(1)二重課税ではないのか?
相続税を払うために土地を売却した場合には、譲渡所得税及び住民税(以下譲渡税と呼ぶことにする。)が課税される。なんとも二重取りのような気がするが、税務署サイドではそうは考えない。譲渡税は値上がり益(含み益)に対して課税するというもので、相続財産でも亡くなった人が取得したその時の金額(取得価額)を引き継いでくるため、いざ売却となった場合にはここぞとばかりに実現した値上がり益分に対して課税される。一方相続税は財産を相続したということによる税金なので、まったく別次元のものととらえている。当局には二重課税の感覚はない。
(2)通常の譲渡所得税の計算方法
通常、土地を売ると譲渡税がかかる。その計算方法は以下のとおりだ。
(売却金額-取得費-諸経費)×20%
この取得費が、実際の売れた金額を超える場合の譲渡税はもちろん0円だ。また、譲渡した土地が1月1日現在で5年超の所有期間(長期譲渡)であれば上記式の20%の税率ですむことになる。
(3)これで安くなる、取得費加算の特例とは?
実は、相続の申告期限から3年以内、つまり亡くなってから3年10ヶ月以内に相続した土地を売却すると所得税と住民税が安くなるのだ。二重課税ではないけれども、お上もそこは配慮したのか、期限付きで少し優遇措置を設けているのだ。 どういうことかと言うと、支払った相続税のうちその譲渡した財産に対応した(按分した)相続税分を取得費に加えることができるという規定だ。つまり取得費が増えるので、必然的に譲渡益が少なくなり、結果譲渡税も少なくなるいうことである。さらに土地の場合には、一部分を譲渡した場合であっても、相続した土地すべてに対応する相続税を取得費に加算することができるようになっている。図の例でいくと、土地Pを売却した場合に、相続税150万を取得費に含めるのはもちろん、土地Qに対応する相続税200万も取得費に加えて計算することができるのだ。
(4)改正内容
実は平成27年1月1日以降に発生した相続により取得した場合は、譲渡した土地に対応する相続税だけを取得費とする改正が行われている。つまり図の土地Pを譲渡した場合には150万しか取得費に加算できなくなるのだ。
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