
土地の名義変更について知りたい方へ
- 名義変更が必要な4つのケースをご紹介
- 自分でする場合、プロ(司法書士)に頼む場合、それぞれのメリット・デメリット
- 名義変更の流れや必要書類、注意点について解説します
「いきなり必要になったけど、やり方が分からない…」という方も少なくないでしょう。
この記事では土地の名義変更について、やり方や必要な書類を解説していきます。
目次
土地の名義変更とは?
名義変更は、土地の持ち主が変更になったときに必要な手続きです。土地の名義、つまり所有者が誰かという情報は、法務局に「登記」と呼ばれる形で管理されています。
相続や贈与などで所有者が変わったときは、登記に記載されている内容を変更するべく、名義変更の手続きが必要になるのです。
土地の名義変更が必要なケース

では、具体的に名義変更の手続きが必要なのはどんなケースなのでしょうか。代表的な4つのケースを見てみましょう。
ケース① 相続
相続財産に土地が入っている場合、遺産分割協議の後、名義の変更が必要です。相続では「一つの土地を複数の土地として分割相続する」「土地を複数人の共同名義にする」など、名義変更の手続きが複雑化することがあります。ケース② 贈与
土地の贈与の際も名義の変更を行います。親子間で名義を変更するケースでは、当事者で贈与の認識がない場合でも、贈与税の納付連絡が送られることがあるので注意が必要です。ケース③ 財産分与
マイホームを持っていると、離婚時の財産分与でも土地の名義変更が必要なことがあります。夫婦の共有名義の家をどちらかの名義に変更する場合など、こちらもケースによっては一対一の名義変更より手続きが煩雑になります。ケース④ 売買
持っている土地を売却するときや、逆に土地を購入する場合も名義の変更が必要です。通常、不動産の名義変更は売買契約が成立した後、引き渡しのタイミングで行います。土地の名義変更は自分でできる?
土地の名義変更というと、法律家や不動産業者など、その道のプロが行う手続きというイメージもあるかもしれません。必要に迫られた場合、名義変更は自分でできるのでしょうか?
結論から言うと、土地の名義変更は所有者自身で行うことができます。司法書士などの専門家は、あくまで本人の代理として行っているに過ぎないからです。
名義変更を自分で行う場合と、司法書士に依頼した場合のメリット・デメリットをそれぞれ見てみましょう。
自分で行う場合
自分で名義変更を行うメリットは、費用を節約できることです。司法書士に依頼して名義を変更してもらうと相応の費用がかかります。もちろん、その分早く確実に手続きしてくれるのですが、出費を抑えたいときは無視できないコストです。なお、名義の変更を行う法務局は、平日のみ開庁しているケースが多いです。平日にあまり仕事を休めない方は、手続きが一度で完了するよう万全の準備が必要になります。
司法書士に依頼する場合
司法書士に依頼する最大のメリットは、素早く確実に手続きを行ってくれることです。複数名義の不動産に関わるケースなど、手続きが難解な場合も安心して任せることができます。 名義変更を依頼した際の料金は事務所によって異なりますが、おおむね10万円から30万円程度で収まることが多いです。司法書士に土地の名義変更を依頼した場合、書類等の準備期間まで考慮すると1カ月程度かかります。
まず必要書類を揃えるには、一部の書類を郵送してもらうだけで1~2週間程度必要です。
次に司法書士が書類を作成し、法務局に申請するまでに1~2週間かかります。
最後に、法務局が申請を許可するまでに1~2週間かかるため、合計で1カ月前後必要と考えたほうがよいでしょう。
土地の名義変更を行う場合の流れ
土地の名義変更を自分で行う場合の流れをご紹介します。
法務局で申請書類を貰い記入する
まず名義変更する土地の最寄りの法務局へ赴き、申請書類を取得します。名義変更に必要な書類は、相続・贈与・売買・離婚など理由によって異なります。例えば、相続の場合は戸籍謄本や住民票の除票、遺産分割協議書、固定資産税の評価証明書などが必要です。
贈与の場合は不動産贈与契約書、贈与する人の印鑑証明書、登記識別情報通知(登記済権利証)、住民票などが必要になります。
売買なら印鑑証明書、顔写真付きの本人確認書類、登記識別情報通知(登記済権利証)、固定資産税評価証明書、住民票などを用意してください。
注意したい点として、単に名義変更するだけなら自分でもできますが、金融機関でローンを組む場合は司法書士に依頼しなければならないことがあります。
手続きが非常に煩雑化しやすいため、時間をかけられない時は司法書士に依頼しましょう。
戸籍謄本を取得する
名義変更を行う場合、次の2つのケースでは戸籍謄本が必要です。・相続
・離婚
特に注意したいのは、相続で法定相続人が複数存在する場合です。
法定相続人全員の戸籍謄本が必要になるため、すべてを取得するまでに膨大な時間が必要になります。
申請で印鑑証明書を提出する場合、3カ月以内に発行されたものという制限があるため、期間にも注意しましょう。
□関連リンク:
「相続した土地の名義変更の方法は? 相続税の計算や節税方法もご紹介」https://www.baikyaku.polusnet.com/column/detail.php?n=335
土地の名義変更に必要な書類①
土地の名義変更を行う場合、添付書類はどんなものを用意すればよいのでしょうか。
土地の名義変更は、名義を変更する理由によって必要な書類が異なります。4つのケースごとに必要な書類をまとめました。
相続 | 登記原因証明情報(戸籍謄本など) 登記識別情報(登記済権利証) 住所証明書(マイナンバー記載のない住民票) 印鑑証明書(発行3カ月以内) 委任状(代理人に委任する場合) 固定資産評価証明書 |
贈与 | 【贈与者】 登記識別情報(登記済権利証) 印鑑証明書(発行3カ月以内) 固定資産評価証明書 【受贈者】 住所証明書(マイナンバー記載のない住民票) 【その他】 贈与契約書・贈与証書 |
財産分与 | 【旧名義人】 登記識別情報(登記済権利証) 印鑑証明書(発行3カ月以内) 固定資産評価証明書 【新名義人】 住所証明書(マイナンバー記載のない住民票) 戸籍謄本 【その他】 離婚協議書・財産分与契約書 戸籍謄本 |
売買 | 【売主】 登記識別情報(登記済権利証) 印鑑証明書(発行3カ月以内) 固定資産評価証明書 【買主】 住所証明書(マイナンバー記載のない住民票) 【その他】 委任状(売主がひとりで手続きする場合) 売買契約書 |
この中で、普段聞きなれない「登記識別情報」「固定資産評価証明書」について、それぞれどんな書類なのか、どうやって入手するのかを紹介します。
土地の名義変更に必要な書類②
登記識別情報とは
登記識別情報とは、不動産の所有者を識別するために発行される12桁の番号で、暗証番号のようなものです。最初に不動産を登記する際に通知されます。権利書と同じ役目をするもので、どちらか一つがあれば手続き可能です。固定資産評価証明書とは
固定資産評価証明書は、対象の不動産の「固定資産評価額」を確認するための書類です。これは固定資産税算出の基準となる金額で、評価証明書は名義変更の手続きで必要になります。 固定資産評価証明書は、各地域の市町村役場(東京都なら都税事務所)で請求が可能です。土地の名義変更にかかる費用
土地の名義を変更する際は、手続きや土地そのものに様々な費用・税金がかかります。代表的なものは以下のとおりです。
費用項目 | 概要 | 税率 |
登録免許税 | 登記の手続きにかかる税金。 固定資産評価額に一定の税率をかけて計算される |
【相続の場合】0.4% 【贈与の場合】0.2% 【離婚の場合】0.2% 【売買の場合】0.2% (令和3年3月31日までは0.15%) |
贈与税 | 不動産や金銭などの贈与にかかる税金。 年間の贈与金額から110万円を控除した金額に課税される。 |
贈与金額に応じて10%から55% |
不動産取得税 | 都道府県税の一つ。 具体的な取り扱いは都道府県によって異なる。 |
不動産の価格(各種控除適用後の課税標準額)の3~4% ※東京都の場合 |
譲渡所得 | 不動産の売買で所得を得た場合に課税される。 収入金額から不動産の取得費・譲渡費用を引いた金額が課税対象となる。 居住用の住宅の売却は税控除の利用が可能。 |
所得金額の14.21%から39.63% |
土地のやりとりはどうしても金額が大きくなるため、手続きの費用や税金が高額になりがちです。請求されたタイミングで慌てないよう、あらかじめどんな費用がかかるのか確認しておきましょう。
土地の名義変更をする際の注意点
納税や費用の支払いに注意
土地の名義を変更する場合、必要な書類と費用には特に注意してください。先述のとおり、土地のやりとりは大きな金額が動くため、納税や費用の支払いには注意が必要です。必要な書類の漏れに注意
自分で手続きをするときは、必要な書類の漏れには十分気を付けてください。一対一の売買など、比較的添付書類が少なく済むのであればそれほど神経質になる必要はありませんが、多人数が関わる名義変更の場合は要注意です。たとえば、相続の際の名義変更で一つの土地を複数人で分割する場合などは、添付書類も非常に多くなります。どんな書類が必要なのか、抜け漏れがないか慎重に確認してください。
申請が通った後に訂正するのは難しい
土地名義変更の登記を申請し、すでに通ってからでは訂正が難しくなります。その理由は「なぜ更正が必要になるのか」を記載し、理由を証明するための書類が必要だからです。更正とは登記の申請内容に誤りがある場合に、正しい内容に修正をすることを指します。
土地名義を変更した場合、その背景には相続や贈与、結婚による姓の変更などさまざまなケースが考えられます。
そして、更正はその登記がなぜ誤っていたのかによって、「錯誤」や「遺漏」などの理由を記載しなければなりません。更正理由が錯誤なのであれば、錯誤があることを証明する書類の提出が必要です。
また、遺漏で相続人の持分が減る場合には、利害関係のある関係者の承諾を証明する書類も必要になります。そのため、申請が通った後に登記内容を更正するには、非常に複雑な手続きがあると理解しましょう。
逆に、申請が通る前であれば取り下げや申請書を修正する「補正」も簡単に行えます。
登記権利者と登記義務者の双方の立ち合いが必要になる
土地名義を変更する場合、その理由が「売買」「贈与」「財産分与」なら登記権利者と登記義務者の共同申請が必要です。共同申請とは登記権利者と登記義務者が、双方立会いの下で申請を行うことです。
共同申請を行う理由は、登記の利害関係者が立ち会うことにより、登記申請が双方の承諾によって行われることを証明する目的があります。
例外的に離婚を理由とした土地名義変更など、一部のケースでは代理人を立てて申請を行うこともあります。
家族名義の土地の名義変更について
たとえ家族であっても、他人の土地の名義を勝手に変更することはできません。事情があって代理人による手続きが必要なときは、本人からの委任状が必要です。 また、認知機能が低下しているなど、本人が財産を自分で管理できないのであれば、裁判所が選出した成年後見人による手続きが可能です。
家族名義の土地を売却する場合
名義変更と同じく、売却するケースでも勝手に手続きしてはいけません。売主の意思を判断できる「委任状」と、名義人・代理人両者の身分証明書がなければ、土地の売却はできません。土地の名義変更は難解!難しい場合は専門家へ相談を
土地の名義変更は自分で行うこともできますが、手続きが難解で、書類も大量に添付する必要があります。多人数が関わる土地の名義変更であればなおさらです。
手続きに自信がないときや、急いで手続きすることが必要な場合は、無理せずプロである司法書士に依頼するのがおすすめです。
料金がかかるかわりに、迅速かつ確実に土地の名義を変更してくれます。お困りであれば一度ご検討ください。
監修者

大沼 春香(おおぬま はるか)
宅地建物取引士
埼玉県・千葉県・東京都一部に拠点を置く
不動産売買仲介会社に15年以上従事。
自身も不動産購入を経験し「初心者にもわかりやすい」
実態に基づいたパンフレット・資料に定評がある。
最近はWEBや自社セミナーなどでの情報発信も行っている。