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瑕疵担保責任とは?民法改正で契約不適合責任に!瑕疵を見つけるポイントも解説

2020年4月に120年ぶりともいえる大規模な民法改正がありました。
これまで小さな改正は何度もあったものの、ここまで大規模なものではありませんでした。

今回の民法改正が不動産売買において与える影響は、決して小さくありません。その中でも特に瑕疵担保責任と契約不適合責任については、必ず確認しておきたい改正点です。

目次

瑕疵とは?瑕疵担保責任って何?

改正民法の施行により「契約不適合責任」へと変更された「瑕疵担保責任」の内容とは、どのようなものでしょうか。
ここでは瑕疵担保責任について詳しく解説します。
 

「瑕疵」とは建物の傷や不具合、欠陥のこと

瑕疵(かし)とは、傷や不具合、欠点、欠陥のあることを意味する言葉です。不動産取引においては「建物に傷や不具合、欠陥などがある状態」であることを指します。

この場合の瑕疵は、見てわかる物理的な傷や不具合に限りません。事前に知らされていた住宅の性能や機能、法律上の規制や居住条件などが実際には異なっていて「建物が本来あるべき要件を満たしていない」場合に当てはまります。
 

「瑕疵担保責任」とは瑕疵に対し売主が一定期間負うべき責任のこと

瑕疵担保責任とは、簡単にいうと買主を保護するために制定された制度です。
不動産売買は「法廷責任」とされていたため、売主の責任は売買の対象となった「物件を引き渡す」ことにあり「瑕疵のない物件を引き渡す」義務は負わないとされていました。

そこで建物に瑕疵があった場合、買主を不利益から守るために瑕疵担保責任が設けられました。
買主が通常の注意を払ったうえで発見できなかった物件の瑕疵を「隠れた瑕疵」と呼び、この隠れた瑕疵が瑕疵担保責任の対象となります。

売主は物件の売却後に隠れた瑕疵が発見されたとき「発見後1年間」は買主に対して「損害賠償」、または契約の目的が達成できない場合には「契約解除」の求めに応じる責任を負います

改正により「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」へ

2020年4月、改正民法において、それまでの「瑕疵担保責任」に代わり、「契約不適合責任」が定められました。
瑕疵担保責任とは、売買物件に「隠れた瑕疵」が存在する場合、売主が無過失であったとしても損害賠償や契約解除に応じるというもの。瑕疵担保責任は、売主と買主が不動産の売買取引を行ううえで経済的な不公平が生じないようにするため法で定められた法的責任です。

この瑕疵担保責任に基づく損害賠償や契約解除は、「隠れた瑕疵」が前提であり、「瑕疵が隠れたものでない場合」には法的責任は認められないとされていました。
これに対して、改正後の契約不適合責任は、「目的物に契約内容と異なる点があることが分かった場合」に売主が負う責任のことをいいます。

瑕疵担保責任では瑕疵が隠れたものであるかどうかが重要でしたが、契約不適合責任では瑕疵が隠れたものか否かは問題とされず、「目的物がその種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しているかどうか」が問題となります。

また、瑕疵担保責任に基づく損害賠償や契約解除については、買主が「瑕疵の存在を知った時から1年以内」に「権利行使」しなければならないという期間の制限が設けられていましたが、改正民法では、目的物の種類・品質が契約の内容に適合しない場合には、買主はその旨を「契約不適合を知った時点から1年以内」に「契約不適合の事実を売主に通知」することで権利が保全されることになりました。

さらに、目的物の数量・権利が契約の内容に適合しない場合には、買主は「期間の制限なく」権利を行使することができます。

 

瑕疵に該当するもの

瑕疵の種類① 物理的瑕疵

物理的瑕疵とは、不動産の持つ物理的な欠陥のことをいいます。不動産のうち、建物の瑕疵には雨漏りや床の傾き、シロアリによる床下の腐食などが挙げられます。土地の瑕疵としては、地盤沈下や危険物の埋蔵、土壌汚染などが物理的瑕疵に該当します。
 

瑕疵の種類② 法律的瑕疵

法律的瑕疵とは、法律・条例等の制限により、不動産の使用収益が阻害されていることをいいます。法律や条例などの建築規制があり再建築ができない、などの例が挙げられます。
また、建物の構造上の安全基準が満たされていない、設置義務のある設備が設置されていないなどの理由で、消防法、建築基準法といった法令に抵触しているケースも法的瑕疵に当たる可能性が高くなります。

不動産会社の仲介を通して物件を購入する場合、不動産会社は買主に対し、これらの瑕疵について説明を行う義務があります。そのため、法的瑕疵は不動産会社の重要事項説明義務違反として取りざたされることが多いのが特徴となっています。
 

瑕疵の種類③ 心理的瑕疵

心理的瑕疵とは、不動産の取引において、買主や借主に心理的な抵抗が生じる恐れのあることがらのことをいいます。例えば自殺や殺人、火災など、過去に嫌悪すべき事件・事故等が発生し、本来あるべき住み心地を欠く状態であると判断された場合に認められます。
物件の機能的な瑕疵ではありませんが、不動産の評価に影響することもあるため、売主は知っていながらその事実を説明していないと契約不適合責任を問われる可能性があります。
 

瑕疵の種類④ 環境的瑕疵

環境的瑕疵とは、物件を取り巻く環境上の問題がある状態のことをいいます。心理的瑕疵と似ている部分もありますが、心理的瑕疵が「物件そのものに起きた事象」を対象としているのに対し、環境的瑕疵は「物件周辺に現在起きている事象」を対象としています。

近隣の建物から騒音・異臭・振動・日照阻害・眺望阻害があるなどの例が挙げられます。また、近隣に指定暴力団構成員が居住している、嫌悪・迷惑施設が立地している、などのケースもあります。

改正で変更になった5つのポイント

契約不適合責任が定められたことにより、具体的にどのような点が改正前と変わったのでしょうか?
ここでは改正で変更になったポイントについて詳しく見ていきましょう。
 

ポイント① 買主の権利

契約不適合責任では、改正前の瑕疵担保責任よりも買主の権利が増えました。
瑕疵担保責任では、

①損害賠償請求権
②契約解除権

の二つのみだったのに対し、契約不適合責任では、

①損害賠償請求権
②契約解除権
③代金減額請求権
④追完請求権
⑤無催告解除権
⑥催告追完請求権

が定められています。

中でも注目したいのが【③代金減額請求権】と【④追完請求権】です。
物件に欠陥があった場合の売買では、代金を減額することでトラブルを解決するケースも多いことを受け、買主に代金減額請求権が認められるようになりました。

また、売主は売買契約の内容に適合した不動産を引き渡す義務があるため、目的物の内容に契約との相違があった場合には、買主に補修請求などの追完請求権が認められることとなりました。
 

ポイント② 損害賠償請求には売主の帰責事由が必要に

瑕疵担保責任でも契約不適合責任でも、目的物が契約の内容に適合しない物件を購入した場合、買主は売主に対して損害賠償請求をすることができます。
改正によって変わった点として注目したいのが、買主が損害賠償請求をするためには「売主の帰責事由を要する」ことが必要になったという点です。帰責事由とは、責められるべき理由や過失のことをいいます。

瑕疵担保責任では売主に責任がない瑕疵の場合でも売主に損害賠償義務がありましたが、契約不適合責任では、自己に責任がない瑕疵については、売主は損害賠償義務を負いません。損害賠償義務以外については、買主に帰責事由がある場合を除いて、売主は自己に帰責事由がなくても責任を負います。
 

ポイント③ 損害賠償の対象

損害賠償の範囲も改正によって変わったポイントです。
瑕疵担保責任では、売主による損害賠償の範囲は「信頼利益」までとされていましたが、契約不適合責任では、要件を満たした場合であれば「履行利益」まで認められるようになりました。信頼利益と履行利益の違いは以下の通りです。

信頼利益
契約が有効であると信頼したために失った利益のこと。

履行利益
契約が約定どおり履行された場合に、債権者が得たであろう利益のこと。
 

ポイント④ 権利行使の期間制限の変更

瑕疵担保責任では、損害賠償や契約解除に関する買主の権利行使の期間は「買主が瑕疵の存在を知った時から1年以内」と定められていましたが、契約不適合責任では以下のように新たに定められています。

目的物の種類・品質が契約の内容に不適合の場合
買主が契約不適合を知った時から1年以内に売主にその旨を通知すれば、その後いつ、どのように請求をするかは自由。
 
目的物の数量が契約の内容に不適合の場合
買主は期間の制限なく権利行使できます。ただし、権利を行使することができることを知った時から5年間行使しない場合、または権利を行使することができる時から10年間行使しなかった場合には時効によって債権等が消滅する可能性があるのでご注意ください。
 

ポイント⑤ 損害額の算定が不要に

瑕疵担保責任では、買主が損害賠償請求をする際には、売主に対して「請求する損害額の算定の根拠」を示す必要があるとされていました。
これに対し、契約不適合責任では、買主は売主に対して不適合についての「通知」を行うことで足りるとされています。これにより、買主は損害賠償の額の根拠を示す必要がなくなりました。

瑕疵担保責任の責任範囲

ここでは契約不適合責任の責任範囲について、適用される各法律の観点から詳しく見ていきましょう。
 

民法

瑕疵担保責任において、買主が売主に請求できるのは「損害賠償」と「契約解除」の2つのみでした。契約不適合責任においては、この2つにプラスして「追完請求」、「代金減額請求」などが可能になりました。

追完請求権
追完請求権とは、引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しない場合、買主は売主に対して「目的物の修補、代替物の引き渡し又は不足分の引き渡しによる履行の追完」を請求することができるという権利です。

代金減額請求権
代金減額請求権とは、引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しない場合、買主は売主に対して「代金の減額」を請求することができるという権利です。
 
買主は契約不適合があった場合、まずは追完請求を行い、それが追完されない場合には代金減額請求を行うことになります。追完を催告しても売主の対応がない場合には、催告なしに減額請求を行うことができるとされています。
契約不適合責任の請求が可能な期間にも制限があるため注意しましょう。買主は契約不適合があることを知った時から1年以内に売主に通知を行う必要があります。この期間を過ぎると権利が失われてしまうため、見つけたらすぐに通知をしましょう。

通知をしてあれば、その後いつ請求をするかは買主の自由ですが、ここで注意したいポイントがあります。それは、権利を行使することができることを知った時から5年間行使しない場合、または権利を行使することができる時から10年間行使しなかった場合には、時効によって債権等が消滅する可能性があるということです。買主が契約不適合を知ったときから5年以内に、売主に対して建物の修繕や不足分の引き渡しなど、具体的な対応を請求することが重要です。

また、買主が不適合に気づかない状態でも、引き渡しから10年が経過すると売主に対して請求する権利を失ってしまうため、契約不適合がないかどうかを最初にしっかりチェックすることが必要です。
 

住宅品質確保促進法

住宅品質確保促進法とは、正式には住宅の品質確保の促進等に関する法律といい、住宅性能表示制度や住宅の保証などについて定めた法律です。品確法、住宅品質確保などと呼ばれることもあります。住宅の品質を確保し買主の利益を保護するとともに、住宅に関わる紛争の適正な解決を図ることがこの法律の目的です。

住宅品質確保促進法によって定められた3つの柱となる制度は以下の通りです。

①住宅性能表示制度
住宅性能を契約前に比較できるよう購入者に分かりやすく表示する制度。第三者が客観的に性能を評価できるよう指定住宅性能評価機関が設置され、住宅の品質の確保を図ることを目的としています。

②住宅専門の紛争処理体制
住宅性能評価を受けた住宅に関して引き渡し後に欠陥、不具合などが見つかりトラブルが発生した場合、指定住宅紛争処理機関に紛争処理を依頼することができるというもの。

③新築住宅における瑕疵担保期間10年の義務化
新築住宅の取得契約において、住宅の柱や梁などの構造上主要な部分や屋根などの雨漏りを防ぐ部分に瑕疵(欠陥、工事の不備など)が引き渡し後10年以内に見つかった場合、売主(または施工会社など)は無償補修などを行わなければならないという10年間の瑕疵担保責任(修補請求権等)が義務付けられています。
 

宅地建物取引業法

宅地建物取引業法とは、宅地建物取引の営業をする者に対する免許制度や、その事業に対して必要な規制を定めた法律のことをいいます。

宅地建物取引業法では、買主の利益を保護するため、宅地建物取引業者(不動産会社)自らが売主となる宅地または建物の売買契約においては、その目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任に関し、担保責任の期間を2年以上とする場合を除き、民法の規定よりも買主に不利な特約をすることを禁じています。
このことにより、売主が宅地建物取引業者(不動産会社)である場合、責任義務期間は「物件の引き渡し日から2年」が最低限となっています。
 

瑕疵担保責任の免責特約

不動産売買契約において、瑕疵担保責任(契約不適合責任)の「免責特約」を結ぶ場合があります。
法律の規定には「強制規定」と「任意規定」とがあります。「強制規定」は当事者が特約を設けたとしても内容の変更が許されない既定、「任意規定」は契約書にその規定に関する記述があればそれが優先される規定のことをいいます。記述がない場合には、民法の条文が適用されます。

瑕疵担保責任(契約不適合責任)に関する規定は「任意規定」に当たります。そのため免責特約を結ぶことにより、その内容によって売主の瑕疵担保責任(契約不適合責任)を免除することができます。

瑕疵担保責任(契約不適合責任)の免責特約は、売主と買主、双方の同意がなければ締結することができません。一度契約を結ぶと無効にできないため、買主は免責特約を結ぶ際には十分注意することが大切です。
ただし、以下のような条件に当てはまる場合は免責が認められないこともあります。
 
■売主が宅地建物取引業者(不動産会社)である場合
不動産の売買において、宅地建物取引業者(不動産会社)と消費者では消費者の方が一般的に立場が弱いため、売主が宅地建物取引業者(不動産会社)である場合には瑕疵担保責任(契約不適合責任)の免責が制限されています。

ただし宅地建物取引業者(不動産会社)が売主の場合でも、契約不適合の通知期間を2年以上とする特約を結ぶことは可能です。
また売主・買主双方が宅地建物取引業者(不動産会社)である場合は、瑕疵担保責任(契約不適合責任)の免責を制限する規定は適用されません。
 
■売主が事業者・買主が消費者の場合
売主が事業者で買主が消費者の場合、消費者契約法が適用されるため、代金の減額や履行の追完に関する免責特約は適用されません。
 
■売主が欠陥を知っていながら買主に告げていなかった場合
不動産の売買が行われる前に、売主が欠陥(不適合)を知っていたにも関わらず、買主にその事実を伝えていなかった場合、免責特約は適用されません。
 
■売主自らの行為によって権利に関する不適合が発生した場合
売主が自ら第三者のために権利を設定、または第三者へ権利を譲渡することによって生じた瑕疵担保責任(契約不適合責任)については免責特約が適用されません。
 
■物件が新築住宅の場合
通常であれば契約不適合責任の責任期間は「買主が不適合を知った時から1年」です。しかし物件が新築住宅である場合は、住宅の品質を確保するため、品確法によって「引渡しから10年の瑕疵担保責任」が定められています。
品確法における瑕疵担保責任の範囲は「構造耐力上主要な部分」や「雨水の侵入を防止する部分」など限定的ですが、責任期間が長いのが特徴です。

民法の改正で契約不適合責任へ

2020年4月以降、改正民法において瑕疵担保責任は削除され、新たに契約不適合責任が追加されました。契約不適合責任とは、売買の目的物の品質や数量が契約の内容に照らして不十分であるときに買主が保護されるという制度です。

買主を保護するという目的に違いはありませんが、瑕疵担保責任と契約不適合責任とでは異なる点が多くあります。
契約不適合責任について確認しておきたい改正のポイントは3点あります。
 

改正ポイント① 見えない瑕疵も適応されるように

1点目として、瑕疵担保責任の廃止により、瑕疵が隠れたものである必要がなくなりました。
これまで瑕疵担保責任の制度があったとはいえ、実務上、瑕疵が隠れていたことを立証することが困難であり、泣き寝入りとなってしまうことも多々ありました。しかし、契約不適合責任へと変わったことで、瑕疵があれば、それが隠れていようが隠れていなかろうが関係なく、契約内容に照らして瑕疵があれば売主に責任を追及することができるようなりました。
 

改正ポイント② 買主が売主に請求できる権利が広がる

2点目のポイントとして、買主が売主に対して請求できる範囲が広がったという点があります。
これまでの瑕疵担保責任では原則として損害賠償の請求ができ、契約の目的が達成できない場合に契約解除をするということしかできませんでした。

対して契約不適合責任ではそれらに加えて追完請求権と代金減額請求権という権利も行使できるようになります。
追完請求権とは、不備があればその部分の補修や代替物の引き渡しを請求できる権利です。代金減額請求権とは、その名の通り不備による代金の減額を請求することのできる権利です。
 

改正ポイント③ 契約解除できる範囲が広くなる

3点目のポイントとして、契約不適合責任によって契約の解除ができる範囲も瑕疵担保責任に比べて広くなりました。
契約の目的が達成できるものの不備が軽微でない場合にも契約解除をすることができますし、追完請求や代金減額請求と併せて行使することもできます。

瑕疵を事前に見つけるためのポイント

物件の瑕疵を事前に見つけるためには、2つのポイントに注意することが大切です。
 

契約前に担当者に確認をする

瑕疵を発見するには、まず契約前に取引相手の会社の担当者に確認することが大切です。契約不適合責任を問うには、相手方が瑕疵を把握していても、それを告げなかったかどうかが重要なポイントだからです。
例えば家の柱に致命的な瑕疵があり、それを把握していたにも関わらず買い手に告げなかった場合、買い手は契約不適合責任を売主に追及できます。

またこの場合の瑕疵には傷や破損などの物理的な瑕疵だけでなく、事故物件のような心理的瑕疵、騒音や異臭などの環境的瑕疵も含まれます。
ただし担当者が把握していない場合も考えられるため、購入後に瑕疵が発覚した場合も考慮して契約することが重要です。
契約書にも「事故物件ではない」ことを明記してもらえば、購入後のトラブルのリスクを抑えられます。
 

事前に建物状況調査を依頼する

契約を結ぶ前に、買い手自身が建物状況調査を依頼することも重要なポイントです。
建物状況調査は国に登録した建築士が建物を調査し、隠れた瑕疵や劣化、構造の問題がないかを確認するものです。
建物状況調査を依頼する際は、売主に依頼してもらうのではなく、買い手が依頼しましょう。売主に依頼してもらうと、意図的に情報を操作する可能性もあるためです。

第三者に建物状況調査を依頼し、瑕疵の有無を事前に把握しておくことで、事故物件を買わされるリスクを抑えられます。

新築住宅の瑕疵担保責任(契約不適合責任)の期間

新築住宅の場合、瑕疵担保責任の期間は「引渡したときから10年間」

2000年に制定された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」により、新築住宅の販売や建設に関わるすべての事業者(売り主)は、瑕疵担保責任が義務付けられました。
通称「品確法」ともいわれるこの法律では「新築住宅の売り主は、基本構造部分において、引渡したときから10年間の瑕疵担保責任(契約不適合責任)を負わなければならない」と定められています。これによって、新築住宅の場合、10年間以内であれば、基本的な構造上の欠陥が保証されるのです。

品確法が定めている瑕疵担保責任の基本構造部分とは「構造上の重要な部分」と「雨水の侵入を防止する部分」となります。構造耐力上の重要な部分とは、主に基礎・柱・壁・床・土台など、住宅の積載荷重、地震動といった震動や衝撃を支えるところです。また、雨水の侵入を防止する部分とは、屋根・外壁・開口部・排水管など、雨水の侵入を防ぐところを指しています。

事業者は、法務局などの供託所に「保証金を預ける」または「住宅瑕疵保険」の加入が義務付けられており、責任履行のため、資力確保の措置をとらなければなりません。この制度から、たとえ、事業者が倒産することがあっても、瑕疵が発見されたときには、欠陥部分の補修費用が保証されるようになりました。これが、2009年に定められた「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(通称:住宅瑕疵担保法)」です。

新築住宅を購入した場合、その引渡しの際は、必ず事業者から保証金の供託先や、加入している住宅瑕疵保険の内容を確認するようにしましょう。さらに、瑕疵が見つかったときに相談・利用できる「住宅紛争処理支援センター」について、しっかりと説明と受けるようにしてください。

中古住宅の瑕疵担保責任の期間

ここでは中古住宅における瑕疵担保責任の期間について詳しく見ていきます。
新築住宅と異なり、中古住宅は売主が「不動産業者」か「個人」かによって、瑕疵担保責任(契約不適合責任)の期間に大きな違いがあります。それぞれのケースごとに見ていきましょう。
 

売主が不動産業者の場合

中古住宅の売り主が「宅地建物取引業者」にあたる不動産会社の場合「瑕疵担保責任(契約不適合責任)の期間は、最低2年以上にしなければならない」と法律で定められています。つまり、中古住宅の引き渡しの日から、瑕疵担保責任(契約不適合責任)を最短でも2年以上負う義務があるのです。

瑕疵担保責任(契約不適合責任)に関する取り決めは、すべて民法の規定に決められているため、これに反する特約は無効となります。何があっても瑕疵担保責任(契約不適合責任)を免除されることはありません。ほとんどの不動産会社が、中古住宅に関しては、最低期間である2年を瑕疵担保責任(契約不適合責任)の期間と設けていることが多いようです。

また、中古住宅の場合、瑕疵担保責任(契約不適合責任)の期間だけではなく「雨漏りと排水管、外壁のみを責任とする」など、瑕疵の範囲を限定することも珍しくありません。売買契約を締結する前に、契約書の条項内容をしっかりと確認し、できることなら専門家による物件の調査を依頼してください。遅くても瑕疵担保責任(契約不適合責任)の期間内までに、隠れた瑕疵を発見するようにしましょう。

中古住宅にも売り主の瑕疵担保責任(契約不適合責任)をサポートする住宅瑕疵保険があります。新築住宅と同様に基本構造部分などの補修費用や調査費用をはじめ、転居や仮住まいに必要な費用などが保険金の支払対象です。ただし、中古住宅においては、売り主に瑕疵保険加入の義務はありません。
 

売主が個人の場合

売り主が個人の場合、買い主との交渉によって、瑕疵担保責任(契約不適合責任)の期間の変更や修正が可能です。 最低2年以上の義務を負う不動産会社に対し、個人の瑕疵担保責任(契約不適合責任)の期間は、1ヶ月から3ヶ月程度が一般的といわれています。売り主が個人になれば、瑕疵担保責任(契約不適合責任)を一切負わない「免責」を売買契約の特約につけることも可能です。

しかし、買い主からしてみれば、瑕疵担保責任(契約不適合責任)をつけて欲しいもの。双方の希望や条件を照らし合わせながら納得がいくまで、明確に話し合うことが重要なポイントになってくるでしょう。 国交大臣が指定する運営団体「住宅瑕疵担保責任保険法人」の住宅瑕疵保険に、個人の売り主も加入することができます。
しかし、中古住宅の場合、瑕疵保険の加入が義務化されていません。買い主が瑕疵保険の加入を希望するのならば、必ず売買契約を結ぶ前に売り主と相談してください。

瑕疵担保責任の特約による負担軽減

不動産売買契約では、売主が負う責任を軽減させることを目的として、契約不適合責任の「免責特約」を結ぶ場合があります。

契約不適合責任に関する民法の規定は「任意規定」のため、契約自由の原則を尊重し、契約で別段の定めがなされた場合には、その契約の内容を優先させる規定になっています。
つまり、「免責特約」を結ぶことで契約不適合責任の排除ができるというのが原則的な考え方となります。

ただし、例外的に契約不適合責任の免責が認められない以下のようなケースもあります。

①売主が宅地建物取引業者(不動産会社)である場合
②売主が目的物の不適合を知っていながら、その事実を買主に告げなかった場合
③売主自らの行為によって権利に関する不適合が発生した場合

土地の売買にも瑕疵担保責任(契約不適合責任)の期間は必要?

瑕疵担保責任(契約不適合責任)の期間は、住宅だけではありません。土地の売買にも瑕疵担保責任(契約不適合責任)が発生するケースがあります。

その例として、土壌汚染、軟弱地盤、不動沈下、地中埋設物、事故や自殺などが挙げられます。
このような問題に対し、買い主側が想定外の費用を負担することになった場合や、この土地にマンションやビル、住宅といった建造物の建設が難しくなった場合などは、土地の瑕疵にあたることになるでしょう。

瑕疵担保責任(契約不適合責任)において、売買契約の前に売り主が買い主に瑕疵の情報を開示しなければ、売り主が負担を負うべきとなっています。
その考え方は土地も同様であり、瑕疵担保責任(契約不適合責任)の期間中に何らかの瑕疵が発見されたとき、買い主は、売り主に損害賠償の請求をすることができます。

これを踏まえ、土地の売買でも瑕疵がある場合、売り主は、買い主に対する事前の明示や説明を怠ってはいけません。また、買い主は、瑕疵担保責任(契約不適合責任)の期間が設けられていれば、隠れた瑕疵の有無を徹底的に調査・確認をおこなってください。

売主がとるべき3つの対応

売主の責任が瑕疵担保責任から契約不適合責任に変化したことにより、売主の責任は従来に比べて重くなったといえます。当然、売主がとるべき対応も瑕疵担保責任の頃と同様というわけにはいきません。

とはいえ、必要以上に慌てる必要もありません。なぜなら本質的な部分に変わりはないからです。具体的には次の3点について対応が求められます。
 

対応① 契約内容を明確にすること

まず一番重要なこととして契約内容を明確にすることが求められます。売主の負う責任が瑕疵担保責任から契約不適合責任に変化したことで売主の責任は確実に広く重くなったといえます。そのため、これまで以上に契約の内容を明確にしておくことが重要になります。 契約不適合責任は、目的物が契約の内容に合致していない場合に売主が負う責任です。

契約の内容が不明確になっていると無用な争いを招くことにもなりかねません。特にあらかじめ不備のあることがわかっている物件が売買の対象である場合はその不備についても明確にしておくべきです。
 

対応② 付帯設備表・告知書をきちんと記載する

売買契約書があれば安心というわけではありません。契約の内容だけでなく目的物の内容を明確にすることも売主のとるべき対応です。具体的には、目的物の内容を明確にするために付帯設備表と告知書についても契約書とは別で詳細に作成しておくのです。

付帯設備表とは、設備の現況や不具合について記載された書類です。告知書とは、設備以外の問題点などについて記載する書類です。これらの書類は契約時の不動産の状況を判断するにあたり特に重要な書類となるため、今後は今まで以上に入念に作成するべき書類といえるでしょう。
 

対応③ 瑕疵担保保険の付保

どんなに気を付けていたとしても、予想外の事故やトラブルが生じることがあります。そういった場合に備え、瑕疵担保保険を付保しておくことも大切です。瑕疵担保保険を付保することで、仮に追完請求権を行使されたとしても保険でカバーすることができます。
現在瑕疵担保保険を付保する売主はそれほど多くはありませんが、契約不適合責任により今後は疵担保保険を付保する売主の増加が予想されます。

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買主が取るべき3つの対応

民法改正により瑕疵担保責任から契約不適合責任に変化し、買主の利益が従来よりも保護されるようになりました。しかし、不動産の売買契約は金額も大きなものですから、やはり対応には気を付けたいものです。
ここでは買主が取るべき対応について詳しく見ていきます。
 

対応① 契約内容をよく確認する

まずは売買契約書の内容をしっかり確認することが大切です。チェックすべきポイントは主に2つあります。

1つ目は特約事項や容認事項について。これらの事項は契約前に売主と買主の双方が合意したうえで契約書面に記載されていなければなりません。
書面に記載されていない事項については基本的に売主の責任となりますが、後々トラブルにつながる可能性があるため、問題になりそうな点については、契約書面にはっきりと明記されているか確認しておきましょう。
特に売主が不動産会社でなく個人の場合は、特約によって責任義務期間が短い、またはない場合もあるので注意が必要です。

2つ目は設備に関する責任について。付帯設備は故障が発生する可能性が高いため、故障時の責任の所在が書面上に記載してあるかを確認しておきましょう。特に中古住宅の売買では設備が劣化しているケースが多いため、買ってすぐに故障した場合のことを想定して内容を確認しておけると良いでしょう。
 

対応② 物件の状態をよく確認する

不動産の売買契約を結ぶ前に、その物件がどのような状態であるかを売主に確認したり、よく見て不具合や欠陥がないかどうかを把握しておくことが大切です。しかし建物がどのような状態かというのは、素人が見ただけではよく分からない可能性が高く、さらに床下や天井裏などの見えない部分は自分で確認して判断することは困難です。

そのような場合は「建物状況調査」を依頼するという方法があります。建物状況調査とは、国土交通省の定める講習を修了した建築士が、建物の基礎、外壁などの建物の構造耐力上主要な部分や、雨水の浸入を防止する部分に生じているひび割れ、雨漏り等の劣化・不具合の状況を把握するための調査のことをいいます。
建物状況調査は売主に手配を依頼することもできますが、買主が直接建物状況調査を実施している第三者機関に依頼することもできます。
 

対応③ 不適合が見つかった場合は素早く行動

売買契約後に契約内容と異なる点が見つかった場合には、なるべく早く行動に移しましょう。
契約不適合責任においては、買主が契約内容と異なる点の存在を知った時から1年以内に売主にその旨を通知すれば、その後いつ、どのように請求をするかは自由とされていますが、権利を行使することができることを知った時から5年間行使しなかった場合は時効によって債権等がなくなってしまう可能性があります。

権利を行使することができる時から10年間行使しなかった場合も同様です。そのため、契約の内容に不適合な部分が見つかったらすぐに売主に通知をすることと、通知をした後には5年以内に売主に具体的な対応を求める行動を起こすことが大切です。

民法改正により瑕疵担保責任が契約不適合責任に変化しました

2020年4月に民法が改正され、これまで瑕疵担保責任となっていた売主の責任が契約不適合責任に変化しました。
本質的な責任という部分には変化がないとはいえ、代金の減額請求が可能となったり契約の解除の条件が緩和されるなど売主の責任は確実に重くなっているといえます。

売主として不動産を売却する際はトラブル発生防止のためにも契約内容を明確にし、付帯設備表や告知書の内容についても漏れがないかよく確認しつつ、可能な限り瑕疵担保保険の付保をしておくべきでしょう。

 

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監修者

コラム監修者 大沼
大沼 春香(おおぬま はるか)

宅地建物取引士
埼玉県・千葉県・東京都一部に拠点を置く
不動産売買仲介会社に15年以上従事。
自身も不動産購入を経験し「初心者にもわかりやすい」
実態に基づいたパンフレット・資料に定評がある。

最近はWEBや自社セミナーなどでの情報発信も行っている。

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