売却が完了するまでには一定の時間がかかることがほとんどですから、売却を検討している場合には余裕をもって計画を立てることが大切です。
そこで今回は、不動産を売却する際の一連の流れについて、段階ごとに詳しく説明していきます。
不動産売却の全体像
不動産売却を成功させるためには、まず全体的な流れと期間、そしてどのような売却方法があるのかを把握することが重要です。
基本的な流れと平均期間
不動産売却にかかる期間は、一般的に「3〜6ヶ月」が目安とされています。ただし、物件の種別によって差があり、マンションは平均3ヶ月程度、戸建ては平均6ヶ月程度で売却されることが多いです。首都圏では一戸建てに11ヶ月、マンションに6ヶ月程度かかるケースもあり、全体としては8ヶ月前後になることもあります。また、土地の売却は境界確定のための測量や契約手続きに時間を要するため、6〜9ヶ月以上かかる場合もあります。
売却方法の種類
不動産の売却方法にはいくつかの種類があります。「仲介」は不動産会社に買主を探してもらう最も一般的な方法で、相場に近い価格で売れる可能性が高い一方、売却が完了するまでの期間は不確定です。
仲介の契約には「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」の3種類があり、それぞれ報告頻度や自分で買主を見つける自己発見取引の可否が異なります。
次に「買取」は不動産会社が直接物件を購入する方法で、すぐに現金化できるメリットがありますが、価格は相場の7割程度など、安くなる傾向があります。
その他、住宅ローンの返済が困難な場合に金融機関の承諾を得て行う「任意売却」や、売却後も賃貸として住み続けられる「リースバック」、一定期間内に売れなければ不動産会社が買い取る「買取保証付き仲介」といった選択肢も存在します。
□参考①
コラム「不動産売却の仲介とは?メリット・デメリットや業者の選び方も解説」
□参考②
コラム「不動産買取のメリット・デメリットを徹底比較!仲介との違いやデメリットへの対策も」
不動産売却のステップ
不動産売却は、一般的に以下の7つのステップで進められます。各ステップの内容を理解し、計画的に準備を進めましょう。
【STEP 1】物件状況と相場の確認
売却の第一歩として、所有物件の築年数、劣化状態、立地環境といった現状を整理し、基本情報を正確に把握します。次に、近隣の類似物件の成約事例や公示地価などを参考に市場相場を調査します。国土交通省の「不動産情報ライブラリ」などが有益な情報源となります。
【STEP 2】査定依頼と不動産会社の選び方
相場を把握したら、不動産会社に査定を依頼します。まずは概算価格を知る「机上査定」を複数社に依頼し、その結果から信頼できそうな会社を絞って、より詳細な「訪問査定」に進むのが一般的です。複数社に依頼することで、価格だけでなく担当者の対応や実績、提案力も比較でき、最適なパートナー選びに役立ちます。査定内容や営業姿勢、過去の実績、口コミなどを総合的に評価し、最も信頼できる会社を選ぶことが重要です。
【STEP 3】媒介契約と販売活動
依頼する不動産会社が決まったら、「媒介契約」を結びます。契約後、売り出し価格を正式に決定し、広告作成やチラシ配布、ウェブサイトへの掲載といった販売活動が本格的にスタートします。売主と不動産会社が協力し、物件のアピールポイントを整理してターゲット層を明確にすることで、効果的な販売戦略を立てやすくなります。
【STEP 4】内覧対応と購入申込・交渉
販売活動を通じて購入希望者から問い合わせがあれば、内覧対応が必要になります。内覧は物件の魅力を直接伝える重要な機会です。購入の申し込みがあれば、価格や引き渡し時期、手付金の額などについて、不動産会社を介して交渉が行われます。交渉に臨む際は、事前に譲れない条件や最低希望価格を整理し、不動産会社に伝えておくことで、スムーズな交渉につながります。
【STEP 5】売買契約の締結と手付金受領
交渉で双方が合意すれば、売買契約を締結します。売主・買主・不動産会社が同席のもと、宅地建物取引士から「重要事項説明」を受け、契約書に署名・捺印し、買主から手付金を受領します。この際、仲介手数料の支払い条件も確認しておきましょう。一般的には契約時と引き渡し時に50%ずつ支払います。権利証や印鑑証明書など、契約に必要な書類を事前に準備しておくことが求められます。
【STEP 6】決済・引き渡し(残金受領・抵当権抹消)
契約後は、決済と物件の引き渡しを行います。売主・買主・不動産会社・司法書士などが立ち会い、残代金の受領、所有権移転登記の申請、住宅ローンが残っている場合は抵当権の抹消手続きなどを同日に行います。同時に、残ローンの完済、仲介手数料の残額支払い、固定資産税などの精算、鍵の引き渡し、公共料金の精算なども行われ、これをもって売却手続きは完了です。
【STEP 7】確定申告(売却益・損失の申告)
不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合や、特定の特例を利用して損失を繰り越す場合は、売却した翌年に確定申告が必要です。居住用財産の売却では、最大3,000万円の特別控除や所有期間に応じた軽減税率などの特例を活用できる可能性があります。初めての売却で判断が難しい場合は、税理士などの専門家へ相談することも有効です。
不動産売却にかかる費用と税金
不動産売却には、仲介手数料のほかにもさまざまな費用や税金がかかります。事前に把握し、資金計画を立てておくことが大切です。
仲介手数料・司法書士報酬などの諸費用
不動産売却時にはまず仲介手数料が発生します。売却額が400万円を超える場合、上限は「売却額×3%+6万円(税別)」で計算され、例えば5,000万円で売却した場合の手数料は約171万6,000円が目安です。住宅ローンが残っている場合は抵当権抹消登記が必要で、登録免許税(1件あたり1,000円程度)と司法書士報酬(2~3万円程度)がかかります。その他、状況に応じて土地の測量費用(35万~100万円)、建物の解体費用(100万~300万円)、ハウスクリーニング費用(5万~15万円)、引越し費用(5万~30万円程度)などが発生することもあります。
印紙税・登録免許税・抵当権抹消費用
売買契約書には印紙税が課され、売買価格に応じて1,000円~6万円程度が必要です。軽減措置を利用すれば、5,000万円以下の場合は1万円となります。また、抵当権を抹消する際には登録免許税が1物件あたり1,000円かかり、司法書士への報酬を含めると2万~3万円程度が相場です。さらに、譲渡に伴う所有権移転登記などが必要になる場合もあり、その際には別途登録免許税や司法書士費用が発生します。
譲渡所得税と特例控除
譲渡所得税は「売却価格-(取得費+譲渡費用)」で算出される所得に課税されます。所有期間が5年超の長期譲渡では税率が約20%、5年以下の短期譲渡では約39%です。居住用財産の売却では最大3,000万円の特別控除があり、所有期間10年超の場合は軽減税率も認められるため、課税額を大幅に抑えることが可能です。その他にも条件に応じてさまざまな特例があり、合計で最大5,000万円まで控除できる場合があります。
その他費用(測量・解体・引越しなど)
売却前の準備として、古い土地などで境界が曖昧な場合は確定測量が必要となり、35万~100万円程度の測量費用が発生することがあります。建物を解体してから売却する場合は100万~300万円ほどの解体費用がかかります。また、引越し費用は荷物量や距離によって5万~30万円程度が目安で、繁忙期を避けたり複数業者から見積もりを取ったりすることで節約できます。
売却成功のポイント
不動産売却を成功に導くためには、いくつか押さえておくべき重要なポイントがあります。ここでは4つのポイントを紹介します。
ポイント① 担当者の力量を見極める
不動産売却では、一人の営業担当が査定から引き渡しまでを担うため、その力量が成功の鍵を握ります。レスポンスの速さやコミュニケーション能力、専門知識などをチェックしましょう。地域の相場に精通し、実績豊富な担当者は、売却戦略についてもしっかりと根拠を示して説明してくれます。「必ずすぐ売れる」といった根拠のない発言には注意が必要です。初回の面談時に具体的な販売実績などを質問し、信頼できる担当者かを見極めることが大切です。
ポイント② 複数社に査定依頼する
査定は最低でも3社、できれば4〜5社に依頼するのが望ましいです。複数社に査定依頼することで、適正な相場を把握できます。大手不動産会社は広告力に、地域密着型の会社はきめ細かな対応に強みがあるなど、それぞれの特徴を比較することが重要です。査定額だけでなく、対応の丁寧さや説明の分かりやすさも比較することで、信頼できるパートナーを見つけやすくなります。
ポイント③ 市場分析と販売計画を欠かさない
効果的な販売戦略のためには、市場分析と計画が大切です。査定額の根拠や想定される購入層、周辺の市場状況などを担当者から詳しく説明してもらいましょう。広告の方法や価格を見直すタイミング、内覧の方針といった具体的な販売戦略を提案できる担当者は信頼できます。相場より高めの「チャレンジ価格」で売り出す戦略もありますが、売れ残るリスクも伴うため、慎重な判断が求められます。
ポイント④ 進捗状況を定期的に確認する
売却活動中は、担当者からの報告を待ちつつ、物件の清掃や内覧準備を怠らないようにしましょう。物件の長所だけでなく短所も正直に伝えることで、買主からの信頼を得やすくなります。担当者からの報告頻度や購入希望者の反応を把握しておくことで、必要に応じて販売戦略を修正できます。内覧時の清掃状態や案内の仕方が買主の印象を大きく左右するため、担当者と綿密に準備することが大切です。
まとめ
不動産の売却は、多くのステップを踏む必要があり、期間も費用もかかります。しかし、事前に全体像と流れをしっかりと把握し、計画的に準備を進めることで、不安は大きく軽減されます。
特に重要なのは、信頼できる不動産会社をパートナーに選ぶことです。豊富な知識と経験を持ち、親身になってサポートしてくれる担当者と出会うことが、売却成功への一番の近道と言えるでしょう。
ポラスの仲介では、地域に密着した豊富な情報力と専門知識で、お客様一人ひとりの売却活動を丁寧にサポートいたします。不動産売却に関するご相談は、ぜひ当社にお任せください。
監修者

大沼 春香(おおぬま はるか)
宅地建物取引士
埼玉県・千葉県・東京都一部に拠点を置く
不動産売買仲介会社に15年以上従事。
自身も不動産購入を経験し「初心者にもわかりやすい」
実態に基づいたパンフレット・資料に定評がある。
最近はWEBや自社セミナーなどでの情報発信も行っている。