土地を高く売りたいとお考えの方へ
- 土地売買の流れを解説します
- 売買に必要な書類や費用が確認できます
- 土地売買を成功させるためのポイントがわかります
この記事では、土地の売却を検討している方向けに、売買の手順と、売却成功のためのポイントを紹介します。
土地売買の流れ
まずは、土地の売買がどのような流れで行われるのかを見ていきましょう。最初の調査から引き渡しまでの各段階を確認していきます。
流れ① 周辺エリアの土地の相場を調べる
最初に、周辺エリアの土地の相場を調査しておきましょう。エリアの土地の値段を調べておけば、相場を無視した価格での売り出しや、買主の言い値で安く売ってしまうといった事態を回避できます。土地の相場を調べる最も簡単な方法は、過去の取引データを参照することです。不動産取引のデータはインターネットで調べられます。 土地の取引履歴を調べるのに、おすすめなのは以下の2つのサイトです。どちらも公的機関が運営しているため、価格の正確さは信頼できます。一度チェックしてみてください。
【参考①】
不動産取引価格情報検索(国土交通省)
https://www.land.mlit.go.jp/webland/servlet/MainServlet
【参考②】
REINS(不動産流通機構)
http://www.contract.reins.or.jp/search/displayAreaConditionBLogic.do
流れ② 不動産会社に土地を査定してもらう
次に、不動産会社に依頼して土地を査定してもらいます。この査定価格は、不動産の価値を知り、売り出し価格の参考にするのに利用可能です。査定を依頼するときは、複数社の査定を受けることをおすすめします。他社より明らかに査定価格が低いときや、逆に高額な場合はその根拠を聞いてみてください。
流れ③ 媒介契約を結ぶ不動産会社を選ぶ
媒介契約をどこの不動産会社と結ぶのかを決定します。媒介とは、不動産の持ち主に代わって営業活動をしてもらうことで、媒介を依頼するための契約が媒介契約です。どの不動産会社を選ぶべきかはケースバイケースです。「エリアに詳しく事情をよく知っている」「似た土地の売却実績が多い」など、何かしらの強みがあるところを選べるとベストです。
媒介には、1社だけに媒介を依頼する「専任媒介」と、複数社に媒介を依頼できる「一般媒介」の2種類が存在します。どちらが良いかは状況にもよりますが、「売れやすい土地かで判断する」という考え方が一つの基準です。
■一般媒介
一般媒介は、不動産会社からすると他社に先を越されて利益にならない可能性があるので、あまり熱心に営業活動をしてくれない可能性があります。そのため、どちらかというと需要が高く売れやすい土地向けの媒介形態です。
■専任媒介
専任媒介では、媒介契約中の土地は担当の不動産会社が独占的に取り扱う物件です。売却できれば確実に手数料を得られるので、精力的に売ってくれることを期待できます。そのため人気の低い土地など、積極的な営業活動が必要な土地向けです。
自分の土地がどちらのタイプなのかを考え、適した媒介形式を選んでください。
流れ④ 売却活動を開始する
媒介契約を締結したら、売却活動を開始します。この間、媒介を依頼された不動産会社は、土地を探している人にすすめたり、HPに掲載したりして土地の買い手を探します。無事に買主候補が見つかったら、次は売買に関する条件交渉です。流れ⑤ 買主との条件交渉を行う
買主候補が現れたら、売主と買主両方の希望をすり合わせて条件を確認していきます。買主側からはさまざまな要望が出ますが、たとえば以下のようなものが代表的です。・売却価格を少し安くして欲しい
・引き渡し前に土壌検査をして欲しい
・引き渡し時期を早めて欲しい
条件面が両者でまとまったら、契約書の作成に入ります。
流れ⑥ 売買契約の締結・売却
売買契約の締結と代金の決済、引き渡しを行います。媒介依頼をしていた不動産業者には、契約締結と引き渡しのタイミングで仲介手数料を支払うことが多いです。土地の売買に必要な書類
土地の売買は、土地と代金のやりとりをすれば終わり、というわけではありません。身分証明書など、取引にあたって用意しなければならない書類や、土地に付属して譲渡する書類がいくつか存在します。それぞれ詳しく見てみましょう。
売主の身分に関する書類
まず、売主の身分を証明するための書類が必要です。具体的には、契約の締結までに以下のものを用意する必要があります。□ 公的な身分証明書(パスポートや免許証など)
□ 実印(認印不可)
□ 印鑑証明書
□ 住民票
印鑑証明書については、持っていない場合は印鑑の登録から始めなければなりません。必要になったタイミングで慌てないよう、事前に準備しておきましょう。
土地に関する書類
身分証明書のほかに、土地の権利や状況を証明するための添付書類が必要です。具体的な必要書類と入手方法は以下のとおりです。登記済権利書 登記識別情報 |
どちらか一つを用意。不動産を最初に登記した際に法務局から発行される。 |
固定資産税納税通知書 | 土地の持ち主に郵送される。税担当窓口で再発行可能。 |
固定資産税評価証明書 | 市町村役場・都税事務所で取得する。 |
地積測量図 | 法務局で発行する。 |
境界確認書 | 隣人の同意のもと自分で作成する。 |
建築確認済証 検査済証 |
住宅のある土地の売買で必要。建築時に発行される書類。原則再発行不可。 |
建築設計図書 工事記録書 |
住宅のある土地の売買で必要。建築時に発行される。設計した工務店やハウスメーカーで保管している場合がある。 |
耐震診断報告書 | 不動産の調査会社に依頼して取得する。 |
アスベスト使用調査報告書 | 不動産の調査会社に依頼して取得する。 |
ケースごとに必要書類が異なる場合があるため、具体的な必要書類は媒介を担当している不動産会社に問い合わせてみてください。
土地売買にかかる費用は?
土地売買には必ず発生する費用があります。
必要な費用には仲介手数料、建物解体費、登記費用、税金の4つがあります。
1つずつ解説していきましょう。
費用① 不動産会社への仲介手数料
まず仲介手数料とは、不動産会社に支払う手数料です。仲介手数料については、宅地建物取引業法に基づいて上限が定められています。
売買価格 | 手数料の上限(税別) |
200万円以下の部分 | 売買価格の5% |
200万円超400万円以下の部分 | 売買価格の4%+2万円 |
400万円超の部分 | 売買価格の3%+6万円 |
費用② 建物解体費用
次に建物解体費用です。解体費用は建物の構造や坪数によって異なります。30坪の土地に建つ建物の解体費用の目安は次の通りです。
なお、この費用は引渡条件が「現況渡し(建物が建った状態のまま引き渡す契約)」の場合はかかりません。
■建物解体費用の目安
構造 | 費用の目安 | 坪単価 |
木造 | 120~150万円 | 4~5万円 |
鉄骨造 | 150~210万円 | 5~7万円 |
鉄筋コンクリート(RC)造 | 210~240万円 | 7~8万円 |
上記の費用に加えて、立地条件や残置物撤去費用、樹木伐採処分費用、地下埋設物撤去費用も加われば、さらに費用がかかる点に注意しましょう。
■建物解体に伴うその他の費用
種類 | 費用の目安 (1トンあたり) |
残置物撤去 | 3万円前後 |
樹木伐採処分 | 2万円前後 |
コンクリート等 | 2万円前後 |
浄化槽 | 3万円前後 |
建物の基礎部分 | 2万円前後 |
建物解体では予想以上の費用が発生することも珍しくないため、解体費用に追加されるものも含めて計算することが重要です。
費用③ 登記に必要な費用
次に登記関連の費用です。登記をする際は司法書士への依頼料や登録免許税、必要書類などが必要になります。費用の目安は次の通りです。
種類 | 費用の目安 |
抵当権抹消の登録免許税 | 土地1件あたり1,000円 |
司法書士の手数料 | 5~10万円 |
土地境界確定測量の費用 | 土地1件につき30~60万円 |
必要書類の費用 | 1通数百円 |
上記費用の中で地域や立地条件で変動しやすいのが、司法書士への手数料と土地境界確定測量の費用です。司法書士の手数料は司法書士が個別に設定することや、地域差で変動することがあります。
また、土地境界確定測量については面積や道路、官有地などが隣接する場合で費用が変わります。あくまでも目安として知っておきましょう。
費用④ 土地の売買にかかる税金
最後に、土地売買にかかる税金です。税金には印紙税と譲渡所得の2種類があります。【印紙税】
契約金額 | 印紙税額 | 軽減措置適用後 |
1万円未満 | 非課税 | - |
1万円以上10万円以下 | 200円 | - |
10万円を超え50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円を超え100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円を超え500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 | - |
印紙税のほかに、不動産を売却した際の利益に課税される「譲渡所得」という税も納付が必要です。譲渡所得は、売却で得た金額のうち、不動産の取得にかかった費用や、譲渡の経費などを除いた金額に対して以下のように課税されます。
【譲渡所得の税率】
所有期間 | 税率※ |
5年以下 | 39.63% (所得税30.63% 住民税 9%) |
5年超 | 20.315% (所得税15.315% 住民税 5%) |
【参考①】
国税庁 「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7140.htm
【参考②】
国税庁 「No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7108.htm
抵当権抹消登記の費用
不動産の売却によってローンを完済できる場合、売却前に抵当権抹消登記を行います。抵当権はローンの担保になっている不動産に登記されるもので、ローンを返せなくなったときに不動産をローン会社が取得する権利のことです。ローン完済後は登記されている抵当権の抹消が必要です。抵当権抹消登記の手続きは、1,000円の登録免許税と、司法書士への手数料がかかります。依頼料は司法書士事務所によって異なりますが、抵当権の抹消であれば1万円から3万円程度のところが多いです。
建物の解体費用
建物解体費用は木造(W)・鉄骨造(S)・鉄筋コンクリート(RC)造の3種類があります。木造が最も安く、鉄筋コンクリート造が最も高いですが、建物のある場所や道幅、手作業の多さ、高低差によっても費用は変動することがあります。
また、自宅に樹木や大型のゴミがある場合、別途撤去費用が発生する点にも注意すべきです。
他にもコンクリートブロックや浄化槽など、特殊な埋設物がある場合も多額の費用がかかります。
【参考リンク】
「家の解体費等の相場は?安く抑える方法はある?補助金やローン等も解説」
https://www.baikyaku.polusnet.com/column/detail.php?n=208
土地売買を成功させるためのポイント
土地の売買は不動産会社に全て任せることもできますが、いくつかコツを押さえておくことで、より有利に売却できる可能性が高まります。土地の売買を行う際のポイントを見ていきましょう。
土地の相場を事前に調査しておく
ネットに公開されている過去の取引データや不動産会社の査定を利用して、土地のだいたいの相場を把握しておきましょう。というのも、土地の売却では、買主から価格を指定しての値引き交渉(指値)が入ることがしばしばあるからです。相場が不明だと、買主の言いなりに値引きをしてしまい、安く売ってしまうことも考えられます。損をしないよう、だいたいで構いませんので土地の相場を知っておきましょう。
土壌汚染の調査をしておく
土壌汚染の調査も、高く売るためのポイントの一つです。土地を売却する上で必須ではありませんが、売却してから土地の土壌汚染が発覚すると後々トラブルに発展する可能性があります。 また、買主も土壌汚染調査済みの土地であれば安心して申し込むことができます。問い合わせの増加が見込めますので、費用に余裕があれば調査をしておくのがおすすめです。
整形地にして売る
土地が三角形をしているなど、いわゆる不整形地の場合、整形地にしてしまった方が買い手は見つかりやすくなります。変則的な形の土地は家を建てにくく、用途が限られるため整形地と比較すると人気が低いのです。土地を整形する方法はいくつかありますが、最も簡単なのは隣接する土地を買い取って一つの土地にしてしまうことです。土地の持ち主の売却意図の有無に左右されますが、予算があれば検討してみてもよいでしょう。
買い主への告知事項を整理しておく
土地を売買する際は、買い主向けに必要な告知事項を整理しておくこともポイントです。いわくつきの土地や過去に事件のあった土地、その他伝えておくべき内容をまとめましょう。特にいわくつきの土地や過去に事件があった土地などは、告知を怠ると契約不適合責任を問われる可能性があります。売却後にトラブルを起こさないためにも、事前に告知すべき内容を整理しておくことが重要です。
また、建物にいわくや過去に事件があった場合、建物を解体すれば問題ないと説明する不動産業者もいます。しかし、たとえ建物を解体しても事故物件であることに変わりはないため、告知が必須になることは理解しましょう。
噂程度の話でも買い主によっては契約不適合責任を追及してくることがあるため、告知事項は細かく整理することが大切です。
個人売買という選択肢も
土地の売買は不動産業者と媒介契約を結んで行うのが一般的ですが、実は直接買主と交渉して売買することもできます。
個人売買を行うメリットの一つは、仲介業者に支払う手数料が発生しないことです。仲介業者への手数料は売主も買主も支払うため、両者ともに費用の節約が可能です。仲介手数料が浮いた分を売買価格に反映させれば、仲介業者を通すより少し高く売ることもできます。
一方、契約書の作成や価格交渉を自分で行う必要があります。何より買主を自分で見つけるのはかなり骨が折れる作業です。運が悪いといつまで経っても土地が売れない可能性もあります。
個人売買がおすすめできるのは、親戚や知人への売却など、すでに買主が決まっているケースです。この場合は仲介業者に買い手を探してもらう必要がないため、直接取引しても問題ありません。なお、契約書の作成や登記などは一般の方にはやや難しいため、司法書士に依頼するとスムーズです。
不動産の買い替えを行う場合
不動産の買い替えを検討するのであれば、新しい不動産を買うタイミングに注意してください。新しい家を購入するのが先か、売却するのが先かで経済状況に対する影響が変わってきます。先行購入と先行売却の特徴は以下のとおりです。
種別 | メリット | デメリット |
先行購入 | 既存の不動産の売却を急がずに済む 気に入る物件がなければ売却を中止できる |
住宅ローンを二重に抱える可能性がある |
先行売却 | 既存の不動産を売却した資金を購入資金にできる | マイホームの場合、売却から購入まで期間が空くと家を借りなければいけない |
経済的にあまり余裕がないのであれば、二重ローンのリスクがない「先行売却」をおすすめします。一方、予算に比較的余裕があり、多少時間をかけてでも既存の物件を高く売りたいのであれば、売却を急がなくていい「先行購入」がおすすめです。
不動産会社によっては、購入も売却も同時に行うことが可能な不動産業者もあります。
事前の相場調査は必ず行う
土地を売却するのであれば、まずは事前に相場を調べてみてください。相場を知らなければ仲介会社の言いなりに価格を決めることになりますし、値引き交渉にもどう応じていいか分からないからです。
相場を調べるには、インターネットの一括査定を利用してもよいですし、先述の国土交通省のデータから似た土地の取引履歴を探すのも良い方法です。うっかり安く売って損をしないよう、まずはどのくらいの価値がある土地なのかチェックしてみましょう。
監修者
大沼 春香(おおぬま はるか)
宅地建物取引士
埼玉県・千葉県・東京都一部に拠点を置く
不動産売買仲介会社に15年以上従事。
自身も不動産購入を経験し「初心者にもわかりやすい」
実態に基づいたパンフレット・資料に定評がある。
最近はWEBや自社セミナーなどでの情報発信も行っている。