市街化調整区域とは何なのでしょうか?
この記事では、市街化調整区域のなりたちからメリット・デメリット、建物を建てられるケースについてご紹介します。
また、市街化調整区域の物件を売買する方法や売却の流れ、売買の際に知っておきたい注意点についても解説します。
目次
市街化調整区域とは?
市街化調整区域とは、地方自治ごとに都市計画法に基づいて定める市街化を抑制する地域のことです。
市街化調整区域では街の開発が制限されるため、住宅や商業施設などの建築または建て替えも制限を受けます。
そのため、市街化区域に比べて静かな環境にありますが、主要な駅や商業施設から遠く、自治体からの補助金なども受けにくいケースが多いとされています。
市街化調整区域ができた理由
都市化を進めると、これまでは農地などで使われていた土地が商業地や住宅地に変わっていくことが考えられます。そのため、市街化調整区域が制定されたのは農林水産業などを守ることが目的のひとつです。市街化調整区域が郊外に多くみられるのは、そのような理由があるからです。
市街化調整区域の評価について
市街化区域では住宅などの建設が促進されているのに対し、市街化調整区域は都市化されていないため、電気や水道などのインフラの整備があまり整っていません。そのため、市街化調整区域の土地の評価は一般的に低くなります。
市街化調整区域のメリット・デメリットとは?
市街化調整区域には自治体からの制限があり、思い通りに売買や建築などができないといった難しさがあります。
市街化調整区域ではほかにも、利便性の低さやインフラ整備が進みにくい、補助金や優遇措置が受けにくい、資産価値が低いといったデメリットもあります。
一方で、市街化調整区域には市街化区域にはないメリットもあるため、デメリットとの比較を行ったうえで活用するのがよいでしょう。
市街化調整区域に建物を建てられるケース
市街化調整区域で建物を建築できるのは、具体的にどのような場合があるでしょうか?
ケース① 農家住宅(分家住宅)である
市街化調整区域で農業を営む方が、居住用として建てた建築物を「農家住宅」と呼びます。この農家住宅の場合は、許可がなくても建築が可能です。農家住宅と同じように、農業を営む方の子どもなど、世帯の一部が独立して建てた建物を「分家住宅」と呼びます。
分家住宅の場合は、農家住宅より条件がやや厳しくなりますが、許可を取得せずに建築できる場合もあります。
分家住宅の許可については、自治体により異なりますので、ご注意ください。
ケース② 開発許可を得ている土地
市街化調整区域でも過去に開発許可を得ている土地であれば、その許可を取得したときと同じ用途と規模の建物なら、許可を取得せずに建築や建て替えができます。ケース③ 既存の集落やその周辺にある
市街化調整区域でも家が建ち並んでいる集落が既に存在している場合、その集落地域や周辺の建築は、許可なく認められる場合があります。諸条件は地域により異なりますので、市町村の役場に問い合わせましょう。
市街化調整区域で物件が売買しにくい理由とは?
売買しづらいのは、地目が「農地」になっている土地です。
農地を購入して、農地以外の用途で利用するためには許可が必要ですし、許可がおりるか保証されているわけではありません。
同じように開発許可が取得できない土地や、無許可で建てられた建物などは、売買が難しいでしょう。
市街化調整区域で売買しやすい物件の特徴は?
市街化調整区域で売買されやすいのは、既に開発許可を取得して建てられている物件です。
また、将来的に開発許可を受けられる見込みがある土地も売買しやすくなります。
市街化調整区域の物件を売買する方法
市街化調整区域の土地や建物を売買する際は、どのような方法があるでしょうか?
方法① 専門の仲介業者へ依頼
不動産の売買では仲介業者に依頼するのが一般的です。ただし、市街化調整区域ではさまざまな条件を確認する必要などがあり、市街化調整区域の物件を専門で扱う仲介業者を選ぶのがおすすめです。
方法② オークションに出品
ネットオークションで、市街化調整区域の売買を行うこともできます。方法③ 個人間で売買する
通常の不動産の売買では売主と買主の間に仲介業者が入りますが、知人同士などなら個人間で売買することも考えられます。その場合、仲介手数料がかからないメリットはありますが、各種の書類の準備や手続きをきちんと行う必要があり、素人では難しいのが実情でしょう。
市街化調整区域を売却する際の流れ
続いて、市街化調整区域の物件を売却するときの基本の流れについて見ておきましょう。
(1)行政調査を行う
不動産会社に物件の査定を依頼すると、不動産会社は役所等にヒアリングを行う「行政調査」を行います。あわせて自分でも行政に問い合わせることで、売却したい物件がどのような条件になっているか、情報が得られるでしょう。
(2)買取業者へ問い合わせる
市街化調整区域の売却は難しい場合が多いため、買取業者に問い合わせて買取価格について確認してみてもいいでしょう。価格は、通常の売却価格の8割程度となりますが、すぐに売却できるというメリットがあります。
(3)仲介業者に依頼する
仲介業者を通じて売却するなら、地元の市街化調整区域の物件の扱いに慣れた仲介業者を選びましょう。その際、1社の不動産会社にしか仲介を依頼できない「専任媒介契約」がおすすめです。複数の不動産会社に仲介を依頼する「一般媒介」では、仲介会社が売却にやる気を見せないことが考えられます。
また、自分で買主を見つけられる自己発見取引が認められない「専属専任媒介契約」より、自己発見取引も可能な「専任媒介契約」が良いでしょう。
(4)売却条件を決定する
仲介業者と正式に依頼をしたら、適切なターゲットと売却価格を決めて売り出しを開始します。(5)買主が見つかれば売買契約を結ぶ
買主が見つかり、諸条件がまとまれば、売買契約を結ぶこととなります。市街化調整区域を売買する際に知っておきたい注意点
不動産の売買ではさまざまな影響を受けることが多いのが、市街化調整区域です。ではどんなところに注意しなければならないでしょうか?売主と買主それぞれの注意事項を見てみましょう。
売主・買主双方の注意点
まず、売主と買主の両者にとって必要なのが、その土地の「地目」についてです。地目とは、その土地の現況や利用目的によって「宅地」「田」「畑」「山林」など23の区分に定められています。
不動産売買しようとする土地の地目が「宅地」で、しかも市街化調整区域に線引きされる以前から宅地になっているなら、建物の建築条件が緩くなる場合が多くなります。
しかし、地目が「農地」の場合、農地以外の利用では許可を取る必要があり、農家への売却といったように、選択肢が狭まることとなります。
また、水道や電気などのインフラについてもぜひ確認しましょう。
インフラが既に整っていれば不動産取引には好条件となりますが、そうでないなら土地の評価も落ちると覚えておきましょう。さらに、その土地の自治体で区域が指定されていないか、自治体の条例などについても確認しておきましょう。
売主の注意点
市街化調整区域の不動産を売却するなら、市街化調整区域の物件を多く扱っている仲介会社を選びましょう。市街化調整区域の建築許可等、さまざまな条件や情報を把握できていないと思うように買手が見つからなかったり、納得できる価格で売買できない可能性も考えられます。
買主の注意点
市街化調整区域の不動産を購入するときは、その土地の建築が可能とわかっていても、売買契約に特約を盛り込むことをおすすめします。「〇年〇月〇日までに許可を取得できない場合は、契約を解除する」といった内容の特約を盛り込めば安全です。
もちろん、市街化調整区域の物件を取り扱っている仲介会社を選ぶことでさまざまなアドバイスを得られていいでしょう。
市街化調整区域の物件を売却できないときの活用方法
市街化調整区域では、物件の売買が通常の土地よりも難しく、資産価値も上がりにくいといった問題があります。
しかし物件が売却できない場合でも、以下のような活用方法があります。
・駐車場・コインパーキング経営
・霊園・墓地
・資材置場
・太陽光発電
・高齢者福祉・介護施設
例えば駐車場やコインパーキング経営では、近隣に住居が多く駐車場が少ない場合に需要が見込めます。
当然ながら利便性がある程度高いかどうかも重要ですが、長期的な活用方法の1つとしておすすめです。
また、大都市に近い地域であれば、不足しがちな霊園や墓地として活用する方法もあります。
霊園や墓地は立地条件にも左右されにくいため、一定の需要が期待できます。
ほかにも資材置場や高齢者施設など、都市部では大規模な土地確保が難しい活用方法も市街化調整区域なら選択しやすいです。
自分の所有する土地を活用するなら、どのような需要が高いか市場を調査し、効率的な活用方法を選択してください。
まとめ
市街化調整区域では物件の売買は難しいですが、条件さえ整えば売却・購入だけでなく、さまざまな活用方法が選択できます。
一般的にはデメリットの多い市街化調整区域ですが、一般的な区域や市街化区域にはないメリットも多くあります。
市街化調整区域にある不動産を居住や農林業などの利用だけでなく、より効率的な活用方法を模索するなら、不動産の専門業者に相談するのがおすすめです。
監修者
大沼 春香(おおぬま はるか)
宅地建物取引士
埼玉県・千葉県・東京都一部に拠点を置く
不動産売買仲介会社に15年以上従事。
自身も不動産購入を経験し「初心者にもわかりやすい」
実態に基づいたパンフレット・資料に定評がある。
最近はWEBや自社セミナーなどでの情報発信も行っている。