の流れで計算されます。ステップ1:課税遺産総額を算出する 預貯金、有価証券、そしてこの記事で計算した不動産の評価額などを合計して、遺産の総額を算出します。ここから基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)などを差し引きます。
ステップ2:相続税の総額を計算する 課税遺産総額を法定相続分で按分し、各相続人の税額を計算した後に合計して、相続税の総額を求めます。
ステップ3:各人の納税額を計算する 相続税の総額を、実際に財産を取得した割合に応じて配分し、各人が納める最終的な税額を確定します。
このように、不動産の評価額が遺産総額、ひいては最終的な相続税額を大きく左右することがわかります。正確な評価額の計算は、適正な納税と節税の基本となるのです。 相続税の計算は非常に複雑であり、特例の適用など専門的な判断を要するため、最終的には相続に強い税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続税の節税方法
相続税を節税する方法は、相続に強い税理士に依頼することです。相続税の計算は複雑で、到底一般の方ができるものではありません。プロに任せることはもちろんですが、相続税に強い税理士を探しましょう。税理士とともに節税対策を行うことで、何千万も得することがあります。また準備期間が長いほど、しっかり節税対策ができます。できる限り早い段階で、節税対策をはじめましょう。
相続税の節税対策をしよう
不動産の評価額の計算は難しく、手続きも煩雑です。相続は骨の折れる作業ですが、相続に強いプロに依頼して、少しでも税金を減らしましょう。
自分自身で勉強できるところは勉強しながら、プロに頼ることがベストな方法です。今回紹介した基本的な計算は、理解するようにしてください。
監修者

岩本 大介(いわもと だいすけ)
相続診断士・
不動産終活士・不動産終活アドバイザー・
終活セミナー講師認定資格・
福祉住環境コーディネーター2級
不動産営業及びマーケターとして20年以上従事。
シニアやその子世代に寄り添い、
不動産のエキスパートとして
不動産の相続・空き家問題に取り組む。