- 士業コラム
相続トラブル解決事例:弟は死亡した兄の遺留分侵害額請求権を承継できますか?

遺留分の侵害額の請求についてのご相談です。遺留分の侵害額の請求を行う前に亡くなってしまったお兄さん。お兄さんの相続人である弟さん(Bさん)は遺留分の支払いを請求できるのでしょうか?
相続遺留分について知りたい方へ
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事例のあらまし

子供のいない夫婦(甲・乙)の妻(乙)が先に死亡し、妻は全財産を妹(A)に遺贈していたがその数か月後に夫(甲)が死亡した場合、夫の弟(B)は遺留分の侵害額の請求(承継)はできるかどうかという問題。
T「今日はどのようなご相談ですか」
B「私の兄が今年の9月に亡くなったのですが、その2カ月前に義理の姉乙も亡くなったんです。2人には子供がいなかったので、乙の遺言がなければ甲と乙の妹Aが法定相続人ですよね」
T「そうですね。甲(4分の3)7500万円・A(4分の1)2500万円が法定相続分ですね。でもどのように遺産分割してもいいですよ」
B「ところが乙は全遺産を実の妹であるAに遺贈すると遺言していたんです」
T「甲さんは遺留分の侵害額の請求をしなかったんですか」
B「請求する前に2ヵ月後に亡くなってしまったのです。私が甲に代わって遺留分の侵害額の請求をすることはできませんか。兄弟には遺留分はないから請求できないという弁護士先生もいるんですが、私は納得いきません」
T「あなたは遺留分権利者の承継人ですから一定期間内なら遺留分侵害額の請求ができると思います」
解決方法
(1) 民法の規定
・旧民法(~2019 ・30)(遺贈又は贈与の減殺請求) 第1031条
遺留分権利者及びその承継人は、・・・減殺を請求することができる。
・新民法(2019・7・1~) (遺留分侵害額の請求) 第1046条
遺留分権利者及びその承継人は、・・・遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
(2)遺留分権利者の承継人の解説
前記(1)の承継人とは
①(遺留分権利者)の相続人
②(甲から遺言で遺贈された相続人以外の)包括受遺者
③相続分の譲受人等の包括承継人
④個別の遺留分権の譲受人などのような特定承継人、を含みます。
(3)今回の事例
Bさんは前記(2)の①遺留分権利(甲)の相続人ですから、一定期間内に手続きをすると下記の金額の請求ができます。
1億円×(総体的遺留分) 2分の1×遺留分を有する相続人の相続分(今回のケースは兄弟姉妹には遺留分ないので考慮しない)
=(個別的遺留分) 5000万円
<土地資産活用情報誌アネックス 令和5年12月1日発行号より>
【執筆者】
高橋 安志 氏
税理士法人 安心資産税会計 代表
昭和26年山形県生まれ、中央大学卒業、昭和58年に事務所開設。
「小規模宅地等の特例」「大規模宅地評価」の第一人者。
事業承継・相続贈与対策・各種アドバイス、不動産税務特化の会計事務所を経営。
日経新聞・朝日新聞で相続専門税理士50選、特に個別取材で小規模宅地特例に詳しい税理士として紹介される。
2021年6月、ぎょうせいより「Q&A実例から学ぶ配偶者居住権のすべて」を出版。
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