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立ち退き料とは?相場はいくら?内訳・計算方法や交渉のポイントなどを解説!

マンションやアパートに住んでいると、立ち退きを求められるケースがあります。
しかし立ち退きには引っ越し代金だけでなく、新居の敷金や礼金などもかかります。

そこで大切になってくるのが立ち退き料です。立ち退き料がいくら支払われるかで、住む人の経済的損失は異なります。
この記事では、立ち退き料について詳しく解説をしていきます。

目次

立ち退き料とは?

立ち退き料とは、マンションやアパートを運営している不動産オーナーが、立ち退いてほしい賃借人に対して心遣いで支払うお金です。不動産オーナーから立ち退いてほしいと言われて嬉しい賃借人はいないでしょう。

しかし、立ち退き料があれば、賃借人の引っ越しを後押しできるのです。不動産オーナーが賃借人にどうしても出ていってもらわなくてはいけない際に、不都合を押し付けた気持ちとして支払われるのが立ち退き料なのです。

立ち退き料の相場・目安はいくら?

立ち退き料の相場・目安はどのようになっているのでしょうか。

一般的な相場・目安

立ち退き料は、法律によって定められているお金ではありません。あくまでも気遣いのお金です。そのため、相場というものはなく、そもそも支払われるかどうかもわかりません。しかし、一般的な相場としては、おおよそ賃料の6~10カ月分となっています。これは住んでいる物件からの引っ越し料金や、新しく住む場所の敷金や礼金を考慮した費用になっています。

今の物件に住み続けることができたのであれば、支払わずに済んだお金を不動産オーナーが肩代わりしてくれるといった形になります。しかし、あくまでも目安であり支払われるかどうかはわかりません。

立ち退き料の内訳について

立ち退き料の内訳は次の通りです。
 

内訳の項目 費用の目安
移送・引越し費用 20~30万円
慰謝料・迷惑料 20~40万円(借家の場合、賃料の3~6カ月分)
権利の補償 数万~数百万円
 

移送・引越し費用

移送・引っ越し費用は、マンションまたは借家から立ち退く際、家具等の運送、保険、手続きの費用、敷金などを含めた費用です。
移転先の確保を不動産会社に依頼した場合、仲介手数料や移転先に支払う敷金・礼金、新しい住居での賃料の差額も費用に入ります。

相場は10~20万円程度ですが、移転先によっては100万円程度支払われる場合もあります。
 

慰謝料・迷惑料

慰謝料・迷惑料は立ち退きでかかる引越しの手間、環境変化によるストレスなど、精神的・身体的な労力に対して支払われる費用です。算定が難しいことも多く、相談のうえで決定されることが多いです。

借家の場合、賃料の3~6カ月分が相場になります。ただし引越し後の環境の変化が大きい場合、大幅に増額されることもあります。
 

権利の補償

権利の補償はマンションやアパートの場合は借家権への補償、店舗の場合は営業権の補償のために支払われます。
店舗の場合、移転先で再度営業を再開し、生活が安定するまでに必要な費用、同じ場所で営業した時に得られたはずの逸失利益も計算されるのが一般的です。

そのため借家なら数万円になることもありますが、店舗の場合は数百万円になることもあります。
また売上が大きい店舗であれば、億単位の費用になる可能性もあります。

立ち退き料が必要になる場合とその理由

立ち退き料は必ず支払うわけではなく、必要な場合と不要な場合があります。
立ち退き料が必要な場合と、その理由についてご紹介します。
 

管理者の都合による立ち退き

管理者が賃貸物件を自分で利用する、または店舗等の営業で利用するために立ち退きを迫られたといった場合は、立ち退き料が支払われます。

必要なケースは管理者またはオーナーが長期で赴任し、その間の空き家を貸し出していた場合が代表的です。この場合、借主が賃貸物件で生活の基盤を整えていれば、立ち退き料を支払う必要性が生じます。
ただし借主が生活や営業でほとんど利用していない場合は、立ち退き料が不要になるケースもあります。
 

物件の建て替えに伴う立ち退き

物件は時間経過とともに劣化していくため、築年数が長い物件は建て替えやリフォームが必要になることがあります。
この場合、賃貸物件の管理を行う管理者やオーナーが建て替えの判断を行うため、管理者都合での立ち退きになります。
そのため、立ち退き料を支払うことになる可能性が高いです。
 

土地の再開発による立ち退き

土地の再開発や都市開発により、土地や建物の取り壊し、移転が必要な場合も立ち退き料が発生します。
再開発や都市開発は行政の都合になるため、通常の立ち退き料よりも高めになることが多いです。

立ち退き料がいらないケースとは?

立ち退き料がいらないケースについて、3つのパターンをご紹介します。
 

定期建物賃貸借契約になっているケース

賃貸借契約には、普通建物賃貸借契約と定期建物賃貸借契約の2種類があります。普通建物賃貸借契約では特約を結ばない限り、管理者(貸主)から一方的に立ち退きを言い渡すことはできません。
しかし定期建物賃貸借契約の場合、契約更新が必要ないことから、契約期間を終了した時点で退去を言い渡せば立ち退き料は不要です。
また普通建物賃貸借であっても、借主側に契約違反があった時は立ち退き料なしで契約解除できます。
 

期限付きの賃貸借契約になっているケース

期限付きの賃貸借契約とは、限られた期間を設定して、その期間だけ建物を貸し出す契約です。
数年以内に建物の建て替えや解体を予定しており、工事開始に伴って借主に立ち退いてもらうケースが代表的です。
この場合、あらかじめ立ち退きを前提にしていることから、立ち退き料を支払う必要はありません。
 

利用するには重大な危険が建物にあるケース

築年数が長く、現在の耐震基準に合っていない建物や軟弱地盤上にある建物など、地震による倒壊の危険が高い建物は立ち退き料が不要になることがあります。
ただし契約内容によってはトラブルになることもあるため、管理者と借主の双方がしっかりと話し合いを行うことも大切です。

立ち退きを求められたら?

誰もが今住んでいる場所に住み続けたいと考えるでしょう。しかし、立ち退きを求められてしまうこともあります。その際は、どのように対応すべきなのでしょうか。

正当事由があるか確認

まず、立ち退きの理由が正当であるか確認しましょう。家賃滞納や隣人への迷惑行為、許可なく事務所として使用など、明らかに賃借人側に非がある場合は賃貸契約が一方的に解消されるので、立ち退きを断ることもできませんし、立ち退き料も支払われません。
しかし、建物の老朽化による立て直しなどの不動産オーナー側の都合であるならば、立ち退き料を求めることができる可能性が非常に高くなります。
 

条件が不服な場合

立ち退き料などの条件が不服な場合は、不動産オーナーと交渉を行いましょう。立ち退き料を引っ越しし代や敷金、礼金が支払えるくらいまで引き上げてもらうのです。なるべく早く交渉を行えば、応じてくれる可能性は十分にあります。
 

裁判になった場合について

万が一、立ち退きを巡って裁判になった場合は借家権が論点となります。借家権とは、家賃を払い続ける限り住み続ける権利です。家賃の受け取りを拒否されても、法務局に供託すれば滞納を理由に立ち退かされる心配はありません。
しかし、裁判になると話は別です。借家権はあくまでも当人が住む権利なので、これをもって裁判で争うというのは非常に難しいです。なるべく、裁判にはもつれ込まないように、話し合いで解決しましょう。

立ち退きを求められてから引っ越しまでの流れは?

まず、立ち退きの打診の連絡や通知が届きます。正当な事由がある場合でも、6カ月前までに立ち退きの通知をすることが原則となっていますので、この通知をもって次回の契約更新を行わない意思を確認します。

仲介の不動産会社がいる場合は、その不動産会社が案内している別の物件に転居をすすめられるケースが多いです。なぜかというと、新しく住む場所を探さなくてもよく、新居の家賃や引っ越し費用などが計算しやすいので、賃借人と不動産オーナーの双方にメリットがあるからです。もちろん、自分で探しても問題ありません。

そして、立ち退き料の交渉を行います。なるべく早く交渉を開始しましょう。 その後、立ち退きという流れになります。

立ち退き料の計算方法は?

立ち退き料を計算する方法には4つの種類があります。

1.収益還元方式(差額賃料還元方式)
2.割合方式
3.収益価格控除方式
4.比準方式
 

①収益還元方式(差額賃料還元方式)

収益還元方式は従前の賃料と移転先の賃料を差し引き、差額を支払う計算方法です。

・借家権=(移転先で支払う賃料-現在支払っている賃料)×複利年金現価率

上記の計算式に基づいて、差額を立ち退き料として支払います。
一般的には2年分を複利年金現価率と設定し、立ち退き料にすることが多いです。
 

②割合方式

割合方式は、名前の通り土地・建物価格と借地権の割合を掛けて計算する方法です。

・借家権=(土地価格×借地権割合×借家権割合)+(建物価格×借家権割合)

借地権割合と借家権割合については、公平を期すために相続税路線価の数値を用いるのが一般的です。
 

③収益価格控除方式

収益価格控除方式は管理者(貸主)が建物を自ら利用した場合の価値から、借家として利用している場合の価値を差し引く計算方法です。

・借家権=自ら利用した場合の土地・建物の価格-借家として利用した場合の土地・建物の価格

管理者が利用した場合の価値が高く、借家にすると価値が低いのであれば、借家権は高くなるため立ち退き料も高くなります。
 

④比準方式

比準方式は実際の取引や立ち退きの場面では、ほとんど利用されることがない方法です。

・借家権=借家権の取引事例から算出した価格×取引事例と比較した要因

借家権の過去の取引事例に着目した計算方法であり、実務上そのような取引はされないからです。
そのため、あくまで推計として用いられるに過ぎない方法です。

立ち退き料の交渉のポイント

立ち退き料の交渉のポイントは、不動産オーナーと賃借人で異なります。

不動産オーナーの場合

不動産オーナーは、立ち退きの理由を明確にしたうえで交渉を行いましょう。そして、自分で交渉を行うのが難しいケースもあるので、専門家に依頼するのもおすすめです。
また、賃借人には賃貸借契約を更新し続けられる権利があるので、半永久的に住むことも可能です。不動産オーナー都合の立ち退きであれば、あくまでもお願いしているというスタンスを崩さずに借主とは良好な関係を維持しましょう。
 

賃借人の場合

賃借人の場合は、自分の状況をきちんと説明することが大切です。新しい家に住むことで、どれくらいの経済的損失が起こるのか、それを丁寧に説明しましょう。経済的損失が非常に大きい場合は、立ち退き料も増やしてもらわなくてはいけません。あくまでも不動産オーナーの要望には従うつもりがあることを明らかにして、自分が被る経済的損失をもとに立ち退き料の相談をしましょう。

また、専門家に交渉を依頼するのもおすすめです。しかし、専門家に依頼するのは費用がかかります。せっかく立ち退き料を増額できても、専門家への依頼料でマイナスになってしまっては意味がありません。経済的に依頼をしたほうが得なのであれば、専門家を活用しましょう。

立ち退き料についてよくある疑問を解消

立ち退き料は非常に特殊なお金なので、その扱いに関して疑問を抱く人は多いのではないでしょうか。
 

立ち退き料に消費税はかかる?

立ち退き料に消費税はかかりません。消費税は「対価を得て行う取引」「資産の譲渡」である必要があります。しかし、立ち退き料は損害賠償金や保証金としての性質が非常に強く、これらの条件は満たしません。そのため、消費税はかからないと考えて問題ありません。
 

立ち退き料は経費扱いになる?

不動産オーナーが立ち退き料を支払った場合は、経費にすることができます。例を挙げると、不動産を譲渡するために立ち退きを依頼したのであれば、譲渡に伴い発生した費用として経費にできます。
不動産から所得を得ていた場合でも同様で、不動産所得を計算するための必要経費として計上ができます。
 

立ち退き料を受け取ったら所得申告が必要?

立ち退き料は所得として計算するので、確定申告が必要です。不動産の種類によって所得の種類が異なり、居住用不動産の立ち退きは譲渡所得、必要経費の補填は事業所得、それ以外は一時所得など扱いが異なるので気を付けましょう。
 

立ち退き料の支払い時期はいつがいいの?

立ち退き料の支払い時期は、建物の明け渡しと同日がよいでしょう。しかし、引っ越しなどで早めに立ち退き料が欲しい場合は、交渉することで対応してくれる可能性があります。お互いが納得するタイミングで、支払いを行いましょう。

立ち退き料の事例

事例① 事務所兼社宅からの立ち退き事例

東京地方裁判所判決(H9.11.7判タ981号278頁)では、事務所と社宅、倉庫、車庫を兼ねた建物の立ち退き料について、建物の借地権価格1,662万円、および賃借人に生じる営業損害386万円の合計2,048万円の立ち退き料を認めました。
この他にも、営業に使用する建物の立ち退きにおいては、5,000万円以上の立ち退き料を認めた内容もあります。
 

事例② 老朽化した建物の賃貸借契約更新を拒絶した事例

東京地方裁判所判決(H1.7.10判時1356号16頁)では、老朽化した建物と土地の有効利用のために、賃借人の事務所と工場の賃貸借契約更新を管理者側が拒絶した事案について争いがありました。

結果としては管理者側の使用の必要性が重視され、6,000万円の立ち退き料の支払いを持って正当事由を認めてます。
賃借人の使用の必要性よりも管理者側の使用の必要性を重視しており、地域の実情や高額の立ち退き料の提供があれば、立ち退きも正当なものと認めました。
 

事例③ 木造アパートにおける立ち退き事例

築50年ほどの木造アパートで、耐震補強工事のために借主に立ち退きを求めた事例です。
耐震補強工事に伴い、木造アパートに建て替えと同程度の工事になること、特定の借主以外は全員退去したことが裁判では考慮されました。

裁判の結果、裁判所は立ち退き料として35万円の支払いを認めました。
また借主は生活保護を受給しており、引越し費用に相当する立ち退き料を支払えば、退去する可能性がある点も考慮されています。
 

事例④ 借地上の持ち家からの立ち退き料支払い事例

東京地方裁判所(H17.5.30判例秘書)では、管理者(賃貸人)の借地利用の必要性が高く、借主側の借地利用の必要性が高いと言えない場合において、700万円の立ち退き料を認めました。

700万円の立ち退き料は賃貸人が申し出た金額をそのまま採用しましたが、借地権価格1,500万円も判断材料になりました。
この事例のように、借地上の持ち家からの立ち退き料の判例では、貸主と借主の借地利用の必要性を比較し、貸主の必要性が上回る場合は立ち退き料の支払いを正当事由として認めるケースが多いです。
 

事例⑤ 店舗の立ち退き料事例

建物の1階が借主の店舗、2階部分に管理者が住んでいた事例です。
貸主は常時介護が必要な状態で、2階部分だけでは介護者との生活が難しくなったことから、1階で店舗を運営していた借主に退去を要請しました。

この事例では介護のために建物を使用するという緊急性、必要性の高さから、借主に立ち退き料を支払って退去してもらうことが正当事由となりました。
立ち退き料は180万円と判断が出ています。

不動産オーナーにも賃借人にも権利がある

不動産オーナーは不動産の運営をするために、立ち退きをお願いする権利があります。しかし、賃借人にも借家権という、そのまま住み続ける権利があるのです。
双方が権利を有しているのですが、裁判になると費用も時間もかかってしまうので、双方に損失しかありません。 お互いが円満に解決できる方法を模索するように心がけましょう。

監修者

コラム監修者 大沼
大沼 春香(おおぬま はるか)

宅地建物取引士
埼玉県・千葉県・東京都一部に拠点を置く
不動産売買仲介会社に15年以上従事。
自身も不動産購入を経験し「初心者にもわかりやすい」
実態に基づいたパンフレット・資料に定評がある。

最近はWEBや自社セミナーなどでの情報発信も行っている。

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