そこで不動産を売却する理由として多いものをリストアップ。
さらに、老朽化、離婚、立地・環境の問題、ローンの滞納、近所トラブル、事故など、ネガティブな理由の場合の対策と、それを伝える際のコツについてご紹介します。
また告知義務に関する要注意事項についても解説します。
目次
不動産売却の理由ランキング
戸建てやマンションなどの住居を売却する場合、人によってさまざまな事情があるものです。
具体的にどのような売却理由が挙げられるのでしょうか?
ここでは不動産売却の理由を、ランキング形式で第1位~第10位までをご紹介します。
第1位:住み替え
不動産売却の理由の第1位は「住み替え」です。住み替えとは現在の住居を売却し、その資金で新たな住居を購入する転居方法で、実際に住み替えするおもなきっかけは「より良い住まいを手に入れるため」です。たとえば子どもの誕生、家族構成や生活環境の変化、老後を見据えてなど、ライフステージごとに理想の住まいが変化するため、不動産売却による住み替えをおこなう人が多いのです。
第2位:相続
不動産を手放す理由の第2位が「相続」による売却となっています。具体的には、親や兄弟などの被相続人から譲渡された家を「維持・管理することが難しい」「すでに別の住まいがある」「空き家のままでは防犯的に問題がある」などの事情から、不動産売却という方法が選択されています。また相続人が複数いる場合、その不動産を平等に分けるため、売却・現金化するというケースも少なくありません。
第3位:ローン返済が難しい
家を売る理由のランキング第3位は「住宅ローンの返済が困難になったため」です。これは、住宅ローンを借り入れた債権者の収入面や健康面などの問題から「月々の返済が難しくなったこと」が最大の事情として挙げられます。この根源には、昨今のコロナ過も大きな影響を及ぼしているようです。先行きが不透明な状況で無理な返済を続けていくよりも、早めに不動産を売却した方が懸命だと判断されての結果でしょう。
第4位:離婚
不動産売却をおこなう理由として「離婚」も上位に挙げられます。これは夫婦それぞれが新しい生活に向け、離婚と同時に各自で住居を構えることが大きな要因です。一般的に離婚する場合、不動産や預貯金などの財産分与をおこないます。その際、夫婦が結婚後ともに築いた共有財産は、2分の1ずつ分けることが通例となっているため、不動産に関しては分与しやすいように売却(現金化)するケースが多いようです。
第5位:資金調達
不動産を売却する理由として「資金を調達するため」が第5位となっています。「事業を始める」「運転費用の確保」「生活費の捻出」などの事情から、まとまった資金が必要になり、その調達方法のひとつとして家を売るのです。不動産を売却できれば、高額の現金を手に入れることができます。
不動産会社が直接家を買い取る「買取制度」もあるため、迅速に資金調達をおこないたい場合には最適の選択肢でしょう。
第6位:不要物件の処分
「不要物件の処分」も、不動産を売却する理由のひとつに挙がります。たとえば「父から相続した家の使い道がない」「母が施設に入所するため、遠方にある実家が空き家になる」など、要らないと判断した家を売るケースです。不動産を所有している限り、維持・管理の出費や手間といった負担がかかります。さらに不要物件を放置した場合、空き家問題に発展する恐れがあることから、不動産売却を検討する人が多いようです。
第7位:転勤や転職
不動産を売却する場合「転勤や転職」も少なくない理由です。企業に務めていれば「マイホームの購入後、転勤が決まった」などという話は、決して珍しくありません。単身赴任を選択することもありますが、転勤が長期間になりそうな場合、家族一緒に新天地での生活を決断し、そのタイミングで家を売却する人が多いようです。
また転職に伴い、勤務地の変更や収入面の問題などから家を手放す例も挙げられます。
第8位:同居や介護
別々に暮らしていた家族との「同居や介護」を理由に、不動産売却をおこなうケースもあります。具体的には「子どもと住める二世帯住宅を建てることになった」「高齢になった親を介護する必要がある」などの事情から家を売るようです。特に介護を理由とした不動産売却の場合「介護費用捻出のため」「介護施設に入居させるため」「在宅介護できる家に住み替えるため」といった理由が挙げられます。
第9位:資産整理
老後の「資産整理」も、不動産を売却する理由のひとつです。建物や土地などの資産は、現金や預金、株式などの貯蓄と比較した場合、遺産分割や相続税納税義務のトラブルが起こりやすいリスクを持っています。その対策としてあらかじめ不動産を売却しておけば、相続問題や税金問題を回避しやすいのです。生前に不動産を現金化することによって、相続や納税の話がスムーズに進むでしょう。
第10位:結婚
不動産を売却する理由に挙げられた第10位は「結婚」です。独身のときに家を買う人も数多くいますが、結婚すればパートナーと一緒に暮らすことから、これまでのライフスタイルが大きく様変わりします。夫婦ふたりで話し合った結果、将来を見据えた生活に適応できる新しい家を購入するため、不動産を売却するようです。ただし家を売るタイミングは、夫婦の事情や考え方などによって異なります。
不動産の売却理由の重要性・売却に与える影響
不動産を売却しようと考える理由は、家族、仕事、経済面など、それぞれ事情が異なります。 しかし購入する側から見ると、「なぜ売主はこの物件を売却するのか?」と疑問に思うのは自然なことでしょう。
その売却理由を明らかにすることで、購入希望者が物件の購入を検討しやすくなります。
理由次第では、それぞれに最適な売却方法がありますから、ぜひ仲介を依頼する不動産会社には売却の理由を詳細に伝えて、アドバイスをもらいましょう。
売却理由が売却に与える影響

不動産を売却するとき、その理由も重要なポイントになってきます。しかし、売却理由が不動産の売買において、どのような作用を及ぼすのでしょうか?
ここでは、売却理由が売却の際に与えるおもな影響を解説していきます。
売却価格への影響
不動産の売却理由は、物件の売却価格を大きく左右します。購入希望者が土地や建物を探す際、誰もが物件の「条件」と「金額」を最優先に確認し、そのバランスを踏まえ、購入を検討するものです。しかし「外壁・内装・設備に欠陥がある」「住環境が良くない」など、ネガティブな売却理由が挙げられているにも関わらず、価格の設定が相場以上や相場並みであれば、購入希望者の印象が悪くなってしまいます。
このような条件と金額のバランスが釣り合わない物件は、買い手から敬遠されるため、必然的に売主の希望を大きく下回るような売却価格を付けざるを得なくなるでしょう。
売却期間への影響
売却理由の影響は、不動産の売却期間にも及びます。目的の土地や建物を探している購入希望者が相場よりも低い物件を見つけた場合、率直に知りたがることは「価格の理由」です。そして売却理由が、建築法や消防法などに問題がある法的瑕疵(かし)の場合や、立地や周辺に問題がある環境的瑕疵の場合など、極端にイメージの悪いものと分かれば、購入を躊躇してしまうでしょう。
このような状況が続いてなかなか買い手が決まらず、結果的に通常の物件よりも、売却期間が伸びてしまうのです。理由次第では最悪の場合、不動産会社による直接買取も断られ、売却が困難になってしまいます。
販売活動への影響
売却理由があまりにも好ましくないものであれば、不動産会社の販売活動にも大きな影響を与えることがあります。たとえば、事故や事件、自殺などが起きた心理的瑕疵のある事故物件の場合、扱いなれた不動産会社であっても、通常の物件と比較すれば、販売活動は思うように進みません。
法的瑕疵や環境的瑕疵などの訳アリ物件と呼ばれる不動産も同様です。不動産会社によっては、このような事故物件・訳アリ物件の取り扱いを嫌がる企業もあります。
また、内覧の際にも購入希望者に詳細な説明を求められるため、売主はその対応に苦慮し、神経を使うことになるでしょう。
ネガティブな理由の場合の対策
前向きな理由で不動産を売却する場合がある一方、老朽化・離婚などのネガティブな理由で売却に至るケースもあります。
それぞれの場合で知っておきたい対策について、見てみましょう。
「老朽化」の場合の伝え方
家自体の老朽化が原因で売却する場合は、この理由をそのまま購入者に伝えると物件への興味が薄れる可能性があります。どの程度老朽化しているかによりますが、売却活動をどのように行うべきか、仲介を依頼する不動産会社と相談しながら進めましょう。
「離婚」の場合の伝え方
離婚する夫婦は、不動産を売却して資産を分割することが多いです。住宅ローンを組んでいてまだ完済していない場合は、売却して得た資金を返済にあてることができます。
購入希望者によっては、「離婚=縁起が悪い」と思われる可能性がありますが、離婚が理由ということは、不動産自体には問題ないというアピールにもなります。
「立地・環境の問題」の場合の伝え方
通勤に不便、子供の学校まで遠いといった立地上の問題や、周辺の環境に問題があり、売却する場合があります。通勤や生活に不便といった理由は、感じ方に個人差があるため、あまり問題はありません。しかし騒音など周辺環境に関する問題は買主に伝えなければならない情報になります。
「ローンの滞納」の場合の伝え方
住宅ローンの返済に困って売却するケースについても、不動産会社にぜひ相談しましょう。「どうしても売らなければならない」という売主の理由を突いて、買主側に有利な条件を提示してくる買主がいるかもしれません。
そのため正直に理由を明らかにせず、無難な理由にしておく方がいいでしょう。
「近所トラブル」の場合の伝え方
近所とトラブルが起きて不動産を売却する場合、そのような近隣トラブルを隠して売却すると、告知義務違反となる可能性があります。しかし購入希望者や買主への伝え方には、上手な言い回しができるはずです。どのような言い方が適しているか不動産会社と相談しましょう。
「事故」の場合の伝え方
事件や事故が起きたことのある不動産を売却する場合、これらの情報は買主に正直に伝えなければなりません。隠して売却し、後日そのことが発覚した場合、売買契約がキャンセルとなったり、慰謝料を請求されたりする可能性があります。
ネガティブな売却理由を伝える際のコツ
ネガティブな理由で売却する場合は、ありのままの理由を購入希望者に伝えると、購入意欲がそがれる可能性があります。それを防ぐために、次のようなコツを抑えておきましょう。
①まずは不動産会社に相談する
買主側との売買交渉を行うのは、売主自身ではなく、仲介を依頼する不動産会社です。そのため、不動産会社には正直に売却の理由を伝え、どのように対処すればいいか相談しましょう。
②内覧時にどこまで伝えるか考える
物件の内覧時に、購入希望者から売却の理由を聞かれることが多いでしょう。そのため内覧時に、どこまで売却の理由を伝えるべきか、事前に不動産会社と相談しておきましょう。
③値引きと一緒に伝える
ネガティブな売却理由がある場合、売買価格の値引きと合わせて購入希望者にその理由を伝える方法があります。ネガティブな理由は、購入希望者にいいイメージを持たせない可能性がありますが、値引きで購入意欲を高めることに繋げられる可能性があります。
「告知義務」に要注意
不動産の売却では、ネガティブな情報は伏せておきたいと思うかもしれません。しかし、物件に欠陥があった場合、売主は買主にその事実を告知しなければなりません。これは、売主は「契約不適合責任(けいやくふてきごうせきにん)」を負うためです。
もし買主が購入時に、そのような物件の欠陥を知らずに売買契約を結ぶと、売主側の責任問題に発展し、慰謝料請求などに繋がる可能性があります。
ネガティブな理由でも上手に買主へ伝えよう
後々、 契約不適合責任を問われることがないように、ネガティブな理由であってもきちんと買主側に伝えることが大切です。
そのためにも、不動産会社に事情をきちんと話し、上手に売買交渉を行ってもらうようにしましょう。
監修者

大沼 春香(おおぬま はるか)
宅地建物取引士
埼玉県・千葉県・東京都一部に拠点を置く
不動産売買仲介会社に15年以上従事。
自身も不動産購入を経験し「初心者にもわかりやすい」
実態に基づいたパンフレット・資料に定評がある。
最近はWEBや自社セミナーなどでの情報発信も行っている。