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離婚時に残った住宅ローンはどうする?売却・住み続けるなどケース別に対処法を解説

離婚する多くの夫婦が直面するのが、家の売却についてです。特に住宅ローンが残っている場合は、さまざまな対応が必要となります。
そのためまず住宅ローンは、離婚時の財産分与の対象になるかどうかを確認しましょう。そして住宅ローンの残債があった場合、売却は可能でしょうか? どう対処するべきでしょうか?

ここでは、離婚時に住宅ローンがあった場合の対処法や注意点をご紹介します。

目次

離婚時に住宅ローンが残っている場合の確認事項

離婚する際に住宅ローンが残っている場合、3つの重要な確認事項があります。

①家の名義人
②残債額
③ローンの契約内容


上記3つの内容を確認しておくことで、離婚時の財産分与や返済方法などが明確になります。
具体的な確認事項をみていきましょう。
 

住宅ローンは離婚時の財産分与の対象になる?

結論からいえば、住宅ローンは財産分与の対象にはなりません。本来、離婚時の財産分与では夫婦で築いた財産を半分に分けることになります。

しかし夫婦共同で住宅ローンを負担している場合、共同財産から住宅ローンなどの負債額を引いたうえで、財産分与を行うからです。
財産分与はプラスの財産をお互いに分け合うのが基本であり、マイナス財産は分与の対象ではないと理解しておきましょう。
 

住宅ローンの返済義務は名義人に課せられる

覚えておきたいのは、住宅ローンの返済義務があるのは、その家の名義人や、その家に住んでいる人とは関係なく、ローンの名義人ということ。
住宅ローンの支払いが残っていて離婚した場合でも、夫婦2人が折半して支払うのではなく、離婚後も名義人が支払い義務を継続して負うことになります。
 

連帯保証人・連帯債務者について

住宅ローンを組んだときによくあるのが、夫が「名義人」で、妻が「連帯保証人」になっているケース。支払いの義務を負うのは名義人ですが、もし名義人の支払いが滞ったりした場合に、連帯保証人が代わりにローンの返済を行わなければなりません。
 
また夫婦2人の名前で住宅ローンを組んでいる場合は、「連帯債務」となります。この場合、2人のどちらかが「主債務者」で、もう1人が「連帯債務者」となり、主債務者も連帯債務者もどちらも支払い義務を負います。

「連帯保証人」は、ローンの名義人が支払いできなくなった場合に返済義務を負うのに対して、「連帯債務者」はローン名義人と同じ支払い義務があるという点で、返済義務の大きさが異なります。

離婚時に住宅ローンの残債がある場合の対処法

離婚する際、住宅ローンの支払いが残っている場合、どちらかがそのまま家に住み続けるケースと、家を売却するケースの2つの対処が考えられます。
 

ケース① どちらかがそのまま住み続ける

ローンの名義人が夫で、夫がそのまま家に住み続ける場合は、特に面倒な手続きはありません。離婚後も夫がローンの支払いを行うこととなります。
 
ただし、妻が連帯保証人になっていると、夫の支払いが滞ったときに妻に返済義務が生じることに注意しましょう。住宅ローンの連帯保証人を契約後に変更することは難しいです。家の名義が夫婦の共有名義になっていたら、ローン完済後に家の名義を夫1人の名義に変更することを合意しておきましょう。
 
ローンの名義人が夫で、妻がその家に住み続けることは可能ですが、夫のローンの支払いが滞ったときに家を退去させられるリスクが生じます。
ローンの名義人の変更は難しいケースが多いですが、妻に住宅ローンを支払える安定した収入がある場合は、名義人変更が可能なこともありますので、ローンの名義人を妻に変更するといいでしょう。
 

ケース② 家を売却する

離婚のタイミングに合わせて、家を売却して住宅ローンの残債務の返済に充てる方法もあります。
売却方法には大きく分けて「仲介」と「買取」の2種類があり、それぞれメリットも違います。

■売却方法(1) 仲介
まず仲介とは、不動産会社に家の売却を依頼し、広く買主を募集してもらう方法です。メリットは市場の相場価格に近い価格で売却しやすく、売主が買主を選べることです。

デメリットは売却までに時間がかかりやすく、価格を下げざるを得ない状況があるということでしょう。買主が見つからなければいつまでも売りに出すこととなり、値下げをしなければならなくなります。

■売却方法(2) 買取
次に、買取は不動産会社に直接家を買い取ってもらう方法です。買取のメリットは現金化がしやすく、仲介手数料もかからないことです。
離婚によって家を出る時期が近い場合には、買取で早期に現金化するのがよいでしょう。

デメリットは売却価格が相場の6~7割程度になってしまうことです。
仲介と買取のメリット・デメリットを理解したうえで、より自分の状況に適した方法を選択してください。

【ケース別】離婚時に家を売却する方法

離婚時に家を売却する場合、住宅ローンの残債や売却額、住宅ローンの名義など、状況に最も適した売却方法を検討しなければなりません。
ここでは、さまざまなケースにおける家の売却方法やその注意点を解説していきます。
 

アンダーローンの場合

アンダーローンとは、家の売却額が住宅ローンの残債を上回っていることです。このケースの場合、家を売ることで住宅ローンの完済が可能となるため、通常の売却方法による手続きを進めていくとよいでしょう。
 
完済後、手元に残った売却金を夫婦で分けることになるのですが、これを財産分与といいます。財産分与には「清算的財産分与」「扶養的財産分与」「慰謝料的財産分与」の3種類があり、夫婦が共同で作った財産を公平に分け合う清算的財産分与が一般的です。

財産の分配方法に関しては、生活保障や損害賠償といった点も踏まえ、公平性を持って話し合うようにしましょう。
 

オーバーローンの場合

家の売却額が住宅ローンの残債を下回っている状況がオーバーローンになります。このケースの場合、アンダーローンと異なり、家の売却額だけでは、住宅ローンの完済が不可能なため、金融機関が設定している抵当権を抹消することができません。つまり、家を売却することができないのです。
 
しかし、住宅ローンの残債と売却額の差額を補える預貯金などがあれば、住宅ローンを完済することが可能となり、家を売却できるようになります。残債の返済に預貯金などを充当させる際は、離婚後に迎える夫婦それぞれの新しい生活を考慮したうえで慎重に判断するべきです。
 

連帯保証の場合

連帯保証とは、実際の債務者と連帯して、債務の弁済をおこなうことです。
家が夫の単独名義であっても、住宅ローンは「債務者・夫」「連帯保証人・妻」であることが一般的となっています。

このケースの場合、アンダーローンであれば、名義人の判断によって通常通りに家を売却することが可能です。
 
しかし、オーバーローンであれば、住宅ローンが完済できていないため、債務者同様に、連帯保証人としての責務も続くことになります。たとえば、債務者の夫が住宅ローンの支払いを滞った場合、離婚後であっても連帯保証人である妻が返済を肩代わりしなければなりません。
 

連帯債務の場合

連帯債務とは、ひとつの債務に対し、複数の債務者が弁済義務を負うことです。具体的には「主債務者・夫」「連帯債務者・妻」となって、それぞれが住宅ローンの債務を同等に負担することになります。このケースの場合、家が夫婦の共有名義であることが大半であり、アンダーローンであれば、名義人である夫婦の合意によって通常通りに家を売却することが可能です。
 
ただし、オーバーローンであれば、家を売却することができません。
また、連帯責務者は、主債務者と同一の立場になることから、返済を求める金融機関に対し、支払いを拒絶できる抗弁権がないうえに、ひとりで債務を全額負担する可能性もあります。
 

ペアローンの場合

ペアローンとは、ひとつの債務に対し、夫婦2人で債務者になる借入方法です。具体的には、夫と妻が個別に住宅ローンを組み、それぞれ債務を負うと同時に、互いの連帯保証人にもなります。このケースの場合、家が夫婦の共同名義となるため、名義人である夫婦の合意があれば、通常通りに家を売却することが可能です。
 
アンダーローンであれば、スムーズに売却の手続きが進むのですが、オーバーローンであれば、家を売却することができなくなります。住宅ローンの完済までは、夫婦それぞれに債務者としての弁済義務、連帯保証人としての債務弁済の義務が続くことになるため、注意が必要です。

離婚後に名義人ではない人が家に住み続ける場合の対処法

離婚後も家の名義人ではない人が住み続けるには、どんな方法があるのか紹介します。
 

名義人が住宅ローンの支払いをする

夫婦のどちらかが名義人で、離婚後は名義人だけが住み続ける方法です。この場合、家の名義人と住宅ローンの名義人が同じであり、大きな問題は生じません。

財産分与においては、家と住宅ローンを引き継いだ分、他方への財産分与の割合を減らすことがあります。
 

名義人ではない人が住宅ローンの支払いをする

家の名義人と住宅ローンの名義人を違う人にする方法です。例えば家の名義人は妻にして、住宅ローンの名義人を夫にするケースがあります。
この場合、夫が慰謝料の代わりに住宅ローンを返済し、妻は無償で家を受け取ることが考えられます。

ただし、離婚後は住宅ローンを返済する人と家の名義人が異なることになり、銀行から一括返済を求められるリスクがある点には注意すべきです。
夫が病気や失業などで住宅ローンを返済できなくなった場合、いつのまにか家を競売にかけられるリスクもあります。
離婚前の夫婦に十分な資産があるなら、繰上返済や一括返済などを活用して住宅ローンの負担を軽減しておくのがよいでしょう。
 

家賃として名義人へ毎月支払う

住宅ローンの借り換えや家の名義変更が難しい場合は、名義人に対して住宅ローンの返済として家賃を支払う方法もあります。
離婚後に夫が住宅ローンの返済、妻が家の名義人になった場合、妻から夫に家賃を支払えば、間接的に住宅ローンを返済していることになります。
夫は安定して住宅ローン返済を続けられ、妻はそのまま慣れた家に住み続けられる方法です。

注意点としては、家賃として毎回夫の口座に決まった額を振り込むか、直接お金を渡す必要があることです。
円満に離婚したなら問題はありませんが、離婚でトラブルになったケースや夫婦関係に問題があったケースでは、毎月の家賃支払いがストレスになるでしょう。
また家賃を支払い続けられるだけの財産があればよいですが、支払いが滞ったときにトラブルになるリスクもあります。
 

住宅・住宅ローンの名義を変更する

住宅と住宅ローンの名義人を、家に住み続ける人へ変更する方法もあります。
銀行の立場としては家の名義人と住宅ローンの名義人が異なると、資金使途違反と判断し、一括返済を求めることも検討しなければなりません。

住宅と住宅ローンの名義人を同じ人にすれば資金使途違反とはならないため、そのまま住み続けることも問題にはなりません。
ただし、住宅ローンの名義人変更は離婚を含む例外的なケースでのみ認められるため、十分な返済能力と収入があることの証明は必須です。
離婚前に財産分与や不動産の取り扱いに詳しい弁護士などに相談し、夫婦双方に最適な方法を模索しましょう。
 

住宅ローンの借り換えを検討する

住宅ローンの借り換えとは、元々の住宅ローンを繰上返済するために、別の金融機関から新たに住宅ローンを組むことです。
この場合、新たに設定手数料や保証料などの差額は発生しますが、より金利の低い住宅ローンに借り換えられます。

ただし住宅ローンの借り換えには一定の収入が求められるため、勤続年数や前年の年収などがわかる書類が必要です。
また家の名義変更が必要なら、登録免許税も用意しておかなければなりません。
現在の住宅ローンを維持するか、借り換えを行うかを判断する際は、どちらのほうがコストを抑えられるか計算してから決断しましょう。
どちらがよいか迷った場合は、専門家のいる不動産会社に相談するのもおすすめです。

離婚時に住宅ローンが残っている場合に生じるリスク

離婚時、住宅ローンが完済できていなければ、いくつかの問題を抱える可能性があります。具体的には、どのようなリスクが考えられるのでしょうか?
ここからは、おもなリスクとその対処法を解説します。
 

リスク① 住宅ローンの支払いが滞る

住宅ローンの残債がある場合、最も大きなリスクが支払いの滞納です。離婚後、債務者である夫が家を出ていき、妻と子供は、家に住み続けることがあります。しかし、夫の経済的・精神的負担や再婚などの理由により、住宅ローンの返済が滞るケースも珍しくありません。
 
住宅ローンの支払いが滞れば、突然強制退去を命じられ、住む家がなくなる可能性もあるでしょう。このようなリスクを回避するため、住宅ローンの支払義務・財産分与・親権・養育費など、離婚時の協議内容を公的に記録した「離婚協議書」を作成することです。離婚後に起こりうるトラブルを未然に防ぐうえで、効果的な対処法になります。
 

リスク② 約束の期限内に退去しない

たとえば、子どもの卒業までや妻の再就職までなど、一定の期限を取り決め、離婚後も非名義人の妻や子どもが家に住み続けることがあります。

このケースの場合、名義人である夫にリスクが生じるかもしれません。
というのも、約束の期限を過ぎても、おもに経済的事情を理由として家を退去せず、そのまま住み続けてしまう可能性が考えられるからです。

このリスクを避けるため、期限を口約束で交わさず、離婚協議書を作成し、家の使用権限や使用期限などの詳細を明記するようにしてください。
 

リスク③ 無断で家を売られる

家の売却を判断する権限は、原則的に名義人が持っています。そのため、非名義人の妻や子どもが離婚後も家に住み続けた場合、名義人である夫の都合から、何の話し合いもなく突然家を売却される可能性があるかもしれません。
オーバーローンであれば、家を売却することにより、住宅ローンの完済が可能となるからです。
 
しかし、無断で家を売られてしまえば、所有権が第三者のものとなるため、もともと非名義人の妻や子どもは、退去を余儀なくされてしまい、住む家を失ってしまいます。

このようなリスク回避の対処法は、夫が無断で家を売却しない旨を離婚協議書に明記させることです。
また、協議のうえで可能ならば、離婚前に家の名義を妻に変更する方法もあります。

離婚時の住宅ローンに関する注意点

住宅ローンが残っていると、離婚時の家の財産分与について、トラブルが起きやすくなります。そのような揉め事を避けるためにも、事前に次のことに注意しておきましょう。
 

注意① 共有名義人の承諾が無いと売却を行えない

家を夫婦2人の共有名義で所有している場合、家の売却には必ず2人の承諾が必要となります。どちらか1人だけの承諾では売却できませんので、離婚時には必ず単独の名義に変更しましょう。
単独名義に変更しておかないと、将来売却しようと思っても元配偶者に連絡がつかないと、売却できないことになってしまいます。
 

注意② 住宅ローンの名義人変更は例外的に可能

住宅ローンの返済途中に名義人を変更することは、原則的に認められません。しかし夫婦が離婚して、新しい名義人が家に居住する場合などは、例外的に変更が認められることがあります。
ただし、新しい名義人が現在のローン返済に対応できるだけの十分な収入があり、返済能力があると認められることが前提となります。
 

注意③ 養育費の支払いがある場合、ローンの負担額が考慮される

子供を持つ夫婦が離婚した場合、夫が養育費を負担することになるケースが多いでしょう。しかし残っている住宅ローンの返済もあり、それに養育費がプラスとなると経済的な負担が大きくなります。

養育費には住居費が含まれており、例えば夫が妻に養育費を支払い、夫が妻が住む家のローンを払う場合、妻の同意でローンの支払いが養育費として認められるケースや、ローンの返済額を考慮して養育費を減額できるケースがあります。
 

注意④ 離婚の専門家にも相談しよう

離婚して家を売却する場合は、不動産会社に売却の手順を相談することはもちろん、離婚に関する手続きとして、ぜひ弁護士や離婚カウンセラーなどに相談しましょう。
離婚後のトラブルを避けるため、また自分の財産を守るために、ベストな対処法をアドバイスしてもらえるでしょう。

まとめ

離婚時の財産分与で揉める原因になるのが、マイホームにどちらが住むのか、住宅ローンの返済を誰が行うのかという点です。
特に住宅ローンの返済は30年以上にわたることが多く、返済を続けるには安定した収入が不可欠です。

離婚の際に揉めないように、早いうちに住宅ローンの残債務と名義人、住宅の市場価値をチェックし、双方が納得できる財産分与の方法を話し合うことが大切です。

監修者

コラム監修者 大沼
大沼 春香(おおぬま はるか)

宅地建物取引士
埼玉県・千葉県・東京都一部に拠点を置く
不動産売買仲介会社に15年以上従事。
自身も不動産購入を経験し「初心者にもわかりやすい」
実態に基づいたパンフレット・資料に定評がある。

最近はWEBや自社セミナーなどでの情報発信も行っている。

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