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土地の分筆とは?事例やメリット・デメリット、手続き方法などを解説!

「亡くなった方から財産を引き継ぐとき税金(相続税)がかかる」ということは、多くの方が知っていることでしょう。

課税対象となる財産には、土地や家屋といった不動産も当然含まれています。相続税は、消費税などとは異なり生きている間に何度も経験することがない税金のため、「何とか手を打ちたい」と思いつつ、曖昧なままにされている方も少なくないのではないでしょうか。

そこで今回は、相続税を節税するテクニックの1つ、土地の「分筆」についてご紹介します。

目次

分筆とは?

「分筆」とは、登記簿に登録された1つの土地を複数に分割して登録し直すことです。反対に、登記簿に登録された複数の土地を合体させて1つの土地として登録し直すことを「合筆」といいます。

土地の登記単位は”一筆”と数える

なぜ「筆」という言葉を使うかというと、土地は「1筆」「2筆」と数えるからです。
土地の数え方というと、「1区画」「1面」などを想像する方もいるかもしれませんが、区画は宅地を、面は田畑を数えるときに使う単位です。土地の種類を問わず数えるには「筆」という単位を使います。
 

分筆するとなぜ節税になる?

分筆をすると土地が分割されるため、土地の境界が変わることになります。分筆により土地の境界が変われば、地形や路線価が変わるため、土地の評価額に影響が出ます。この仕組みを利用して評価額を下げることで節税につなげることができるのです。

分筆の事例

ここでは、相続発生後に土地を分筆した事例をご紹介します。
 

【事例】広い土地を相続人全員が納得いくように分筆

被相続人である亡き父親が残した財産の90%が広い土地です。この土地を複数いる相続人の間で分けるため、それぞれ相続登記をおこなうことになりました。

しかし実際には「どの境界で土地を分けるのか」が明確に決まっておらず、あくまでも大まかなイメージでしか話が進んでいません。
そこで相続問題や資産継承専門の弁護士へ土地分筆に関する相談をおこない、相続人全員が現地に集まって具体的な分筆の作業をすることになったのです。

土地を分筆する場合「面積が偏らないこと」「いびつな形にならないこと」に注意しながら、相続人全員が納得いく境界を決めることができました。
これは分筆登記を申請する際、該当する土地の境界が明確である必要があり「既存の登記された図面と現地が整合していること」「境界杭が現地に埋設していること」「隣接の地主が承諾していること」を確認するためのものです。

この事案でも、上記の作業を問題なく済ませたうえで法務局へ申請をおこない、無事に分筆を終えました。

分筆できない・分筆しても節税にならないケースについて

土地の分筆は「共有の土地を分割し、それぞれを単独で所有する」「土地の一部を売却する」「節税対策」などがおもな目的です。
しかし土地の状況によって分筆できない、分筆しても節税にならないケースもあります。

まず分筆できない土地とは、隣地と筆界の確認ができない土地です。筆界とは土地が登記された際、その範囲を区画する線をいいます。
また土地の面積が0.01㎡未満になる場合、実務上分筆登記ができません。

次に節税にならない分筆とは、極端に面積が狭い土地を分筆などで作り出す行為です。
たとえば100㎡の土地を90㎡と10㎡に分筆したとします。しかしそれぞれを相続した場合、分割前の100㎡の土地として評価(課税)されるため、節税にはならないのです。

また「意図的に歪な形の土地を作る」「道路に面しない土地を作る」などの節税を目的とした分筆行為も合理的な理由が認められないため、分筆前の状態で評価=税金を課されてしまいます。

分筆のメリットは?

分筆はひとつの土地を複数の土地として登記変更するものですが、実際に土地を分筆した場合、具体的にどのような利点があるのでしょうか?
ここからは、土地を分筆することによって得られるメリットをご紹介します。
 

メリット① 権利を別々に登記できる

土地を一筆(ひとつ)で登記している場合、複数の所有者で登記することはできません。しかし土地を分筆することにより、それぞれ単独所有することが可能になります。
このように、土地の権利関係を別々に登記できる点が分筆のメリットです。

土地を分筆すれば「遺産分割しやすくなる」「土地の一部を売却できる」ようになり、土地の一部に家を建てるために住宅ローンを組みたいときも、容易に抵当権などを設定しやすくなるでしょう。
 

メリット② 地目別の登記が可能になる

分筆すれば、地目ごとの登記が可能になります。地目とは、土地の登記における「宅地」「山林」「田」「畑」など、土地の用途による区分のことですが、一筆の土地の中では地目を分けることはできません。
つまり「宅地は宅地」「田は田」であり、登記した地目としてしか使えないのです。

しかし土地を分筆することにより「田→宅地」「山林→宅地」など、用途に応じた地目に変更できるため、土地の利用価値が高くなります。
 

メリット③ 節税につながる

土地の評価額は「接している道路状況」「土地の間口や形状」など、さまざまな要素によって決められます。この観点から分筆次第ではその土地の評価額が下がり、固定資産税や相続税、贈与税などの税金が低くなる可能性があります。

たとえば分筆後「土地の一部が道路に接しない状況となった」「正方形の土地が旗竿地になった」「土地の一部を開発道路にした」などの場合は土地の評価額が下がり、結果的に節税へとつながります。

分筆のデメリット・注意点

「権利や地目ごとの登記が可能になる」「節税対策」など、魅力的なメリットのある分筆ですが、その一方でデメリットもあります。
ここでは、分筆のデメリットや注意点を見ていきましょう。
 

デメリット① 評価額が下がる、固定資産税が上がる可能性

土地を分筆した場合、それぞれの土地が狭くなる、近接道路から離れてしまうといった点から、想像以上に使い勝手が悪くなるかもしれません。分筆した土地の評価額は下がりやすい傾向にあるため、売却が困難になる可能性がデメリットです。

また建物のある土地を分筆した際、一方に建物のない土地ができてしまえば、その土地に減税措置が適用されなくなるため、建物のない土地の固定資産税が上がる可能性も考えられます。
 

デメリット② 建物の新築や増改築に制限がかかる

ひとつの土地を分筆すれば、それぞれの土地が狭くなってしまいます。敷地面積が狭くなった場合、建ぺい率などの問題から希望通りの建物が建てられない、リフォームをおこなえない可能性があるでしょう。

また道路に接しない土地や、2m未満の間口で道路に接する土地は、基本的に建築確認を受けられないことから、その土地で建物を建てることができません。このように、建物の新築や増改築に制限がかかることも分筆のデメリットです。
 

デメリット③ 手間や時間がかかる

分筆をおこなう場合、手間がかかる点もデメリットのひとつです。実際の分筆には、法務局や役所とのやり取り、地測量、現地調査・立会、境界確定測量、登記書類の作成・申請など、その手続きは多岐に渡ります。
そのため一般的に土地家屋調査士へ分筆を依頼しますが、肝心の調査士を探すのも一苦労です。

また隣地との境界次第では、分筆に要する期間が最短で10日程度、最長2~3ヶ月以上かかることも珍しくありません。

分筆の仕方にポイントあり!

ただ分筆しただけでは節税効果を得られません。分筆で節税するにはいくつかポイントがあります。今回は代表的な3パターンの分筆を取り上げ、節税効果があるかないかをご紹介します。
 

パターン① 土地を等分に分筆した場合

1本の道路に接した幅20m奥行き20mの土地があるとします。 この土地を、道路に接する面を10m確保して分筆すると、道路に面した幅10m奥行き20mの土地が2つできます。この場合、2つの土地は、どちらも同じ道路に同じ幅だけ接しているため評価額は変わりません。よって節税効果を得ることはできないことになります。
 

パターン② 旗竿地になるように分筆した場合

旗竿(はたざお)地とは、袋地からのびる細い敷地で道路に接する土地のことを指します。その形が「竿がついた旗」に似ているため旗竿地とよばれています。

先ほどと同じく、道路に面した幅20m奥行き20mの土地があるとします。この土地を袋地(幅2mの細い敷地で道路に接する)と、道路に接した幅18mの土地に分筆したとします。
この場合、道路に面している部分が少ない旗竿地は使いづらいため評価額が低くなり、節税効果を得ることができます。
 

パターン③ 1つの角地を2つに分筆する場合

直角に交わる2本の道路に面した、幅20m奥行き20mの角地があるとします。 これを幅10mと奥行き20mの2つの土地に分筆すると、1つは角地(2本の道路に接している)と角地でない土地(1本の道路にしか接していない)になります。
一般に角地は使い勝手がよく評価額は高い傾向にあります。しかし、分筆により角地を狭くすれば評価額が下がり、結果的に節税効果を得ることにつながるのです。

分筆の手続き方法・流れ

実際に分筆の手続きをおこなう場合、以下のような流れになります。
 
1.土地家屋調査士に依頼する
2.法務局・役所で調査や資料収集
3.現地予備調査
4.現地立会い
5.境界確定測量
6.分筆案の作成
7.境界標の設置
8.分筆登記書類の作成
9.分筆登記申請
 
土地を分筆する際は、土地家屋調査士に相談・依頼することが一般的です。依頼を受けた土地家屋調査士が法務局・役所で該当する土地の調査や登記事項証明書、公図、地積測量図、確定測量図などの必要書類を収集してくれます。

事前に現地予備調査をおこない、分筆の流れの中で最も重要なポイントとなる現地立会いを実施します。ここでは役所の担当者や隣地土地所有者が立会い、境界標を確認・成立させます。
その後、境界確定測量や分筆案の作成をおこない、境界の目印となる境界標を設置。最後に分筆登記に必要となる書類を作成、それらを法務局へ提出し、登記済み証を受領することで分筆の手続きは完了です。

分筆にかかる費用はいくら?

土地の分筆登記にかかる費用は、法務局に収める登録免許税と土地家屋調査士へ支払う報酬とに分かれます。
登録免許税は1筆ごとに1,000円です。分割する土地の筆数だけ登録免許税がかかるため、たとえば3筆に分筆するならば3,000円になります。

一方の土地家屋調査士へ支払う報酬は、依頼内容によって大きく異なります。一般的に境界が確定している場合、最低価格で10万円ほど、境界が確定していない場合30万円~80万円ほどが相場です。

分筆による節税の注意点

土地の分筆によって節税するためには、相続後に土地の所有者が変更されることが必須条件です。
どのように分筆しても、全て同一人物が相続した場合は節税にはなりません。 分筆後の土地をそれぞれ別の方が相続しなければ節税にならないため、相続人同士の調整を慎重に行う必要があります。
 

分筆で節税できても損をすることも

分筆すると土地が小さくなります。当然ですが、小さな土地は売却するときに安値になってしまうため、大きな土地をそのまま売った方が節税分を考慮してもお得だった…という可能性がないとも限りません。

土地と土地上の住宅を同時に売却した場合は別の場所に住み替えしなければなりません。しかし、十分な値段で売れれば住み替え費用を捻出することができます。
節税だけに目を奪われるのではなく、住宅売却など他の方法も検討して最も利益が高いものを選んでください。

分筆登記をうまく使うことで、土地の評価額を下げて節税することができます。 しかし、分筆の方法を間違えると節税することができません。
また、場合によっては分筆よりも住宅売却など他の手段の方が得になるケースもあります。信頼できる不動産会社など専門家に相談して、アドバイスを受けることをおすすめします。

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監修者

コラム監修者 大沼
大沼 春香(おおぬま はるか)

宅地建物取引士
埼玉県・千葉県・東京都一部に拠点を置く
不動産売買仲介会社に15年以上従事。
自身も不動産購入を経験し「初心者にもわかりやすい
実態に基づいたパンフレット・資料に定評がある。

最近はWEBや自社セミナーなどでの情報発信も行っている。

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