土地を手放す手段としては売却が一般的ですが、その他にもいくつかの方法が検討可能です。
この記事では、不要な土地を手放す5つの方法と、それぞれメリットを解説します。
いらない土地は自治体へ寄贈できる?
各地方自治体では、住民からの土地の寄付を受け付けています。
土地を寄付するメリットと注意点を確認していきます。
土地を寄付する方法
自治体に土地を寄付したい場合、まずは各地方自治体の担当の窓口へ事前相談が必要です。その後土地の調査が行われ、寄付を受けてもよい土地かどうかを審査されます。その後、所有者が必要書類を自治体に提出し、手続きは完了となります。
土地を寄付するメリット
土地を自治体に寄付するメリットは、贈与税を発生させずに済むという点です。贈与税は安い場合でも評価額の10%を支払う必要があり、金額の大きな出費です。
活用の難しい土地であれば、贈与税の発生を理由に受贈者が嫌がる可能性もあります。
この点、自治体への寄付では贈与税の心配をする必要はありません。
土地を寄付するときの注意点
自治体への土地の寄付では「そもそも寄付を受けてもらえない」場合も少なくありません。というのも、活用が難しく買い手のつかない土地であれば、自治体にとっても「もらっても仕方のない土地」である可能性が高いからです。
土地は自治体にとっては税収入の源になるため、使い道のない土地を寄付されるより、所有し続けてもらうほうがメリットも大きくなります。
土地の寄付は、希望したからといって必ずしも受け付けてもらえるとは限らないことに注意してください。
土地の寄付を断られやすいケース
自治体は、土地の寄付を容易に受け入れない傾向があります。その最大の理由が財源を確保するためです。固定資産税は、自治体からしてみると大きな収入源になっているため、安易に土地の寄付を受け入れてしまえば、財源の確保が難しくなってしまいます。
また、扱いの難しい土地の寄付を受け入れた場合、管理コストの問題も発生してしまうからです。自治体から寄付を断られやすい土地は、利用が困難な場所、近隣の土壌汚染といった対処に多額の費用がかかる場所、老朽化が進んで資産価値が低い場所が挙げられます。
さらに、無許可開発地も土地の寄付を断られやすいケースのひとつです。逆に考えれば、自治体が活用できそうな場所であれば、土地の引き取りを善処してくれるかもしれません。自治体の判断基準にもよりますが、公共的に利用できる場所であること、有効活用できる場所であること。この2点が大切なポイントになってくると考えられます。
地方自治体に寄付を断られた場合の対処法
処分に困る土地を自治体に寄付しようとしても、判断基準の厳しさから断られることもあります。
自治体への寄付が断られた場合でも、土地を処分する方法にはさまざまな方法があります。
具体的な対処方法として、5つのケースを見ていきましょう。
【対処法】
①認可地縁団体へ土地を寄付
②個人・法人へ土地を無償で譲渡する
③土地を売却する
④土地を放棄する
⑤相続税の納付時に物納
■関連リンク:
「空き家活用の成功事例は?活用方法ごとのメリット・デメリットや補助金制度について」
対処法① 認可地縁団体へ土地を寄付
自治会や町内会といった認可地縁団体に土地を寄付することができます。認可地縁団体に寄付する場合、自治体と同じように、その土地が町内会や自治会にとって、有効活用できる場所であるかどうかが引取りの大きなポイントです。また、税制優遇される土地であれば、前向きに寄付を検討してくれるでしょう。注意点としては、すべての自治会や町内会が認可地縁団体ではないことです。認可地縁団体へ土地の寄付を考えるとき、自治会や町内会に事前の確認をおこなうようにしてください。
対処法② 個人・法人へ土地を無償で譲渡する
土地を寄付する場合、自治体だけでなく個人や法人にも行うことができます。ただし、個人に寄付する場合は相手方に贈与税が発生するため、無闇に寄付すると相手に迷惑がかかる可能性がある点に留意しましょう。
また、法人に寄付するときは、相手方が営利法人なら寄付を行う自分に譲渡所得税が課される可能性もあります。
個人・法人に寄付をする場合は、贈与税や譲渡所得税がどちらにかかるか確認したうえで、双方の合意の下に寄付を行うことが重要です。
寄付を行う場合は、後々の金銭トラブルを避けるために、事前の話し合いと贈与契約書の作成も必要です。
贈与契約書には次のポイントを記載しましょう。
・贈与者・受贈者の氏名と贈与の締結内容
・贈与対象となる土地の所在地や番地(登記簿謄本と同じであること)
・所有権移転登記の日時や費用負担者の氏名
・贈与税・所有権移転にかかる費用・贈与後の固定資産税をどちらが負担するか
これらのポイントを贈与契約書に明記しておくことで、贈与者・受贈者間のトラブルのリスクを低減できます。
法人に寄付する場合、寺社や学校などの公益法人に対しては、社会貢献として譲渡所得税は発生しません。
金銭トラブルを避けるなら、公益法人への寄付も選択肢としておすすめです。
対処法③ 土地を売却する
土地を寄付するのではなく、売却して処分する方法もあります。土地を売却する場合、一般的な流れとして不動産会社に仲介を依頼して手続きを進めることが多いです。
・土地の査定(売出価格の決定)
・媒介を依頼する不動産会社を決定
・売却活動
・購入希望者と売買契約の締結
・代金の受け取りと土地の引き渡し
不要な土地を処分しながら現金も手に入るため、おすすめの土地活用方法の1つです。
■関連リンク:
「土地が売れない理由とその対処方法5選」
④土地を放棄する
土地の放棄とは、相続放棄によって土地や財産などの相続を放棄することです。相続放棄で土地を放棄すれば、そもそも土地の所有者となることがないため、所有権移転費用や固定資産税、相続税などが発生しません。
資産価値が低く売却が難しい場合や、買い手がつきにくい土地の場合には、最も効率的な処分方法です。
ただし相続放棄は親族が亡くなり、相続が発生してからでないと意思を表明できません。
また、土地だけを相続しないという方法はなく、すべての相続財産を放棄することになる点に注意すべきです。
■関連リンク:
「いらない土地の処分・放棄方法!申請方法や税金について解説!」
対処法⑤ 《特殊な例》相続税の納付時に物納
特殊な例としては、相続税をお金ではなく土地で払う「物納」という方法もあります。しかし、物納は延納(納付期限の延長)をしても金銭で納付できない場合に限って限定的に認められる方法のため、現金で払える場合は現金での納付が必要です。
また、土地に問題があり「物納不適格財産」にあたる場合は物納できません。
例えば以下のようなものが該当します。
・抵当権が設定されている土地
・複数名の共有名義の土地
・隣地との境界線が確定していない土地
物納を希望するのであれば、土地の状態や権利関係に不備がないかを確認しておきましょう。
使用していない土地を放置しておくとどうなる?
土地を取得すると「すぐに土地を活用する予定はないけれど、何かに使うかもしれないししばらく放っておこう」と思う方もいるかもしれません。
しかし、目的なく土地を放置するのはデメリットが多く、あまりおすすめできません。
土地を放置した場合に考えられるリスクを紹介していきます。
リスク① 固定資産税がかかる
不動産は持っているだけで課税対象となるため、年に一度固定資産税がかかります。税率は多くの自治体で1.4%に設定されており、仮に固定資産税評価額700万円の土地であれば年間9万8,000円を固定資産税として支払わなければなりません。
土地に建物が建っている場合、建物の固定資産税も併せて発生します。
■関連リンク:
「固定資産税の計算方法を徹底解説!平均額や減税方法も」
リスク② 損害賠償の対象になることがある
土地や建物を放置した結果、隣地の住民や通行人に損害を与えた場合、損害賠償請求の対象となることがあります。例えば、老朽化した空き家を放置しており、地震や台風などで倒壊したケースが代表的です。所有者が管理を怠ったとして、損害に対して過失が認められれば賠償を行わなければならないことがあります。
リスク③ 管理の手間がかかる
物件の管理そのものに手間がかかるという問題もあります。建物があれば定期的に掃除や空気の入れ替えなどメンテナンスが必要です。建物が建っていない場合も、草刈りなどを定期的に行う必要があります。
■関連リンク:
「空き家をそのまま放置していると危険?マンガでわかる空き家リスク管理」
まとめ
土地の活用が難しく、処分にも困っている場合は、余計な税金や費用を抑えるためにも早めに自治体へ寄付するのがおすすめです。
土地は持っているだけで費用やメンテナンスが発生し、所有者に多くの負担がかかります。
マイナスになることが多いのであれば、有効活用してくれる可能性がある自治体へ寄付を行いましょう。
監修者
大沼 春香(おおぬま はるか)
宅地建物取引士
埼玉県・千葉県・東京都一部に拠点を置く
不動産売買仲介会社に15年以上従事。
自身も不動産購入を経験し「初心者にもわかりやすい」
実態に基づいたパンフレット・資料に定評がある。
最近はWEBや自社セミナーなどでの情報発信も行っている。