印紙税、所得税、住民税のそれぞれについてシミュレーションしてみましょう。
また、土地を売却するときにかかる税金を少しでも減らすためにできる節税対策、相続した土地を売却するときにかかる税金についてもご紹介します。
目次
不動産売却にかかる税金【売却手続き時にかかるもの】
まずは、不動産の売却手続きを進める中で発生する税金について見ていきましょう。これらは売却によって利益が出たかどうかに関わらず、発生する可能性がある費用です。
印紙税
印紙税は不動産売買契約書など、特定の文書を作成した際に課される税金です。契約書に記載された売買価格に応じて金額が決まり、収入印紙を契約書に貼り付けて消印をすることで納税します。例えば、売買価格が5,000万円超1億円以下の場合、本来の税額(本則税率)は6万円ですが、現在は軽減措置が適用され3万円となっています。
不動産売買契約書は、売主様と買主様がそれぞれ1通ずつ保管することが一般的です。その場合、2通両方に収入印紙を貼る必要がありますのでご注意ください。契約時に必ず必要となる費用のため、事前に不動産会社と税額を確認し、準備しておくと安心です。
登録免許税
登録免許税は、不動産の権利に関する登記をおこなう際に発生する税金です。売却の場合、住宅ローンを利用して購入した不動産に設定されている「抵当権」を抹消するための登記(抵当権抹消登記)が必要になるケースが多くあります。抵当権抹消登記の登録免許税は、不動産1筆あたり1,000円です。例えば、土地1筆と建物1棟であれば、合計2,000円の登録免許税がかかります。
なお、所有権を買主様へ移転するための「所有権移転登記」にかかる登録免許税は、買主様が負担するのが一般的です。ただし、契約内容によっては売主様の負担となるケースも考えられるため、事前に費用分担について不動産会社と明確にしておくことが大切です。
不動産売却にかかる税金【売却益の発生時にかかるもの】
次に、不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合にのみ課される税金について解説します。
所得税
不動産を売却して得た利益(譲渡所得)は、給与所得などほかの所得とは分離して計算され、所得税が課税されます。単純な売却価格ではなく、売却価格から不動産の購入にかかった費用や売却にかかった経費を差し引いて計算します。税率は、不動産の所有期間によって異なり、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」、5年を超える場合は「長期譲渡所得」として扱われます。
【所得税率】
・短期譲渡所得(所有期間5年以下): 約30%
・長期譲渡所得(所有期間5年超): 約15%
正確な税額を計算するためには、購入時の契約書など、取得費を証明する書類を準備しておくことが重要です。
住民税
不動産売却による譲渡所得には住民税も課され、分離課税として一律の税率が適用される。長期譲渡所得(5年超)は5%、短期譲渡所得(5年以下)は9%となるのが一般的です。たとえば、短期譲渡所得で1,000万円の利益が出た場合、住民税だけで90万円を納める必要があり、これは所得税や復興特別所得税と合わせて負担額を考慮する必要がります。長期保有であれば住民税負担が軽減されるため、売却タイミングの判断材料となります。税負担の差をシミュレーションできる不動産会社を活用することで、適切な戦略を立てやすくなるでしょう。
譲渡所得には、所得税のほかに住民税も課税されます。こちらも所得税と同様に、所有期間に応じて税率が変わります。
【住民税率】
・短期譲渡所得(所有期間5年以下): 9%
・長期譲渡所得(所有期間5年超): 5%
たとえば短期譲渡で1,000万円の利益が出た場合、住民税だけで90万円を納める必要があります。さらに、所得税や復興特別所得税も加わるため、実際の手取り額は大きく変わってきます。
一方で、長期保有により住民税率が下がるため、売却のタイミングを見極めることが節税の重要なポイントです。最近では、保有年数による税負担の違いをシミュレーションできる不動産会社も増えており、こうしたサービスを活用することで、より有利な売却戦略を立てやすくなるでしょう。
復興特別所得税
復興特別所得税は、2011年の東日本大震災からの復興財源を確保するために導入された税金です。所得税額に対して2.1%を上乗せして納める仕組みとなっており、すべての納税者が対象となります。たとえば、長期譲渡所得では所得税15%に対して0.315%が加算され、実質15.315%の税率となります。一方、短期譲渡所得では約30%に0.63%が上乗せされ、実質30.63%の税率となるため、最終的な負担率はさらに高くなります。
【復興特別所得税】
・短期譲渡所得の場合:
所得税(約30%)+ 復興特別所得税(所得税額の2.1%) = 合計 約30.63%
・長期譲渡所得の場合:
所得税(15%)+ 復興特別所得税(所得税額の2.1%) = 合計 15.315%
復興特別所得税は、所得税と合わせて確定申告時に申告・納付する必要があります。住民税と合わせた「総税負担」は無視できない額になることもあるため、売却前に試算しておくことが重要です。不動産の売却を検討する際は、復興特別所得税を含めた正確な税負担を把握し、計画的に資金管理を行いましょう。
売却益発生時にかかる税金の計算方法
税金の計算は一見複雑に見えますが、基本の仕組みを理解すればおおよその税額を自分で把握することが可能です。
ここでは、譲渡所得の求め方から税率の仕組み、そして実際の申告時に注意すべきポイントまでを順を追って解説します。
(1)譲渡所得について理解する
不動産売却における課税の基礎となるのが「譲渡所得」です。譲渡所得は売却価格ではなく、売却に伴う諸経費や購入時の費用を差し引いた「実際のもうけ」を指します。具体的には以下の2つから、購入時の取得費を差し引いて算出します。・取得費:
不動産の購入代金や購入時にかかった仲介手数料、税金などの合計額
・譲渡費用:
売却時にかかった仲介手数料や印紙税などの経費
取得費を求める際には、建物部分に対して「減価償却費」を考慮する必要があります。減価償却費は「建物購入代金×0.9×償却率×経過年数」で計算し、経過年数は6か月以上を1年、6か月未満は切り捨てます。土地には適用されず、あくまで建物の価値減少分を反映するものです。
償却率は建物の構造や用途によって国税庁が定めており、判断が難しい場合は税務署や税理士に相談すると安心です。
(2)課税対象となる譲渡所得を求める
譲渡所得を算出したあとは、特例によって控除を受けられるかどうかを確認します。代表的なのは「居住用財産の3,000万円特別控除」や「空き家の3,000万円特別控除」です。特例が適用される場合、譲渡所得から控除額を差し引くことで課税対象となる所得が減少します。計算式は「課税譲渡所得=譲渡所得-特別控除額」となり、控除が大きいほど課税される金額は小さくなります。
たとえば、譲渡所得が2,500万円で3,000万円の特別控除が適用される場合、課税譲渡所得はマイナスとなりますが、その場合はゼロとして扱われ課税されません。
特例を受けるには、確定申告で適用条件を満たしていることを証明する必要があります。控除制度を正しく理解し、どの特例が利用できるかを事前に確認することで、不要な税負担を避けられるでしょう。
(3)税率をかける
最後に、課税譲渡所得に、所有期間に応じた税率をかけて最終的な税額を算出します。・税額 = 課税譲渡所得 × 税率
例として、取得費が4,300万円(購入代金4,000万円+諸経費300万円)の物件を5,000万円で売却し、譲渡費用が300万円、建物の減価償却費が100万円だったケースを考えてみましょう。
・譲渡所得:5,000万円 - ( (4,300万円 - 100万円) + 300万円 ) = 500万円
この500万円の譲渡所得に対して所有期間に応じた税率をかけると、以下のとおりです。
・短期譲渡所得の場合 (税率約39.63%): 約198万円
・長期譲渡所得の場合 (税率約20.315%): 約101万円
ただし、もし「3,000万円特別控除」が適用できれば、課税譲渡所得はゼロとなり、税金はかかりません。
土地の売却にかかる税金のシミュレーション
ここでは、長期譲渡所得(所有期間5年超、税率20.315%)を想定し、売却金額と取得費に応じた税額の目安を早見表にまとめました。
※以下の表は、譲渡費用を売却価格の3%と仮定し、特別控除を考慮しない場合の概算値です。
| 取得費 | ||||||||
| 2,000万円 | 3,000万円 | 4,000万円 | 5,000万円 | 6,000万円 | 7,000万円 | 8,000万円 | ||
| 売却金額 | 2,500万円 | 約102万円 | ー | ー | ー | ー | ー | ー |
| 3,000万円 | 約203万円 | ー | ー | ー | ー | ー | ー | |
| 4,000万円 | 約406万円 | 約203万円 | ー | ー | ー | ー | ー | |
| 5,000万円 | 約609万円 | 約406万円 | 約203万円 | ー | ー | ー | ー | |
| 6,000万円 | 約609万円 | 約406万円 | 約203万円 | ー | ー | ー | ー | |
| 7,000万円 | 約1,016万円 | 約800万円 | 約609万円 | 約406万円 | 約203万円 | ー | ー | |
| 8,000万円 | 約1,219万円 | 約1,016万円 | 約800万円 | 約609万円 | 約406万円 | 約203万円 | ー | |
| 9,000万円 | 約1,423万円 | 約1,219万円 | 約1,016万円 | 約800万円 | 約609万円 | 約406万円 | 約203万円 | |
| 1億円 | 約1,625万円 | 約1,423万円 | 約1,219万円 | 約1,016万円 | 約800万円 | 約609万円 |
約406万円
|
|
表の内容は のデータを基に、より実態に近い譲渡費用を考慮して再計算したものです。
東京・千葉・埼玉の売却ケース
ポラスの仲介の営業エリアである東京・千葉・埼玉では、地域ごとに売却の背景や物件の特徴が異なります。それぞれのエリアで考えられる税金のポイントを簡単にご紹介します。■東京
東京で投資用不動産やマンションを売却する場合、価格規模や賃貸運用歴、土地・建物の構造などが税負担に大きく影響します。譲渡所得税の税率は、所有期間5年以下なら約39.63%、5年超なら約20.315%と大きく異なります。マンション投資で賃貸収入を得ていた物件では、「居住用の特例」や「3000万円控除」が使えないことが多いため、短期間で売却すると税率面で不利になることがあります。
また、建物部分・土地部分の評価差、耐震基準・リノベーション費用、修繕履歴などが高額な取得費や譲渡費用として認められるかどうかで、最終的な譲渡所得が大きく変わることも珍しくありません。
東京の不動産市場の価格変動は激しいため、中央住宅のように地元のマンション取引データと建物診断を備えたサービスを使えば、売却のタイミング・税金予測が正確になる可能性が高いです。
■千葉
千葉県では、海岸近くや郊外に立地するリゾート地・別荘地の物件、また住み替えで住宅を売って新たに購入するケースが多く見られます。こうした物件を売却する場合、「用途」や「居住期間」が税制適用の可否を左右するポイントです。居住用住宅であれば居住期間や所有期間の要件を満たせば3,000万円特別控除がありますが、別荘やセカンドハウス的な物件ではその対象外になることが多く、税率が高い短期譲渡所得が適用になるケースもあります。所有期間が5年未満だと39.63%、5年超なら20.315%程度の税率差が出ます。
また、リゾート地だと物件の取得費・維持費が高くなることがあり、これらのコストを取得費や譲渡費用として適切に計上することで実質手取りを保つ工夫が重要です。千葉・房総など地域特性に通じている不動産会社なら、このあたりのコスト見積もりが現実的で、税金対策でも有利に動けることが多いです。
■埼玉
埼玉県で住宅地を売却する際、また相続物件を手放す際には、「所有期間」と「居住歴」が税金の負担に大きく影響します。売却益=譲渡所得には、売却価格から取得費・譲渡費用を差し引いた金額が対象となり、所有期間が5年を超えると「長期譲渡所得」として税率が低くなります。短期譲渡の税率は約39.6%、長期譲渡では約20.3%となります。
相続の場合には、被相続人の購入価格などを引き継ぐ「取得費加算の特例」が適用されるケースもあり、実際に税額を抑えられる可能性があります。住宅を居住用として使っていた場合、3,000万円の特別控除も利用でき、負担を大幅に軽減できます。
埼玉の住宅街では家の築年数や立地による資産価値の差が大きいため、過去の取引データや建物診断を用いた査定を行う会社を選びましょう。
売却時の税金を節約できる特例
不動産売却では、税負担を軽減するためのさまざまな特例制度が用意されています。ここでは代表的なものをいくつかご紹介します。
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例
「居住用財産を譲渡したときの3,000万円特別控除の特例」は、自宅や過去に住んでいた住宅を売却する際に利用できる制度です。譲渡所得から最大3,000万円を差し引くことができ、所有期間の長短に関係なく適用されます。対象となるのは、現在住んでいる住宅、または住まなくなってから3年以内に売却した住宅です。
ただし、前年や前々年に同じ特例を利用していないこと、親子や夫婦など特別な関係者への譲渡でないことなど、いくつかの要件を満たす必要があります。また、別荘やセカンドハウスなどの趣味目的の住宅は対象外です。
特定の居住用財産の買換え特例
「特定の居住用財産の買換え特例」は、現在の自宅を売却して新しい住まいを取得する際に、譲渡益への課税を将来へ繰り延べることができる制度です。簡単に言えば、売却で利益が出てもすぐには課税されず、次に売却する時点まで課税が先送りされる仕組みです。新しい住宅の購入価格が売却価格以下であれば、譲渡がなかったものとみなされ、課税対象から外れます。
ただし、適用にはいくつかの条件があります。新居の取得時期が旧宅の譲渡から一定期間内であること、旧宅・新宅の双方が居住用であること、さらに所有期間や居住実績など、複数の要件を満たさなければなりません。また、親族間の譲渡や別荘、賃貸用物件などは対象外です。
恒久的な制度ではなく、時限立法として期限が設けられています。年度ごとに適用条件や期限が改正されることもあるため、利用を検討する際は最新の法令を確認することが重要です。
10年超所有軽減税率の特例
「10年超所有軽減税率の特例」は、10年以上所有していた居住用不動産を売却した場合に適用される制度で、通常の長期譲渡所得よりも低い税率で課税されます。具体的には、譲渡所得6,000万円以下の部分に対して、所得税と住民税を合わせた税率が14.21%となり、6,000万円を超える部分については通常の長期譲渡所得税率20.315%が適用されます。
この特例は、長期的に住み続けたマイホームの売却時に税負担を軽くすることを目的としています。たとえば、長年住み慣れた家を売却して新しい生活を始める高齢者などにとって、手取り額を大きく保てる点が大きなメリットです。
また、「居住用財産の3,000万円特別控除」と併用できるケースも多く、条件を満たせばさらに節税効果が高まります。
ただし、適用には所有期間が10年を超えていることに加え、実際に居住していた期間や他の特例との併用制限など、細かい要件があります。
居住用財産買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
不動産の売却で損失が出た場合に、一定の条件を満たせばその損失を給与所得や事業所得など他の所得と相殺できる制度です。これを「損益通算」といい、所得全体から損失分を差し引くことで、課税所得を減らすことができます。さらに、1年で控除しきれなかった損失は、翌年以降3年間にわたって「繰越控除」として活用でき、継続的に税負担を抑えられます。
適用を受けるには、旧居宅が居住用であること、所有期間が5年以上であること、床面積が50㎡以上であることなど、複数の条件を満たす必要があります。また、買い替え先となる新居の取得時期や居住要件も重要です。
特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」は、買い替えを伴わずに自宅を売却して損失が出た場合に利用できる制度です。居住用財産を売却して赤字が生じた際、その損失を他の所得と通算でき、なお控除しきれなかった部分を3年間繰り越して差し引くことができます。これにより、翌年以降の税負担を継続的に軽減することが可能です。適用条件としては、売却した住宅が実際に居住していた家であること、所有期間が5年以上、床面積が50㎡以上であることなどが挙げられます。また、住宅ローンの残債が売却価格を上回るケースでも、この特例を活用することで税制上の救済が受けられる場合があります。買い替えを伴う特例とは異なり、単独の売却でも利用できる点が特徴です。
不動産売却で税金がかからないケース
不動産を売却したからといって、必ずしも税金が発生するわけではありません。ここでは、不動産売却において税金がかからない主なケースについて解説します。
ケース① 譲渡所得がゼロまたはマイナス(赤字)の場合
不動産売却では、「譲渡所得=売却価格-取得費-譲渡費用」という式で利益を算出します。この結果がゼロまたはマイナスあれば、所得税・住民税・復興特別所得税といった譲渡所得税は課されません。また、建物部分については減価償却費を考慮して取得費を算出するため、経年によってコストが増え、結果的に利益が出ないこともあります。
このような場合、確定申告で「譲渡所得なし」と扱われることが多く、申告義務が発生しないケースもあります。ただし、税務調査などに備えて、取得費や譲渡費用を証明できる書類を保管しておくことが重要です。
ケース② 相続した不動産を売却する場合
相続によって取得した不動産を売却する際には、「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除」が適用できる場合があります。この制度を利用すると、最大3,000万円の控除を受けることができ、課税対象となる所得を大幅に減らせます。対象となるのは、被相続人が亡くなるまで実際に住んでいた家屋やその敷地であり、相続後の一定期間内に売却すること、または家屋を取り壊して土地として売却することが条件です。
ただし、家屋が古すぎる場合や相続後に賃貸・事業用に転用している場合は対象外となります。さらに、申告時には登記事項証明書や取り壊し証明書などの添付書類が求められるため、準備を怠ると控除が適用されないこともあります。
ケース③ 電子契約の場合
通常、不動産売買契約書を紙で作成する場合には、契約金額に応じた印紙税が課されます。しかし、電子契約を用いて契約書を作成すれば、その文書は「課税文書」に該当しないため、印紙税が不要になります。電子契約とは、契約内容を電子データとして作成し、電子署名によって法的効力を持たせる仕組みです。この方法を利用すれば、たとえば数千万円規模の不動産取引でも、印紙代として数万円から数十万円のコストを節約できます。
ただし、契約のすべてが電子ベースで完結していること、電子署名や認証などの法的要件を満たしていることが条件です。
不動産売却で税金がかからないときの注意点
「自分の場合は税金がかからないはず」と思っていても、注意すべき点があります。ここでは3つの注意点を紹介します。
注意① 「税金がかからない」と思い込まない
不動産売却で税金がかからないと思っていても、取得費や譲渡費用の証明が不足していたり、建物の減価償却の計算を誤ったりすることで、譲渡所得の計算結果が変わり、実際には税負担が発生することがあります。「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除」などの特例も、過去の居住履歴や売却の時期、売却前に賃貸など他の用途に変更していないかなど、細かい要件を満たしていなければ利用できません。想定外の課税を避けるためにも、ご自身のケースで制度が適用できるか、事前に不動産会社や税理士に確認し、見通しを立てておくことが重要です。
注意② 法律で定められた「適用条件」と「期限」を必ず守る
特例を使って税金をゼロにするためには、法律で定められた「適用条件」と「期限」を必ず守る必要があります。たとえば「3,000万円特別控除」では、売却する住宅がご自身の居住用であること、住まなくなってから一定期間内に売ること、売却した年の前年・前々年にこの特例を利用していないことなどの要件があります。「買い換え特例」や「軽減税率の特例」なども、売却や新居取得の時期、所有・居住期間に期限が定められています。法改正で制度内容が変わる可能性もあるため、最新の国税庁の規定などを確認し、適用対象外のまま申請して後から追徴課税されるといったリスクを避けることが重要です。
注意③ 確定申告を行う
不動産売却で特例を利用して課税譲渡所得がゼロになる場合でも、確定申告を行わなければ特例は適用されず、結果として税金がかかる可能性があります。申告の際には「譲渡所得の内訳書」のほか、売却した物件に住んでいたことを証明するための「住民票の除票」などの書類が必要となります。書類が不足すると特例が認められなかったり、後から税務調査で指摘を受けたりすることがあります。「税金がかからない」と思っていても、申告漏れや書類の不備で課税されるリスクがあるため、申告の要否・期限・必要書類を事前に確認し、適切に対応しましょう。
売却時の税金を節約する方法
最後に、税金の負担を抑えるためにできる具体的な方法をいくつかご紹介します。ここで紹介する方法を実践して、税金をすこしでも節約することをおすすめします。
方法① 取得費が分かる資料を探す
不動産売却の税金計算では、売却価格から差し引く「取得費」を正確に把握することが重要です。購入時の契約書や建築明細書、各種領収書などが手元にあれば、支払った金額を証明できます。購入時の仲介手数料や登記費用、不動産取得税、建築代金なども取得費に含められます。もし書類が見当たらない場合でも、固定資産税評価証明書や登記簿謄本などから購入価格の手がかりを得られることがあります。取得費を正しく証明できれば譲渡所得が減り、結果的に課税額を抑えられるため、売却前に可能な限り資料を整理しておくことが望ましいでしょう。
方法② 取得費に加算できるものを加える
取得費には、物件の購入代金だけでなく、購入時に支払った仲介手数料、契約書の印紙税、不動産取得税、登録免許税といった諸費用も加算できます。また、建物の増改築費用や土地の造成・測量費なども含まれます。ただし、建物部分は年数の経過によって価値が減少するため、減価償却後の価値を取得費とします。所有期間中に価値が下がっている場合は、償却費を考慮して計算する必要があります。取得費を正しく計上して課税対象の所得を減らすため、領収書などを整理し、不動産会社や税理士に相談して加算可能な費用を把握しておきましょう。
方法③ 概算取得費の特例を利用する
購入時の資料が残っておらず取得費が不明な場合は、「概算取得費の特例」を利用できます。これは、売却価格の5%を取得費として扱える制度です。たとえば、先祖から受け継いだ古い不動産などで購入時の代金が記録されていないケースなどで有効です。もちろん、実際の取得費が分かる場合は、実額と概算額を比較して有利な方を選べます。概算取得費を使うことで不利な状況を回避し税負担を抑えられますが、譲渡費用の計上など他の条件も正しく整えておくことが前提です。
方法④ 建物の取得費に減価償却費を反映する
建物部分の取得費は、購入価格から「減価償却費」を差し引いて計算する必要があります。これは、建物の価値が経年で減少するという考え方に基づく税法上の仕組みです。減価償却費は、建物の構造(木造、鉄筋コンクリート造など)、耐用年数、取得時期によって異なります。計算式の一例として「建物の購入価格 × 0.9 × 償却率 × 経過年数」が用いられます。減価償却費を正しく計算することで取得費が明確になりますが、耐用年数を超えた場合や、ご自宅用か事業用かといった用途ごとのルールにも注意して計算しなければなりません。
方法⑤ 譲渡費用をもれなく計上する
譲渡所得の計算では、取得費だけでなく「譲渡費用」も売却価格から差し引くことができます。譲渡費用として認められるのは、不動産会社へ支払う仲介手数料、売買契約書に貼付した印紙代、土地の測量費、建物の解体費、入居者に支払った立退き料などです。これらを正しく計上すれば譲渡所得を小さくでき、結果的に税負担を抑える効果が期待できます。契約前にどの費用が譲渡費用として認められるかを不動産会社に確認し、漏れなく整理しておくことが重要です。
方法⑥ 売却のタイミングを見極める
不動産を売却した年の1月1日時点での所有期間が5年を超えるかどうかで、税率が大きく変わります。5年を超えると「長期譲渡所得」となり、税率が短期の場合より大幅に下がるため、短期所有の物件は売却時期を少し延ばすことで節税できる場合があります。建物の減価償却や市場価格の動向も踏まえ、売却のタイミングを慎重に判断することが有効です。特に売却益が大きいほど、税率差による影響も大きくなります。市況や需要、近隣の取引価格などを参考に、地域相場に詳しい不動産会社へ相談することで、最適な売却時期を見極めやすくなるでしょう。
方法⑦ 不動産会社に相談してみる
税金の節約方法は制度を知っていても、ご自身の状況に合わせて判断するのは難しいものです。そのため、信頼できる不動産会社に相談することが重要です。不動産会社は過去の売買データや市場動向に基づき、取得費・譲渡費用・減価償却・特例などを総合的にチェックし、税金を見据えた査定や売却プランの比較もおこなえます。
特に地域密着で実績豊富な会社に相談すれば、地元の評価額や過去の取引実績を踏まえた精度の高いアドバイスが得られるため、節税面で大きなメリットが期待できます。
信頼できる不動産会社の選び方
安心して不動産売却を進めるためには、パートナーとなる不動産会社選びが何よりも重要です。以下の3つのポイントを参考に、信頼できる会社を見つけましょう。
ポイント① 十分な実績があるか
不動産会社を選ぶ際は、過去の取引実績を確認することが重要です。戸建て・マンション・土地といった物件の種類や価格帯、地域がご自身のケースに近いものを多く扱っていれば、その会社の力量を判断しやすくなります。会社の創業年数や宅地建物取引業の免許更新回数も信頼の目安です。長く地域で営業している会社は、価格設定や交渉、各種手続きにも慣れており、売却をスムーズに進められる可能性が高いでしょう。また、実際に利用した売主様の口コミや評価も参考になります。
ポイント② 査定価格の根拠を明確に説明できるか
信頼できる不動産会社は、査定価格の根拠を具体的に示してくれます。過去の類似物件の取引事例や地域の相場、建物の状態などを基に、なぜその価格になるのかを分かりやすく説明してくれる会社を選びましょう。仲介手数料や印紙税などのコストを隠さず説明してくれる誠実さも大切です。また、契約書の解除条件や契約不適合責任の扱いなどに曖昧さがないかを確認し、担当者が疑問に誠実かつ迅速に答えてくれるかをチェックしましょう。
ポイント③ 地域情報に精通しているか
地域に詳しい不動産会社は、学区や交通アクセス、将来の再開発計画、周辺環境など、インターネットだけでは得られない情報を把握しています。こうした地域情報をもとに適正な査定価格を算定でき、売却益や税金の見込みを現実的に立てることが可能です。また、地元の購入希望者や地主とのネットワークにより、買い手を見つけやすくなることも期待できます。「地域力」は、売却のスピードと価格の両方に直結するため、会社選びにおける重要な基準となります。
まとめ
土地を売却する際は、印紙税や登録免許税、譲渡所得税などさまざまな税金がかかります。単純に売却価格だけで利益を考えるのではなく、税金や諸費用も含めてどれくらいの利益が出るか計算することが大切です。
税制や特例、控除などについて詳しく知りたい方は、専門家である不動産会社に相談してみるのがおすすめです。
監修者

大沼 春香(おおぬま はるか)
宅地建物取引士
埼玉県・千葉県・東京都一部に拠点を置く
不動産売買仲介会社に15年以上従事。
自身も不動産購入を経験し「初心者にもわかりやすい」
実態に基づいたパンフレット・資料に定評がある。
最近はWEBや自社セミナーなどでの情報発信も行っている。