この記事では、持ち家のメリット・デメリットとともに、家がいらなくなった場合の処分方法についても解説していきます。
持ち家のメリットとは?
持ち家を必要としない人が増える半面、家を買って良かったと感じる人も少なくありません。その理由は、マイホームを購入することにより、いくつかのメリットを得ることができるからです。
メリット① 老後の心配が軽減される
持ち家は住宅ローンさえ完済してしまえば、その後は毎月の支払いが必要ありません。定年退職までにローン支払いが完了すれば、退職金や年金をローンに充当することもなくなります。老後も長く支払いを続ける心配がなくなり、貯蓄次第ではリフォームやリノベーションもできるでしょう。
また、子供に相続させることもできるため、資産として残せる点も強みです。
メリット② 内装・外装を自由に変えられる
持ち家は自分の好みで内装・外装を変えたり、バリアフリー化したりすることも自由です。購入後に生活や家族構成に変化が生じても、持ち家なら使いやすい環境に変更できます。また、将来的に子供や孫と同居する2世帯・3世帯住宅として増改築することも可能で、ライフプランに合わせて選択できる点も持ち家ならではの強みです。
メリット③ 資産になる
マイホームを購入するうえで最大のメリットは、持ち家が自分の資産になることでしょう。賃貸物件とは異なり、自分の都合や好み、予算に応じたリフォームも自由に可能です。また、建物が老朽化すれば、同じ土地に新居を建て替えることや、賃貸やシェアハウスとして利益を得ることなどもできます。
メリット④ 所得税の控除を受けられる
マイホームを持つことにより、住宅ローン控除の適用が受けられるようになります。住宅購入後に確定申告をおこなえば、年末のローン残高に応じて、購入者の所得税を10年間減税できる制度です。適用されるためには、一定の要件を満たさなければなりませんが、持ち家をお得に購入することができるでしょう。
メリット⑤ 社会的信頼を得やすい
社会的信頼を得やすいことも、マイホームを持つメリットに挙げられます。金融機関による住宅ローン審査を受けるとき「継続的な返済が可能である」と判断された証拠や目安になるからです。
また、マイホームを手に入れたという満足感と安心も同時に得られます。
持ち家のデメリットとは?
持ち家には所有者のメリットも多いですが、デメリットにも注意しなければなりません。
持ち家があることのデメリットを紹介します。
デメリット① 購入費用・税金がかかる・高い
持ち家を購入する際、最も気になる点が購入費用や固定資産税などの税金、維持費などです。賃貸に比べ、持ち家は一度に大きな資金が必要になるうえ、毎年の固定資産税、内装・外装のメンテナンスにも費用がかかります。
そのため、多くの費用が発生する点がデメリットといえます。
しかし自治体からの補助金や特例などを活用すれば、費用や税金を軽減することもできるため、事前に自治体の補助金や制度をチェックしておくのがよいでしょう。
デメリット② 維持・管理が大変
持ち家には定期的なメンテナンスが必要であり、維持・管理が大変という点がデメリットになります。賃貸とは異なり、所有者自身でメンテナンスが必要になるためです。
外壁・屋根塗装なら10年前後、張り替えや設備の更新は20~30年が目安です。
他にも屋内のトイレやキッチン、床下のシロアリ対策など所有者は維持・管理に気を遣うことになるでしょう。
デメリット③ 気軽に引っ越しができない
持ち家がある以上、当然ながら気軽に引越しや住み替えができない点もデメリットです。仕事によっては転勤を繰り返すケースもありますが、その場合も持ち家を手放すことは簡単ではありません。
また、住宅ローンを利用している場合、金融機関からの許可を得なければ家を売却することはできません。
売却しても売却価格より住宅ローンの残債務のほうが多いこともあり、金銭的な負担が大きい可能性も残ります。
デメリット④ 離婚の際にトラブルの原因となる
離婚に伴って、夫婦のどちらが家を所有するかで問題になる点もデメリットです。通常、持ち家は夫婦の共同名義になっていることが多いですが、離婚すればどちらか一方の所有に変更することになります。
このとき、どちらが所有者になり住宅ローンの返済をどうするかが問題になりやすいです。
お互いの収入状況や離婚後の生活を考慮して、どちらが持ち家を所有するかよく話し合うことが大切です。
持ち家はいらないと考える理由
持ち家、いわゆるマイホームがいらないといわれるようになったのには理由があります。
その理由は主に金銭面、リスク面、環境面の3点にあります。
理由① 金銭的な余裕が無いから
家は購入してからも維持費がかかります。そのうえ、人口減少により今後多くの家の価値は下がっていくことが想定されます。さらに、住宅手当や持ち家手当の支給を打ち切る企業が多くなっているという現実もあります。
理由② 引っ越しや離婚、災害などのリスクが大きいから
持ち家を持っていても、転勤による引越し、夫婦関係の悪化による離婚、災害による損傷といったリスクは常にあります。そうしたリスクを考慮すると、持ち家よりも賃貸のほうが将来のリスクや資産維持の面では優れている点も事実です。
理由③ 将来、親の持ち家を相続する予定があるから
自分から家を購入しなくても、将来的に親の持ち家を相続するケースも考えられます。土地や建物を購入するよりも、親の持ち家を自分達の住みやすい形にリフォームやリノベーションしたほうがよいという理由です。
実際にリフォームやリノベーションであれば、新築よりも大幅にコストを抑えられます。
理由④ 勤め先からの家賃補助が大きいから
勤務先にもよりますが、賃貸アパートやマンションを利用している場合、家賃補助が出ることがあります。金額はさまざまですが、持ち家よりも収入が多くなることもあるため、持ち家がなくてもよいと考える人は少なくありません。
ただし家族が増える場合には、賃貸アパートやマンションは不便な点も多くなります。
収入を重視するか、生活しやすさを重視するかで意見は分かれるでしょう。
いらない家を持ち続けるリスク・デメリット
現在いらない家を持っているのであれば、持ち続けることで生じるデメリットやリスクを知っておくべきです。
・管理の手間とコストがかかる
・管理を続けても価値が下がる
・税金の支払いがある
・不法侵入や犯罪者の隠れ家になるリスクがある
・特定空家等に指定される可能性がある
・隣家とトラブルになる可能性がある
上記はいずれもいらない家を持ち続けた結果、起こりうるリスクとデメリットです。
いらない家だからといって放置すれば、管理の手間がかかるだけでなく、資産価値を低下させ、税金を含む出費ばかりが増えてしまいます。
また、人が住んでいないとわかれば犯罪行為の温床になり、近隣の治安が悪化することも懸念されます。
そのため、いらない家をそのままの形で持ち続けるよりも、売却や贈与、賃貸など別の活用方法を検討するのがよいでしょう。
■関連リンク:
「空き家活用の成功事例は? 活用方法ごとのメリット・デメリットや補助金制度について」
いらない家の処分方法
いらない家を処分するといっても処分の方法にはいくつかあります。
その中でも特に代表的な処分方法を8つご紹介します。
方法① 中古物件として売却
いらない家を処分するなら、中古物件として売却するのが最も効果的です。売却すれば現金化できるだけでなく、その後の維持費や税金も必要なくなるため、家を使う予定がない人にとって最良の選択となります。
加えて、人気の高い土地や再開発計画などがある地域であれば、高値での売却にも期待できます。
人気の高い地域の場合、家のリフォームなどをしなくても、買主が新たな使い道を見つけることが多いからです。
また、条件に適合すれば税制面でも有利です。
居住用財産として認められたり、空き家になって3年以内だったりすれば、売却後に3,000万円の特別控除も利用できることがあります。
家を売却することで余計な費用を減らす効果だけでなく、税制面でも大きなメリットがある点は重要なポイントです。
ただし、中古物件を売却する際は以下のポイントにも注意してください。
・周辺の相場に見合った価格で売りに出すこと
・綺麗な状態で売りに出すこと
・家具や家電は撤去しておくこと
・長期間放置せずに早めに決断すること
上記のポイントを意識することで、より高く、早期に売却できるでしょう。
■関連リンク:
「空き家の売却方法の選び方や注意点を徹底解説」
方法② 家を解体した後で売却
家が古かったり状態が悪いという場合は、いっそ家を解体して更地にしてから売り出すというのも手です。状態の悪い家が建っているとかえって買い手が見つからなかったり、土地自体の価格が下がったりということもあるからです。ただ、この場合解体費用が発生するため、土地の価格を下げ過ぎると赤字になってしまうので注意が必要です。
方法③ 不動産会社に買い取りしてもらう
家を不動産会社に買い取ってもらうということも可能です。不動産会社に直接買い取りを依頼する場合、通常の売却に比べて価格は下がることが多いものの、迅速かつ確実に売却できるのが魅力です。一般的な売却なら3カ月程度はかかるところ、不動産会社に買い取りしてもらうことで一週間以内に売却できることもあります。
方法④ 寄付をする
お金はいらないから手間もかけたくない、そんなときは寄付をしてみましょう。 自治体によっては家の寄付を受け付けていることもあります。場合によっては会社や個人で寄付を受け付けている方もいます。寄付先については自治体や不動産会社に相談することで見つけることができます。
■関連リンク:
「土地の寄付の方法とは? 要らない土地を手放す方法と注意点を解説!」
方法⑤ 活用する
賃貸として貸し出す以外にも、いらない家を上手に活用すれば、そこから利益を得ることが可能です。一般的な活用法としては、その土地に新たな住居を建て替え、入居者を集うアパート経営でしょう。立地や賃料・設備投資などの人気が集まるニーズに適した好条件を揃えれば、高収益を得ることも難しくありません。初期投資の予算に余裕があれば、老人ホームを建てることで、事業者に貸し出す活用法もあります。
老人ホームは、将来的な需要が高い施設であり、アパートよりも立地をさほど問題としない部分が大きなメリットでしょう。また、駐車場として、その土地を貸し出すこともできます。駐車場の場合、アパートよりも初期投資額を抑えられ、他の土地活用にも比較的簡単に移行できることが魅力です。
他にも、郊外に広い土地がある場合、太陽光発電装置を設置し、電力会社に電気を売却することで収入を得る方法や農地として貸し出す方法もあります。アパートや駐車場などと異なり、どちらも集客を気にせずに済む活用法です。
方法⑥ 相続権を放棄する
相続によって家を取得することになる場合は相続を放棄することで家を処分することができます。相続の放棄は相続について知った日から3カ月以内に行うことが必要です。ただ、相続放棄をすることで相続人たる地位を失ってしまい他の財産も相続することができなくなります。相続放棄をする場合は財産の状況をもとによく考えて選択するべきです。
また、相続放棄をしても次の管理人となる人が見つかるまでは管理が必要となる点についても注意してください。
方法⑦ 賃貸として貸し出す
家が人気のある地域に建っていたり、ニーズの高い構造であったりする場合は賃貸物件として収益を狙うのもよいでしょう。売却のように一度に大きな利益を得ることはできないものの長い間収益を得ることができ、総額では売却よりも大きな利益となる可能性もあります。
しかし、入居者が見つからない場合は無駄に管理費用などがかかるだけとなるため、その点の見極めが必要でしょう。
■関連リンク:
「持ち家があるのに突然の転勤! 賃貸で家を貸すメリットとデメリットは?」
方法⑧ 空き家バンクに登録
空き家バンクとは、空き家の売却や賃貸を希望している人の情報を集め、その利用や活用を考えている人に情報を提供するサービスです。空き家を有効活用することで「地域内外の住民交流の拡大」「定住促進による地域の活性化」を推進することを目的としています。
不動産会社が仲介をおこなう売却や賃貸と異なり、営利目的ではない自治体やNPO法人などが運営するポータブルサイトのため、ほぼ無料で物件を登録することが可能です。
空き家に特化したサービスであることから、利用者が郊外の安価な不動産を探している人が多いという特徴を持っています。
ただし、空き家バンクは、基本的に移住希望者しか利用できないサービスです。
また、サービスの知名度が低いことや利用者が少ないこと、非営利の自治体などが運営しているため、積極的な営業活動をおこなうこともありません。
空き家バンクに登録する場合、不動産会社に売却・賃貸の依頼をおこなったうえで、並行して進めることをおすすめします。
まとめ
「持ち家はいらない」と感じていても、実際に売るには手間がかかったり、思い入れがあったりしてなかなか手放せないことがあります。
かといって使わない家をそのまま持っていても、維持費や税金がかかってしまい、その負担は小さくありません。
使わない家を持っているのであれば、使い道を見つけるためにも早めに不動産会社へと相談しましょう。
監修者
大沼 春香(おおぬま はるか)
宅地建物取引士
埼玉県・千葉県・東京都一部に拠点を置く
不動産売買仲介会社に15年以上従事。
自身も不動産購入を経験し「初心者にもわかりやすい」
実態に基づいたパンフレット・資料に定評がある。
最近はWEBや自社セミナーなどでの情報発信も行っている。