
この記事では、不動産売買における買付証明書とは何かを解説していきます。
また、買付証明書の概要、メリットとデメリット、記載項目などをわかりやすくご紹介。
さらに、提出する場合の注意点もくわしく見ていきましょう。
目次
買付証明書とは?
そもそも不動産売買における買付証明書とは、どのようなものなのでしょうか?まずは、買付証明書の役割、法的な効力、書式の決まりをわかりやすく解説していきます。
□関連リンク:
「不動産売買の必要書類は?物件別の必要書類と入手方法について」
買付証明書の役割
買付証明書とは、希望者が欲しい物件に対する「購入の意思」を示すため、売主に提出する書類です。記載する主な内容は、物件購入希望者の氏名や住所、勤務先や年収といった個人情報をはじめ、購入を希望する物件の各種情報、購入希望価格や売買契約日などになります。
また、支払方法や融資を受ける場合の金融機関名、買付証明書の有効期限、その他の細かい条件も必須です。
法的な効力の有無
買付証明書に法的な効力はありません。あくまでも希望者が「この物件を買います」と売主や仲介業者に購入の意思を伝える趣旨の書類だからです。たとえ、提出後に購入をキャンセルしたとしても、罰則を課せられたり、違約金などを請求されることもありません。
書き方に決まりはある?
買付証明書は、記載内容に一定の共通項目はあるものの、書式に正式な決まりがない書類です。一般的に仲介業者の不動産会社が用意してくれます。不動産会社によって、それぞれ書式が異なるため、他社と比較した場合、記載項目の有無があることも珍しくありません。
買付証明書はいつ出す?
買付証明書は、不動産購入の意思を正式に示すための書類です。
提出するタイミングは、購入希望者が物件を内覧し、条件や価格に納得した後です。具体的には、売主に対して購入の意思を伝え、交渉を進める段階で提出します。
この証明書を提出することで、売主に対して真剣な購入意欲を示し、交渉のスタートを切ることができます。物件の購入を確定する前に提出するのが一般的です。
買付証明書を提出するメリット・デメリット

買付証明書は、売買契約書と異なり、法的有効性がないものです。
しかし、この書類ならではの特徴や特色を持っています。
ここでは、買付証明書を提出することで発生するメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット
買付証明書を提出するメリットは、物件の売主に購入の意思を明確に伝えられることです。好条件の物件になれば、購入希望者が集中するため、売主も誰に買ってもらおうかと考えます。そのとき、買付証明書が売主に対する絶好のアピール書類となるわけです。
また、仲介役の不動産会社も買付証明書を出す希望者は「本気で物件購入を考えているお客様」と判断し、より真摯に誠意を持って対応してくれるようになります。該当物件の値下げの情報を優先的に教えてもらえることもあるようです。
デメリット
買付証明書を提出するだけでは、希望物件を購入することができません。買付証明書は、売主に物件の購入意思を示すための書類であり、その希望通りに物件の売買契約を結べない可能性があるからです。
また、同一物件に対し、複数の希望者から買付証明書が提出されることも珍しくありません。そのため、たとえ、先に買付証明書を提出していても、後に提出された希望者の買付証明書の方が売主にとって好条件の場合、交渉が後回しにされることもあります。
買付証明書の雛形と記載項目
ここからは、買付証明書に記載する具体的な項目をご紹介していきます。
書式は、不動産会社のよって異なりますが、下記に代表されるような項目を記載し、書類を作成することが一般的です。
ひな形は基本的に不動産会社側で用意してくれる
買付証明書の雛形については、購入希望者が自分で用意する必要は基本的にありません。通常、不動産会社が標準的なフォーマットを用意してくれるため、購入希望者はその書式を使用することができます。この雛形は、法的要件や業界の慣習に基づいて作成されており、必要な情報を適切に記載するための指示が含まれています。
項目1:購入希望金額
物件を購入したい希望金額を記載します。不動産サイトやチラシの情報などに提示された金額ではなく、あくまでも支払いが可能な金額を書くようにしてください。不動産会社の担当者と相談し、購入希望価格を検討してもよいでしょう。
項目2:物件情報
購入したい建物や土地の物件情報も記載項目のひとつです。正確な建物の名称や所在地、構造や延床面積、家屋番号などを書きます。わからない項目がある場合、不動産会社に問い合わせてください。項目3:手付金・中間金・残代金
売買契約時に買主が売主に預ける手付金の金額を記載します。手付金とは、物件を購入するための頭金に充当し、のちの購入金額の一部に加算されるお金です。相場としては、物件価格の10%~15%程度になります。残代金とは、購入希望金額から手付金を差し引いた残金です。
中間金は、手付金と残代金の間に支払う金額を指し、建売住宅や中古住宅など、物件によって支払いの有無が異なります。
項目4:購入希望者の個人情報
購入希望者の個人情報も大切な記載項目です。主に氏名や住所、職業や勤務先、年収や株券・預貯金といった個人資産などを書きます。年収は、会社員の場合、源泉徴収票に記載された支払金額、自営業の場合、収入の合計金額を記載しましょう。
項目5:融資依頼先
住宅ローンの融資を受ける場合、その依頼先(金融機関)と具体的な融資金額を記載します。融資先が決まっていないときは、未定と書いてください。項目6:融資特約
金融機関から融資を断られた場合、売買契約を白紙撤回(無効化)できる特別な契約が「融資特約」です。もしものトラブルを避けるため、融資特約の項目がなくてもその他の条件に「融資特約でお願いします」という一文を必ず記入してください。
項目7:引き渡し希望日・有効期限
物件の売買契約から引き渡しまでの希望日程を記載します。売主から見ても希望者の具体的な意思が明確に伝わるため、交渉も円滑に進められるでしょう。また、買付証明書の有効期限も必須項目です。買付証明書は売買契約ではない
買付証明書を提出しただけでは、売買契約の成立にはなりません。
売買契約書とは、買主と売主の双方が合意し、物件の売買を締結・証明した書類です。つまり、買付証明書とは「正式契約の前に交わす文書」に位置づけられます。それゆえに、法的な効力、有効性もないのです。
物件の売主に購入の意思を示すことができる買付証明書。しかし、後先を考えず、安易に提出すれば、トラブルを招く恐れも考えられます。ここからは、買付証明書を提出する場合の注意点を見ていきましょう。
買付証明書を提出する場合の注意点
物件の売主に購入の意思を示すことができる買付証明書。
しかし、後先を考えず、安易に提出すれば、トラブルを招く恐れも考えられます。
ここからは、買付証明書を提出する場合の注意点を見ていきましょう。
損害賠償の可能性がある
買付証明書を提出後、ある程度売買の話が進んでいるにも関わらず、不当な理由で一方的に交渉を打ち切れば、損害賠償責任が生じるかもしれません。これを「契約締結上の過失責任」といいます。実際に売主が購入希望者を相手取り、損害賠償請求が認められた判例もあるようです。
買付のキャンセルにも注意
法的な効力のない買付証明書ですが、安易な買付のキャンセルは、極力避けるようにしてください。売主の期待を裏切り、仲介に立った不動産会社の労力も無駄になるため、信用や信頼を失ってしまうからです。後々、他の物件を購入するときに、影響が出る可能性も考えられます。
買付証明書の有効期限
買付証明書の有効期限にも注意が必要です。売主との交渉期間、住宅ローンの審査に要する期間などを踏まえ、買付証明書の有効期限は、ある程度余裕を持って設け、その期限を厳守してください。
一般的に有効期限は、1週間~2週間となっており、最長でも約1ヶ月が目安となります。
購入の意思を示すことが買付証明書の大きなメリット
不動産売買における買付証明書の役割は、売主に物件購入の意思を示すことです。
売主が「どの希望者に買ってもらおうか」と考えるとき、買付証明書が大きな判断材料になるため、どの項目もしっかりと明確に記載してください。
わからない項目がある場合、仲介業者の不動産会社に確認しましょう。売買契約書と異なり、買付証明書に法的な効力はありません。
しかし、提出すれば、売主と購入希望者が交渉をスムーズに進められ、売買契約にもつなげやすくなります。事前にメリットとデメリット、提出に関する注意点を考慮したうえで、買付証明書を作成するようにしましょう。
不動産の売却ならポラスにお任せください
不動産売却の相場価格や適切な売却方法、手続きがわからず不安な方は、ポラスにお任せください。ポラスは不動産のプロとして、大切な不動産の売却を親切、丁寧にサポートします。
不動産売却をしたい不動産の持ち主にとって、契約の手続きは煩わしいことが多いものです。
ポラスではお客様の負担を最小限に抑えるために、売却活動から契約手続きまで一括してサポートいたします。
市場動向を熟知した専門スタッフが、お客様のニーズに合わせた最適な売却プランを提案し、迅速かつ確実に売却を進めます。
また、買付証明書やその他の重要書類の作成もサポートしますので、初めての方でも安心してお任せいただけます。
監修者

大沼 春香(おおぬま はるか)
宅地建物取引士
埼玉県・千葉県・東京都一部に拠点を置く
不動産売買仲介会社に15年以上従事。
自身も不動産購入を経験し「初心者にもわかりやすい」
実態に基づいたパンフレット・資料に定評がある。
最近はWEBや自社セミナーなどでの情報発信も行っている。