
今回はその方法の一つとして、固定資産税評価額から売却相場を求める方法についてご紹介していきます。
また、売却相場から実際の売却価格を決めるコツや、さらにそのような相場にまつわる注意点についても取り上げていきます。
これからご自身の不動産を売却しようとお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
固定資産税評価額とは
固定資産税評価額とは、土地や家屋の所有者に毎年納付が求められる固定資産税の金額に関係する評価額です。
原則として「固定資産税の標準税額=固定資産税評価額×1.4%」で計算されます。
そして、固定資産税評価額は毎年1月1日現在において、固定資産評価基準に基づいて算定されます。
評価額は公示地価の約70%が目安です。
ただし、固定資産税評価額は3年に1回評価が見直され、固定資産税の額が変動します。
毎年4~6月頃に送付される課税明細書を確認し、固定資産税の額はチェックしましょう。
固定資産税評価額の決まり方とは?
最初に売却相場を求める根拠となる固定資産税評価額がどのようにして決められているのかについてお伝えします。
まず固定資産税評価額ですが、固定資産評価基準に基づいて毎年1月1日現在における土地や家屋の所有者を自治体の担当者が個別に訪問・調査し、最終的に市町村長が決定していきます。
固定資産税評価額は3年に1回のタイミングで見直しがおこなわれます。
固定資産税評価額を決める際の根拠となる評価基準については土地の他に住宅や店舗、事務所、工場などの家屋ごとに決められた方法があります。
例えば、宅地の評価には 市街地宅地評価法(路線価方式)やその他の宅地評価法(標準地批准方式)となっています。
家屋については評価時点で同じ建物を新築した場合の再建築費を点数化して「建物の再建築費評点数」を算出します。
そして評点1点あたりの価額を乗じ、損耗などの補正をおこなって算出していきます。
固定資産税評価額から売却相場を求める方法(実勢価格の計算方法)
土地売却の相場については「固定資産税評価額」から算出することができますが、実際には以下の計算式を用いることで求めます。
土地の売買価格 = 固定資産税評価額 ÷ 0.7 × 1.1
公示価格の7割程度が固定資産税評価額となるように調整されています。
そして、「公示地価」のおおよそ1.1〜1.2倍の価格が実際の売買価格になると言われています(実際の売買価格を「実勢価格」と呼びます)。
そもそも固定資産税評価額はどう調べればいいの?
固定資産税評価額を自分で調べる方法ですが、主に次の3種類があります。
固定資産課税証明書の確認
固定資産税課税証明書は不動産の「固定資産評価額」を証した書類で、年に一度土地の所有者宛てに送られる「固定資産税納税通知書」に記載のある明細のことです。「所在地」「地積」「課税地目」「固定資産税評価額」が記載されており、この明細を見ることで固定資産税評価額が確認できます。
固定資産評価額は毎年4月1日の新年度から適用され、翌年3月31日までの1年間の不動産の固定資産税上の不動産評価額を示しています。
固定資産税評価証明書の取得
固定資産税評価証明書は上記の納税通知書を紛失してしまったような場合に取り寄せることができます。固定資産税評価証明書は自分の所有する不動産を管轄する各自治体によって発行されています。
取得する場合は身分証明書の提示が必要となり、所有者以外の人が取得する場合には委任状を必要とします。
固定資産課税台帳の閲覧・縦覧
証明書を取得しなくても固定資産課税台帳の閲覧によって固定資産税評価額を調べることができます。固定資産課税台帳を閲覧すれば、台帳に記載された土地や家屋の価格や課税標準額などの事項について確認できます。土地や家屋のある市区町村の税務課窓口などで身分証明書の提示によって閲覧可能です。
土地や家屋については所有者以外にも納税義務者や借地人、借家人、固定資産の処分権限者も閲覧することができます。
尚、固定資産課税台帳を閲覧できる期間は毎年4月1日から同月20日、またはその年度の固定資産税の最初の納付期限までとなっています。
閲覧できる期間はかなり短いために注意が必要です。
売却価格を決めるコツ・ポイント
売却相場がわかったところで次に売却価格を決めるコツについてご紹介していきます。
不動産の売買では、売主の希望で決められる「販売価格」で売却できるとは限らず、実際に売却できる価格は下がる傾向があります。
従って、自分が最初に決めた販売価格にあまりこだわりすぎることがないようにしたほうがいいでしょう。
希望の価格になるべく近い価格にしつつも、最終的には相場も考慮して適切な価格帯となるように設定することが大切になってきます。
売却価格を決める際のコツとして大切なポイントは以下のとおりです。
希望最低価格の決定
まず重要なのが、希望最低価格をあらかじめ決めておくことです。自身が必要な手元資金の額に基づいて最低限の価格を決め、自分が困らないレベルの価格を見極めておきましょう。特に売却前後のタイミングで次に購入するマイホームが決まっている場合、資金繰りの観点から適切な最低価格を算定しておくようにしてください。
売却希望時期の決定
不動産会社が査定依頼を受けてから提示してくる査定額は一般的におよそ3ヶ月間の売却期間内に売却できることが想定される価格となっています。希望する売却時期に近いタイミングで売却するには適切な販売価格を設定することが大切です。また、むやみに時間をかけて希望の価格にこだわりすぎるのではなく、ある程度の期限を決め、その期限内に売却できるような販売価格を設定するようにします。
プロへの相談
どうしても自分で希望最低価格などが決められない場合には不動産会社などのプロに相談することも重要です。彼らは不動産売買のスペシャリストであり、売買事例を数多く見てきています。また、相場に合った売却価格だけでなく、売るタイミングについてもいろいろと有益なアドバイスをしてくれるでしょう。
■関連リンク:
「不動産売却をする際の価格の決め方とは?」
売却価格を土地評価額よりも高くする方法はある?
ここからは、売却価格を土地評価額よりも高くする方法について見ていきましょう。
不動産会社を厳選する
売却価格を決定する際は、不動産会社に査定をしてもらう必要があります。しかし査定額は不動産会社によっても異なるため、複数の会社から査定してもらうことで理想の売却価格に近付けられます。
不動産会社の需要や得意分野によっても違いが出るため、一括査定サービスなどを利用するのがよいでしょう。
また、不動産会社を選ぶ際は査定額だけでなく、信頼できる担当者がいるか、実績があるかという点にも気を付けるべきです。
土地評価額以上で売却するには、不動産会社の努力も不可欠だからです。
メンテナンスで価値を高める
売却価格は物件の状態も影響するため、メンテナンスで傷んでいる箇所を修復しておくことも重要です。例えば雨漏りやシロアリ被害、水回りのカビ・黒ずみなどは、客観的にわかるマイナスポイントです。
また、庭がある場合は雑草を取り除き、掃除をしておく必要もあります。物件の整備が行き届いているかは、買い手が見つかるかどうかの重要ポイントです。
第一印象を良くするためにも、メンテナンスで物件の価値を高めておきましょう。
リフォーム・リノベーションを行う
市場に売り出す前に、リフォームやリノベーションで資産価値を高めるのもポイントです。特にリノベーションは、物件の資産価値を新築以上に高めることを目的とするため、土地評価額以上で売却するには有効な対策です。
ただしリフォーム・リノベーションは不動産会社によっても得意分野が異なるため、より資産価値を高められる業者選びを検討しましょう。
時期を見極める
売却価格を高めるには、売りに出す時期を見極めることも大切です。一般的に土地の価格は人流の多い春と秋に上がりやすく、夏と冬は落ち着きやすいとされています。
他にも税制関係の法改正前後、周辺の公共事業の計画、大型商業施設の建設なども価格に影響します。
そのため、周辺地域の開発計画や法改正のタイミングなどをチェックしたうえで、春または秋に売り出すのが売却価格を高めるには効果的です。
インスペクションを活用する
専門家による簡易査定であるインスペクションも活用するのがおすすめです。インスペクションは専門家が建物の状態から査定し、売却価格や建物の状態を第三者からお墨付きをもらえる仕組みです。
買い手にとっても、インスペクション済みの住宅や土地なら安心して購入できます。
不動産会社によっては無料でインスペクションを行ってくれることもあるため、不動産会社とも相談しましょう。
土地・建物についている権利を綺麗にする
売りに出す前に土地・建物についている権利関係を清算し、余計な権利関係の登記を抹消しておくことも重要です。例えば住宅ローンを組んだ場合は抵当権が設定されており、そのままでは買い手がつかなくなる可能性もあります。
また、土地境界が不明確であれば、後々に隣家とのトラブルの原因になることもあります。
土地・建物の権利関係をあらかじめ確認し、綺麗にしておくと売却価格を高められるでしょう。
■関連リンク:
「高く売れる土地と売れない土地の違いは?売るための条件や対策を解説」
売却価格の相場に関する注意点
「売り出し価格」と「成約価格」の差
不動産情報サイトに掲載されている売り出し価格はあくまで売主が希望する販売価格です。実際の成約価格との間で隔たりがあるケースも頻繁に見られます。このような隔たりが起こる理由はいくつか考えられます。よく見られるのが売主が希望する相場より高めの売り出し価格で売却を開始したものの、中々売却できずに当初の売り出し価格を徐々に下げていくケースです。
その他にも指値といって買い手側が売り出し価格よりも低い希望購入価格を提示して値下げ交渉が入るケースです。
自分で価格を調べるのは困難
不動産相場の調べ方や売却相場に基づいた売却価格の決め方についてお伝えしてきましたが、実際に自分で調べて決定するのは非常に難しい作業といえるでしょう。このような場合には不動産会社に査定依頼をして査定額を提示してもらったほうが効率良く売却を進められます。
その際、複数の不動産会社に査定依頼を出すとより適正な価格を知ることができるでしょう。
まとめ
固定資産税評価額は毎年の固定資産税に関係し、築年数や周辺地域の地価などのさまざまな要因で変動します。
安価な物件だと思って購入した結果、毎年の固定資産税納付が負担になってしまうケースも少なくありません。
また利用方法のない住宅を所有しているだけでも、固定資産税は発生します。
固定資産税がどのくらいになるかは、物件のプロである不動産会社に相談し、早めに査定してもらうのがおすすめです。
不動産売買を考えているなら、1人で悩むのではなく不動産会社に相談しましょう。
複数の不動産会社から見積もりをもらい、最も信頼できる会社を選ぶことが物件選びでも、不動産売買でも重要なポイントです。
監修者

大沼 春香(おおぬま はるか)
宅地建物取引士
埼玉県・千葉県・東京都一部に拠点を置く
不動産売買仲介会社に15年以上従事。
自身も不動産購入を経験し「初心者にもわかりやすい」
実態に基づいたパンフレット・資料に定評がある。
最近はWEBや自社セミナーなどでの情報発信も行っている。