
ご自分が売りたい価格で買ってもらえるのが一番ですが、不動産価値相応の価格設定をしないと簡単に売るのは難しいと言えます。
そこで今回は不動産売却をする際の価格の決め方やポイントについてご紹介します。
目次
不動産の売却価格の決め方と適正な売り出し価格
不動産を売却する際、まず考えなければならないのが売却価格の設定です。
相場より安い値段で売り出すと損をしてしまう可能性もありますし、あまり高い値段にしてしまうと問い合わせすら来ない状態になります。
だからと言って値段をコロコロ変えてしまうことはおすすめできませんので、最初の売り出し価格は慎重に決める必要があります。
まずは、ご自分で売りたい理想価格と、最低価格の2つを決定します。理想価格は個人的主観で構わないので、あまり深く考えずに「これくらいで売れればいいな」と思う価格を決めておきます。
もう1つは、最低この金額で売らないと今後の資金計画や生活が成り立たないというボーダーラインの価格です。
次に、実際に専門家や不動産会社に家の価値を査定してもらいます。
よほど家や不動産の知識に詳しくない限り、素人で不動産の価値を決定するのは困難と言えますので、多くは不動産会社や鑑定士に査定を依頼し、相場の価格を算出します。
そして理想価格と最低価格が査定額とどれくらいの差があるのかを把握しておきましょう。
たいていの場合は、査定価格が理想価格と最低価格の間に入ると思いますが、査定価格を参考にしながら売り出し価格を決定するようにしてください。
価格・評価額の種類
不動産の価格には、その土地の価格の種類として4種類、不動産売買などに関する価格として6種類あります。
土地の価格の種類を以下に挙げてみました。
地価公示価格
いわゆる「地価」を表す価格のことで、国土交通省が毎年1回、その土地を調査して価格を決めます。国内の土地価格の基準ともいえる価格です。
路線価
路線価は道路に面する住宅地の1m当たりの評価額を言います。一般的には地価公示価格7~8割の価格になることが多く、相続税、贈与税などの計算に使われます。
固定資産税評価額
固定資産税などの支払いの基準となる評価額で、おおむね地価公示価格の7割程度の価格設定になっています。
基準地価
地価公示価格は国が実施している調査に対して、基準地価は都道府県が実施して公表している価格で、地価公示価格と同じく地価の基準として使われています。
また、不動産を売買する価格は、以下のようなものがあります。
希望売却価格
売主が「この価格で売りたい」と思う希望価格のことです。あくまでも希望ですので、つける価格は自由です。
査定価格
不動産会社が不動産の査定を行い、実際に査定価格を出してもらった金額です。
売り出し価格
希望売却価格と査定価格を確認し、調整して売り出すスタート価格のことを指します。
購入希望価格
買主が希望する購入価格のことを指します。少しでも安く買いたいケースが多いため、売り出し価格よりも低い額を要求します。
成約価格
売り出し価格と購入希望金額を調整し、折り合いのついたところの価格です。
市場価格
実勢価格とも言われており、似たような条件の取引事例などから算出された価格のことで、売り出す際の価格決定の目安にもなります。
不動産売却時の鑑定方法の種類
ご自分の持っている不動産の正しい価値を査定してもらう手段として、不動産鑑定士に評価額を決定してもらう方法があります。
鑑定方法はいくつかの種類があり、不動産の特性によって選ばれます。
原価法
原価法は不動産の再調達原価をもとに不動産鑑定を行う方法です。再調達原価とは、売りたい不動産と全く同じものを建てた場合にどれくらいの金額になるのかを計算し、建築後の経年劣化の価値低下を差し引いて現在の価値を割り出します。土地に建物が建っている中古住宅などによく使われる鑑定方法です。
取引事例比較法
取引事例比較法は、対象の不動産と似たような条件の取引事例をあげながら比較し、不動産価値を決定する方法です。市場の動向や周辺の売買事例などを考慮しながら調整されます。不動産価格決定の基本的な考え方の鑑定方法と言えます。
収益還元法
収益還元法は、将来この不動産が生み出す利益を考慮して、不動産価値を決定する方法です。どちらかと言えば投資目的で不動産価値を確認する手段と言えます。
売り出し価格を決めるための手順は?
不動産の売り出し価格を決定する際の手順は、大きく3段階に分かれています。
それぞれのステップで確認すべき内容を解説します。
住宅ローンの残債を確認する
不動産を売り出す際は、住宅ローンの残債務がどれだけあるか確認することが重要です。不動産を売却したらその利益は住宅ローンへと優先的に充てられるため、一括返済できる金額になっているか把握しておく必要があります。
住宅ローンの残債務が多すぎれば、せっかく不動産を売却しても、住宅ローンだけが残ってしまう「オーバーローン」になるおそれがあります。
オーバーローンを避けるためにも、残債務よりも高い価格で売ることが重要です。
まずは住宅ローンの残債務を正確に把握したうえで、どのくらいの売り出し価格にすべきか想定しておきましょう。
類似する物件を参考に最低売却価格を決定する
住宅ローンの残債務を確認したら、次はポータルサイトなどを検索し、類似する物件の価格を参考に最低売却価格を決定します。類似する物件を検索する際は、次のような条件が自分の不動産の状況に近いものをチェックしましょう。
・築年数
・床面積
・付属する設備
・立地条件(駅からの距離、最寄り駅など)
・リフォームやリノベーションの状況
検索条件を細かくすると類似する物件が見つかりにくい場合もありますから、見つからないときは条件を緩めて検索してください。
条件が近い物件に比べて、高すぎる売り出し価格を設定すると、買い手がなかなかつかないこともある点に注意すべきです。
不動産会社に査定を依頼する
最低売却価格を決定したら、不動産会社に物件の査定を依頼します。査定を依頼する際は、複数社に査定を依頼し、査定額と対応の両方で信頼の置ける担当者を選ぶことが重要です。
査定額の高さだけで決定すると、後々売り出し価格を大幅に下げられる可能性もあるため、担当者の人柄も含めて依頼する会社を選びましょう。
売り出し価格を設定する際の注意点
売り出し価格の決定は、大切な不動産を売却するための重要ポイントです。
価格設定ではどのような注意が必要になるか、4つの注意点を解説します。
相場より高すぎる価格設定はNG
売り出し価格を決定する際は、相場の範囲内に価格設定することが非常に重要です。住宅ローンの残債務が多いからといって、相場より明らかに高い売却価格を設定しても、買い手がつく可能性はほとんどありません。
他の類似物件がどのくらいの金額になっているか比較し、適正価格の範囲に収めることが大切です。
不動産会社に査定を依頼し、売却価格を相談しながら決定するのもよいでしょう。
最初から売れやすい価格に設定する
不動産を早く売るためには、最初から売れる見込みがある価格に設定することも重要です。「売れなかったら値段を下げていけばいい」と考え、段階的に売り出し価格を下げていく人もいます。
しかし段階的に値下げをしていく手法では、結果として売却までの期間が長期化するだけでメリットはほとんどありません。
オーバーローンで少しでも高く売りたい場合や売却に時間がかかってもいい場合を除き、最初から売れやすい価格に設定するほうが効率的です。
通常、不動産の売却には適正価格でも3か月程度はかかるため、売れやすい価格設定をすることで確実性を高めることを意識しましょう。
最低売却価格をあらかじめ決定しておく
売り出し価格を決定するときは、最低売却価格も同時に決定しましょう。不動産売買では不動産会社からの提案や買主との交渉において、売却価格の値引きを提案されることも珍しくありません。
しかし大きく値引きするとオーバーローンになってしまい、ほとんど利益にならない可能性もあります。
そのため、あらかじめ「この金額が値引きの限界」と決めておくことで、交渉の場でも迷うことがなくなるでしょう。
最低売却価格を下回る提案があった場合は、そこで交渉を打ち切って次に気持ちを切り替えることが大事です。
インスペクションを実施したら相場より高めでもOK
売り出し価格を決定するにあたって、建物状況調査(インスペクション)や耐震診断、建設住宅性能評価書などの証明書があるなら、相場より価格を高めにしてもよいでしょう。証明書は建物の設備や劣化状況などを専門家が「問題なし」と保証するもので、住まいとしての価値を高めることになります。
ただし、証明書があるからといって売り出し価格を高くしすぎると、なかなか買い手がつかないことも考えられます。
証明書等がある場合は、不動産会社とも相談しながら売れやすく、かつ相場より高めの価格を決定するのがおすすめです。
エリアと物件に強い不動産会社の選び方
大切な不動産を適正価格で、早く売るには該当するエリアと物件に強い不動産会社選びが大切です。
具体的には、不動産のあるエリアの相場に詳しく、かつ販売実績も豊富な不動産会社を選ぶのがポイントになります。
加えて不動産会社にも賃貸物件、マンション、一戸建てなどそれぞれに強みとなる特徴があります。
一戸建てを売却するなら、これまでに多くの販売実績がある不動産会社に依頼するのがよいでしょう。
より良い不動産会社を見つけるには、不動産会社の評判やホームページをチェックし、実績を確認するのがおすすめです。
事前にポータルサイトで不動産の適正価格を把握したうえで、複数の不動産会社と比較検討することにより、信頼できる不動産会社を見つけられます。
まとめ
不動産を売却する際は、地域の価格相場や築年数、面積、類似物件との比較をすることが大切です。
適正価格を知らないまま売り出し価格を決定すると、売り出し期間が長期化したり、安く売って損をしたりすることもあります。
実績があり、信頼できる不動産会社に査定を依頼し、適正価格で不動産を売却しましょう。
監修者

大沼 春香(おおぬま はるか)
宅地建物取引士
埼玉県・千葉県・東京都一部に拠点を置く
不動産売買仲介会社に15年以上従事。
自身も不動産購入を経験し「初心者にもわかりやすい」
実態に基づいたパンフレット・資料に定評がある。
最近はWEBや自社セミナーなどでの情報発信も行っている。