トラブルなく不動産売買を完結させるためにも、不動産売買契約書の記載内容などについて理解しておくべきです。
この記事では不動産売買契約書について、記載内容や注意点も合わせて詳しく解説します。
目次
不動産売買契約書とは一体何?
不動産売買契約書は所有する土地や建物の売買に関する重要な契約書です。
しかし初めて不動産を売買する方、法律の知識に詳しくない方にとっては縁遠い存在です。
そこで、不動産売買契約書とはどんなもので、どのような効果があるのか解説します。
不動産売買契約書と土地売買契約書の違い
不動産売買契約書と土地売買契約書は、締結する契約の対象が違います。不動産売買契約書の場合、その対象が土地と建物を指し、土地売買契約書の場合、その対象が土地のみを指したものです。たとえば、マンションを売買するときは、不動産売買契約書を用いて契約を結びます。
一見、建物だけのように思えるのですが、マンションには、敷地権・敷地利用権という土地を利用する権利を有するため、土地と建物を同時に売買することになるからです。
ちなみに、不動産売買契約書と土地売買契約書の共通点は、双方の対象に土地が含まれているということでしょう。
不動産会社からすれば、どちらの契約も宅建業法の範囲内にあることから、契約書上や法律上から見ても、大きな違いはないようです。
不動産売買契約書の必要性・メリットとは?
不動産売買契約書を締結する一番の理由は、後々の争いを防止するためです。法律上、売買契約は口頭での意思表示でも成立します。
しかし口約束では後々「言った、言わない」という論争になる可能性が高いため、契約書として残しておく必要があります。
不動産売買契約書にはトラブルを防ぐため、不動産売買に関する細かな内容と項目がまとめられており、すべてに目を通しておくことが重要です。
不動産売買契約書の内容とは
不動産売買契約書には、下記の内容が記載されています。
・売買の目的物と売買の代金
・手付金の金額
・売買代金の支払い時期や方法
・手付解除
・契約違反による解除、違約金
・融資利用の特約
・敷地権が賃借権の場合の特約
・抵当権等の抹消
・所有権移転登記等
・所有権の移転の時期
・引渡しの時期
・引渡し完了前の滅失、毀損
・設備の引渡し、修復
・売買対象面積、測量、代金精算
・境界の明示
・物件状況等報告書
・公租公課等の分担
・瑕疵の責任
最初に、売主の住所・氏名や不動産の所有者が売主本人を確認してください。そして、売買された不動産の詳細情報となる所在地や面積、地目、法令上の制限などを、しっかりと確認しましょう。
特に重要とされる項目は、手付金の金額、売買代金の金額と支払い時期や方法、その解約・違約金などになります。
不動産売買契約書で確認・注意すべきポイント
基本情報
基本情報には売買する不動産の住所や面積、設備といった情報が記載されています。基本情報をチェックする際は、現代の建築基準に適合しているか、都市計画法上の制限に引っかかっていないかなどを確認することが大切です。
せっかく購入しても、法令の制限に引っかかってしまうと後々改築や解体などの問題に発展することもあります。
インフラについて
不動産にガス・水道・電気など、どのようなインフラがついているかについても確認しましょう。購入後に生活の拠点として利用する場合、インフラ設備の有無や不備の確認は欠かせません。他にも、私道の権利や特別な負担の有無についても確認しておくと、後々のトラブルを防止できます。
契約条件
契約条件として、以下の内容が記載されていることを確認しましょう。・売買の目的物と売買代金
・手付金の金額
・売買代金の支払い時期と方法
・手付解除
・契約違反の条件
・解除と違約金
・融資利用の特約
・敷地権が賃借権の場合の特約
・抵当権の抹消
・所有権移転登記と所有権移転の時期について
・引渡しの時期
・引渡し完了前の滅失や毀損への対応
・付帯設備の内容と引渡し
・不動産の面積
・測量結果と代金精算
・境界の明示
・物件状況等報告書
・公租公課等
・瑕疵担保責任
上記の中でも金銭に関する内容や瑕疵担保責任、自然災害による滅失・毀損といった項目は重要項目ですから、忘れずチェックすべきです。
その他条件
マンションを購入する場合、敷地部分や共用部分の定め、修繕積立金、管理費、大規模修繕計画といった情報は確認しましょう。購入する不動産と売買代金について
基本情報にも記載されていますが、購入する不動産の住所や面積などが間違いないか確認しましょう。加えて売買代金、手付金、支払い時期などの情報も間違っていないか、一つひとつチェックすることが大切です。
所有権の移転について
不動産の所有権移転の時期、引渡し時期、所有権移転登記手続きについても確認が必要です。法律上は売買契約締結時に所有権も移転することになっていますが、一般的には買主が代金を支払い、売主が受領したときという内容にするのが基本です。
また、移転登記の所有権移転の日も、契約書の内容に従います。
瑕疵担保責任について
瑕疵担保責任とは、買主が十分な注意を払っても容易には見つけられない隠れた瑕疵(不備)について、売買後であっても売主が責任を負うことです。一般的には瑕疵担保責任は所有権移転から3か月以内とすることが多く、無期限に売主の責任を問うことはできません。
危険負担について
危険負担とは不動産の引き渡し前に、自然災害や隣家の火事の炎症などにより不動産が損傷した場合に、損害の負担を誰が負うかという規定です。2020年の民法改正後、危険負担は債務者主義に統一されており、損傷・滅失による損害は売主の負担となっています。
税金の負担について
不動産売買では固定資産税の支払いを含め、各種税金の取り扱いについても明記する必要があります。固定資産税の場合、売買の日を基準にして日割りとするのが基本です。
設備について
不動産売買に伴い、建物内や土地に付属している設備や備品の状況を確認することも重要です。中古物件の場合、給排水設備や電気設備が老朽化し、すぐに破損してしまうおそれがあります。
現状のまま引き渡すのか、新品に交換してから引き渡しになるのかまで確認すべきです。
重要事項説明書、その他の文書との間で矛盾はないか
不動産売買契約書の内容に加えて、重要事項説明書、その他用意された契約書や文書との矛盾がないか確認しましょう。文書館に矛盾があると、認識の違いでトラブルになるおそれがあります。
不動産売買契約書に印紙は必要?貼付しないとどうなる?
不動産売買契約書は課税文書に該当するため、契約金額に合わせた印紙の貼付が必要です。
貼付する印紙の額は以下の通りです。
契約書に記載された 金額 |
印紙の金額 |
1万円未満 | 非課税 |
10万円以下 | 200円 |
50万円以下 | 200円 |
100万円以下 | 500円 |
500万円以下 | 1,000円 |
1,000万円以下 | 5,000円 |
5,000万円以下 | 1万円 |
1億円以下 | 3万円 |
5億円以下 | 6万円 |
10億円以下 | 16万円 |
50億円以下 | 32万円 |
50億円超 | 48万円 |
記載金額なし | 200円 |
印紙を貼り忘れても契約書自体は有効ですが、過怠税や刑事罰の対象になるおそれがあるため十分注意してください。
【関連リンク】
「不動産売買で必要な印紙税とは?役割や金額について」
不動産売買契約の契約の流れ
不動産売買契約を進める場合、以下の流れで行います。
①不動産の情報収集
②購入相談
③資金計画
④物件の選定
⑤売買契約・ローン契約
⑥代金支払い・引渡し
不動産売買契約を結ぶには、まず購入したい物件の情報を集めましょう。
周辺地域の物件から利便性、間取り、価格、設備などの情報を集め、候補を選抜します。
次に購入前の不動産会社への相談です。実際に見学できる物件は内見を行い、日当たりや設備の確認、価格や公租公課なども希望通りか確認します。
ある程度売買価格の目途がついたら金融機関に相談し、住宅ローンの融資を計画しましょう。
そして、最終的に購入する物件を選定したら、売主と売買契約、金融機関とローン契約を結びます。
最後に代金を支払い、物件の引渡しまで受けたら、登記も行って不動産売買契約は終了です。
引越し後は住所変更を行うとともに、控除を受けるなら翌年の確定申告も忘れずに行いましょう。
【関連リンク】
「一般的な不動産売却の流れとは?」
不動産売買契約書を締結に必要な物・書類
不動産売買契約を締結するために、どんな書類や必要物があるのかみていきましょう。
①登記識別情報・登記済証
②実印・印鑑証明書
③本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証・パスポートなど)
④印紙代・仲介手数料など
⑤その他(固定資産税評価証明書・マンション管理規約など)
この他にも、売買する不動産によって細かな必要物や必要書類がありますから、不動産会社とも相談しながら準備を進めてください。
【関連リンク】
「不動産売買の必要書類は?物件別の必要書類と入手方法について」
①登記識別情報または登記済証
不動産を売却する場合、売主が本当に権利を有しているか確認するために登記識別情報や登記済証を用意します。②実印と印鑑証明書
契約書に押印する印鑑とその印鑑証明書が必要になります。③本人確認書類
運転免許証やパスポートなど公的な本人確認書類が必要になります。④印紙代や仲介手数料の代金など
当然ですが、印紙代なども契約日までに用意しておきます。⑤その他
その他固定資産税の評価証明書やマンションの管理規約など、売買契約の内容や目的に応じて必要となる書類も用意しておきます。契約の流れ
不動産売買契約はまず事前に宅建士が同席し、重要事項説明書を読みながら重要事項の説明を受けます。その後、売買契約書を確認し、売主と買主双方が記名押印をし、手付金の授受を行います。
手付金については銀行振り込みのほか、預金小切手で支払ったり現金で支払うこともあります。不動産会社への仲介手数料も同様に支払います。
契約が無事成立すると、契約書の記載内容に基づいて売主と買主双方が義務を履行していきます。具体的には物件の引き渡しや所有権の移転登記手続きなどです。契約内容に違反したり故意に手続きを遅らせてしまうと違約金の支払いや損害賠償などが発生する可能性もあります。
まとめ
不動産売買契約書は不動産売買で最も重要といえる書類であり、法律の問題も関わってくるため、不動産売買の初心者には理解が難しいものです。
しかし実際の売買ではよく使われていることから「知らなかった」では済まないことも多く、一つひとつの内容をしっかりと確認することが不可欠です。
分からない部分は専門家にも相談しながら、細かい部分までチェックしたうえで、納得してから契約を結びましょう。
監修者
大沼 春香(おおぬま はるか)
宅地建物取引士
埼玉県・千葉県・東京都一部に拠点を置く
不動産売買仲介会社に15年以上従事。
自身も不動産購入を経験し「初心者にもわかりやすい」
実態に基づいたパンフレット・資料に定評がある。
最近はWEBや自社セミナーなどでの情報発信も行っている。