
住まない実家の相続にお悩みの方へ
- 「住まない実家を相続する予定がある」という方は、この記事で概要や特徴をチェック
- 住まない実家を相続前に売却すれば、維持や管理のコストが大幅に軽減されます
しかし、住まない実家を相続すれば、かなりの負担を抱えることになるようです。
この記事では「住まない実家は相続してはいけない」とされる理由をはじめ、売却処分のメリットや方法、活用方法、相続放棄の注意点などを解説します。
住まない実家を相続してはいけない理由とは
自分で暮らす予定のない実家を相続すれば、税負担や維持・管理などのリスクが増加します。ここでは、住まない実家を相続してはいけない具体的な理由を見ていきましょう。
理由① 相続税の負担額が増える
住まない実家を相続した場合、土地の評価額を80%まで減額できる「小規模宅地等の特例」が受けられません。この特例の適用条件は、相続人が被相続人と同居していることです。自分が実家に住んでいなければ、適用外となり、相続税の負担額が増えてしまいます。
理由② 維持・管理に費用や手間がかかる
毎年支払う固定資産税や不動産自体の定期的なメンテナンスなど、住まない実家を相続すれば、その維持・管理に費用や手間がかかる点も、思わぬデメリットになります。理由③ 特定空家等に指定される可能性
相続した実家を不適切に放置すれば、特定空家等に指定される可能性が否めません。その場合、固定資産税が最大6倍の増額や50万円以下の過料など、重いペナルティが課せられてしまいます。理由④ 近所トラブルにつながる可能性
メンテナンスが不十分になりがちな住まない実家は、急速に老朽化が進みます。そうなれば、建物の倒壊や害獣・害虫の発生、不法投棄や犯罪の温床になるなどの恐れがあり、ご近所トラブルの原因につながりかねません。理由⑤ 更地にすれば税負担が増す
実家の老朽化を懸念し、建物を解体して更地にする方法があります。しかし、更地にした場合「住宅用地の特例措置」の適用外となり、固定資産税が最大6倍に増額されるため、大きな負担になるでしょう。住まない実家はどうしたらいい?
実家を相続しても、すでに持ち家があるなら住まずに放置してしまう人もいるでしょう。
住まない実家をどのように扱うべきか、対処方法を4つ紹介します。
対処法① 売却
住まない実家への対処方法の1つ目は、購入希望者を探して売却する方法です。2024年4月1日から相続登記が義務化されました。相続した人は住まない家でも登記をしなければならず、固定資産税の支払い義務が生じるほか、管理する必要もあります。
住まない実家をそのまま持っているだけで毎年の費用負担があり、定期的に実家の掃除や見回りをする手間も増えてしまいます。
家を相続する負担を減らすには、実家を売却して他人に譲渡するのがよいでしょう。売却すれば引き渡し後の固定資産税や管理の手間もなくなり、現在の住まいのことに集中できます。
また、売却できれば多少の利益も生じるため、経済的にもメリットになります。相続しても使う予定がないなら、実家を売却することも視野に入れましょう。
対処法② 寄付
住まない実家への対処方法の2つ目は、個人や自治体、町内会などに寄付することです。立地条件の悪い住宅や売れにくい住宅の場合、市場に出してもすぐには買い手がつかないことも考えられます。また、買い手がつかないと固定資産税やメンテナンスコストばかりがかかり、持っているだけで負担になります。そこでおすすめなのが寄付です。
具体的には自治体や町内会などの認可地縁団体、法人、個人に無償または低額で譲る方法です。自治体や町内会に寄付した場合、地域住民の寄合所や公民館として利用する例もあります。
個人の場合は、実家に隣接する家の所有者に譲り渡せば、土地の有効活用をしてくれるでしょう。ただし個人に譲った場合、受け取った人は贈与税の課税対象になる点に注意しましょう。
法人の場合、事業や保養地などさまざまな活用方法があり、贈与税も経費として精算できます。
誰に寄付しても損にならないため、実家を必要とする相手に譲るのがよいでしょう。
対処法③ 国に返却
住まない実家への対処方法の3つ目は、国に返却する方法です。相続登記の義務化に伴い、不要な土地を国庫に帰属できる「相続土地国庫帰属法」も2023年4月27日から施行されています。相続土地国庫帰属法によって、土地所有権の放棄が可能になり、国に返却できるようになりました。ただし審査手数料と10年分の土地管理費用が必要になるため、一定の費用がかかる点には注意が必要です。
また、国に返却できるのは更地に限られるため、建物や各種権利などがついていないことが条件になります。条件は厳しいですが、土地と住宅を持ち続けるという負担を減らせるため、条件を満たしている方は利用しましょう。
対処法④ 相続放棄
住まない実家への対処方法のひとつに相続放棄があります。相続放棄とは、相続により発生するプラス財産やマイナス財産のすべてを引き継がない選択です。負債が多ければ相続放棄が有利ですが、プラス財産が多いと不利になることもあります。しかし、実家の維持管理の負担が大きければメリットは少ないでしょう。相続放棄により実家の所有権を放棄すれば、固定資産税や維持管理費の負担もなくなります。
注意点として、手続きは被相続人の死後3ヶ月以内(正確には「被相続人が亡くなったことを知った時から3ヶ月以内)に行う必要があり、相続財産管理人の選定も求められます。
また、すべての相続財産を放棄する必要があり、実家だけでなく現金や有価証券も含まれます。
さらに「相続土地国庫帰属制度」を利用すれば、実家を国に返すことも可能です。この制度は一定の条件を満たす場合に利用できます。
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「受け継いだ空き家は相続放棄することができる?」
住まない実家を相続した場合の対処法はある?
実家を相続したものの、自分が住む予定がない場合、そのまま放置しておくと維持管理費や固定資産税がかかり負担が増してしまいます。
ここでは、住まない実家の具体的な対処法をいくつか紹介します。自分にとって最適な方法を見つけて、効果的に管理しましょう。
売却する
住まない実家の対処法として最も一般的なのが、売却することです。不動産市場に出して買い手を見つけることで、実家の管理負担から解放されるだけでなく、売却益を得ることができます。売却を考える場合は、信頼できる不動産業者に依頼し、適正な価格で売り出すことが重要です。
寄付する
住まない実家を寄付するという方法もあります。公共団体やNPO法人などに寄付することで社会貢献にもなり、固定資産税や管理費の負担をなくすことができます。ただし受け入れ先が限られているため、事前に確認が必要です。
賃貸に出す
賃貸に出すこともひとつの選択肢です。借り手が見つかれば賃料収入を得ることができ、実家の維持費用を賄えます。また住んでいる人がいることで、建物の劣化を防ぐことにもつながります。ただし賃貸管理には時間と手間がかかるため、管理会社に委託するのも一案です。
国に返す
「相続土地国庫帰属制度」を利用することで、住まない実家を国に返すことが可能です。この制度を利用することで、所有権を放棄して固定資産税や維持管理費の負担から解放されます。適用には、土地に建物がないことや10年分の管理費を納付することなどの条件があります。
空き家バンクを利用する
空き家バンクは、自治体が運営する空き家情報提供サービスです。住まない実家を空き家バンクに登録することで、購入や賃貸を希望する人に情報を提供しマッチングを図ることができます。地域に貢献しながら、実家の活用方法を見つける一助となります。
欲しい人に譲る
親戚や友人、知人などに実家を譲るという方法もあります。信頼できる人に譲ることで、実家の管理負担から解放されるとともに、家の思い出を大切にしてもらえる可能性があります。譲渡に際しては法律的な手続きが必要ですから、専門家に相談しましょう。
住まない実家を相続した場合の活用方法

デメリットが目立つ住まない実家も、使い方次第では、収益を生んでくれる可能性があります。
ここからは、住まない実家を相続した場合の活用方法を見ていきましょう。
方法① 賃貸物件にする
住まない実家を賃貸物件として貸し出せば、収益を生むようになります。特に実家が戸建住宅の場合、家族で長期的に入居する可能性が高いため、安定した賃料収入を得られるでしょう。方法② ギャラリーやカフェとして貸し出す
築古物件である住まない実家は、古民家ならではの独特な雰囲気があります。そこで、ギャラリーやカフェとして貸し出してみましょう。近年の古民家ブームもあり、借手の付く可能性が期待できます。方法③ 民泊に活用
民泊として活用する方法もおすすめです。民泊とは、住宅を旅行者や出張者などへ貸し出す民間の宿泊サービスになります。民泊新法の順守や内装や設備機器、備品などの設置に注意が必要です。方法④ サテライトオフィス化
住まない実家を都心部の本社から離れた営業所として貸し出してみてはいかがでしょうか。いわゆるサテライトオフィスです。テレワークの普及に伴い、そのニーズが期待できる活用法といえます。方法⑤ レンタルスペース化
フリーのレンタルスペースとして貸し出すこともできます。各種イベント会場、会議場、映画やドラマなどの撮影現場、料理・絵画教室など、さまざまな活用が可能です。方法⑥ 駐車場の経営
住まない実家を解体し、駐車場を作る活用方法もあります。経営形態は、月極駐車場がオーソドックスなスタイルです。初期費用も比較的安価に抑えることができます。方法⑦ トランクルームの設置
土地を更地にすれば、複数のトランクルームを設置できます。トランクルームとは、企業や個人の物品を収納する貸し倉庫のことです。維持・管理に手間がかからない、長期契約が多いなど、比較的経営しやすい活用方法になります。
まとめ
住む予定のない実家を相続することは、想像以上にリスクが生じます。相続税や固定資産税の負担や、家屋自体の定期的なメンテナンスなど、不動産の維持や管理に経済的・肉体的・精神的な労力を費やすからです。
賃貸物件や民泊、駐車場などに活用する方法や、相続放棄を行使することもできますが、少なからず手間暇がかかるうえ、特有のデメリットも否めません。
これらの観点を踏まえ、住まない実家は、相続前に売却することを検討してみるとよいでしょう。
監修者

大沼 春香(おおぬま はるか)
宅地建物取引士
埼玉県・千葉県・東京都一部に拠点を置く
不動産売買仲介会社に15年以上従事。
自身も不動産購入を経験し「初心者にもわかりやすい」
実態に基づいたパンフレット・資料に定評がある。
最近はWEBや自社セミナーなどでの情報発信も行っている。