不動産売却前に名義変更は必要?
- 不動産売却前に名義変更が必要となるケースや、変更せずに売却できるケースを解説します。
- 相続・離婚・贈与など原因別の手続きや必要書類、費用・税金、住宅ローンについても解説。
- 共有名義の注意点や、査定前に確認したいポイントまでわかりやすく紹介します。
名義の状態によって必要な手続きや費用、税金が異なります。確認を後回しにすると、売買契約や決済が予定どおり進まない可能性もあります。
そこで本記事では、不動産売却前に名義変更が必要なケースと不要なケースを整理したうえで、手続きの流れや費用、注意点についてわかりやすく解説します。
目次
不動産売却前に名義変更は必要?
不動産を売却する際、事前の名義変更が必要かどうかは、登記簿上の所有者と実際に売主となる人が一致しているかで判断します。
相続や財産分与などで所有者が変わっている場合は売却前の登記が必要ですが、登記名義人本人が売る場合は、通常、事前の所有権移転登記は不要です。
不動産売却前に名義変更が必要なケース
不動産売却前に名義変更が必要になるのは、相続や財産分与、贈与などによって実際の所有者と登記名義人が異なる場合です。住所や氏名だけが変わっている場合は所有権移転ではなく変更登記を行います。
売却直前に不一致が判明すると日程へ影響するため、早めの確認が大切です。
ここでは、不動産売却前に名義変更が必要なケースを解説します。
【ケース①】相続した不動産が亡くなった人の名義になっている
相続した不動産が亡くなった人の名義のままでは、亡くなった人を売主として売買契約を結ぶことはできません。まず遺言書の有無や相続人を確認し、遺産分割協議が必要な場合は、不動産を誰が取得するかを相続人同士で決めます。そのうえで、取得する相続人への相続登記を完了させてから売却手続きを進めます。
相続登記には、被相続人の戸籍関係書類や相続人の戸籍、遺産分割協議書などが必要です。相続登記は2024年4月1日から義務化されており、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内の申請が原則です。
2024年4月1日より前に相続した不動産も未登記であれば対象となるため、売却予定がある場合は早めに名義を確認しましょう。
【ケース②】離婚の財産分与によって所有者が変わった
離婚届を提出しただけでは、不動産の所有名義は自動的に変わりません。財産分与によって不動産を取得した人が売却する場合は、財産分与の合意内容に基づいて所有権移転登記を行い、その人を登記名義人にしてから売却するのが基本です。たとえば夫名義の住宅を妻が取得するなら、妻名義への変更が必要です。
ただし、不動産の登記名義と住宅ローンの債務者は別の問題です。所有権だけを移しても、ローンの債務者や連帯保証人が自動的に変わるわけではありません。
ローンが残っている物件では、財産分与の内容を確定する前に金融機関へ相談し、名義変更や売却、完済の進め方を確認しておきましょう。
【ケース③】親子や夫婦間の贈与によって所有者が変わった
親子や夫婦の間で、対価を受け取らずに不動産を譲る場合は贈与にあたり、受け取る人への所有権移転登記が必要です。贈与後に受贈者が売却する予定であれば、先に贈与による名義変更を完了させてから、受贈者を売主として売却手続きを進めます。贈与契約の内容を明確にし、登記原因を証明できる書類も用意します。
一方、売却のためだけに贈与で名義を変えると、登録免許税に加えて贈与税や不動産取得税が生じかねません。元の所有者がそのまま売却できるのであれば、贈与を挟まないほうが税負担や手続きが少ないこともあります。
名義を変える目的と税負担を整理し、必要に応じて司法書士や税理士へ確認しましょう。
【ケース④】登記上の住所や氏名が現在と異なっている
引っ越しで住所が変わった場合や、結婚・離婚などで氏名が変わった場合は、住所・氏名変更登記を行います。売却時には本人確認や登記申請で情報の一致が必要になるため、事前に整えておくとスムーズです。住所等変更登記は2026年4月1日から義務化され、変更があった日から2年以内に申請することが原則です。義務化前に住所や氏名が変わっていて未登記の場合も対象となり、2028年3月31日までに変更登記を行わなければなりません。
名義変更をせずに不動産を売却できるケース
不動産を売却するからといって、必ず売却前に所有権の名義を変える必要があるわけではありません。現在の登記名義人本人が売主になる場合や、共有者全員が共同で不動産全体を売る場合は、事前に単独名義へ変更せずに手続きを進められます。
ここでは、名義変更をせずに不動産を売却できるケースをしょうかいします。
【ケース①】登記名義人本人がそのまま売却する
登記事項証明書に記載されている所有者と、実際に売却する人が同じであれば、売却前に別の人へ所有権を移す必要はありません。売買契約では登記名義人本人が売主となり、代金決済と引き換えに、売主から買主への所有権移転登記を申請します。売主が本人であることを確認できるよう、印鑑証明書や本人確認書類なども準備しましょう。
住宅ローンが残っている場合も、売主本人の名義のまま売却できるケースはあります。
ただし、買主へ所有権を移す際には、原則として抵当権を抹消できる状態にしておく必要があります。売却代金でローンを完済する場合は、決済日に完済、抵当権抹消、買主への所有権移転を同時に進めるのが一般的です。
【ケース②】共有者全員が合意して不動産全体を売却する
夫婦や兄弟などの共有名義でも、共有者全員が不動産全体の売却に同意している場合は、あらかじめ一人の名義へまとめる必要はありません。共有者全員が売主となり、それぞれが売買契約や所有権移転登記に必要な意思表示を行うことで、不動産全体を売却できます。一部の共有者だけの判断で、不動産全体を売ることはできません。
共有者の一人が決済に出席できない場合は、委任状を用意して代理人を立てることもあります。手続き方法は不動産会社や司法書士と事前に確認しましょう。
不動産売却前に名義変更する流れ
売却前に名義変更が必要だと分かったら、まず登記内容を確認し、変更の原因に応じた書類をそろえて法務局へ申請します。
査定や不動産会社への相談は並行して進められますが、売買契約や決済の日程は登記の進行状況を踏まえて調整しましょう。
① 登記事項証明書で所有者・住所・持分を確認する
最初に登記事項証明書を取得し、現在の所有者の氏名や住所、共有持分、抵当権の有無を確認します。戸建ては土地と建物が別々に登記されているため、双方の所有者が一致しているかを確認します。マンションでは、専有部分の所有者に加え、敷地権の内容も見ておきましょう。共有名義であれば持分割合も確認し、誰がどの立場で売主になるのかを不動産会社へ正確に伝えます。抵当権が残っていれば、ローン残高や完済予定、抵当権を抹消できる時期も確認しておきましょう。
② 名義変更の原因に応じて必要書類をそろえる
必要書類は、名義変更の原因によって異なります。相続では被相続人と相続人の戸籍関係書類や、遺産分割をした場合の遺産分割協議書などが中心です。財産分与や贈与による所有権移転では、登記原因を証明する書類や印鑑証明書などを準備します。ケースによっては固定資産評価証明書や住民票なども必要です。
住所変更では住民票や戸籍の附票、氏名変更では戸籍謄本など、登記簿上の情報から現在の情報までのつながりを確認できる書類が必要です。必要書類に不足があると登記が遅れるため、管轄の法務局や司法書士へ事前に確認すると安心です。
③ 法務局へ申請し、完了後に売買契約・決済を進める
書類がそろったら、不動産の所在地を管轄する法務局へ登記を申請します。申請内容に不備がなければ登記が完了し、所有権移転登記の場合は新たな登記識別情報通知が交付されます。
登記申請は所有者本人でもできますが、相続人や共有者が多いケースでは確認事項が増えるため注意が必要です。申請後に補正を求められることもあります。
売却期限が決まっている場合は、不動産会社と司法書士へ早めに相談し、名義変更の完了時期と売買契約・決済の日程を調整しましょう。
不動産の名義変更にかかる費用と税金
不動産の名義変更では、法務局へ納める登録免許税のほか、戸籍や住民票などの取得費がかかります。司法書士へ依頼する場合は報酬も必要です。
さらに、贈与や財産分与では別の税金が関係することもあるため、登記費用だけで判断しないようにしましょう。
登録免許税は登記の原因によって異なる
所有権移転登記の登録免許税は、登記の原因によって税率が異なります。相続による所有権移転は、原則として固定資産税評価額の0.4%です。贈与や財産分与など、相続以外の原因による所有権移転は原則2%となります。課税標準には、原則として固定資産課税台帳に登録された価格を用います。
住所・氏名変更登記の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。
土地1筆と建物1棟を変更する場合は、原則として合計2,000円となります。
なお、相続登記では一定の土地について登録免許税が免除される特例があります。適用条件や期限が定められているため、該当する可能性がある場合は申請前に確認しましょう。
司法書士報酬や書類取得費も必要になる
名義変更では、登録免許税以外にも書類の取得費用がかかります。たとえば戸籍謄本や住民票、戸籍の附票、印鑑証明書、固定資産評価証明書などを取得する場合、それぞれの発行手数料が必要です。
相続で戸籍をさかのぼって集める場合は、取得する通数が増えることもあります。自治体や書類の種類によって手数料は異なります。
司法書士へ登記手続きを依頼する場合は、別途報酬が発生します。報酬額は一律ではなく、不動産の数や相続人の人数、書類収集をどこまで依頼するかなどによって異なります。依頼前に見積もりを取り、登録免許税や実費、司法書士報酬の内訳を確認しておきましょう。
贈与や財産分与では登記以外の税金にも注意する
贈与によって不動産を取得すると、受贈者に贈与税がかかる可能性があるほか、不動産取得税も関係します。そのため、売却しやすくする目的だけで親子や夫婦間の名義を変更すると、想定していなかった税負担が生じることがあります。贈与を挟む必要があるかは、売却方法とあわせて検討することが大切です。名義変更前に税負担を試算しておくことが重要です。
離婚による財産分与は、受け取った側に通常は贈与税がかかりません。ただし、財産を渡した側には、時価で譲渡したものとして譲渡所得課税が生じる場合があります。
不動産売却前に名義変更するときの注意点
名義変更は登記だけを見て進めると、住宅ローンや共有者間の代金配分など別の問題が残ることがあります。
とくにローン残債がある物件や相続人・共有者が多い物件では調整に時間がかかるため、売却目的を伝えたうえで関係者へ早めに相談しましょう。
ここでは不動産売却前に名義変更する際に、注意するべき4つのポイントを解説します。
【注意①】住宅ローンが残っている場合は金融機関へ相談する
不動産の登記名義を変えても、住宅ローンの債務者や連帯保証人が自動的に変更されるわけではありません。財産分与や贈与で所有権を移す場合、金融機関との契約内容によっては事前の承諾が必要です。金融機関へ相談せずに名義変更を進めると、契約条件に抵触する可能性があります。ローン契約書の条件もあわせて確認しましょう。売却する場合は、現在のローン残高と想定売却価格を確認し、売却代金で完済できるかを把握しておきましょう。
通常は、買主への所有権移転時までに抵当権を抹消できるよう準備します。売却代金だけでは完済できない場合は自己資金が必要になることもあるため、不動産会社と金融機関の双方へ早めに相談することが大切です。
【注意②】共有持分と売却代金の受取割合を安易に変えない
共有名義の不動産を売却した場合、売却代金は原則として登記上の持分に応じて各共有者が受け取ります。たとえば持分が2分の1ずつであれば、代金もそれぞれ2分の1ずつ受け取るのが基本です。名義変更の前後で持分を変える場合も、実際の資金負担との関係を確認する必要があります。持分の変更自体にも税金が関係することがあります。
登記上の持分と異なる割合で代金を分けると、共有者間の贈与と判断され、贈与税が問題になる可能性があります。仲介手数料や測量費、登記費用などを誰が負担したかによって精算方法も変わるため、入出金の記録を残しておきましょう。
【注意③】相続人や共有者が多い場合は早めに合意を取る
相続人が複数いる場合は、誰が不動産を取得するかについて遺産分割の合意が必要になることがあります。共有名義の不動産を全体として売却する場合も、売却価格や引渡し条件について共有者全員の合意が欠かせません。一人でも意思確認ができないと、予定していた売却を進められないことがあります。
名義変更をしないまま次の相続が発生すると、権利関係者が増え、戸籍の収集や遺産分割協議がさらに複雑になる可能性があります。遠方に住む相続人や共有者がいる場合は、書類の郵送や署名・押印にも時間が必要です。
売却を検討し始めた段階で関係者へ連絡し、合意形成と書類準備を並行して進めましょう。
【注意④】売却直前の名義変更は決済の遅れにつながる
売却直前になって登記名義の不一致が分かると、必要書類の収集や登記申請のために決済日を変更しなければならない可能性があります。特に、住所を何度も変更している場合や古い相続が未登記の場合は、住民票や戸籍だけでは経緯を確認できず、追加書類が必要になることがあります。
義変更が間に合わなければ、買主や金融機関との日程調整にも影響します。不動産会社へ査定を依頼する段階で、現在の名義や住所、相続の状況を伝え、余裕を持って準備しましょう。
不動産売却と名義変更に関するよくある質問
不動産売却では、名義変更が終わるまで査定もできないのか、親名義の物件を子どもが売れるのかなど、手続き前の疑問が生じやすいものです。
ここでは、名義変更と売却の関係についてよくある質問を取り上げ、判断する際のポイントを説明します。
Q. 名義変更前でも不動産査定を依頼できますか?
A. 名義変更が完了していなくても、不動産会社へ査定を依頼したり、売却方法を相談したりすることは可能です。たとえば相続登記の途中であっても、物件の所在地や面積、築年数などの情報を基に査定を進められます。
売却を検討している段階で相談しておけば、名義変更に必要な期間も含めてスケジュールを組みやすくなります。
Q. 親名義の不動産を子どもが代理で売却できますか?
A. 親に不動産を売却する意思と十分な判断能力があり、適切な委任状を用意できれば、子どもが代理人として売却手続きの一部を行える場合があります。この場合の売主はあくまで親であり、代理で手続きをするためだけに子どもへ所有権を移す必要はありません。代理権の範囲は委任状で明確にしておきます。
Q. 不動産の名義変更は自分でできますか?
A. 不動産の名義変更は、司法書士に依頼しなくても申請できます。必要書類をそろえ、登記申請書を作成すれば、所有者本人が管轄の法務局へ申請することもできます。
住所・氏名変更のように比較的単純な登記であれば、自分で進めることを検討しやすいでしょう。法務局の登記手続案内を利用する方法もあります。
まとめ
不動産売却前に名義変更が必要かどうかは、登記名義人と実際に売主となる人が一致しているかで判断します。相続や財産分与、贈与によって所有者が変わっている場合は、売却前に所有権移転登記が必要です。
一方、登記名義人本人が売却する場合や、共有者全員が合意して不動産全体を売却する場合は、事前に別の人へ名義を変更する必要はありません。住宅ローンが残っている場合や相続人・共有者が多い場合は手続きに時間がかかることもあるため、早めに登記状況を確認しておきましょう。
不動産売却を安心して進めるには、名義変更の状況も含めて不動産会社へ早めに相談することが大切です。
ポラスの仲介は、埼玉県・千葉県・東京都を中心に、地域に密着した売却サポートを行っています。名義変更が完了していない段階でも査定や売却相談は可能で、登記の進行状況を踏まえながら、売買契約や決済までのスケジュールをご提案します。
査定は無料です。「相続した不動産が親名義のままになっている」「名義変更をしてから売るべきか分からない」という方は、お気軽にご相談ください。
ポラスの無料査定はこちら