
そこでこの記事では、不動産売却で必ず必要となる書類一覧とその取得方法、さらに準備しておいた方が便利な推奨書類一覧とその取得法をご紹介します。
また、不動産売却時の必要書類チェックリストも用意しましたので、ぜひご活用ください。
目次
不動産売却にはさまざまな書類が必要です
不動産売却には、契約書や登記簿謄本、固定資産税納税通知書など多くの書類が必要です。これらの書類を準備することで、売却手続きをスムーズに進めることができます。事前にしっかりと確認しておきましょう。
不動産売却における必要書類チェックリスト
まず、不動産売却時に必要な書類の一覧を確認しましょう。戸建ての売却で必要となる書類は次の通りです。〇=必要、△=任意または該当する場合、×=不要
【必須書類】不動産売却時の必要書類と取得方法

不動産を売却するときには、さまざまな必要書類を用意しなければなりません。取得まで時間がかかるものもあり、あらかじめどんな書類を準備するのか確認して、早い段階から用意するようにしておくとよいでしょう。
まずは、不動産を売却するときに売主が必ず必要となる必須書類について説明していきます。
必要書類① 登記済権利証
「登記済権利証」とは物件の所有者を証明するもので、法務局が登記している名義人に対して交付する書類です。■取得方法
「登記済権利証」は不動産を取得してその登記が完了したときに法務局から交付されるもので、再発行はできません。不動産を購入したときに必ず受け取っているはずなので、自宅の関連書類にないか確認してみましょう。
必要書類② 土地測量図
戸建て住宅や土地を売却する場合は、その売却する範囲を確認するために「土地測量図」が必要となります。近隣との境界を把握するための「境界確認書」という書類で対応できる場合もあります。■取得方法
土地測量図または境界確認書は、その土地や戸建てを購入したときに受け取っているはずです。
必要書類③ 固定資産税納税通知書
不動産を取得すると固定資産税の納税が必要となります。このときに交付されるのが「固定資産税納税通知書」です。■取得方法
固定資産税は毎年1月1日の時点で不動産を所有する人に課税されるもので、毎年4~6月頃に各自治体から郵送されます。「固定資産税納税通知書」ではなく「固定資産税評価証明書」が必要になる場合は、自治体の役所で本人確認を行って発行してもらうことができます。
必要書類④ 印鑑証明書
売買契約書や登記関連の書類には実印が必要となります。手持ちの印鑑を各市区町村の役場に届けることで、それが公的に証明されたものとして認められ「実印」としての効力を持つこととなるのです。このときに必要なのが「印鑑証明書」です。■取得方法
すでに自治体に印鑑証明の登録を行っている場合は、役場で発行が可能です。また、マイナンバーカードを使えばコンビニでも交付が可能です。実印の登録がまだの場合は、印鑑と、運転免許証などの身分証明書を用意して自治体ですぐに登録を行いましょう。
必要書類⑤ 身分証明書
売主本人の身分を証明する書類も必要です。運転免許証やパスポート、住民票などで対応可能です。不動産を共有名義で所有している場合は、共有者全員の身分証明書が必要です。■取得方法
運転免許証やパスポートは、売買契約を結ぶ時点で有効期限が切れていないか確認しましょう。住民票の場合は、発行日が記載されるので、発行から3か月以内のものを準備しましょう。
必要書類⑥ 建築確認証と検査証
戸建ての売却では、「建築確認証」と「検査証」が必要になります。これらは建築基準法に従って建築されたことを証明する書類です。建築設計図や工事記録なども一緒に用意しておくと尚よいでしょう。■取得方法
「建築確認証」や「検査証」は戸建てを取得したときに交付されるもので、再発行はできません。万が一紛失した場合は、自治体の役場で台帳記載事項証明書の発行を依頼しておきましょう。
必要書類⑦ 物件の図面・設備の仕様書
その建物の間取りや設備の状況を確認するための書類です。■取得方法
図面や設備の仕様書は、取得時に受け取っているものがあるはずなので、確認しましょう。
必要書類⑧ マンションの利用規約
マンションを売却する場合は、マンションごとのルールを定めた「利用規約」が必要です。ペット飼育の有無や駐車場、駐輪場の有無などが記載されています。■取得方法
マンションを取得したときに受け取っているはずです。紛失した場合は、マンションの管理会社や管理組合に問い合わせて、コピーなどを用意しましょう。
【推奨書類】不動産売却時の必要書類と取得方法
次は、不動産を売却するときにすべての人が必要となるわけではないですが、必要に応じて準備しておくとよいものについてご説明します。
推奨書類① ローン残高証明書
不動産を売却するとき、売主が住宅ローンの返済中であれば、ローンの残高と返済額を確認するための「ローン残高証明書」が必要です。■取得方法
ローン残高証明書の発行については、その住宅ローンを借りている金融機関に問い合わせてください。
推奨書類② ローン返済予定表
ローン残高証明書の代わりとなるのが「ローン返済予定表」です。ローン返済予定表にも、ローン残高が記載されています。■取得方法
ローン残高証明書と同様に、住宅ローンを借りている金融機関に問い合わせましょう。
推奨書類③ 耐震診断報告書
地震大国の日本では、1981年にそれまでの耐震基準から大幅な見直しが図られ改正建築基準法が施行されました。そして1981年以前に建てられた建物については、「耐震診断報告書」などの提出が求められることもあります。取得方法
「耐震診断報告書」は専門家に依頼するほか、自治体で耐震診断の支援や援助を行っている場合もあります。
推奨書類④ アスベスト使用調査報告書
さまざまな健康被害がわかってきているアスベスト(石綿)は、1989年以降の建物には使用されていないと言われています。ただし不動産売買で「アスベストの使用調査報告書」の提出が求められることもあります。■取得方法
「アスベスト使用調査報告書」については、不動産会社などに相談してみましょう。
推奨書類⑤ 住宅性能評価書
「住宅性能評価書」とは国土交通大臣より認定された第三者機関が住宅の10項目について評価するもの。住宅の客観的な評価を知ることができます。■取得方法 「住宅性能評価・表示協会」が、住宅性能評価を行うことができる評価機関を紹介しています。
推奨書類⑥ 地盤調査報告書
土地の地形や地学的な状況などの調査を行い、その結果をまとめたものが「地盤調査報告書」です。■取得方法
建売住宅を購入するときは、地盤調査報告書を閲覧できるのが一般的です。中古の戸建てを購入する場合は、以前の家主が地盤調査を行っていれば、その当時の調査結果を確認できる場合もあるでしょう。
推奨書類⑦ マンションの使用細則
マンションの売却では、マンションの細かいルールについて記載された「使用細則」を準備しておくとよいでしょう。■取得方法
マンションを取得したときに使用細則を受け取っているはずですが、ない場合や紛失した場合は管理組合や管理会社に問い合わせてみましょう。
推奨書類⑧ マンションの維持費に関する書類
マンションの場合、管理費や修繕積立金、管理組合費、町内会費などが記載された書類を用意しましょう。買主がマンションを購入した後に負担するべき費用を確認することができます。■取得方法
マンションの管理組合や管理会社に問い合わせしてみてください。
推奨書類⑨ 購入時のパンフレット・チラシ
不動産を取得したときのパンレットやチラシなどがあれば、物件の内容や取引条件などが明記されているため、何かと参考にできます。■取得方法
購入したときにパンフレットなどを保存していれば、それらをまとめて準備するとよいでしょう。
推奨書類⑩ 銀行の通帳
売買の決済で使う銀行の口座がわかるものを準備しましょう。不動産の取引は大きな金額のため、万が一口座番号を間違ってしまうと大変です。■取得方法
銀行の口座番号などがわかるものを準備しましょう。
売却した物件の引渡し時に必要な書類と取得方法
不動産売却の際に、物件の引き渡し時に必要な書類は以下のようなものです。
ただしこれら以外にも、取引の種類や地域によって必要な書類が異なる場合があるため、事前に不動産会社や専門家に確認しましょう。
■印鑑証明書
実印を登録している市区町村の窓口で取得 ※3ケ月以内に発行のもの
■所有権移転登記用の委任状
法務局やオンライン申請で取得
■不動産売買契約書(売買双方が署名・捺印したもの)
不動産会社に依頼して作成してもらうか、専門の書式を用いて自分で作成
■土地や建物の登記済証または登記識別情報
登記簿謄本と同様に、法務局やオンライン申請で取得
■固定資産税納税証明書
市町村の役所から取得、紛失した場合は再発行を依頼
■ローン完済証明書(該当する場合)
住宅ローンを借りている金融機関に問い合わせて取得
■住宅の図面(建物の場合)
建設会社や設計事務所から取得
■検査証明書(新築または建て替えの場合)
建設会社や設計事務所、検査機関から取得
■保証書や取扱説明書(設備や機器に関するもの)
設備や機器の購入時に発行された保証書や説明書を準備
■エネルギー性能表示書(該当する場合)
エネルギー性能を示す書類で、建設会社や設計事務所から取得
■敷地内に埋設されている設備に関する資料(該当する場合)
建設会社や設計事務所から取得
■リフォーム履歴(該当する場合)
リフォーム業者から取得
売却物件がマンションなどの共同住宅の場合は、以下の書類も必要になることがあります。
■管理規約
管理組合から取得
■マンションの管理組合の変更届出書
管理組合から取得
■駐車場の使用権譲渡に関する書類(該当する場合)
管理組合から取得
これらの書類は、物件の引き渡しをスムーズに進め、後のトラブルを防ぐために重要です。引渡し前にすべての書類が揃っているか確認し、不明点があれば事前に不動産会社や専門家に相談しましょう。
売主の本人確認書類と代理人の本人確認書類
不動産売買において、売主の本人確認書類と代理人の本人確認書類が必要です。売主本人の場合、運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなどが有効です。代理人の場合、委任状とともに代理人の本人確認書類(運転免許証やパスポートなど)が必要です。
これらの書類は、市区町村役場や発行元機関で取得できます。運転免許証やパスポート、マイナンバーカードの発行や更新手続きを行い準備しておきましょう。
不動産売却により確定申告を行う際に必要な書類と取得方法
不動産を売却した場合、所得税や住民税の確定申告が必要です。確定申告を行う際には、いくつかの書類を準備しなければなりません。以下に必要な書類とその概要、用意する際のポイント、取得方法を記載します。
■確定申告書B
確定申告書Bは、所得税の確定申告を行うための書類です。所得金額や控除額を記入します。
【取得方法】国税庁のウェブサイトからダウンロードするか税務署で入手
■確定申告書第三表
確定申告書第三表は、不動産売却による譲渡所得を申告するための書類です。譲渡所得の詳細を記入します。
【取得方法】国税庁のウェブサイトからダウンロードするか税務署で入手
■確定申告書付表兼計算明細書(譲渡所得の内訳書)
この書類は、不動産売却による譲渡所得の内訳を詳細に記載するものです。
【取得方法】国税庁のウェブサイトからダウンロードするか税務署で入手
■売却物件の購入時の売買契約書(コピー)
売却物件の購入時の売買契約書は、取得費用を証明するために必要です。
【取得方法】購入時に保管している契約書のコピーを用意
■仲介手数料、印紙税などの領収書
不動産売却にかかる経費を証明するために、仲介手数料や印紙税の領収書が必要です。
【取得方法】不動産会社や支払い先から受け取った領収書を保管
不動産売却で特例を利用する場合に必要な書類
不動産売却時に特例を利用する場合、いくつかの特定の書類を準備する必要があります。以下に、特例ごとに必要な書類について説明します。
3,000万円の特別控除
3,000万円の特別控除とは、住宅の売却時に発生する譲渡所得税の負担を軽減するために、課税対象額から3,000万円が控除されるという優遇措置です。この特例を利用するためには、譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)を提出する必要があります。
また、住民票に記載された住所と売却した住居の所在地が異なる場合、譲渡契約の締結日前日までに、戸籍の附票の写しや除籍された戸籍の附票の写しなど、売主がその住居を所有していたことを証明する書類を用意する必要があります。
軽減税率の特例
軽減税率の特例とは、不動産を10年以上所有している場合、譲渡所得にかかる税金の税率が低くなる措置です。この特例を申請するには、譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)と、居住期間が10年以上であることを証明するための売却資産の登記事項証明書が必要です。
この特例も3,000万円の特別控除と同様に、住民票の住所と売却した住居の住所が異なる場合は、売主がその住居を所有していたことを証明する書類を用意する必要があります。
特定居住用財産の買換えの特例
特定居住用財産の買換えの特例とは、マイホームを売却して新たなマイホームを購入した際、譲渡益にかかる税金の納税を繰り延べることができる制度です。この特例を利用するには、主に以下の書類が必要です。・売買契約書のコピー
・購入した新居の土地および建物の全部事項説明書
・築年数の要件を満たさない場合は耐震基準を示す書類(以下のいずれか)
a. 耐震基準適合証明書(築年数が25年以上の場合)
b. 建設住宅性能評価書(築年数が25年以上の場合)
c. 保険加入証明書等(築年数が25年以上の場合)
・売却した旧居の土地および建物の全部事項説明書など
まとめ
不動産の売却では、必要となる書類がとても多いことがおわかりいただけたでしょう。不動産を購入した当時の書類を探し出したり、役所などに問い合わせて発行を依頼したり、意外と手間がかかるものです。
売買の取引をできるだけスムーズに行うためにも、必要書類は早めに準備するようにしましょう。
監修者

大沼 春香(おおぬま はるか)
宅地建物取引士
埼玉県・千葉県・東京都一部に拠点を置く
不動産売買仲介会社に15年以上従事。
自身も不動産購入を経験し「初心者にもわかりやすい」
実態に基づいたパンフレット・資料に定評がある。
最近はWEBや自社セミナーなどでの情報発信も行っている。