
この記事では、そんな状況を回避するための手段として挙げられる「任意売却」にスポットを当ててみました。任意売却の仕組みと費用をはじめ、任意売却のデメリットとメリットをわかりやすく解説します。
また、任意売却の具体的な流れをご紹介。さらに任意売却後のローン返済についても解説していきます。
そもそも任意売却とは?
任意売却とは、住宅ローンの返済が困難になった際に、自宅が競売にかけられる前に債権者(融資した金融機関)との話し合いのもとで住宅を売却する方法です。
任意売却には、不動産会社へ支払う仲介手数料が必要となります。任意売却を検討すべきケースとしては、収入の激減や融資機関からの督促状が届いた場合などが挙げられます。
任意売却ができない場合もあり、主な理由は債権者が認めない場合や住宅ローンの残高よりも売却額が下回る場合などです。
任意売却の流れとしては、まず任意売却の検討から始まり、信頼できる不動産会社を見つけることが重要です。
次に具体的な相談を行い、販売価格を決めます。その後は債権者との交渉を行い、合意が得られれば不動産の販売を開始します。
最後に売買契約の締結と引き渡しを行い、任意売却が完了します。
□関連リンク:「任意売却とは?任意売却の流れや6つのメリットを解説!」
任意売却のデメリットとは?
所有者が住宅ローンの返済を滞っても、自宅を売却することが可能な任意売却。しかしこの売却方法には、短所ともいうべきいくつかの問題点があります。
ここからは、任意売却のデメリットを見ていきましょう。
デメリット① 任意売却完了までの手間暇と負担
任意売却が完了するまでの間、大きな手間暇がかかります。債権者との連絡や交渉、不動産会社とのやりとり、共同名義人や連帯保証人から任意売却の合意を得るなどです。また、期間内に自宅が希望額で売却できるか否かの不安が常につきまとうでしょう。さらに購入者と交わす売買契約の対応など、精神的な負担に耐える必要もあります。
デメリット② 自宅の売却額が残らない
基本的に任意売却で得た自宅の売却金は、全額住宅ローンの返済にあてられます。そのため、売却金を自由に使うことができません。しかも住宅ローンの返済後は、手元に売却金が残らないケースが大半です。デメリット③ 住宅ローンの滞納履歴が個人信用情報に登録される
任意売却をおこなうということは、住宅ローンの返済が滞っている状態を意味します。 そのため、住宅ローンの滞納履歴が個人信用情報(俗にいうブラックリスト)に登録されてしまうこともデメリットのひとつです。約5年~7年ほど記録が残るため、その間は、新たなローンが組めません。デメリット④ 販売活動への協力が必要
任意売却を行う際には、不動産会社と協力して販売活動を行う必要があります。物件の内覧希望者が訪れる際には、自宅の整理整頓や清掃を行い、見学者に良い印象を与えることが求められます。これにより、売却期間中はプライバシーの確保が難しくなることがあります。デメリット⑤ 連絡を取りたくない人とのやりとりが発生
任意売却を進める過程で、金融機関や債権者との連絡が必要になります。特に別れた夫や妻、会いたくない家族などとのやりとりはストレスとなることがあります。また借金やローンの返済に関する話し合いが進まない場合、精神的な負担が大きくなることもあるでしょう。
デメリット⑥ 連帯債務者、連帯保証人の同意が必要
任意売却を行うには、連帯債務者や連帯保証人の同意が必要です。これには時間がかかる場合があり、同意が得られないと任意売却が進まないこともあります。このプロセスで人間関係が悪化する可能性もあるため、慎重な対応をしなくてはなりません。
デメリット⑦ 債権者の応諾価格が高い場合も
任意売却を行う際には、債権者が応諾する価格で物件を売却する必要があります。債権者が設定した価格が高い場合、買い手が見つかりにくくなることがあります。その結果、売却期間が長引く可能性があり、経済的な負担が増すこともあります。デメリット⑧ 引っ越しが早まる可能性がある
任意売却が成功した場合、買い手に物件を引き渡すために引っ越しが早まることがあります。急な引っ越しのための準備が必要となり、精神的・物理的な負担が大きくなることもあるでしょう。特に新しい住居がすぐに見つからない場合、引っ越しが困難になることがあります。
デメリット⑨ 任意売却を扱う業者を自分で探す必要がある
任意売却を行うためには、信頼できる不動産会社を自分で探す必要があります。この作業は時間と労力を要し、適切な業者を見つけるのが難しい場合もあります。業者選びに失敗すると、任意売却がスムーズに進まなくなってしまいます。
任意売却は買主(購入者)にもデメリットがある?

任意売却は、売主だけでなく買主(購入者)にも以下のようなデメリットが存在します。
任意売却物件の購入には、通常よりも多くの時間と労力がかかることがあります。任意売却は債権者(金融機関)との合意が必要なため、売買契約の成立までに時間がかかることが多いのです。何度も交渉が行われるため、購入手続きが通常の不動産取引よりも複雑になります。
また物件のコンディションについても注意が必要です。任意売却物件は、売主が経済的に困難な状況にあることが多いため、十分なメンテナンスが行われていない場合があります。そのため、購入後に修繕が必要となるケースがあることを念頭に置いておかなくてはなりません。
さらに任意売却物件の購入には、競売のリスクが伴います。売主が競売を回避するために任意売却を選択することが多いため、売買契約が成立する前に競売が進行してしまうこともあります。この場合、購入者は計画通りに物件を入手できないリスクを負うことになるのです。
最後に、任意売却物件の情報が限られていることもデメリットです。物件の詳細情報や過去のトラブルなどが不明瞭な場合があり、十分な調査が求められます。これらのデメリットを理解した上で、慎重に任意売却物件の購入を検討しましょう。
任意売却のメリット
手間暇や精神的な負担、個人信用情報の問題など、不安要素の大きい任意売却ですが、決してデメリットばかりではありません。
ここからは、任意売却をおこなうことで得られるメリットをご紹介します。
メリット① 競売よりも高く売れる
住宅ローンの支払いを一定期間(6ヶ月以上)滞納した場合、債権者は、該当の不動産を競売にかけ、債権の回収をおこなうのが一般的です。競売になれば、市場相場の70%ほどで売却されるうえ、競売費用も請求されます。しかし、任意売却の場合、通常売却とあまり変わりがないため、市場価格に近い価格で売ることが可能です。
メリット② 諸経費を払ってもらえる
任意売却は、自宅の売却金から仲介手数料をはじめ、登記料や測量費用といった諸経費を支払うことが可能です。さらに、債権者との交渉次第では、売却金から引っ越し費用の控除を認めてもらうこともあります(最高金額30万円)。メリット③ 住宅ローンの滞納を近隣に知られない
不動産を競売にかけられると、裁判所の訪問調査や競売物件として官報に掲載されるなど、周囲の目につきやすくなりがちです。しかし、通常売却とさほど変わりのない任意売却は、住宅ローンの滞納を近隣や勤め先に知られないというメリットがあります。任意売却後のローン返済
任意売却を終えたのち、その売却額次第では、ローン返済の方法も異なってきます。
ここからは、任意売却後に残債がある場合、その逆に利益が出た場合、それぞれどう対応すべきなのか、わかりやすく解説していきます。
任意売却後に残債がある場合
任意売却で得た売却金だけでは、住宅ローンを完済できないケースが大半です。このローンの残りを「残債」といい、当然のことながら債権者に支払わなければいけません。通常売却や競売では、残債の一括返済を請求されます。しかし、任意売却では、債権者と残債の返済方法を協議し、月々無理のない額面(5,000円~2万円ほど)での分割返済が可能です。
任意売却で利益が出た場合
非常にまれなケースなのですが、任意売却で利益が出ることもあります。その利益は、売主が自由にできるお金です。ただし、任意売却でも利益が出た場合、その額面に対し、譲渡所得税が発生する可能性があるため、注意が必要となります。まとめ
任意売却は、住宅ローンの返済が困難になった場合、債権者の合意を得たうえで、不動産を売却する方法です。任意売却をおこなう場合、その手間暇をはじめ、精神的重圧や負担、売却金が手元に残らない、個人信用情報に住宅ローンの滞納履歴が残るといったデメリットが生じます。
その半面、競売にかけられるよりも市場相場に近い価格で売却することができるでしょう。また、債権者との交渉次第では、売却に必要な諸費用や引っ越し代金などを控除してもらうことが可能です。任意売却のデメリットとメリット、その特徴をしっかりと理解し、できるだけ早めに専門的な知識や経験が豊富な不動産会社に相談してください。
監修者

大沼 春香(おおぬま はるか)
宅地建物取引士
埼玉県・千葉県・東京都一部に拠点を置く
不動産売買仲介会社に15年以上従事。
自身も不動産購入を経験し「初心者にもわかりやすい」
実態に基づいたパンフレット・資料に定評がある。
最近はWEBや自社セミナーなどでの情報発信も行っている。