不動産売却で必要となる「仲介手数料」について
- 上限額の計算方法から支払いタイミング、例外的に高くなるケースまで、網羅的に解説します。
- 手数料が不要になるケースや、手数料以外にかかる諸費用、信頼できる不動産会社の選び方もご紹介。
- 売却を成功させるための知識が身につきます。
仲介手数料は売却にかかる費用の中でも大きな割合を占めるため、仕組みを正しく理解しておくことが大切です。
本記事では、仲介手数料の基本的な内容から、法律で定められた上限額の計算方法、支払いタイミング、そして仲介手数料が不要になるケースまで分かりやすく解説します。
目次
仲介手数料とは、不動産会社に売却の仲介を依頼し、無事に買主が見つかって売買契約が成立したときに支払う「成功報酬」のことです。そのため、万が一売却に至らなかった場合は、仲介手数料を支払う必要はありません。
支払うタイミングは、不動産会社と媒介契約を結んだときではなく、売買契約が成立した際に半額、物件の引き渡し時に残りの半額を支払うのが一般的です。なお、不動産会社が法律で定められた上限額を超えて仲介手数料を請求することは、法令で禁止されています。
仲介手数料の上限と計算方法
仲介手数料は、依頼者を保護するために法律で上限額が定められています。ここでは、仲介手数料の上限額と具体的な計算方法について解説します。
仲介手数料の上限
仲介手数料の上限額は、不動産の売買価格に応じて、以下のように3段階に分けて法的に定められています。・200万円以下の部分:売買価格 × 5%
・200万円を超え400万円以下の部分:売買価格 × 4%
・400万円を超える部分:売買価格 × 3%
例えば「物件価格1,000万円(税別)」の場合、仲介手数料の上限は次のように計算されます。
200×5.5%+200×4.4%+ (1,000-400)×3.3%=上限39.6万円
このように仲介手数料の上限額は39万6,000円となります。
参考:国土交通省|建設産業・不動産業:<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ
仲介手数料の上限と計算方法
仲介手数料の計算には、法律の規定通りに計算する方法と、より簡易的に計算できる速算式の2つの方法があります。・段階的計算法
・速算式
段階的計算法とは、売買価格を上記の3つの区分に分け、それぞれに定められた割合を掛けて算出した金額を合計し、最後に消費税を加える方法です。
一般的に使われるのが、計算を簡単にした速算式です。特に売買価格が400万円を超える場合は、以下の式で上限額を算出できます。
(売買価格 × 3% + 6万円) + 消費税
例えば、売買価格が3,000万円の場合、の速算式を用いると「(3,000万円 × 3% + 6万円) + 消費税」となり、仲介手数料の上限額は105万6,000円(税込)となります。
仲介手数料が高くなる例外
原則として仲介手数料は法律で定められた上限額を超えることはありませんが、特定のケースでは追加の費用が認められることがあります。ここでは2つのケースを紹介します。
【ケース①】依頼者が特別な対応をお願いした場合
まず、売主が不動産会社に対して「通常業務の範囲を超える特別な対応」を依頼した場合です。例えば、高級住宅向けの特別な広告掲載や、遠方に住む買主候補との面会などが該当します。追加費用は実費で精算されるのが基本であり、不動産会社が自由に金額を上乗せすることはできません。また、必ず不動産会社からの事前説明と依頼者の同意が必要であり、知らないうちに追加費用を請求されることはありません。
トラブルを避けるためにも、媒介契約を結ぶ前に「特別な費用が発生するケース」について確認し、不安な点は早めに解消して納得した上で契約を進めることが大切です。
【ケース②】800万円以下の空き家や空き地を売る場合
2024年の法改正により、売買価格が800万円以下の空き家や空き地(低廉な空き家等)の売却において、仲介手数料の上限を「最大33万円(税込)」まで設定できる特例が導入されました。本来なら数万円程度で済む手数料が3倍以上に跳ね上がる可能性があるため、売主にとっては「割高」に感じられる場合があります。特例を適用する場合、不動産会社からの事前説明と売主の合意が必須です。契約前に手数料の妥当性をしっかりと確認しましょう。
仲介手数料の支払いタイミング
仲介手数料は、不動産会社が売却を成立させた場合にのみ発生する「成功報酬」であり、媒介契約を結んだ段階では請求されません。実際に発生するのは売買契約が成立したタイミングです。
支払い方法として一般的なのは「売買契約時に半額、引き渡し時に残額」という2回払いの形態ですが、契約によっては「決済時に一括払い」とされる場合もあります。
また、住宅ローンを利用するケースでは決済と同時に支払うことが多く、資金の流れと合わせて処理されるのが実情です。
支払い手段は現金払いが原則とされていますが、近年は銀行振込に対応している不動産会社も少なくありません。いずれの場合も、媒介契約を結ぶ段階で支払いの時期や方法を確認しておくことで、後々のトラブルを避け、安心して取引を進められるでしょう。
仲介手数料以外に発生する費用
不動産売却では、仲介手数料以外にもいくつかの費用が発生します。事前に全体像を把握し、売却計画に組み込んでおくことが重要です。
ここでは仲介手数料以外に発生する費用を紹介します。
印紙税
印紙税は、不動産売買契約書に貼付する収入印紙の代金です。税額は契約金額に応じて段階的に定められています。例えば、契約金額が500万円超1,000万円以下の場合は1万円ですが、軽減措置により5,000円となります。軽減措置は2027年3月31日まで適用される予定のため、それ以降は税額が変更される可能性に注意が必要です。
登録免許税(登記費用)
住宅ローンが残っている物件を売却する場合、抵当権を抹消するための登記に登録免許税が「不動産1件につき約1,000円」かかります。土地と建物があれば、それぞれ1件ずつで合計約2,000円となります。所有権移転登記は買主の負担ですが、抵当権の抹消が完了していないと売却ができないため、売主の責任で確実に対応する必要があります。
司法書士報酬
登記手続きは専門的な知識が必要なため、司法書士に依頼するのが一般的です。抵当権抹消登記の司法書士報酬は数千円から数万円程度で、1万~2万円前後が相場とされています。登記内容が複雑なケースや、住所・氏名の変更登記が伴う場合は追加費用が発生することがあります。余計な出費を避けるためにも、依頼前に見積もりを確認しておくことが重要です。
住宅ローン一括返済手数料
住宅ローンの残債がある場合、売却代金で一括返済する際に、金融機関へ繰り上げ返済手数料を支払う必要があります。手数料の金額は金融機関や手続き方法によって異なり、一般的には5,000円~3万円程度が目安です。売却計画に支障が出ないよう、事前に利用中の金融機関へ確認しておきましょう。
譲渡所得税
不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、売却した翌年の確定申告で所得税と住民税を支払わなければなりません。税率は物件の所有期間によって異なり、5年以下の場合は約39.63%、5年を超える場合は約20.315%が適用されます。ただし、「3,000万円特別控除」などの特例制度を活用することで、税負担を大幅に軽減できる可能性があります。
その他の費用
上記以外にも、物件の状況に応じて以下のような費用が発生することがあります。・ハウスクリーニング代
・建物の解体費用
・土地の測量・境界確定費用
・引越し費用
・税理士への報酬
合計で数十万~数百万円にのぼることもあるため、事前に見積もりを取り、売却計画に組み込んでおくことが重要です。
仲介手数料が不要になるケース
不動産売却では、仲介手数料がかからないケースもあります。ここでは2つのケースを紹介します。
ケース① 不動産会社による買取の場合
不動産会社による直接買取は、仲介手数料が不要で手続きも早いという利点があります。そのため「急いで売却したい」「周囲に知られたくない」といった事情がある人には向いています。ただし、仲介販売のように広告を出して買主同士の競争が起きるわけではないため、売却価格は市場相場より低めになりがちです。そのため、複数社に査定を依頼し、売却価格・スピード・秘密性など、自分が最も優先したい条件を明確にして比較検討することが重要です。
ケース② 売主が自ら買主を見つける場合
売主自身が親族や知人など、買主を直接見つける「自己発見取引」の場合も、仲介を介さないため仲介手数料は不要です。自己発見取引は、一般媒介契約や専任媒介契約を結んでいる場合でも適用されます。ただし、買主が住宅ローンを利用する場合、金融機関から宅地建物取引業者の仲介を求められることがあります。その際は仲介手数料が発生する可能性があるため、注意が必要です。
手数料だけで選ぶのは危険!信頼できる不動産会社の選び方
仲介手数料の安さは魅力的に見えますが、それだけで不動産会社を選ぶと、思わぬ落とし穴にはまることがあります。ここでは、信頼できる不動産会社を見極めるためのポイントを3つ紹介します。
ポイント① 査定価格の根拠を明確に説明してくれるか
仲介手数料の安さだけで不動産会社を選ぶと、広告活動が十分に行われなかったり、サポートが手薄になったりして、結果的に希望価格で売れず損をする可能性があります。信頼できる会社かどうかを見極めるには、複数社に査定を依頼し、「査定価格の根拠が具体的か」「担当者の説明や対応が丁寧か」といった点を比較することが重要です。
極端に高い査定額を提示したり、内容の薄い査定書を出す会社には注意が必要です。売却実績や広告手法、顧客満足度など、手数料以外の総合的なサポート力を重視することが、納得できる売却につながります。
ポイント② 売りたい物件種別の売却実績が豊富か
マンション、一戸建て、空き家など、売却したい物件の種類で豊富な実績を持つ会社を選ぶことが重要です。特定の分野を得意とする会社は、物件の魅力を最大限に引き出す広告戦略やノウハウを持っており、スムーズかつ高値での売却につながりやすくなります。会社の仲介実績件数や利用者の満足度も、重要な判断材料です。実績豊富な会社ほど安心感と信頼性を与えてくれます。
ポイント③ 地域情報に精通しているか
売却を成功させるには、地域の市場動向や需要を熟知した地域密着型の不動産会社に依頼するのが有効です。こうした会社は適切な販売戦略を立て、迅速に対応してくれる傾向にあります。さらに、エリア特有のターゲット層や効果的な広告媒体を理解しているため、売却活動の効果を高めやすい点も大きな魅力です。
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仲介手数料に関するよくある質問
最後に、仲介手数料に関するよくある質問にお答えします。
Q.仲介手数料は不動産会社によって異なる?
A.仲介手数料には法律で定められた上限がありますが、下限はありません。そのため、同じ物件であっても、不動産会社によっては「無料」や「半額」でサービスを提供している場合があります。Q.仲介手数料は値引きできる?
A.法律で定められた上限額の範囲内であれば、値引き交渉は可能です。不動産業界の繁忙期(2〜4月)や人気物件では交渉が難しい一方、閑散期(5〜8月)や競合が少ない物件では応じてもらいやすい傾向があります。交渉する際は、信頼関係を大切にし、礼儀正しい姿勢で臨むことが重要です。
Q.契約解除になったら返金してもらえる?
A.住宅ローン特約などによる「白紙解除」の場合、契約自体がなかったことになるため、仲介手数料は請求されないのが一般的です。しかし、買主や売主の都合による手付解除や違約解除の場合、不動産会社に責任はないため、仲介手数料の支払い義務が残ることが多く、返金は難しいでしょう。
媒介契約を結ぶ際に、契約解除時の手数料の取り扱いについて確認し、必要に応じて特約で明記しておくと安心です。
まとめ
仲介手数料は売却における主要な経費であり、法律で上限が定められた成功報酬です。仕組みを理解し、手数料以外に発生する費用も含めて計画的に進めることが大切です。
また、不動産会社を選ぶ際は、手数料の安さだけにとらわれず、査定の根拠や実績、サポート体制などを総合的に判断しましょう。
ポラスの仲介では、地域に密着した豊富な情報と専門知識を強みに、お客様一人ひとりに寄り添った売却活動を丁寧にサポートしています。不動産売却に関するご相談は、ぜひ当社にお任せください。
監修者

大沼 春香(おおぬま はるか)
宅地建物取引士
埼玉県・千葉県・東京都一部に拠点を置く
不動産売買仲介会社に15年以上従事。
自身も不動産購入を経験し「初心者にもわかりやすい」
実態に基づいたパンフレット・資料に定評がある。
最近はWEBや自社セミナーなどでの情報発信も行っている。