
鉄骨造の耐用年数はどれくらい?
- 耐用年数・減価償却できる年数とは何か?計算方法とあわせて解説します
- 鉄骨構造の耐用年数がどのくらいか用途・厚さ別に比較!計算方法もチェック
- 耐用年数が過ぎた場合は?リスクとともに活用方法もご紹介します
また、鉄骨構造のメリットとデメリットを考え、耐用年数を延ばすにはどのような方法があるのか解説。さらに、耐用年数が過ぎた物件について、リスクとあわせて活用方法もご紹介します。
目次
耐用年数とは?
建築物の耐用年数とは何か、詳しい内容について紹介します。
①建物の寿命
耐用年数と寿命を混同してしまうことがありますが、寿命とは「耐久年数」のことを指します。耐用年数は資産価値を算出するための期間であり、確定申告の減価償却の計算で使う年数のことです。一方、寿命・耐久年数とはメーカーや調査会社の実験により、問題なく使用できる期間を指します。つまり、耐用年数と寿命は別物です。
古い日本家屋の中には100年以上も使用できているものがありますが、管理方法によって耐久年数も大幅に延ばせます。
②書類上の期間(減価償却の期間)
耐用年数は住宅の減価償却が可能な期間を意味しています。住宅の耐用年数は構造によっても異なるため、構造別の耐用年数をみていきましょう。
構造 | 耐用年数 |
木造 | 22年 |
軽量鉄骨プレハブ造 (骨格材の厚さ3㎜以下) |
19年 |
軽量鉄骨プレハブ造 (骨格材の厚さ3㎜~4㎜) |
27年 |
重量鉄骨造 (骨格材の厚さ4㎜超) |
34年 |
鉄筋コンクリート造 | 47年 |
③経済的価値がなくなるまでの期間
耐用年数を元に住宅の経済的価値がなくなるまでの期間も把握できます。【耐用年数=(法定耐用年数-経過年数)+(経過年数×20%)】
上記の指揮で残りの法定耐用年数が計算できます。
具体的には、築10年の鉄筋コンクリート造の住宅を購入した場合、次の計算になります。
【耐用年数=(47年-10年)+(10年×20%)=39年】
また、法定耐用年数を経過している場合は、次の計算式で経済的価値がなくなるまでの期間が把握できます。
【耐用年数=法定耐用年数×20%】
例として、築25年の木造住宅を購入した場合、次のような計算になります。
【耐用年数=22年×20%=4年(端数切り捨て)】
経済的価値がなくなるまでの期間が短いため、売却のタイミングが重要となります。
鉄骨造の耐用年数について
まずは、実際の寿命についてです。仮に鉄骨構造の住宅にずっと住み続けることを考えてみましょう。
大手住宅メーカーや建築会社が、鉄骨構造の住宅の保証期間を設定していて、その長さは30年から60年ほど。点検の期間や回数などによってかわってきますが、最大で60年まで保証されることを考えると、耐用年数に関わらずだいたい60年が鉄骨構造の住宅の寿命と言えます。
また、減価償却を行う際に基準となる耐用年数があらかじめ定められていて、これを「法定耐用年数」と言います。法定耐用年数は建物の構造・用途により異なり、鉄骨構造では19年から34年に定められていますが、鉄骨の種類と厚さによって、さらに細かく異なります。
鉄骨の厚さによって、法定耐用年数は次のようになります。
・3㎜以下 19年
・3㎜超~4㎜以下 27年
・4㎜超 34年
加えて、物件の用途別の法定耐用年数も異なります。
■住宅・店舗の場合
・3㎜以下 19年
・3㎜超~4㎜以下 27年
・4㎜超 34年
■事務所の場合
・3㎜以下 22年
・3㎜超~4㎜以下 30年
・4㎜超 38年
■飲食店の場合
・3㎜以下 19年
・3㎜超~4㎜以下 25年
・4㎜超 31年
■ホテル・旅館・工場・倉庫の場合
・3㎜以下 17年
・3㎜超~4㎜以下 24年
・4㎜超 29年(工場・倉庫は31年)
耐用年数(減価償却できる年数)の計算方法
新築物件を購入する場合なら、耐用年数の計算はわかりやすいですが、中古物件の場合は耐用年数をどのように計算すればいいでしょうか?
法定耐用年数の一部年数を消化している場合
法定耐用年数の一部をすでに消化している場合、次の計算式で算出します。【耐用年数=(法定耐用年数-経過年数)+(経過年数×20%)】
例えば築15年の鉄構造の住宅を購入した場合、次の計算式になります。
【耐用年数=(34年ー15年)+(15年×20%)=22年】
法定耐用年数を完全に消化している場合
法定耐用年数をすべて消化している場合は、次の計算式で算出します。【耐用年数=法定耐用年数×20%】
築40年の鉄構造の住宅を購入した場合、もともとの法定耐用年数は34年なので、次の耐用年数になります。
【耐用年数=34×20%=6年(端数は切り捨て)】
軽量鉄骨造・重量鉄骨造の違いとメリット・デメリット
一般的な住宅で採用される鉄構造。そもそも鉄構造の建物には、どんなメリットとデメリットがあるでしょうか。
軽量鉄骨造のメリット・デメリットとは
注文住宅でよく取り入れられているのが軽量鉄構造です。木造よりも耐震性に優れ、工場で生産されるため個体差がなく量産でき、建築費を抑えることができます。しかし、厚みが薄い分、遮音性や耐火性は若干劣ります。また通気性がないため、夏は暑く冬は寒いというデメリットがあります。
重量鉄骨造のメリット・デメリットとは
マンションやショッピングモールなどの大型の建物に多いのが、重量鉄構造。耐震性・耐火性・耐久性に優れていて、柱や梁が少なく建築できるため自由に間取りしやすくなります。しかし基礎工事や地盤作りをしっかりと行う必要があり、時間とコストがかかる難点があります。
耐用年数を過ぎた場合のリスク・注意点

耐用年数を過ぎた建物について、どのようなリスクが生じるでしょうか?
リスク① 売却しにくくなる
耐用年数が過ぎていると、その建物を購入した人はあまり節税効果を期待できません。そのため、売却が難しくなります。リスク② 住宅ローンを組みにくくなる
住宅ローンを組んで建物を購入する場合、住宅ローンの審査に耐用年数も関係します。耐用年数を過ぎた建物は、不動産としての価値が低くなるもの。そのため、住宅ローンを組みにくく、返済期間が短いローンしか利用できないなどの影響を受ける可能性があります。リスク③ 節税効果が薄い
耐用年数は減価償却して節税できるとご紹介しました。つまり、耐用年数を過ぎているということは、それだけ節税効果が望めないことになり、納める税金も増えることになります。リスク④ 維持費がかかる
法定耐用年数を超過した鉄骨造の建物は、老朽化により修繕やメンテナンスのための維持費が発生します。特に築年数が経過している物件は、多くの部分が劣化しています。大規模な修繕を行うと、屋根や外壁、内装、設備などの詳細なメンテナンス費用や設備の交換費用が必要になります。建物が老朽化するにつれて平均維持費は増加するため、資金計画を慎重に立てることが重要です。
耐用年数を超えた鉄骨造物件の上手な活用方法
もし耐用年数を超えた鉄構造の物件を所有しているなら、次のように活用することを考えてみてはいかがでしょうか。
活用方法① リフォームする
耐用年数を過ぎた物件でも、耐震性・耐久性をあげるためのリフォームを考えてみるといいでしょう。そのリフォームによって不動産としての価値があがれば、住宅ローンの審査に通りやすくなることも期待できます。活用方法② 建て替える
耐用年数を過ぎた建物は、思い切って新しい建物に建て替えることも選択肢のひとつです。建て替えれば、耐用年数がリセットされ、その分節税になります。築年数が経った物件はメンテナンスなどの修繕費もかなりかかってくるため、長期的に見て建て替えた方が経済的になることも考えられます。
活用方法③ 売却する
思い切って売却することを考えてもいいでしょう。耐用年数が過ぎた建物は、売却しにくいという面はありますが、不動産一括査定サイトなどを利用して良い不動産会社を探し、早めに売却してしまうことも手でしょう。耐用年数を超えた物件を売却するにはどうしたらいい?
耐用年数を超えた鉄骨造物件を売却するには、以下の3つの方法があります。
方法① 建物を残したまま売却
法定耐用年数を超過した鉄骨造物件の売却は、購入者の融資問題で難しくなることがあります。金融機関は耐用年数を超えた建物の価値をゼロと評価し、それにより融資が得られない場合があります。そのため売却時には、残存耐用年数がある方が売却がしやすくなります。
また、建物の価値がゼロでも、土地は減価償却資産ではなく、路線価に基づいた評価で価値が認められ、それに応じて融資が可能となることもあります。
方法② 建物を解体して更地として売却
法定耐用年数を超過した鉄骨造物件の建物価値はゼロとされますが、土地の価値は減価償却の対象外で、購入者は土地を担保に融資を受けることが可能です。そのため建物を解体し、更地にして売却することもひとつの選択肢です。更地は汎用性が高く、売却対象も広がります。また解体済みの土地は、購入者が解体費用を負担する必要がないため売却しやすくなります。一般的な戸建ての場合、更地にする費用は約200万とされています。
方法③ 不動産会社(不動産業者)へ売却
鉄骨造物件の売却時、適切な不動産会社の選択は重要です。各不動産会社には独自の専門分野があり、得意とするエリアも異なります。豊富な実績は、売却に関する深い知識とノウハウがあることを示していて、より高値でスムーズな取引ができる判断材料になるのです。
鉄骨造の耐用年数を延ばす方法はある?
法定耐用年数は定められていますが、耐用年数(建物の寿命)を延ばしていくためにはどうすればいいか、考えてみましょう。
方法① メンテナンスを行う
建物の寿命を延ばすためには、的確なメンテナンスを行っていくことが大切です。例えば、外壁や屋根にはひび割れなどが生じやすく、10年に1度程度は修繕が必要です。また、水回りのカビ・水漏れなどの確認、クロスの染み・ニオイなども、10年から15年ほどの頻度で行うといいでしょう。
方法② 大規模修繕工事を行う
マンションでは修繕積立金が回収されるでしょう。これをもとに、排水管などの設備の大規模修繕工事などが行われます。低い費用で定期的にメンテナンスできることは実施しながら、大規模な修繕工事も行うことが必要です。
耐用年数は不動産の資産価値に関わるもの
耐用年数とは、税制上に必要なものである一方、不動産の売買を行う際は資産価値に関わるものです。
自分が所有している物件の耐用年数がどのくらいなのか、これから購入する方は候補とする物件の耐用年数がどのくらいなのか、注目してみるといいのではないでしょうか。
監修者

大沼 春香(おおぬま はるか)
宅地建物取引士
埼玉県・千葉県・東京都一部に拠点を置く
不動産売買仲介会社に15年以上従事。
自身も不動産購入を経験し「初心者にもわかりやすい」
実態に基づいたパンフレット・資料に定評がある。
最近はWEBや自社セミナーなどでの情報発信も行っている。