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農地を売却する2つの方法 難しい理由や手順も解説

目次

農地の売却が難しい原因

農家を引退し、別の人に土地を売却しようとしても、簡単には手続きが進まないのが農地の特徴です。
なぜ農地の売却は難しいとされているのでしょう。2つの主な原因について紹介します。
 

原因① 農地法の制限がある

農地の売却が難しい理由のひとつに、農地法による制限があります。農地法は農地を適切に保全し、食料自給率の向上や耕作者の地位の安定、農業振興、優良農地の確保などを目的とした法律です。

農地法では、農地を売却したり転用したりする際に厳しい制限が設けられています。特に農地を転用して農地以外の目的で利用する場合には、農業委員会や都道府県知事の許可が必要です。

農地法の原則により一般の不動産市場での農地の取引は制限され、買い手が見つけることは困難になります。
また許可申請の手続きにも時間がかかるため、売却プロセスが複雑化し、迅速な売却が難しいことも課題のひとつといえます。
 

原因② 売却額が下落している

もうひとつの原因は、農地の売却額が減少している点です。
近年は企業が農業に参入するパターンも増えていますが、農地以外の用途がない土地は安く買いたたかれる可能性が高いです。

当然ながら農地を売却したい農家は、大切な土地を少しでも高く売却したいと考えます。その結果農地の売却価格が折り合わず、売却できないというケースも珍しくありません。

また近年は農家全体が高齢化したことにより、耕作放棄地となってしまった農地も多くあります。
このような土地は購入しても整備が難しいことに加え、不法投棄の温床となっていて有害物質で汚染されている可能性も考慮しなければなりません。

こうした問題があることから、農地の価格は下落が続いています。別の観点では、ICTやIoTによるスマート農業も農地売却を難しくしている原因のひとつといえるでしょう。
土地に直接栽培する必要のないスマート農業では、農地の価値は低く見積もられることがあるためです。

使わない農地は売却したほうがいい?

使わない農地はそのまま持っているべきか、それとも売却したほうがいいのか、という選択は多くの農家にとって悩ましい問題です。
結論からいえば、今後も使う予定がないなら早めに売却すべきです。その理由としては次の点が挙げられます。
 

【使う予定のない農地を売却した方がいい理由】
・耕作放棄地や休耕地は回復に手間と時間がかかる
・雑草の範囲が拡大し、害虫被害が発生する危険がある
・草刈りや土地の整備、固定資産税など多くの費用がかかる
・不法投棄が発生する危険がある


基本的に農地は放置されるとすぐに雑草が生えてしまい、土地が荒れていきます。回復するまでには多くの時間と費用、手間がかかることに加え、土地を所有しているだけで固定資産税も発生します。
そのため子どもや孫が将来的に農家を継ぐといった事情がなければ、売却したほうが負担になりにくいです。

農地の売却方法

農地を売却する場合、2つの選択肢があります。

①農地をそのまま売却する
②農地転用して売却する


それぞれ売却までの手順も変わってくるため、具体的な方法について紹介します。
 

①農地をそのまま売却する

農地の売却方法のひとつ目は、農地をそのまま売却する方法です。この方法の場合、土地を農地から転用することなく、他者に売却できます。具体的には次の手順で売却を進めます。
 

【農地売却の手順】
1.農地の購入希望者を探す
2.許可を条件として売買契約を締結する
3.農業委員会に許可申請手続きを行う
4.あらかじめ「所有権移転請求権」の仮登記を申請する
5.農業委員会の許可を得たら農地を引き渡す


まずすべきことは、農地を購入してくれる相手を探すことです。農地をそのまま売却するには、売却相手も農家または農業に参入している企業である必要があります。
次に購入希望者と相談し、農業委員会から売却の許可が出たら売買契約を締結しましょう。これにより、未然にトラブルを防止することにつながります。

農業委員会に許可申請を行ったら、法務局で農地の所有権移転請求権の仮登記を行います。この手順は必須のものではありませんが、農地の買主を明確にしておく目的です。

最後に、農業委員会からの許可が出たら、売買契約を正式に締結して農地を引き渡し、所有権移転登記を行って完了です。

注意点としては、農業委員会からの許可は取引相手が一定の規模で農業に従事しており、十分な機器を持っているかどうかも判断基準となります。そのため、農地転用に比べると農地の売却は条件が厳しくなることを理解しておきましょう。
 

②農地転用して売却する

農地をそのまま売却する以外の方法としては、農地転用して居住用の土地として売却する方法があります。
農地を整備して戸建てやマンションの建築、駐車場、資材置き場などに活用する際に利用する方法です。この場合、次の手順で農地転用と売却を行います。
 

【農地転用と売却の手順】
1.不動産会社に売却を相談・依頼する
2.許可を条件として売買契約を締結する
3.農業委員会に許可申請手続きを行う
4.あらかじめ「所有権移転登記」の仮登記を申請する
5.農業委員会の許可を得たら農地を引き渡す


基本的な流れは農地を売却する場合と同じですが、最初に不動産会社に相談・依頼する点が違います。農地転用は一般的な宅地とは違い、不動産会社であっても経験と実績に差が出やすい案件です。
そのため過去に農地転用の実績が豊富な不動産会社を選ぶことで、その後の手続きをスムーズに進め、適切なアドバイスを受けることもできるでしょう。

また注意点として、農地転用は土地のある地域が市街化調整区域かどうか、面積がどのくらいかによって、都道府県知事や農林水産大臣の許可が必要な場合があります。
経験豊富な不動産会社なら適切なアドバイスを受けやすいため、最初に会社を選ぶ際は、複数社を比較検討しておくことが重要です。

土地の種類と制限

農地法では、土地の売却や転用にいくつかの制限がかけられています。どのような土地に対して制限があるのか、制限の内容と土地の種類について紹介します。
 

農地法における制限の対象

農地法の目的は農業に従事する人の地位の安定、生産力の増進、農業振興、優良農地の確保などです。それらの目的を果たすために、農地と採草放牧地に関しては農地法の規制の対象となっています。

農地は耕作を目的として供される土地、採草放牧地は耕作や畜産のために利用される草地のことです。農地か採草放牧地かの区別については、土地の利用状況に基づいて行われます。そのため、農地には田んぼや畑、果樹園なども含まれます。

一方で一時的な利用は農地とは判定されないため、家庭菜園で野菜や果物を栽培しても農地とはなりません。そして農地を転用または売却する場合、農地法では次のケースを想定しています。
 

・農地の売却:所有する農地を他者に権利移転・設定する場合(農地法3条)
・自己転用の許可(農地法4条)
・転用目的での権利移動の許可(農地法5条)


上記のケースでは、その農地が市街化区域内に属するかどうかによって、農業委員会の許可が必要になるか、届出だけで問題のないケースに分かれます。
 

農地・採草放牧地

農地法における農地と採草放牧地には、次のような違いがあります。
 
農地 ・耕作を目的として供される土地
・田んぼ、畑、果樹園、苗圃、わさび田などが含まれる。
・肥培管理で作物を栽培する土地
採草放牧地
・農地以外の土地で、採草や放牧を目的として供される土地
・ススキやシバなどの草原

上記に当てはまるものは、農地や採草放牧地として農地法の制限を受ける対象となります。また農地法3条では、農地・採草放牧地の制限について次のように定めています。
 
農地又は採草放牧地についての所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。

条件をわかりやすくすると次のようになります。
「農地や採草放牧地の所有権や使用する権利を他者に売却または貸し出す場合には、農業委員会の許可が必要になる。」
つまり農地・採草放牧地の所有権だけでなく、質権や永小作権といった賃借料を対価にするケースでも農地法の制限は発生するということです。

□引用:e-GOV 農地法3条
農地法4条 農地法4条は農地の転用について定めた条項です。
 
農地を農地以外のものにする者は、都道府県知事(農地又は採草放牧地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に関する施策の実施状況を考慮して農林水産大臣が指定する市町村(以下「指定市町村」という。)の区域内にあつては、指定市町村の長。以下「都道府県知事等」という。)の許可を受けなければならない。

農地法4条はあくまでも農地の転用についての条項ですから、採草での転用については許可は不要とされています。そして農地を転用する場合には、農業委員会ではなく、知事または指定市町村の市町村長に転用の許可を申請します。
例外的に市街化区域内にある農地の場合は、宅地への用途変更は望ましいとされているため、農業委員会への届出だけで転用可能です。また、次の場合には知事や市町村長の許可は不要とされています。
 

・2アール未満の農地を農業用施設として供する場合
・市町村が主導する道路・河川・堤防の設置などに供される場合
・国や都道府県が権利を取得または転用する場合
・土地収用法その他の法律で権利の収用や使用が行なわれる場合


許可が必要なケースに該当するにもかかわらず、無許可で行った場合は3年以下の懲役、または300万円以下(法人は1億円以下)の罰金が科されます。

参考:e-GOV 農地法4条
 

農地法5条

農地法5条は農地や採草以外への転用目的での権利移動・転用の許可について定めた条項です。
 
農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のもの(農地を除く。次項及び第四項において同じ。)にするため、これらの土地について第三条第一項本文に掲げる権利を設定し、又は移転する場合には、当事者が都道府県知事等の許可を受けなければならない。

農地法5条は農地だけでなく、採草放牧地の権利移動と転用についても書かれています。基本的な内容は、農地法4条と同じとなっています。
違いがあるのは許可を得ずに権利移動と転用を行った場合の「契約無効」と「原状回復」、そして「2アール未満の農地を農業用施設として供する場合にも許可が必要」という点です。

農地法4条では無許可で農地を転用した場合、元の状態に戻す原状回復義務だけが発生します。
しかし農地法5条では無許可で権利移動と転用を行った場合、原状回復義務に加えて契約が無効となります。無許可の場合は農地法4条と同じく懲役または罰金もある点に注意しましょう。

□引用:e-GOV 農地法5条
 

農地の区分

農地については利用状況や市街地化の状況など、総合的な要素で判断して5つの区分があります。それぞれの区分の概要や権利移動・転用の許可条件については次の通りです。
 
区分 概要 許可条件
農用地区域内のうち ・農業振興地域にある農用地区域
・農用地区域内は「農地」「採草放牧地」「農業用施設用地」「混牧林地」に分かれている
原則として転用は認められない
甲種農地 市街化調整区域内にある農地で、良好な営農条件を備えている農地 原則として農地転用は認められない
第1種農地 ・10ヘクタール以上の農地
・土地改良事業の対象となる農地
・生産性の高い農地
・原則として農地転用は認められない
・公共性の高い事業に供される場合は認められる
第2種農地 ・駅から500メートル以内にあり、かつ市街地として発展する見込みがある農地または生産性が低い農地 周辺の土地で農地転用できない場合のみ認められる
第3種農地 駅から300メートル以内にあり、かつ都市的施設が整備された区域内または市街地区域内にある農地 転用が認められる

どの区分に属するかによって、権利移動や転用の許可が下りるかどうかは大きく変わるため、詳しく知りたい方は農地を管轄する農業委員会に問い合わせましょう。

農地売却の手順

農地を売却する場合は、農業委員会への許可申請が必要になります。また土地を転用する場合には、自己転用か他者に売却して転用するかにかかわらず、都道府県知事や市町村長の許可が必要です。売却や転用をどのような手順で行えばよいかを解説します。
 

農地を農地として売却するケース

農地を転用せずそのまま農地として農家や法人に売却する場合、手続きはそれほど難しくありません。
 

1.農業従事者または農業に参入する企業などの買い手を探す
2.農地売買の許可を条件として売買契約を締結する
3.農業委員会に許可申請手続きを行う
4.あらかじめ「所有権移転請求権」の仮登記を申請する
5.農業委員会の許可を受け取る
6.購入者に農地を引き渡す
7.所有権移転登記を行う


農地を農地として売却するケースでは不動産会社に依頼できないため、知人や近隣の農地を所有する農家に声を掛けたり、地元の農協に依頼したりすることで買い手を探しましょう。

そして、買い手とは農業委員会からの許可を条件に売買契約を締結し、あらかじめ仮登記を行っておきます。こうしておくことで、万が一許可が下りなかった場合に契約が解除となり、仮登記を抹消してもらうだけですみます。

農業委員会から許可が出たら購入者に農地を引き渡し、代金を受け取りましょう。最後に買い手と共同して所有権移転の本登記を行えば、農地の売却は完了です。
 

農地を転用して売却するケース

農地を転用して宅地などに変更し、一般的な市場から買い手を探す方法もあります。この場合、農業委員会からの許可だけでなく、転用になることから都道府県知事の許可が必要になる点に注意すべきです。
具体的な手順は次の通りです。
 

1.農地の区分を確認する
2.不動産会社に売却を相談・依頼する
3.価格を決めて市場に広告を出す
4.許可を条件として売買契約を締結する
5.農業委員会に許可申請手続きを行う
6.あらかじめ「所有権移転登記」の仮登記を申請する
7.農業委員会の許可を得たら都道府県知事に許可申請を行う
8.購入者に農地を引き渡す
9.所有権移転登記を行う


まずすべきことは、自分の農地の区分を確認することです。区分によっては転用できない場合もあるため、この点は最初に農地を管理する農業委員会や市町村役場の農政課などに問い合わせましょう。
転用可能なら知人や近隣の農家、不動産会社に相談して買い手を探します。

多くの利益を出したいなら、不動産会社に依頼して市場で広告を出してもらうのがおすすめです。買い手が見つかったら、農業委員会と都道府県知事の許可を条件とした売買契約を締結し、仮登記を行います。

許可が下りなかった場合は契約を解除し、仮登記の抹消も行いましょう。そして農業委員会からの許可が下りてから、都道府県知事の転用許可を得て、農地の引き渡しと代金の受け取り、所有権移転登記を行います。
必ず農業委員会の許可を得てから都道府県知事の許可を得てください。転用許可が下りないと、売買契約も取り消されるおそれがあります。
 

農地売却の税金はどれくらいかかる?

 農地を売却する場合、売買契約や登記、譲渡益などさまざまなお金に税金が課されます。農地を売却した場合に、必要になる税金は次のものです。
 
税金の種類 税率
譲渡所得税 ・所有期間5年以下(短期譲渡):30%
※ただし、国への譲渡は15%
・所有期間5年超(長期譲渡):15%
住民税 ・所有期間5年以下(短期譲渡):9%
※ただし、国への譲渡なら5%
・所有期間5年超(長期譲渡):5%
復興特別所得税 売却による課税所得金額の2.1%
印紙税 ・10万円超50万円以下:400円
・50万円超100万円以下:1,000円
・100万円超500万円以下:2,000円
・500万円超1,000万円以下:1万円
・1,000万円超5,000万円以下:2万円
・5,000万円超1億円以下:6万円
・1億円超5億円以下:10万円
・5億円超10億円以下:20万円
・10億円超50億円以下:40万円
・50億円超:60万円
登録免許税 不動産価格(農地評価額)の1,000分の20(2%)
※令和8年3月31日までの登記は軽減税率が適用され1,000分の15(1.5%)

農地を売却して1,000万円の売却益が出た場合、短期譲渡なら所得税が300万円、住民税が90万円、復興特別所得税が21万円、印紙税は2万円、登録免許税が20万円となり、合計で434万円ほどの税金が課されます。
費用を抑えるためには、農地売却で使える特別控除を利用するのがよいでしょう。
 

・農地売買による800万円特別控除(農業委員会のあっせん)
・農地売買による1,500万円特別控除(農用地区の買い入れ協議)
・農地売買による2,000万円特別控除(農地中間管理機構への売却)
・農地売買による5,000万円特別控除(公共事業用に売却)


各種控除を利用すれば、農地売却による税金負担を大幅に軽減できます。

まとめ

農地売却の基本知識や農地法における制限、農地の売却手順などについて解説しました。
農地の売却は通常の宅地を売却するケースとは違い、農業委員会からの許可や都道府県知事の転用許可など、複雑な手順を経ることになります。

地域や農地の区分によっては転用自体ができないこともあるため、売却の際は農地売却の知識と実績豊富な不動産会社に相談することが重要なポイントです。
まずは自分の所有する農地の区分がどうなっているか農業委員会や役所で確認し、高値で売却するための準備を進めましょう。

監修者

コラム監修者 大沼
大沼 春香(おおぬま はるか)

宅地建物取引士
埼玉県・千葉県・東京都一部に拠点を置く
不動産売買仲介会社に15年以上従事。
自身も不動産購入を経験し「初心者にもわかりやすい
実態に基づいたパンフレット・資料に定評がある。

最近はWEBや自社セミナーなどでの情報発信も行っている。

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