
債務整理の1つに「自己破産」が挙げられますが、自己破産は本当に最良の選択肢なのでしょうか?
そこで今回は、住宅ローンを滞納中の場合に自己破産が妥当な選択なのかどうかをご紹介します。
多くのリスクを伴う「自己破産」

「自己破産」とは、簡単にいうならば「全ての借金をゼロにするという手続き」となります。 裁判所に破産申立書を提出し、債務者の負債額や収入、資産等の状況をふまえ、支払い不能と判断された場合にのみ自己破産が認められます。
自己破産手続きをすると、全ての借金が帳消しになるため、債権者から返済を求められなくなるほか、競売にかけた住宅が売却されるまではその住宅に住み続けることができます。
しかし、20万円以上の現金をはじめ、換金可能な財産は全て没収されるため、該当不動産以外にも不動産を所有している場合はそれも手放すこととなります。
さらに、連帯保証人がいる場合、債務者本人が自己破産したとしてもそれ以降は連帯保証人にローンの請求が行くようになります。万が一、連帯保証人も支払いが不可能な場合は、その保証人も自己破産の手続きをする必要が出て来るのです。
そのため、住宅ローンが払えなくなったからといって、安易に自己破産を選択することはかなりのリスクを伴うため、極力避けるべきといえるでしょう。
まずは任意売却の検討を
金融機関などの債権者の合意を得て、住宅ローンが残った物件を自分の意思で物件を売却することを「任意売却」といいます。
任意売却を行うことで、競売にかけられるよりも相場価格に近い金額での売却が期待できるため、残債を少なくおさえることができるほか、立ち退きを命じられることもありません。
任意売却をすれば自己破産をしなくて済む場合もあるため、自己破産を選択する前には必ず任意売却を検討してみるようにしましょう。
任意売却のメリットとは

任意売却には、債権者や連帯保証人などの同意が必要になることや、5~7年はローンを組んだりクレジットカードが作れなくなったりなどのデメリットがありますが、自己破産と比べると多くのメリットがあることも事実です。
周囲に事情を知られずに売却できる
自己破産し物件を競売にかける場合、裁判所の関係者が物件調査のために自宅やその周辺を行き来することとなるため、近所から不審がられる可能性があります。また、競売が始まると裁判所のHPなどで物件情報が公開されてしまうため、近所の人のみならず知人や友人にも事情を知られてしまう可能性もゼロではありません。
任意売却の場合、通常の不動産売買と同じ手続きで行われるため、不信感や不安を周りに与えず物件売却の手続きを進めることができます。
物件の引き渡し時期を自分で決められる
自己破産の場合、物件は競売にかけられて処分されることとなりますが、その競売手続きは全て裁判所の都合で進められてしまいます。 そのため、売却時期や引き渡し時期などのスケジュールは自分で決めることができません。任意売却の場合、個人間の契約で明け渡しの時期を選べるため、引っ越しなどのスケジュールをある程度自分で決めることができます。
残った債務は分割返済できる
自己破産し、物件を競売によって売却しても残債がある場合、連帯保証人へ残債返済の責任が移ります。もし連帯保証人が返済不可能の場合は、財産が差し押さえられてしまうほか、その保証人も自己破産しなくてはならない可能性も出てきてしまいます。任意売却後にも債務が残ってしまった場合、債権者との協議のうえ、債務者が破綻しない範囲で分割返済が可能となります。 一般的には毎月3万円程度の返済額に収まることも多いため、それまでのローン返済に比べ負担が軽くなります。
今の家に住み続けられる可能性もある
自己破産し住宅が競売で落札され所有権が移転した場合、それ以降その住宅に住み続けると不法占拠となってしまいます。そのため、所有権移転後までに引っ越す必要があります。任意売却の場合、売りに出した住宅を近い身内や不動産投資家などに買ってもらい、賃貸契約を結び家賃を支払うことで、引っ越すことなくそのまま慣れ親しんだ家に住み続けることが可能です。
今回は、住宅ローンを滞納中の場合、自己破産が妥当な選択なのか、また、任意売却のメリットなどについてご紹介しました。
自己破産は住宅ローンの返済ができないときの解決策の1つではありますが、今回ご紹介したとおりさまざまなリスクが伴うため、最終手段とすることをおすすめします。
任意売却には自己破産と比べてさまざまなメリットがあるため、ローン返済の滞納が続くようであれば、自己破産よりも前に任意売却を検討するようにしましょう。
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監修者

大沼 春香(おおぬま はるか)
宅地建物取引士
埼玉県・千葉県・東京都一部に拠点を置く
不動産売買仲介会社に15年以上従事。
自身も不動産購入を経験し「初心者にもわかりやすい」
実態に基づいたパンフレット・資料に定評がある。
最近はWEBや自社セミナーなどでの情報発信も行っている。