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不動産の共有はまずい!?

目次

(1)【モデルケース】トラブルになりやすい相続とは??

相続で揉めるのは、実は裕福でない一般家庭の方が多い。しかも資産のない家ほど後からトラブルになりやすい。今回はそんな事例をモデルケースとして紹介する。

【モデルケース】
父が亡くなって2年、先日母も後を追うように亡くなった。父の相続時には、遺産はすべて母が引き継いだため、相続手続き上は特に問題なく終わった。今回、母が亡くなったが、遺産も自宅と預金100万円のみであることは前から分かっていたので、長女(幸子)と次女(陽子)、そして一番年下の長男(和夫)も平等に分ければいいだろうくらいに考えていた。父が亡くなってからは、長男の和夫一家が、母と一緒にこの自宅で暮らしていた。

<もし、わずかな預金と自宅しかなかったら、財産はどうやって分ける?>
平等に分けるにはどうしたらいいか、3人は話し合いを始めた。3人とも、法律の分け方にしたがって分けることでは一致した。つまり法定相続分である。3人なので1/3ずつになるので、預金の100万円は簡単だが、問題は自宅部分である。

<自宅の分け方は?>
売却して、お金にして3人で分けるという案もあったが、思い出の自宅を手放すのは忍びないということと、長男の和夫一家が住んでいるため却下。土地を3分割して分筆する案も出たが、建物が建っているし50坪程度の土地を分割しても小さすぎて売るに売れなくなってしまい現実的ではないので、却下となった。

結局、3人で共有名義にし、固定資産税や修繕維持費は長男の和夫が負担することで一件落着となった。しかし、この後5年後、事態は思わぬ方向へ進んでいく…。

(2)起こりうる問題は・・・

このケースで、問題はどこにあるか?

a. もし3人のうち誰かが持分を買い取ってほしいと言い出したら?
b. もし3人のうち誰かがこの家を売りたいと言い出したら?
c. もし3人のうち誰かが突然亡くなったら?

aの問題は、買い取る側にも金銭的な余裕がないと大問題に発展する。言い出すほうは金銭的な余裕がないために話を持ち出したりするし、兄弟姉妹もそれぞれの家族が中心になり段々疎遠になっていく。そうすると、共有名義にした実家から実質的に財産を活用できているのは、住んでいる長男のみということになり、年数が経つにつれ不公平感の温床となる。

住んでいる者からすると、家を守っているという意識と、維持管理の負担は自分がやっているという自負から、外に出て自由に暮らしている姉妹に感謝されこそ、非難される理由はないとしか思えなくなる。こうなったら、もう人間関係の修復は難しい。

bの問題は、3人ともが同意しないとどうにもならない。しかも自宅である、生活の場所をそう簡単には変えられるものではない。子供が居ればなおさらのこと。強引に話を進めようとしても、話がややこしくなるだけである。

cの問題は、実はこれが一番やっかいだ。長男の和夫からすると、姉の配偶者である義兄に自宅の持分が移る、又は配偶者が既に死亡していれば、代襲相続で甥や姪に移ってしまう。住みたいと主張されることはないだろうが、買取り要求はよくある話だ。まとまった資金をいきなり用意するのは難しく、もめるのは必至である。

(3)モデルケースはこれで解決!

ではどうしたらよかったのだろうか?

答えは2つ。売却して金銭で分けるか、自宅は住み続ける長男の和夫が相続し、代償分割で姉2人に金銭で渡すことだ。不動産は、権利関係をシンプルにするのがセオリーだからだ。住み続けるなら自宅を担保に銀行借入をして、金銭を工面するしかない。共有は問題の先送りにしかならない。

万が一、持分の一部を赤の他人に譲渡されてしまったらどうなるであろうか?法外な賃料を要求されてしまうかも知れない。またリフォームをする際に、その負担金は誰がすることになるであろうか?単独名義だったら、トラブルになることはない問題も、複数名義になったとたん爆弾を抱えてしまうことになるのである。
 



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【監修者】

森重 克昌
税理士法人 さくら税務
業務部 本部長

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