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不動産の相続名義変更|必要書類と手順が分かるやることチェックリスト

大切なご家族を亡くされ、相続が発生した際、遺された不動産の名義変更(相続登記)は、避けて通れない手続きの一つです。特に2024年4月1日からは相続登記が法律で義務化され、手続きを怠ると10万円以下の過料が科される可能性があるなど、これまで以上にその重要性が高まっています。しかし、初めて相続登記に直面する方にとって、何から手をつければ良いのか、どのような書類が必要なのか、費用はどのくらいかかるのかなど、多くの疑問や不安を抱えることでしょう。この記事では、不動産の相続名義変更について、まずは全体像を把握できるチェックリストから、詳しい手順、パターン別の必要書類、そしてかかる費用までを網羅的に解説します。不動産の相続手続きをスムーズに進め、皆様の不安を解消するための一助となれば幸いです。

こんな方におススメ

  • 不動産の名義変更の方法を知りたい方
  • 相続登記義務化について知りたい方
  • どんな手順で不動産名義変更をするのか知りたい方

まずは全体像を把握!不動産相続の名義変更 やることチェックリスト

不動産の相続名義変更(相続登記)は、いくつかのステップを踏んで進められます。まずは、手続き全体の流れを把握できるよう、主要なステップを簡単なチェックリストとしてまとめました。それぞれのステップについては、後の章で詳しく解説しますので、ここでは大まかな流れを掴む参考にしてください。

  • ①相続する不動産を特定する
  • ②相続人を確定させる
  • ③遺産の分け方を決める(遺産分割協議)
  • ④必要書類を揃える
  • ⑤登記申請書を作成する
  • ⑥法務局へ登記申請を行う
  • ⑦登記識別情報通知書を受け取る

そもそも不動産の相続名義変更(相続登記)とは?

不動産の相続名義変更とは、故人(被相続人)が所有していた土地や建物の名義を、その財産を受け継いだ相続人の名義に書き換える法的な手続きのことです。この手続きは「相続登記」とも呼ばれています。具体的には、法務局が管理している登記簿という公的な記録を更新し、亡くなった方から相続人へ所有権が移転したことを明確にします。

では、なぜこの相続登記が必要なのでしょうか。その最大の目的は、不動産の所有者が自分であることを国が公的に証明してくれることにあります。相続登記をすることで、第三者に対して「この不動産は自分のものです」と法的に主張できるようになります。たとえば、相続した不動産を売却したい、担保に入れてローンを組みたいといった場合に、自身の名義になっていなければ手続きを進めることができません。

また、ご自身の権利を守るためにも相続登記は非常に重要です。登記がなければ、他の相続人が勝手に売却したり、誰かが不法に占拠したりといったトラブルに巻き込まれた際に、法的な根拠をもって対処することが難しくなります。自身の所有権を明確にし、安心して不動産を管理・活用するためにも、相続登記は不可欠な手続きと言えるでしょう。

 

2024年4月から義務化!相続登記をしないとどうなる?

これまで任意とされてきた不動産の相続登記ですが、2024年4月1日から法律で義務化されました。この法改正は、これから発生する相続はもちろんのこと、すでに発生しているもののまだ登記が完了していない過去の相続にも適用される「遡及適用」が大きなポイントです。つまり、たとえ何十年も前に相続した不動産であっても、名義変更が終わっていない場合は、今回の義務化の対象となります。

この義務化によって、相続登記は「やってもやらなくてもよい手続き」から、「必ず行わなければならない手続き」へとその位置付けが大きく変わりました。背景には、所有者不明土地の増加が社会問題となっていることがあります。相続登記が放置されることで、土地の利用や公共事業の推進が妨げられるケースが多発していたため、国が所有権の明確化を図るべく、義務化に踏み切ったのです。

今後、相続で不動産を取得した場合は、正当な理由がない限り、必ず期限内に相続登記を申請する必要があります。この変更は、相続によって不動産を取得したすべての方に影響を及ぼす重要な改正点ですので、ご自身の状況を確認し、適切に対応することが求められます。


■名義変更の期限は「3年以内」

相続登記の義務化に伴い、いつまでに手続きをしなければならないかという期限が設けられました。原則として、不動産を相続したことを知った日から「3年以内」に相続登記を申請する必要があります。

この「相続したことを知った日」とは、一般的に、故人(被相続人)が亡くなったことを知り、かつご自身がその不動産を相続する権利があることを知った日を指します。たとえば、故人が亡くなり、ご自身が相続人であることが判明した時点から3年以内が期限となります。この期限は非常に重要ですので、ご自身のケースに当てはめて、いつまでに手続きを完了させるべきかを把握しておくことが大切です。

もし、遺産分割協議が難航するなど、正当な理由があって3年以内に手続きができない場合には、例外的に「相続人申告登記」を行うことで、登記義務を履行したとみなされる制度も新設されました。しかし、基本的には3年以内に本登記を完了させることを目指しましょう。

 

■期限を過ぎると10万円以下の過料(罰金)の可能性

相続登記の申請義務を正当な理由なく怠り、定められた期限を過ぎてしまった場合、10万円以下の「過料(かりょう)」が科される可能性があります。この過料は、刑事罰である「罰金」とは異なり、行政上の秩序違反に対する制裁として課される金銭的なペナルティです。

具体的には、期限内に登記申請がされない場合、法務局から登記を促す催告が行われます。その催告にも応じず、何の対応もせずに放置し続けた場合に、最終的に過料が科されることになります。この制度は、所有者不明土地問題の解消を目的とした義務化の肝となる部分であり、単なる「努力義務」ではなく、法的な強制力を持つことを意味しています。

もちろん、やむを得ない事情がある場合は考慮されますが、基本的には期限内に手続きを完了させることが求められます。過料という金銭的なリスクを回避するためにも、相続登記は早めに着手し、不明な点があれば専門家に相談するなどして、確実に手続きを進めるようにしましょう。

 

名義変更を放置する5つのデメリット・リスク

2024年4月からの義務化に伴う過料のリスクだけでなく、相続登記を放置することは、以前から様々なデメリットやリスクを伴いました。ここでは、特に注意したい5つのリスクについてご説明します。

まず1つ目は「不動産の売却や担保設定ができない」ことです。不動産の名義が故人のままだと、その不動産は法的にはあなたのものとして扱われません。そのため、家や土地を売却したいと思っても、正式な所有者でないあなたは売買契約を結べませんし、銀行でローンを組む際に担保として差し入れることもできません。せっかく相続した不動産を活用しようと思っても、名義変更が済んでいないために身動きが取れなくなるケースは少なくありません。

2つ目は「次の相続で権利関係が複雑化する」リスクです。相続登記をしないまま時間が経過し、さらに相続人の誰かが亡くなってしまうと、「数次相続(すうじそうぞく)」という状態になります。こうなると、関係する相続人の数がネズミ算式に増えてしまい、全員の同意を取り付けることが非常に困難になります。手続きに必要な書類も膨大になり、費用も時間も格段にかかることになります。

3つ目は「他の相続人の借金で差し押さえられるリスク」です。共有名義の不動産の場合、もし他の共同相続人に借金があり、その債権者が裁判を起こして不動産の持ち分を差し押さえてしまうと、たとえあなたの持ち分であっても、その不動産全体が競売にかけられる可能性が出てきます。そうなると、意図しない形で大切な財産を失うことにもつながりかねません。

4つ目は「所有者として権利を主張できない」点です。例えば、相続した土地に隣人が勝手に物を置いたり、公共事業で立ち退きを求められたりするような場合、正式に所有者として登記されていないと、ご自身の権利を法的に強く主張することが難しくなります。自分の大切な財産を守るためにも、所有権の明確化は非常に重要です。

そして5つ目が、新たに加わった「過料が科される」リスクです。先ほどご説明した通り、2024年4月1日からの相続登記義務化により、正当な理由なく期限内に登記しない場合、10万円以下の過料という行政罰が科されることになります。これは、金銭的な負担だけでなく、法律違反という精神的な負担にもつながるため、特に注意が必要です。これらのデメリットやリスクを理解し、相続登記は早めに行うようにしましょう。

【STEP別】不動産相続の名義変更の詳しい手順と流れ

この章からは、不動産の相続名義変更、いわゆる「相続登記」の具体的な手順を一つずつ詳しく解説していきます。まずは冒頭でご紹介したチェックリストに沿って、各ステップで「何を」「どのように」進めればよいのかを丁寧にご説明しますので、皆様が安心して手続きを進められるよう、ぜひご参考になさってください。

 

STEP1:相続する不動産を特定する

相続登記を始めるにあたり、最初に行うべきは「相続する不動産の特定」です。まずは、亡くなられた方(被相続人)のご自宅に届く「固定資産税の納税通知書」を手掛かりに、所有していた不動産の情報を確認しましょう。納税通知書には、不動産の所在地や種類、面積などが記載されています。

次に、その情報をもとに管轄の法務局で「登記事項証明書」、一般的には「登記簿謄本(とうきぼとうほん)」と呼ばれる書類を取得します。登記事項証明書には、その不動産の正確な「地番(ちばん)」や「家屋番号(かおくばんごう)」といった情報が詳細に記載されています。これらの情報は、登記申請書を作成する際に正確に記載する必要があるため、必ず登記事項証明書で確認するようにしてください。不明確なまま手続きを進めると、不備が生じて何度も法務局とやり取りすることになりかねません。

 

STEP2:相続人を確定させる

不動産の相続手続きにおいて、「相続人の確定」は最も重要かつ複雑になりがちなステップの一つです。まずは、亡くなられた方(被相続人)の「生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本を含む)」を、本籍地のある市区町村役場で取得する必要があります。

これらの戸籍謄本を遡って確認することで、法的に誰が相続人となるのかを漏れなく、正確に把握することができます。例えば、以前の配偶者との間に子どもがいた場合や、養子縁組をしているケースなど、通常では把握しづらい相続人の存在も明らかになります。相続人の確定に誤りがあると、その後の手続きが無効になる可能性もあるため、非常に慎重に進める必要があります。

被相続人の戸籍を収集し、法定相続人を特定できたら、その相続人全員の現在の戸籍謄本も取得しておきましょう。これらは、後の遺産分割協議書や登記申請書作成時に必要となります。

 

STEP3:遺産の分け方を決める(遺産分割協議)

相続人が複数いる場合で、有効な遺言書がないときは、相続人全員で遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」が必要になります。この協議では、誰がどの財産(不動産、預貯金など)を相続するかを自由に決めることができます。相続人全員が合意に至ることが重要です。

協議がまとまったら、その内容を「遺産分割協議書」という書面にまとめます。この書面には、合意したすべての相続人が署名し、各自の実印を押印しなければなりません。遺産分割協議書は、特定の相続人が不動産を取得したことを法的に証明する極めて重要な書類となりますので、内容に不備がないよう慎重に作成する必要があります。この書類がなければ、不動産の登記名義を変更することはできません。

 

STEP4:必要書類を揃える

相続登記の申請には、これまでのステップで準備した書類に加えて、さらにさまざまな書類が必要になります。ただし、どのような書類が必要になるかは、遺産をどのように分けるかによって異なります。

具体的には、「遺産分割協議で相続する場合」「遺言書の内容に基づいて相続する場合」「法定相続分で相続する場合」といった相続パターンによって、追加で用意する書類が変わってきます。この章では、ここまでの手順で把握した不動産と相続人の情報をもとに、後の章でご紹介するパターン別の詳しい必要書類チェックリストを参考に、漏れなく書類を揃えるようにしましょう。

 

STEP5:登記申請書を作成する

必要書類が揃ったら、いよいよ相続登記の「登記申請書」を作成します。登記申請書は、法務局のウェブサイトにひな形や記載例が掲載されていますので、これらを参考にしながら作成を進めることができます。

申請書には、相続する不動産の正確な情報(地番、家屋番号、種類、構造、床面積など)、登記の目的(例:所有権移転)、原因(例:令和〇年〇月〇日相続)、亡くなられた方(被相続人)の情報、不動産を取得する相続人の情報、そして「登録免許税額」などを正確に記載しなければなりません。特に、不動産の情報は登記事項証明書に記載されている通りに記入しないと、申請が却下される可能性もあります。専門知識がない方が作成するには難しい部分も多く、もし記載内容に不備があると、法務局から「補正(ほせい)」と呼ばれる修正を求められ、手続きが遅れてしまうことになります。

 

STEP6:法務局に登記を申請する

作成した登記申請書と、これまで収集・準備してきた必要書類一式が全て揃ったら、いよいよ法務局へ登記を申請します。申請先は、相続する不動産の所在地を管轄している法務局となりますので、事前に確認しておきましょう。

登記申請の方法には、主に以下の3つがあります。

  • 法務局の窓口へ直接持参する方法
  • 郵送で送付する方法
  • オンラインで申請する方法

窓口申請と郵送申請は一般的な方法ですが、オンライン申請は事前のシステム設定などが必要となり、専門的な知識や環境が求められるため、一般の方が利用するには少しハードルが高いかもしれません。ご自身の状況や提出書類の量などを考慮し、最適な方法を選択してください。

 

STEP7:登記識別情報通知(権利証)を受け取る

法務局へ登記申請を行ってから1~2週間程度で、登記手続きが無事に完了します。登記が完了すると、新しい登記名義人となった方に対して「登記識別情報通知(とうきしきべつじょうほうつうち)」が発行されます。

この登記識別情報通知は、かつて「権利証」と呼ばれていたものに代わる、非常に重要な書類です。不動産を所有していることを証明する、いわばパスワードのような役割を果たし、将来、その不動産を売却したり、担保に入れてローンを組んだりする際に必ず必要となります。万が一紛失してしまうと再発行はできませんので、厳重に保管するようにしてください。登記識別情報通知は、法務局の窓口で直接受け取るか、郵送で送ってもらうかのどちらかを選ぶことができます。

【パターン別】不動産相続の名義変更 必要書類チェックリスト

不動産の相続名義変更(相続登記)を進める上で、最も手間がかかる作業の一つが「必要書類の収集」ではないでしょうか。相続の状況はご家庭によって異なるため、一律に「この書類だけあれば良い」とは残念ながら言えません。しかし、ご自身の状況に合わせて必要な書類を事前に把握しておけば、無駄なくスムーズに手続きを進めることができます。

この章では、相続登記に必要な書類を具体的なチェックリスト形式でご紹介します。特に、遺産の分け方によって必要となる書類が異なるため、「①遺産分割協議で相続する場合」「②遺言書で相続する場合」「③法定相続分で相続する場合」の3つの主要なパターンに分けて、それぞれ詳しく解説していきます。まずは共通して必要となる書類を確認し、ご自身のケースに当てはまる追加書類を把握していきましょう。

 

【共通】どの相続パターンでも必要な書類

どのような相続のケースであっても、不動産の相続登記には必ず必要となる基本的な書類があります。これらの書類は、相続人の確定や不動産の特定、そして税金の計算のために不可欠です。まずは、これらの共通書類を漏れなく準備することから始めましょう。

  • 登記申請書:法務局のウェブサイトでひな形を取得し、必要事項を記入します。
  • 被相続人の出生から死亡までの一連の戸籍謄本等:本籍地の市区町村役場で取得します。転籍(本籍地を移すこと)を繰り返している場合は、複数の市区町村に請求が必要になることがあります。
  • 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票:最後の住所地または本籍地の市区町村役場で取得します。登記簿上の住所と住民票上の住所が異なる場合に、同一人物であることを証明するために必要となります。
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本:本籍地の市区町村役場で取得します。
  • 不動産を取得する相続人の住民票:住所地の市区町村役場で取得します。
  • 固定資産評価証明書:不動産所在地の市区町村役場または都税事務所で取得します。この証明書に記載されている固定資産税評価額をもとに登録免許税を計算します。
 

【パターン1】遺産分割協議で相続する場合の追加書類

遺言書がない場合や、遺言書の内容と異なる分け方を相続人全員で合意した場合など、遺産分割協議によって特定の相続人が不動産を取得する際には、上記の共通書類に加えて以下の書類が必要になります。

  • 遺産分割協議書:相続人全員で遺産の分け方について合意した内容を書面にしたものです。不動産を誰が取得するのか、その不動産の具体的な情報などを正確に記載します。
  • 相続人全員の印鑑証明書:遺産分割協議書に押印した実印が本人のものであることを証明するために必要です。協議書に実印を押した相続人全員分を住所地の市区町村役場で取得します。

これらの書類は、相続人全員が遺産分割の内容に同意していることを公的に証明する重要な役割を果たします。不備があると登記手続きが進まないため、内容に誤りがないか、全員の署名と実印が押されているかをしっかり確認しましょう。

 

【パターン2】遺言書で相続する場合の追加書類

亡くなった方(被相続人)が遺言書を残しており、その内容に基づいて不動産を相続する場合には、共通書類に加えて「遺言書」そのものが必要になります。遺言書にはいくつかの種類があり、種類によって追加で必要になる手続きが異なります。

  • 遺言書:公正証書遺言、自筆証書遺言など、被相続人が残した遺言書を提出します。

特に、法務局で保管されていた自筆証書遺言(自筆証書遺言書保管制度を利用したもの)や公正証書遺言の場合は、それらをそのまま提出すれば問題ありません。しかし、法務局以外で保管されていた自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、家庭裁判所で「検認」という手続きを経る必要があります。検認済みの遺言書には「検認済証明書」が添付されますので、その証明書が付いたものを提出してください。

公正証書遺言は公証役場で作成されており、検認の手続きが不要なため、相続手続きを比較的スムーズに進められるというメリットがあります。

 

【パターン3】法定相続分で相続する場合の追加書類

遺言書がなく、かつ相続人全員で遺産分割協議を行わずに、法律で定められた相続分(法定相続分)の通りに不動産を相続する場合は、上記で説明した「共通書類」のみで登記申請が可能です。この場合、遺産分割協議書や遺言書は不要となります。

しかし、法定相続分で相続登記を行うと、その不動産は相続人全員の「共有名義」となります。一見公平に見えますが、この共有名義には多くのデメリットが存在します。例えば、将来その不動産を売却したり、リフォームしたり、賃貸に出したりする際には、共有者全員の同意が必要になります。共有者が増えれば増えるほど、意見をまとめるのが難しくなり、手続きが滞る原因となることがあります。

また、共有者の誰かが亡くなると、その共有持分はさらにその相続人に引き継がれるため、権利関係が複雑化し、いわゆる「数次相続」の温床となる可能性も高まります。これらの理由から、法定相続分での共有名義登記は、特別な事情がない限り、一般的には推奨されない方法であることを理解しておくことが大切です。

不動産相続の名義変更にかかる費用はいくら?

不動産の相続名義変更(相続登記)には、さまざまな費用がかかります。これらの費用は大きく分けて、自分自身で手続きを進める場合でも必ず発生する「実費」と、司法書士などの専門家に手続きを依頼した場合にかかる「報酬」の2種類です。この章では、それぞれの費用について具体的な内訳と相場を詳しく解説していきますので、ご自身の状況に合わせて費用の目安を把握する参考にしてください。

 

自分で手続きする場合にかかる費用(実費)

相続登記を専門家に依頼せず、すべてご自身で手続きを進める場合でも、必ず発生する費用がいくつかあります。主な実費として、登記申請の際に国に納める「登録免許税」と、申請に必要な各種書類を取得するための「必要書類の取得費用」の2つが挙げられます。それぞれの費用について、次の項目で詳しく見ていきましょう。

 

■登録免許税

相続登記の実費の中でもっとも大きな割合を占めるのが「登録免許税」です。これは、不動産の名義を書き換える際に国に納める税金で、不動産の固定資産税評価額をもとに計算されます。計算式は「不動産の固定資産税評価額 × 0.4%(1000分の4)」です。

たとえば、固定資産税評価額が2,000万円の土地を相続する場合、登録免許税は2,000万円 × 0.4% = 8万円となります。この金額は、登記申請書に記載し、一般的には収入印紙を購入して法務局に提出することで納めます。ご自身の相続する不動産の評価額を確認し、概算でどれくらいの税金がかかるのかを事前に把握しておきましょう。

 

■必要書類の取得費用

相続登記には、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの一連の戸籍謄本や、相続人全員の戸籍謄本、住民票、印鑑証明書など、多くの公的書類が必要になります。これらの書類を取得する際には、発行手数料がかかります。

目安としては、戸籍謄本が1通450円、除籍謄本や改製原戸籍謄本が1通750円、住民票が1通300円程度、印鑑証明書も1通300円程度です。被相続人の転籍の回数が多い場合や、相続人の数が多く、それぞれの戸籍を複数取得する必要がある場合など、状況によっては数千円から数万円程度の取得費用がかかることもあります。これらの費用は、取得する場所(市区町村役場など)によって若干異なる場合があります。

 

専門家(司法書士)に依頼する場合の費用相場

相続登記の手続きを司法書士に依頼する場合、前述の実費に加えて、司法書士への「報酬」が発生します。一般的な相続登記の場合、司法書士の報酬の目安は7万円から15万円程度とされています。この報酬には、書類作成や法務局への申請代行、戸籍謄本などの収集代行費用などが含まれます。

ただし、相続人の人数が多い、相続する不動産の数が複数ある、または過去の相続(数次相続)が未了で権利関係が複雑になっているといったケースでは、手続きが煩雑になるため、報酬が加算されることがあります。この司法書士への報酬は、登録免許税や書類取得費用といった実費とは別に発生する費用ですので、依頼を検討する際には、総額でどれくらいの費用がかかるのかを事前に確認しておくことが大切です。

自分でやる?専門家に頼む?手続き方法の選び方

不動産の相続名義変更は、2024年4月からの義務化によって、誰もが直面しうる手続きとなりました。しかし、その進め方は一つではありません。ご自身で手続きを進めるか、それとも専門家である司法書士に依頼するかは、それぞれにメリットとデメリットがあります。ここでは、「費用をできるだけ抑えたい」という思いと、「時間や手間をかけずに、確実に手続きを完了させたい」という思い、この二つのニーズを比較検討するための視点を提供します。ご自身の状況に合わせて、最適な方法を選ぶための参考にしてください。

 

自分で手続きするメリット・デメリット

相続登記を自分で行う最大のメリットは、何といっても費用を節約できる点です。司法書士に依頼した場合にかかる報酬(一般的に7万円~15万円程度が目安)を削減できるため、経済的な負担を軽減できます。

しかし、その一方でデメリットも少なくありません。戸籍謄本の収集や登記申請書の作成には、多くの時間と専門知識が必要です。平日の日中に役所や法務局へ足を運ぶ必要があり、仕事などで忙しい方にとっては大きな負担となります。また、書類に不備があった場合、何度も法務局からの「補正」の連絡を受けて修正・再提出を求められるリスクもあります。専門知識がないまま手続きを進めることは、精神的なストレスや手続きの長期化を招く可能性も考慮しておきましょう。

 

司法書士への依頼がおすすめなケース

以下のようなケースに当てはまる場合は、費用はかかりますが、司法書士に依頼するメリットが非常に大きいと言えます。

  • 仕事や家事、育児などで忙しく、平日に役所や法務局へ行く時間がない方
  • 相続人が多く、連絡調整や必要書類の収集に手間がかかる、または相続人が遠方に住んでいる方
  • 亡くなった方(被相続人)がさらにその前の世代(祖父母など)から相続した不動産の登記が未了である「数次相続」が発生しており、手続きが複雑になりそうな場合
  • 相続人同士の意見がまとまらず、遺産分割協議が難航している、または法的トラブルに発展する可能性がある場合
  • とにかく手間をかけずに、正確かつ迅速に相続登記を完了させたい方

これらのケースでは、専門家である司法書士に依頼することで、複雑な手続きをスムーズに進め、精神的な負担を大きく軽減できるでしょう。費用はかかりますが、その分の安心と確実性を得られると考えれば、賢明な選択と言えます。

不動産相続の名義変更に関するよくある質問(FAQ)

不動産の相続名義変更(相続登記)は、多くの方にとって初めての経験であり、さまざまな疑問や不安がつきものです。この章では、相続登記に関してよく寄せられる質問をピックアップし、それぞれの疑問に分かりやすくお答えしていきます。ぜひ、ご自身の状況と照らし合わせながらご確認ください。

 

Q. 相続人が複数いる場合、不動産を「共有名義」にしてもいい?

相続人が複数いる場合に、不動産を全員の「共有名義」とすることは法律上可能です。しかし、これは一般的にはあまりおすすめできない方法です。

共有名義の最大のデメリットは、その不動産に関する重要な決定(売却、賃貸、大規模なリフォームなど)を行う際に、原則として共有者全員の同意が必要になる点です。例えば、共有者のうち誰か一人でも反対すれば、その不動産を売却することはできません。共有者が遠方に住んでいたり、連絡を取りにくい状況になったりすると、同意を得るのが非常に困難になるケースも少なくありません。

さらに、共有者のうち誰かが亡くなると、その方の持分はさらにその方の相続人に引き継がれ、権利関係がネズミ算式に複雑化していきます。これは「数次相続」と呼ばれ、後の世代に大きな負担を残すことになり、「争続」の火種となる可能性もあります。

これらのリスクを避けるためにも、可能な限り遺産分割協議を通じて、不動産は特定の相続人一人の名義にまとめるか、不動産を売却して現金化し、その代金を相続人で分け合う「換価分割」を検討することをおすすめします。

 

Q. 亡くなった親が、祖父母から相続した不動産の名義変更をしていませんでした。どうすればいい?

亡くなったお父様やお母様が、さらにその前の世代(祖父母など)から相続した不動産の名義変更をしていないケースは少なくありません。これは「数次相続」と呼ばれ、相続登記の義務化により、放置できない問題となっています。

このような場合、登記は一度にまとめて行うことはできません。時系列に沿って、まず「祖父母からお父様・お母様へ」の相続登記を行い、次に「お父様・お母様からご自身へ」の相続登記を連続して申請する必要があります。このため、必要となる戸籍謄本などの書類は非常に多くなり、関係する相続人も増えるため、遺産分割協議も複雑化する傾向にあります。

ご自身でこれらの手続きを進めることは非常に困難が伴います。過去に遡って戸籍を収集したり、複数の相続人間で合意形成を図ったりするには、専門的な知識と経験が必要です。そのため、数次相続が発生している場合は、速やかに司法書士などの専門家にご相談いただくことを強くおすすめします。専門家に依頼することで、時間と労力を大幅に削減し、正確かつ確実に手続きを進めることができます。

 

Q. 相続放棄をしても相続登記は必要ですか?

「相続放棄」をした場合、その方が相続登記を行う必要はありません。

相続放棄とは、家庭裁判所に申述してそれが正式に受理されることで、その相続人は「初めから相続人ではなかった」とみなされる制度です。そのため、相続放棄が認められた方は、相続財産を一切受け継ぐ権利も義務もなくなり、当然ながら相続登記の申請義務も生じません。

ただし、注意が必要なのは、相続人同士の話し合いで「私は財産をもらいません」と合意しただけでは、法律上の「相続放棄」にはならないという点です。これはあくまで「遺産分割協議」の一環であり、家庭裁判所での正式な手続きを経ていない限り、その方は依然として相続人としての地位を持ちます。したがって、この場合は相続登記の義務が残ってしまう可能性があります。

もし相続放棄を検討されているのであれば、必ず家庭裁判所での正式な手続きを踏むようにしてください。相続放棄の手続きや、ご自身のケースで相続放棄が適切かどうかについては、弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。

 

Q. 相続登記をすると相続税がかかりますか?

「相続登記」と「相続税」は、全く異なる手続きであり、相続登記をしたからといって必ず相続税がかかるわけではありません。

相続登記は、亡くなった方(被相続人)から相続人へ不動産の名義を変更する手続きで、管轄の法務局で行います。一方、相続税は、亡くなった方の遺産総額が一定の金額(基礎控除額)を超えた場合に、その超過分に対して課される税金であり、税務署に申告・納税を行います。

相続税が発生するかどうかは、遺産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるかどうかで決まります。たとえ不動産を相続して相続登記を行ったとしても、遺産全体の評価額が基礎控除額以下であれば、相続税はかかりません。

また、相続登記の義務化による期限は「相続開始を知った日から3年以内」ですが、相続税の申告期限は「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」と、それぞれ異なりますので混同しないよう注意が必要です。相続税について不安がある場合は、税理士に相談することをおすすめします。

まとめ:複雑な不動産の相続手続きは、専門家への相談も検討しよう

本記事では、不動産の相続名義変更(相続登記)について、具体的な手続きの流れから必要書類、かかる費用、さらには2024年4月から義務化されたことによる罰則のリスクまで詳しく解説してきました。相続登記は、亡くなった方の不動産を正式に引き継ぐための重要な手続きであり、放置すると後々に大きな問題を引き起こす可能性があります。

戸籍謄本の収集や登記申請書の作成は、相続関係の複雑さによっては非常に手間と時間がかかります。特に、仕事や家庭で忙しい中で平日に役所や法務局へ何度も足を運ぶことは、大きな負担となるでしょう。また、万が一書類に不備があれば、何度も補正を求められるなど、手続きがなかなか進まないケースも少なくありません。

もし、相続関係が複雑な場合や、ご自身で手続きを進めることに不安を感じるようでしたら、司法書士などの専門家への相談をぜひ検討してみてください。専門家に依頼することで、時間的な負担を大幅に軽減でき、正確かつスムーズに手続きを完了させることが可能になります。大切な不動産を確実に次世代へ引き継ぐためにも、専門家の知見を借りることは、安心と確実性を手に入れるための有効な選択肢と言えるでしょう。

監修者

コラム監修者 岩本大介
岩本 大介(いわもと だいすけ)

相続診断士(一般社団法人 相続診断協会)
不動産終活士・不動産終活アドバイザー(一般社団法人 不動産終活支援機構)
終活セミナー講師認定資格(一般社団法人終活協議会)
福祉住環境コーディネーター2級
不動産営業及びマーケターとして20年以上従事。
シニアやその子世代に寄り添い、
不動産のエキスパートとして
不動産の相続・空き家問題に取り組む。

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