不動産売却後の確定申告をおこなう前に
- 不動産売却後の確定申告をおこなう方は、この記事で必要書類をチェック
- 準備すべき必要書類や入手方法を知っておくことで、不備のない確定申告ができます
- 不動産売却後の確定申告に関する情報も、「ポラス」にお任せ!
課税負担などが軽減できる特例・控除を適用するためにも、しっかりとした確定申告をおこなわなければなりません。
そこで今回の記事では、不動産売却後の確定申告で必要な書類、特例・控除を受ける際に必要な書類、それぞれの種類や概要・入手方法などを徹底的に解説します。
目次
不動産売却時の税金についておさらい
まずは不動産売却時の税金についておさらいしましょう。
不動産を売却した時にかかる税金は「売却手続きの際に課税されるもの」と「売却益が発生した際に課税されるもの」の2種類です。
その内訳は、売却手続きの際にかかる印紙税や登録免許税、仲介手数料の消費税と売却益が発生した際にかかる所得税と住民税、そして復興特別所得税です。
【関連リンク】
https://www.baikyaku.polusnet.com/column/detail.php?n=392
不動産売却したら確定申告は必須?
不動産を売却した際、確定申告が必要なケースと不要なケースがあります。
確定申告が必須になるのは、不動産売却時に譲渡所得が発生した場合と特別控除の適用を受ける場合です。ここでは、それぞれの詳細を解説します。
【確定申告が必要なケース①】売却時に譲渡所得が発生した場合
不動産売却時に譲渡所得が発生すれば、必ず確定申告をしなければなりません。譲渡所得とは、不動産や株式などの資産を売却したことによって得る利益のことです。給与所得などと分離課税されるため、確定申告が必要になります。譲渡所得を算出する計算式は「譲渡収入金額 -(取得費 + 譲渡費用)」です。
たとえば、土地を6,000万円で売却したとしましょう。土地の購入費用が5,000万円、売却手数料などの譲渡費用が250万円かかりました。これを上記計算式に当てはめると「6,000万円 -(5,000万円+250万円)」 になり、750万円の譲渡所得が発生することから、確定申告が必要です。ただし土地を売却して損失が発生すれば、確定申告は不要となります。
【確定申告が必要なケース②】特別控除の適用を受ける場合
特別控除の適用を受ければ、不動産売却時に納税額を軽減することが可能です。ただし特別控除を利用する際、確定申告が必要となります。不動産売却時の納税額が0円だったとしても、特別控除の適用を受けたいなら確定申告が必須です。不動産を売却するときに適用できる特別控除には、自宅を売却した際に一定の要件を満たすことで譲渡所得金額から最大3,000万円を控除できる「居住用財産の3,000万円特別控除」や、自宅売却時に譲渡損失が発生した際に一定の要件を満たすことで損失を事業所得や給与所得などと相殺できる「譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」があります。
3,000万円控除は「10年超所有の軽減税率の特例」との併用も可能です。
不動産売却後の確定申告で必要な書類一覧
土地や建物といった不動産を売却した後は、その翌年に確定申告をおこなわなければなりません。その際、どのような書類を準備しなければならないのでしょうか?
ここでは、不動産売却後の確定申告で必要な書類一覧、それぞれの概要や入手方法などを解説します。
書類① 確定申告書B様式(第一表)
確定申告書B様式(第一表)とは、最寄りの税務署や市役所などで入手できる汎用的な申告書です。この書類を使えば、取得の種類を問わず、誰でも確定申告(青色申告)をおこなうことができます。書類② 確定申告書第三表(分離課税用)
確定申告書第三表(分離課税用)とは、最寄りの税務署や市役所などで入手な不動産所得を記入する専門用紙です。不動産譲渡で得た所得の場合、他の所得とは、別に課税することが義務付けられているため、この書類が必要になります。書類③ 本人確認書類
確定申告書をおこなう場合、マイナンバーの記載と本人確認書類の提出が必須です。免許証や保険証、住民票などの提示や写しの添付になります。インターネット(e-Tax)による申告では、本人確認書類の提示や写しは必要ありません。書類④ 登記事項証明書
登記事項証明書とは、法務局で入手できる不動産の所有者や担保などの登記記録が記載された書類です。取得方法は、登記事項証明書交付請求書に、土地や建物の所在地、地番などを記入し、法務局の窓口で申請します。書類⑤ 譲渡所得の内訳書
譲渡取得の内訳書とは、不動産売却後に国税局から郵送される書類です。この用紙に、土地や建物の売却による譲渡所得金額の詳細を記載します。税務署での入手や、国税庁のホームページからのダウンロードも可能です。書類⑥ 取得費用が確認できる領収書の写し
不動産購入の際にかかった取得費用が確認できる領収書を揃えてください。準備できない場合、課税額が増える恐れがあります。具体的には、不動産購入金額、仲介手数料、印紙税、登記費用、不動産取得税、測量費用といった領収書の写しです。
書類⑦ 譲渡費用が確認できる領収書の写し
不動産の取得費用と同様、不動産売却の際にかかった譲渡費用が確認できる領収書も必要です。領収書の種類は、仲介手数料、印紙税、登録免許税、解体費用などの写しになります。しっかりと譲渡費用を計上すれば、課税額を抑えることが可能です。書類⑧ 不動産購入時の売買契約書の写し
確定申告時、課税の増額を抑えるため、不動産を購入した際に入手する売買契約書の写しが必要になります。売買契約を仲介した不動産会社が作成する書類です。紛失した場合、売主や仲介業者から写しをもらってください。
書類⑨ 不動産売却時の売買契約書の写し
不動産の売却時に入手する売買契約書の写しも準備しましょう。これも不動産の購入時と同様、売買契約を仲介した不動産会社が作成する書類です。確定申告の際、土地や建物を売却した価格を証明するために必要となります。
書類⑩ 源泉徴収票
2019年分まで自営業以外の給与所得者は、確定申告時に源泉徴収票の原本が必要でした。2020年分以降からは、源泉徴収票の添付が不要となります。ただし、申告書に記入する金額を確認するため、源泉徴収票は必要です。不動産売却後の確定申告書作成の流れと書き方
実際に確定申告をおこなう場合、かなりの時間や手間を費やします。具体的には、どのような手順を踏んでいくのでしょうか?
ここでは不動産を売却した後の、正しい確定申告書作成の流れと詳しい書き方を解説します。
①国税庁公式サイトから書類をダウンロード
まずは、確定申告に必要な書類を準備しなければなりません。動産売却後の確定申告をおこなう場合「税金を申告するための書類」と「申告内容を証明する書類」の2種類を揃える必要があり、ここでは、税金を申告するための書類3点に絞ります。それが「譲渡所得の内訳書」「確定申告書B」「確定申告書第三表(分離課税用)」です。
特別控除の適用を受けるときは、上記3点に「譲渡所得の内訳書(5面)」を準備してください。これらの書類は、国税庁の公式サイトでフォーマット(書式)をダウンロードできます。
②譲渡所得の内訳書を作成
次は、譲渡所得の内訳書の作成です。不動産売却後の確定申告をおこなう場合、おもに書類の1面から3面まで記入します。
以下がそれぞれのおもな項目です。
1面:譲渡所得のあった年や確定申告をする人の氏名や住所など
2面:売却した不動産の不動産登記や売却前の状況、売買契約書や精算書、譲渡価額、買主の氏名や支払い条件など
3面:売却不動産の取得費、譲渡費用、譲渡益など
4面:買換え特例などを適用する際に記載
5面:被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除(空き家の3,000万円控除)を適用する際に相続した不動産の詳細を記載
③申告書B第一表の左半分を記入
続いては、確定申告書Bの作成です。確定申告書の様式には2種類あり、所得制限の範囲や予定納税の有無によってAかBかを選ぶようになっています。不動産売却で得た利益を申告する場合は、確定申告書Bを使いましょう。まずは、確定申告書B第一表上の欄外にある宛先税務署長、年、住所氏名等、個人番号、住所、1月1日時点の住所、屋号・雅号、生年月日、種類、整理番号を記入します。続いて左半分の「収入金額等」「所得金額等」を記入してください。「所得から差し引かれる金額」は、第二表作成後に記入した方がスムーズに書けます。
④申告書B第二表を作成
確定申告書B第一表の左半分を記入したら、確定申告書B第二表の作成に移ります。ここでは、住所・氏名・屋号(屋号がなければ、記入不要)、所得の内訳、総合課税の譲渡所得、一時所得に関する事項、保険料控除等に関する事項、本人に関する事項、雑損控除に関する事項、寄附金控除に関する事項、配偶者や親族に関する事項、事業専従者に関する事項、住民税・事業税に関する事項から、該当する事項をすべて記入してください。
第二表の作成が終わったタイミングで、第一表の左半分に残った「所得から差し引かれる金額」を記入しましょう。
⑤申告書第三表に内訳書の記載を転記
ここからは、確定申告書第三表を記入します。確定申告書第三表とは、分離課税の対象となる所得を申告するための書類です。まずは譲渡所得の内訳書2面に記入した譲渡価格を、左側上段にある「収入金額」の分離課税(ス)~(チ)欄に転記してください。続いて、譲渡所得の内訳書3面に記入したE譲渡所得金額を、左側中段にある「所得金額」の分離課税欄へ転記します。(64)~(68)は、収入金額の欄と同じ箇所に記入しましょう。また特別控除を適用する場合、最上段右側にある「特例適用条文」の記入も忘れないようにしてください。
⑥第三表の右上に算出した税額を記入
「収入金額」「所得金額」の記入後、その下段にある「税金の計算(課税される所得金額)」を記入します。(12)と(29)は、第一表から転記する部分です。(77)には(12)から(29)を差し引いた金額、以降は対応分の番号に沿った金額を1,000円未満切り捨てで記入します。次に、第三表の右側上段にある「税金の計算(税額)」へ移り、課税される所得ごとの税率を用いて算出した税額を記入してください。(93)は、税額の合計金額となり、第一表の(31)へ転記します。上記以外に該当する事項や所得があれば、その他以下の欄に記入しましょう。
⑦申告書B第一表の右側を記入して完成
確定申告書作成の仕上げは、申告書B第一表の右半分を記入することです。それが「税金の計算」「その他」「延納の届出」「還付される税金の受取場所」となります。税金の計算は、納める所得税と復興特別所得税の金額を計算してください。基本的に、確定申告書に記載された計算式で税額を算出します。
「住宅借入金等特別控除」「源泉徴収税額」などに該当する場合には漏れなく記入し、最後に納める金額あるいは還付される金額を計算します。その他や延納の届出、還付される税金の受取場所に関しては、それぞれ該当する場合に記入してください。
不動産売却後の確定申告で控除を受ける場合に必要な書類
不動産を売った場合、各種特例を適用することにより、税負担の控除を受けることが可能です。ただし、それぞれの特例ごとに準備する書類が異なります。ここからは、不動産売却後におこなう確定申告で控除を受ける際に必要な別途書類をチェックしていきましょう。
【特例・控除①】マイホームの3000万円特別控除
「マイホームの3000万円特別控除」とは、自宅を売却した際、適用条件を満たすことで譲渡所得から最大3,000万円までを控除できる特例です。確定申告時に必要な書類としては、住んでいた住所を証明できるもの(戸籍の附票の写しなど)になります。【特例・控除②】10年超所有の軽減税率
「10年超所有の軽減税率」とは、譲渡所得の税率を14.21%まで下げられる特例です。所有期間が10年を超えるマイホームを売ったときに適用できます。確定申告時に必要な書類は、住んでいた住所を証明できるもの(戸籍の附票の写しなど)、マイホームの登記事項証明書です。【特例・控除③】相続空き家の3000万円特別控除
「相続空き家の3000万円特別控除」とは、適用条件を満たすことで相続した被相続人の居住用財産(空き家)を売却した際、譲渡所得から最大3,000万円までを控除できる特例になります。確定申告をおこなう際に必要な書類は、売却した不動産の登記事項証明書、被相続人居住用家屋等確認書、耐震基準適合証明書もしくは建設住宅性能評価書の写しです。
【特例・控除④】相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」とは、相続や遺贈によって所得した土地・建物などの財産を一定期間内に譲渡した場合、相続税額の一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができる特例です。確定申告時には、相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書が別途必要な書類となります。
【特例・控除⑤】マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
この特例は、マイホームを買い替えることによって譲渡損失が生じた際、その譲渡損失した金額を同年の所得から控除できる制度です。同年の控除でも損失を補えない場合、売却後の翌年以後3年内において、各年分の所得から繰越控除することが可能となります。確定申告をおこなう際に必要な書類は、確定申告書付表、住んでいた住所を証明できるもの(戸籍の附票の写しなど)、居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書、売却した自宅の登記事項証明書もしくは売買契約書の写しなどです。
【特例・控除⑥】特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
この特例は、住宅ローンの残るマイホームを売却した際、住宅ローンの残債よりも低い価格でしか売れず、譲渡損失が発生した場合に適用できる制度になります。譲渡損失した金額を同年の所得から控除でき、同年の控除でも損失を補えなければ、売却後の翌年以後3年間は、繰越控除することが可能です。確定申告時には、確定申告書付表、住んでいた住所を証明できるもの(戸籍の附票の写しなど)、特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書、売却した自宅の譲渡資産に係る住宅借入金などの残高証明書、売却した物件の登記事項証明書もしくは売買契約書の写しなどになります。
不動産売却後の確定申告はいつまでに行うの?
不動産売却後の確定申告ですが、すぐに申告をおこなうわけではありません。確定申告の時期は、毎年2月16日~3月15日の間と決まっています。
不動産を売却した場合、物件を引き渡した日の翌年2月16日~3月15日までが確定申告の期限です。一般的に、引き渡した不動産が属する管轄の税務署で確定申告をおこないます。
確定申告を行わなかった際の罰則はある?
不動産を売却する場合、物件を引き渡した日の翌年2月16日~3月15日の間に確定申告をおこないます。しかし「手続きを忘れていた」「税金を準備できなかった」などの理由から、確定申告をおこなわなかった場合、どのような罰則が課せられるのでしょうか?
まず、遅くなっても期限内に確定申告を済ませれば、何の罰則もありません。
ただし確定申告の期限が過ぎてしまえば、税務署から申告・納税を催促する「警告通知書」が送られてきます。こうなると通常支払う譲渡所得税のほかに延滞金が発生してしまうため、十分な注意が必要です。
延滞金には「無申告加算税」と「延滞税」があります。無申告加算税とは、期限までに申告をおこなわなかった際に課せられる税金です。延滞税とは、申告期限を過ぎた日数に応じて課せられる税金です。
また故意に確定申告を怠れば、所得税法に触れることから犯罪者と見なされ、最大10年の懲役刑になる可能性があります。
確定申告は事前の準備が重要なポイント
不動産売却後の確定申告では、数多くの書類を揃えなければなりません。そのため、余裕を持った事前の準備が大切なポイントです。
確定申告の期間後に書類の不備が発覚した場合、更生の請求または修正申告の手続きが必要となり、延滞税や無申告加算税などのペナルティが課せられることもあります。
特例・控除を受けるためにも、しっかりと間違いのない確定申告をおこないましょう。
監修者
大沼 春香(おおぬま はるか)
宅地建物取引士
埼玉県・千葉県・東京都一部に拠点を置く
不動産売買仲介会社に15年以上従事。
自身も不動産購入を経験し「初心者にもわかりやすい」
実態に基づいたパンフレット・資料に定評がある。
最近はWEBや自社セミナーなどでの情報発信も行っている。